2005年07月27日(水)  シナトレ2 頭の中にテープレコーダーを

いまいまさこカフェのお客様に「あれは、もうやめたんですか?」と聞かれるもの、カフェめぐり日記、ガーデニング日記、ブログ、メルマガ、そして、2004年の9月に第1回をやったきりのシナトレ。

すべて忙しさにかまけて手が回っていないだけなのだが、待ってくれている人がいるうちにやらなくては。で、いちばんサボリ期間の長いシナトレから。脚本家になりたい人にシナリオを書くコツを伝授するという心がけは立派なものの、3日坊主ならぬ1回坊主になっていた。

第1回ではシナリオコンクールを採点競技に例えたが、シナリオの練習はスポーツのトレーニングに似ていると思う。いろんなアプローチがあり、人によって相性があるが、試行錯誤している間にも筋力や体力や気力は養われる。筋トレの場合、「今ここの筋肉を鍛えている」と意識しながら負荷をかけると効果的だというが、シナトレの場合も、日常の何気ないことを「これは台詞の勉強だ」「これは設定の研究だ」と意識すると、シナリオを書くのに必要な筋肉が身についていく。

誰にでもできる手軽なシナリオ筋トレとしておすすめなのが、「頭の中にテープレコーダー」法。これはわたしがコピーライターとして入社したときに上司に教えられたもの。「頭の中にテープレコーダー(「テープ」というところに時代を感じるが、記憶装置ってこと)があると想像して、そのスイッチをオンにし、耳に飛び込んでくる台詞を記録する」という、それだけのこと。

大事なのは、自分で「スイッチをオンにする」ということ。その瞬間、音の洪水の中から「記録すべき言葉を拾い出す」作業がはじまる。通勤電車、待ち合わせのカフェ、上映前の映画館……特別ではない場所で交わされる会話の中にドラマはある。「この台詞面白い」と思ったら、なぜ面白いのかと考え、その感想も一緒にテープレコーダーにおさめる。これは、コピーライターとして「時代の空気を読むアンテナを張る」練習だったが、シナリオを書く上で、今とても役に立っている。最近では「頭の中にビデオレコーダー」法にバージョンアップして、その場の状況も一緒に記録し、同時にそれをシナリオの形に置き換えたりしている。

たとえば、今日、近所のファミレスで遭遇した出来事。

○ ファミリーレストラン・店内

       遅めのランチを取る客で、混みあっている。
       食事を終え、本を読んでいる今井。
       右隣のテーブルで向き合う中年カップルの会話に、
       本から顔を上げる。
中年男「問題は電話だ」
中年女「ガスは?」
中年男「しまった。ガスもだ。電気は何とかなるが、ビックカメ
    ラも間に合わねえ」
今井「(何の相談なのだろう?)」
       と、見る。
       かき氷をせわしなくつつきながら、相談を続ける
       カップル。
中年女「早く手を打たないとダメよ」
中年男「とにかく、電話しよう」
       と携帯電話をプッシュし、耳に当てる。
       目線は本に落としつつ、耳を二人の会話に集中さ
       せる今井。
中年男「(電話に)もしもしー? 今日、引越してきた者で、そ
    ちらに来てもらうことになってるんですが、今、事故で
    電車が止まってまして」
       中年カップルの向かいのテーブルに、ドリンクを
       運んでくるウェイトレス。
ウェイトレス「お待たせしました。アイスティーです」
今井「(電車にドリンク来ちゃったよ)」
       と中年男の反応を見るが、男、動じる気配なし。
中年男「(かまわず続けて)まだ着いてないんです。住所はです
    ね、くっそー、住所がわかんねえや。あ、今、トンネル
    に入りますので切れます」
       とあわてて切る。
今井「(あっけに取られて見ている)」
       と、今井の左隣のテーブルから、
男の声「事故で止まってるのに、トンネル入らないよな」
       今井、声のほうを見る。
       一人で食事しているスーツ姿のサラリーマンの独
       り言。
今井「(この人も聞いていたのか)」

ちなみに、中年男が見つけ出した新居の住所は、ファミレスから目と鼻の先。かき氷食べてる間に駆けつければいいのにと思うのだが、大嘘電話をかけてまで遅れる必要があったのだろうか。

ファミレスの現実は、想像を超える。

客の年齢層が広く、強烈なキャラクターの出没率が高いファミレスは、レコーダー回すのにうってつけの場所。「この石けんすごいのよ。頭の先から車まで洗えるの!」(訪問販売でしょうか?)なんて、掘り出し物の台詞が飛び交っている。

2004年9月6日 シナトレ1 採点競技にぶっつけ本番?

