セクサロイドは眠らない

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2001年11月13日(火) その日、あたしは「恥知らず」という名前をもらった。

あたしには名前は、ない。

あたしのことは、呼びたいように呼べばいい。

あたしには両親もいない。育ててくれた女から「娼婦」と呼ばれていた。そうやって、12の時から男と寝た。男と寝れば、あたしは居場所ができるから男と寝た。男達は、奪うばかりだけれど、寝るところと食べるものくらいは用意してくれる。

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ある時は、あたしは「可哀想な女」と呼ばれていた。

いつも裸足だったから。ボロボロの布きれを身にまとい、足に靴はない。その男は、あたしに、革で出来た靴を買ってはかせてくれた。そうして、あたしを抱いた。あたしに、靴をはいてごらんと言い、靴をはいたあたしから、ボロのドレスを引き剥がし、あたしの両足を抱え込んであたしの中を掻き回した。革の靴は、少し暖かかったけれど、窮屈だった。その人は、靴を脱ぐなと言った。靴をはいたままのほうが興奮するみたいだった。あたしも、いつもより少し興奮した。靴は、拘束具だ。そうして靴のせいで、剥き出しの体がいつもよりもっと剥き出しだった。

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たった一人の女友達は、男の話ばかりしていた。あたしは、どうでも良かったので、どうでも良さそうに話を聞いていた。その女は恋をしているらしかった。一人の男の話ばかりするのだ。だが、その男は、決して彼女を抱かない。なんで抱かないかなんて、あたしに聞かれても困る。

ある時、あたしは、女友達が恋をしている男と街でばったり出会った。その男は、あたしに、「暇か?」と訊ねた。あたしがうなずくと、男は、歩きながらあたしの手をそっと握り、アイスクリームを買ってくれた。あたしは女友達のことを思い、何となく落ち着かなかったけれど。

そんな日が数日続いて、それから彼のアパートに誘われた。

彼は、ベッドの上であたしの腰に手を回し、ゆっくりと口づけた。あたしは、黙ってされるままになっていた。黙っていると、男は受け入れられたと思うものなのだ。だから、男は、あたしの体を自分の道具のように扱った。男があたしの髪を掴んで股間に持って行くから、あたしは、男の望む場所を口に含む。男は、退屈な手つきであたしを抱いた。息も乱れない。ただ、ギシギシとベッドが音を立てた。それからあたしは彼のアパートを出た。

あたしは女友達に、彼と寝たことを告げた。

途端に、頬に激しい痛みが走った。

その日、あたしは「恥知らず」という名前をもらった。

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ある男は、あたしに指一本触れなかった。ただ、ずっとあたしのそばにいた。

そうして、星の輝きを封じこめた指輪をくれた。何でも、彼自身が作ったらしい。彼の、宝飾品を作る腕前は素晴らしく、中でもその指輪は素晴らしい出来だと言うのだ。あたしは、それをじっと見つめた。星の輝きが指輪にはめられた石の奥で揺れると、あたしは泣きたい気分になるのだ。

「すてき、ね。」
「そうだろう?」

あたしは、その指輪を、飽きずにいつまでもいつまでも眺めた。

その男は、辛抱強く待っていた。

そうして、次第にイライラして、あたしの前で酒を飲むのだった。

「お前も飲むか?」
と聞くが、あたしは首を振る。

だって。

お酒は忘れたいことがある人だけが飲むのでしょう?

彼は、指輪の見返りにあたしに「俺を愛せ」、というのだった。あたしがそれはできない、と言うと、彼は「愛を知らぬ女」とあたしを呼んだ。

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あたしは、裸足で歩く。

アスファルトの上も、砂利道も。時としてガラスの破片が足に刺さる。暑い時には、足が焼けつき、寒い時にはかかとがひび割れて血が流れる。

それでも、裸足で歩く。

あたしには名前は、ない。

誰かが呼んだ名前は、風と一緒に通り過ぎる。

ボロ布をまとい、踊るように歩く。ただ、それだけの。


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