2004年07月27日(火)  コメディエンヌ前原星良
2002年07月27日(土)  上野アトレ
2000年07月27日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年07月26日(火)  トレランス番外公演『BROKENハムレット』

脚本を書いたFMシアター『夢の波間』に茂右衛門役で出演した上杉祥三さんの演劇ユニットトレランスの番外公演『BROKENハムレット』を観る。劇場は新宿シアターモリエール。『BROKENロミオとジュリエット』のあまりの面白さに衝撃を受けたのもこの場所だった。台風が関東に上陸するかもという夜なので出控えも多いのではという心配を吹き飛ばし、会場は満員御礼。開演ぎりぎりに着いたわたしは、最前列の座布団席に通された。ただでさえエネルギーが迸る舞台をかぶりつきで観るのは、すごい迫力。生唾、生汗は降ってくるし、役者も目の前まで飛んでくる。

主演のハムレット役の天宮良、ハムレットに想いを寄せるふたなり(両性具有)の武者・有栖川友親役の吉川真希はじめ、役者さんたちの全力投球ぶりが実に気持ちいい。ハムレットの父を毒殺し、ハムレットの母(松葉智子)と再婚して王の座についた父の弟(崎山凛)への復讐劇。娘の浅茅(中沢純子)とハムレットをくっつけようとする近衛仲磨(円堂耕成)、ハムレットとの決闘を仕組まれる浅茅の兄(石橋和也)。ひとり何役もこなす武者たち(紺野忠彦、石川雄也、細井崇宏)、侍女たち(夏秋佳代子、高宮城のり子、吉村玉緒)。全員はじめて舞台を見る役者さんだったが、熱演に拍手。

演出・脚本の上杉さんの言葉遊びは今回も光っていて、「止むに止まれぬ大和魂」。「君死にたもうことなかれ。君死に卵食うなかれ」といったリズムのいい掛け言葉があちこちに。墓穴掘り職人の名は朝日さん、読売さん、毎日さん、産経さんで、産経さんの口癖は「産経ないね」(関係ないね)。ハムレットは「羽無劣人」で、「羽根のない、飛べないダメな奴」という設定で、「To be, or not to be. That's the question」をもじった「飛べ、もっと飛べ、雑踏の鶏たち」という台詞が、ちゃんと名前と呼応している。

打ち上げの席での上杉さんの演劇論は、舞台に負けず劣らず熱かった。「映像がプールで泳ぐもんやとすると、舞台は海で泳ぐようなもんや。足がつかへん、鮫が出てくるかもしれへん。でも、泳ぎ出したら泳ぎきるしかない。舞台で泳げたら映像でも泳げる」「初日は誰にでも舞台の神様が降りてくる。二日目以降は自分で呼ぶしかない」「役者いうんは心のストリッパーにならなあかん」……。最終日ということもあり、出演者の顔には舞台を泳ぎきった達成感がみなぎっていた。

「役者は顔に出るわね。あなたはかわいいけど、役者のオーラはないものね」と言ってくださった(お世辞でも「かわいい」と言ってくれる人は大好き)のは、はじめてご一緒した脚本家の東多江子さん。上杉さんと舞台『ヒーロー』で共演した大久保了さんの友人だそうで、大久保さんと一緒に見えていた。朝ドラ『ええにょぼ』をはじめテレビもラジオも数えきれないほど書かれている大先輩。昔、あるディレクターに「東さんの脚本を読んで勉強しなさい」と言われたこともあり、一方的に存じ上げていたのだが、ご本人はとても気さくな方。関西出身同士ということもあり、楽しいお酒となった。

2004年07月26日(月)  ヱスビー食品「カレー五人衆、名人達のカレー」
2002年07月26日(金)  映画『月のひつじ』とアポロ11号やらせ事件
2000年07月26日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年07月25日(月)  転校青春映画『青空のゆくえ』

黒川芽以ちゃん出演最新作『青空のゆくえ』のマスコミ試写を見る。到着したときには満席で、通路に座布団を敷いての鑑賞。混んでいる試写は注目度が高いのかなと期待させてくれるが、今日は後半、おしりの痛みに集中力が下がってしまった。

主人公は、中学3年の夏休みにアメリカに引っ越すことになったバスケ部キャプテンの高橋(中山卓也)。彼をめぐって、女子バスケ部キャプテン(森田彩華)、同じ苗字の学級委員長(黒川芽以)、幼馴染み(多部未華子)、男勝りで勝気な子(悠城早矢)、クラスになじめていない帰国子女(西原亜希)の5人の女の子の思いが交錯する。さらにクラスもバスケ部も高橋と同じ親友(佐々木和徳)、高橋に因縁つけてくる不良少年(三船力也)、高橋が気にかけている登校拒否少年(橋爪遼)ら男子も加わり、「アメリカに行く前に、5人の女子と3人の男子に、高橋はどう決着つけるのか」が物語を引っ張っていく。

それまで意識してなかったクラスメートが、「転校する」となった途端に気になったり、あの子のこと好きだったらしいよと噂になったり。確かにそういうのあったなあと思い出す。教室という箱の中で毎日同じ顔ぶれがそろい、同じ授業を受ける。代わり映えのしない学校生活において「転校」は事件であり、安定していた人間関係に波紋を投げかける。わたしが高校2年でアメリカに留学したときも、もう一生会えないみたいにクラスメートは派手に別れを惜しんでくれたし、プレゼントも手紙もたくさんもらった。一時的に人気者になった気はしたけど、言い寄ってくる男子も恋の噂も皆無で、高橋君のようなドラマはなかったなあ……などと、どうでもいいことも思い出す。

中学生を演じるキャスト、とくに女の子たちがよかった。芽以ちゃん以外は映画で見るのははじめてだったけれど、若くてキラキラした女の子がこれだけ元気だったら、日本映画の未来は明るいぞと思える。多部未華子さんのプロフィールを見ると、『HINOKIO』出演とある。予告を見て男の子だと思っていたので、びっくり。『ココニイルコト』『13階段』の長澤雅彦監督作品。(で、同じく長澤監督の『夜のピクニック』の主演が多部未華子さん)。音楽は『初恋のきた道』『あの子をさがして』を手がけた三宝(サン・パオ)。9月、シネ・リーブル池袋ほか、全国順次ロードショーとのこと。

2003年07月25日(金)  日本雑誌広告賞
2000年07月25日(火)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年07月23日(土)  映画『LIVE and BECOME』・バレエ『ライモンダ』

風の絨毯』プロデューサーの益田祐美子さんより映画『LIVE and BECOME』の試写案内をもらい、映画美学校試写室へ。

「ベルリン国際映画祭で絶賛(パノラマ部門審査員特別賞と観客賞受賞)された作品なんだけど、宗教が絡んでるから日本ではなかなか買い手がつかなくて、買っちゃった」と、魔女田節は健在。カフェグルーヴ社長・浜ちゃんこと浜田寿人さんと、もう一人と3人で出資して共同購入したそう。カンヌ映画祭に買い付けに行った浜ちゃんが感動し、「ぜひ日本でも見てもらいたい」と益田さんを巻き込んだとのこと。

監督はルーマニア生まれでフランス在住のラディ・ミヘイレアニュ。ユダヤ人ジャーナリストで共産党員、ナチス強制収容所から逃亡した父を持ち、前作『Train de vie(いのちの列車)』は、強制収容所行き列車を偽造してナチの手を逃れる主人公を描いた作品。長編3作目となる本作で選んだ題材は、「エチオピア系ユダヤ人のイスラエル引揚げ」。

わたし自身は不勉強で知らなかったが、ファラシャと呼ばれるエチオピア系ユダヤ人を救出するという1984年の『モーゼ作戦』により、85年から86年にかけて大量のファラシャがイスラエルへ移住したが、その中には、貧しい生活からの脱出を求めて出自を偽る者もいたという。

作品の主人公は、生きるために愛する母と別れ、ユダヤ人と偽ってスーダンの難民キャンプを逃れた少年。「シュロモ」という名を与えられた彼は、イスラエルの白人社会でファラシャへの差別や偏見に耐え、偽りの自分と抱えた秘密の大きさに苦しみ、母に会いたい恋しさを募らせながら成長していく。

成長に合わせて3人の役者がシュロモを演じているが、青年期を演じたシラク・M・サバハはエチオピア出身でイスラエルに移住し、黒人としての苦労を味わったという。そんな経験が役柄に投影されているのか、ドキュメンタリーを見ているような気持ちにさせられた。

「行きなさい、生き抜いて、生まれ変わりなさい」という難民キャンプでの別れ際の母の言葉が題名(原題はフランス語で『VA,VIS,ET DEVIENS』)になっているが、その言葉の意味を問い続けるシュロモの苦悩と葛藤に心を揺さぶられ、壁を乗り越えてはより強くより魅力的な人間になっていく姿に引きつけられる。公開は来年以降になりそうだが、歴史を知るという上でも大いに観る価値のある作品。

夜は先週と同じく上野の東京文化会館にてアメリカンバレエシアターの『ライモンダ』。地震の影響で交通機関がストップし、45分遅れての開演。それでも空席が目立っていたのが惜しい。

「戦争に行った恋人と夢の中で会っていたら、別な男も夢に出てきて、二人の間で揺れるヒロイン。恋人が戦地から戻ると、二人の男が彼女をめぐって争うことに。決闘の末、恋人が勝って披露宴でめでたしめでたし」という2幕もの。

1幕目は夢のシーンが続いてわたしまで夢見心地になってうとうとしてしまったが、2幕目は踊りの博覧会状態で、花火大会のクライマックスのようなにぎやかさ。眠気も吹っ飛び、前のめりに。カーテンコールでは観客総立ち、割れんばかりの拍手で会場が揺れた。

今日は何かと揺れる一日。

2004年07月23日(金)  ザ・ハリウッド大作『スパイダーマン2』
2003年07月23日(水)  チョコッと幸せ


2005年07月22日(金)  万寿美さん再会と神楽坂阿波踊り

会社に行かなくなると、打ち合わせのない日は出かける理由がないので、下手すると一日中家に閉じこもってしまう。気持ちも体型も緩んでしまいそうなので、なるべく口実を見つけて出かけるようにしている。

今日は、『彼女たちの獣医学入門』で知り合った獣医師でありライターの石井万寿美さんが大阪から上京されたので、東京駅に向かう。再会は3年ぶり。「11:43東京着、13:00から麻布で打ち合わせ」という時間のないスケジュールなので、東京駅で待ちうけて一緒に山手線に乗り込み、渋谷からタクシーで麻布へ。移動時間をおしゃべり時間にあてられたが、打ち合わせ場所近くのレストランに入ったのが12:40で、メニューが運ばれてきたときは1時5分前。それでも関西人らしく、万寿美さんはしゃべりながらしっかり完食し、店を飛び出していった。「天使の卵、買って読みました」と見せてくれた文庫本に「映画化」の帯がついていたので、パシャリ。
2002年7月30日 ペットの死〜その悲しみを超えて

いったん家に帰ると、宮崎美保子さんから神楽坂阿波踊りのお誘い。しかも浴衣で行くというので、しわだらけになって眠っている浴衣を引っ張り出し、汗だくになって着付けに格闘。神楽坂の阿波踊りは高円寺より規模が小さいらしいが、目の前で踊っているのを見るのは初めてで、勉強になった。踊ることを楽しんでいるかどうかが顔や手足の表情に如実に現れる。「うまい人には拍手を送るのよ」と美保子さん。

見終わってから、近くの居酒屋、そしてバーへ。「阿波踊りって英語でバブルダンシング?」などと酔っ払う。神楽坂という町は、どこへ続くかわからない小さな坂道が枝分かれしていて、探検欲をかきたてられる。隠れ家のようなお店がたくさんありそう。
2005年7月17日 阿波踊りデビュー

2002年07月22日(月)  10年前のアトランタの地下鉄の涙の温度


2005年07月21日(木)  日本科学未来館『恋愛物語展』

4/23から8/15まで開催中の『恋愛物語展 どうして一人ではいられないの?』目当てに、日本科学未来館へ。鑑賞の友は、先日、六本木ヒルズ森美術館に一緒に行った岩村匠さんと、そのとき匠さんから紹介されたアミちゃん。3人ともこの展覧会に目をつけていたことがわかり、「じゃあ一緒に」となった。自らの性同一性障害を綴った『性別不問。』の著者でありライターである匠さん、好奇心旺盛なアミちゃんとの館内めぐりは楽しく、「こんなのがあるよ」「これ面白ーい」と見つけあい、教えあいながら見て回る。

企画展示の『恋愛物語展』は、「もともと自前で子孫を残していた生物が、種の保存のために、他者の遺伝子と掛け合わせる必要が生じ、『性』が生まれた」ことからはじまり、懐かしい「減数分裂」「X染色体 Y染色体」の解説があり、地球上のさまざまな性の形が紹介され、バーカウンターを模したコーナーに「恋愛に効くカクテルレシピ」(というスタイルを取った解説書。これが読ませる)を置いたり、「存在しない相手に恋ができるか」ということでプレステの恋愛シミュレーションゲームが用意されていたり、科学的かつ遊び心のある展示になっている。何気なく置かれた二人がけソファは電流が通っていて、互いの体に触れると音が鳴り、スキンシップしながら音楽を奏でられる。手もつなげない二人には、絶好の口実。お膳立てまでしてくれるとは、心憎い。

企画展示は企画展示で十分楽しめたけれど、常設展がこれまた面白く、ゲームあり乗り物ありデモンストレーションあり。ボランティアガイドさんの丁寧な説明も受けられ、一日中過ごせる盛りだくさんな内容。わたしたちは3階にある集団コミュニケーションロボットがツボに来て、3回見に行った。話しかけると集団で激しくうなずく姿が何ともいえない。夏休みとはいえ平日のため空いていたが、大人にも子どもにも楽しみながら科学に親しめる。館内は飲食施設も充実。お昼は眺めのいいレストランで腹ごしらえし、帰りがけにカフェで水分と糖分を補給。ここのカフェ、大中小のサイズ違いの木のテーブルと椅子がとてもかわいい。

2004年07月21日(水)  明珠唯在吾方寸(良寛)
2002年07月21日(日)  関西土産
2000年07月21日(金)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年07月20日(水)  立て続けに泣く『砂の器』『フライ,ダディ,フライ』

立て続けにスクリーンで観た2本に、ハンカチ2枚分泣かされた。ひとつは、東劇で上映の『砂の器』デジタルリマスター版。テレビドラマ版の最終回だけを見て泣いてしまったのだが、松本清張の原作も未読で、あらすじはよくわかっていなかった。アルカトラス島刑務所(別名ROCK)脱走を描いた映画『ザ・ロック』を、途中まで音楽映画だと思い込んでいた経験があるので、2時間半の映画ではぐれては大変と心配したが、「○月○日、○○に到着」といった丁寧すぎるほどの細かなキャプションのおかげで、脱落することなく物語についていけた。

ハンセン氏病(劇中では「らい病」)で迫害された父とその息子が美しい日本の四季の中を彷徨う「過去」と、成長した息子が作曲した『宿命』を披露するコンサートの「現在」、そして彼の過去と犯した罪が明らかにされる捜査会議の「もうひとつの現在」。3つの場面が、心を揺さぶる『宿命』のメロディに乗せて交錯する後半、これでもかと涙を搾られた。罪は罪であるけれど、背負ったものが大きすぎるとき、人は自分を守るために鬼になり、恩人や家族さえも裏切ってしまうのではないか。追い詰められた主人公が自らの宿命を呪い、苦しんだ末に吐き出した曲というリアリティを感じさせる『宿命』の美しく悲しい旋律が、台詞以上に想像をかきたてた。

残念だったのは、長い上映時間のせいか、携帯電話で時間を確かめる人が目立ち、場内の蛍にときどき注意を奪われたこと。さらには後ろの席で通話をはじめた人がいて、涙は引き潮のごとく引いてしまった。

公開は1974年公開。丹波哲郎も森田健作も加藤剛も緒方拳も若い若い。それ以上に、捜査本部のある東京の街並みがこの30年でずいぶん様変わりしたように見え、今では探し回らなくては得られない地方の田園風景も、当時は当たり前のようにあったのかなあと思ったりする。その時代には、わたしと同い年ぐらいの戦争孤児も少なくなかったのだろうし、30年という時間は、世の中を大きく変えてしまう。劇中の捜査本部ではハンセン氏病への偏見と差別を過去のものとして語っているが、5年前、「今も苦しんでいる人がいるんです」とわたしにハンセン氏病関連の資料を貸し出してくれた医師の余語先生の話を聞いていると、この病気への理解は、時間の流れほどは進んでいないように思える。

もうひとつは、丸の内TOEIにて、『フライ,ダディ,フライ』。「ひさしぶりに、いい日本映画を観た」と打ち合わせの席でプロデューサーが絶賛していたので、観たい作品リストに急浮上。チケット売場横のポスターを見て、「堤真一と岡田准一が出てる」ことを知ったほど、ほぼ真っ白な状態で客席へ。それが良かったのか、劇場を出たときには誰かにこの感動を伝えたくて、すれ違った見知らぬおじさんに声をかけそうなほど興奮してしまった。

愛娘が「代議士の息子でボクシングチャンピオン」という男子高校生にボコボコにされた上、金で事を収めようとする男子の高校関係者の態度に怒り心頭の父親を演じるのが、堤真一。父親らしく娘を慰めてやれず、娘に拒絶されたこともあり、男子高校生の元に乗り込むが、間違えて隣の高校に。そこで出会った高校生グループ・ゾンビーズから、「喧嘩に強くなって、娘を殴った男子と対決する」という目標を提案され、ダメ親父の肉体改造と猛特訓が始まる。

この特訓を請け負う孤高の美少年を演じるのが岡田准一。バレエのような勝利の舞を披露する場面が何度かあるのだが、一歩間違うと滑稽、不自然になりかねないのをこんなに美しい名シーンにしてしまう力に感心。すごいスクリーン引力。マラソンで走っている人を見ているだけで泣けてくるほど、スポ根ものには涙腺が刺激されるのだが、特訓シーンには演技ではない真実味があり、走りこむほどに膝が上がり、体が締まっていく様子はドキュメンタリーを見ているよう。頬を膨らませて力いっぱい腕を振り、本気で走るスーツ姿のお父さんに涙を誘われつつ、いつの間にか心からガンバレーと声援を送りたくなるのだった。他の組み合わせは考えられない主演の二人をはじめ、ゾンビーズや「バス通勤のサラリーマン+運転手」の中年親父のキャスティングも心憎いほどはまっている。

パコダテ人』でまもる父ちゃん役の徳井優さんが中年サラリーマン役で、『ジェニファ 涙石の恋』の修行僧役の坂本真さんがゾンビーズの役で出演。『パコダテ人』『子ぎつねヘレン』の葛西誉仁さんが撮影助手で参加。ところで、この作品、原作も脚本も金城一紀さん。原作をご本人で脚色されたのかと思ったら、公式サイトを見ると、先に脚本を書かれ、ノべライズノしつつ映画化のタイミングを待ったのだとか。ゾンビーズは『レヴォリューションNo.3』からのスピンオフだそう。

監督は脚本家でもある成島出さん。シナリオ作家協会の集まりでちょこっと話しかけたとき、とても感じのいい方だったのだが、作品を見てますます次回作が楽しみになった。

2002年07月20日(土)  トルコ風結婚式
2000年07月20日(木)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年07月19日(火)  会社員最後の日

■今日は一日に何度か、ふと立ち止まって「いよいよかあ」という気持ちになった。退職は今日付け。すでに5月の終わりから長い有休消化に入っているので、生活はすっかりフリーランスになっているのだけど、明日からは文字通りのフリーランスで、働かなければお金は入らないし、有休もない。会社員ってすごく守られている存在なんだなあとあらためて思ったり、がんばるぞと思ったり。幸い、仕事は順調に入ってきていて、午前中に新企画の映画のプロットをメールで送り、午後は別企画の打ち合わせが2本。映画は企画倒れになってしまうものも多いけれど、宝くじと違うのは、努力次第で勝率を上げられること。今開発している企画が全部クランクインすれば、たちまち女クドカンになれるのですが……なんて話をしたら、「じきになっちゃうかもしれませんよ、今井さん」とよいしょ上手なプロデューサー氏。「そのときは、イママサなんですかね。キレがなくて、ぱっとしないですね」「まあ、長い名前じゃないのでそのままでもいいのではと。そもそも、まだ必要ないですね」。短縮名は、お呼びでない!?

2002年07月19日(金)  少林サッカー
2000年07月19日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年07月17日(日)  阿波踊りデビュー

■子どもの頃にちょこっと習った日本舞踊を皮切りに、ジャズダンス、器械体操、ディスコダンス、チアリーディング、エアロビクスといろんな踊りをやってきたが、踊ることから遠ざかること十余年。ここに来て突如、踊りコレクションに加わったのが、阿波踊り。猫又短歌の会で知り合った宮崎美保子さんに誘われ、高円寺の阿波踊り大会に出場する「連」(阿波踊りのグループのことを連と呼ぶらしい)に仲間入りすることに。本格的な連はオーディションがあったり強化練習があったりするそうだけど、わたしが参加させてもらうことになった連はそこまで厳しくはなく、練習は本番前の2回。今日がその第一回目。飛び入りで踊ったこともなく、阿波踊りはまったくはじめて。振り付けは単純で一見簡単そうだけど、しなやかに踊るのがなかなか難しい。それでも、生のお囃子のリズムに自然と体が動き出して、やっぱり踊るって気持ちいい。「本番はスポットライトが当たって陶酔状態になるのよ」と美保子さん。1時半から4時半まで、みっちり3時間。ひさしぶりにいい汗をかいた。初対面の皆さんに美保子さんが紹介して回ってくれ、合間の休憩ではおしゃべりも弾む。会社を辞めても、こんな風に人とつながって何かを一緒にできるんだ、と誘ってくれた美保子さんに感謝。高円寺阿波踊り本番は8月26・27の土日。

2004年07月17日(土)  東京ディズニーシー『ブラヴィッシーモ!』
2000年07月17日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2005年07月16日(土)  『リトルダンサー』と『アマデウス』と『マノン』

東京文化会館にて英国ロイヤル・バレエ団の『マノン』を観る。「チケットあるんだけど、行く?」とお誘いを受け、「行く!」と答えたのは、ちょうど『リトル・ダンサー』を観て、「本物を見たいなあ」気分になっていた矢先だから。内容も何も知らずに会場に着き、「マノンという娼婦が恋に落ちるが、兄が貴族に売り飛ばし、恋人と引き裂かれる悲哀の物語」というあらすじを仕入れ、いざ開幕。

バレエをよく観る友人が「お耽美」という表現を使っているが、普段は使わない「耽美」という言葉がふさわしいような、ため息ものの美しさ、華麗さ。凝った美術や衣装のディテールを見ているだけでも楽しい。中世ヨーロッパのロマン漂う衣装は、『リトル・ダンサー』と同時期に観た『アマデウス』を彷彿とさせる。アマデウスは19世紀のウィーンが舞台だったけど、『マノン』は18世紀の傑作恋愛小説『マノン・レスコー』をバレエ化したもので、バレエの舞台はパリ。振り付けもユニークでアクロバティックな動きもあり、ジャンプやリフトにこんなにバリエーションがあるのかと感心。

幕間にはシャンパングラスを片手に印象を語り合う。バレエ公演に足しげく通っている人は、「今夜のギエムは」といった見方をする。「泣くよ」と言われた3幕のラストは、本当に涙がじわり。台詞が一言もないのに、どうして登場人物に感情移入できてしまうんだろう。バレエというより歌のないオペラを観ているようだった。

アフターシアターは、会場のすぐ近くの居酒屋へ。バレエにめっぽう詳しいお姉さま方三人に、「英国ロイヤル・バレエ団が日本公演をやるのは6年ぶり」「今夜、主役のマノンを演じたシルヴィ・ギエムは、百年に一人と言われる逸材」と教えられ、「今井、いい全幕デビューを飾ったねえ」と話していると、「ちょっと待って。あそこに座ってるの、ギエムじゃない!」。なんと、同じお店に居合わせていた。メイクも落として髪も下ろして衣装も脱いでも見つけてしまうって、すごい。「今井、通訳よろしく」と背中を押され、お食事中失礼しますと近づき、今夜の公演とってもすばらしかったですと伝えると、にこやかに「Sign?」と察して向こうから手を出してくれ、四人分のチケットの裏にサインをしてくれる。一緒に居た恋人デ・グリュー役のマッシモ・ムッルも快くサインに応じてくれる(しかし、どっちがどっちのサインなんでしょう)。

お姉さま方のただならぬはしゃぎぶりを見て、すごいことなんだなあとわたしまで興奮。上機嫌でお店を出ると、今度は横断歩道ですれ違った白人男女を見て、「あ、お兄さんだ!」。マノンの兄レスコー役のティアゴ・ソアレスとその愛人役のマリアネラ・ヌニュスを目ざとく見つけたお姉さま方。「出待ちしないでこんなに会えちゃうってすごいよ」と天にも昇る勢い。全幕デビューのビギナーズラックだったのかも。

2004年07月16日(金)  島袋千栄展 ゴキゲンヨウ!

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