セクサロイドは眠らない

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2001年09月23日(日) 彼のモノが私の中にずっしりと入ってくる。急がないで、ゆっくりと。そこに嘘はないし、虚飾もない。

携帯が鳴る。

「もしもし?」
「あ。ハルカ?俺。タキザワ。」
「だれ?」
「俺だってば。どうしたんだよ、この間から。」
「すみません。あなた、誰ですか?切りますね。」

「誰だったの?」
バイト先の主任が心配そうに聞いてくる。

「分かりません。この前も掛けてきたんですけど。しつこいなあ。」
「番号変えたほうがいいんじゃない?」
「ええ。すみません。」
「ストーカーだったり?」
「やだなあ。そういうんじゃないとは思いますけど。でも、私の名前知ってるんですよ。それより、主任のほうはどうなんですか?狙ってる女の子がいるっていう話。」
「ははは。覚えてたのかぁ。なかなか誘えなくてね。ま、ぼちぼち行くわ。」
「そうですか。頑張ってくださいね。おさきです。」
「おう。おつかれっ。」

バイトの制服を脱いでいると、イクミが更衣室に入ってくる。

「ね。映画観て帰ろう?」
「いいけど。また、コウくんと一緒でしょう?私、お邪魔じゃない?」
「いいんだって。お願い。一緒に帰ってよ。コウスケって無口だから、間が持たないんだもん。」

イクミは夏の間だけのバイトで一緒になった女の子だ。もともとそんなに友達が多くない私は、活発なイクミに誘われると単純に嬉しくて、あちこち一緒に遊びに行った。そんな時、いつも一緒なのがイクミの恋人のコウスケだ。

バイト先のビルを出ると、コウスケが私に向かって頭を下げる。

--

映画館の中で、退屈なラブストーリーが続く。

私は、暗闇の中でそっとコウスケの手を握る。

彼も、私の手を柔らかく握り返す。

今だけ。今だけだから。手をほどかないで。

--

夏が終わる。一足先に、イクミがバイトの期間を終了する。なんでも、バイトで溜まったお金で海外に行くらしい。

「いろいろ、ありがとう。」
「また、帰国したら電話するから、遊ぼうよ。」
「うん。」
言葉を交わすけれど、多分、私達はもう二度と会わないだろう。

--

コウスケから電話が鳴る。

「ハルカ?今から、会える?」
「うん。」

コウスケの背中は、広い。無口な彼の言わない言葉が、彼の後ろ姿からこぼれ落ちてくる。いつだって、この背中にしがみつきたくなる。

「イクミが帰ってくるまで、でしょう?」
コウスケは、無言で、私の手首に、脇に、乳房に唇をつける。

「本当にいいんだね。」
彼の言葉に、私は黙ってうなずく。

コウスケのモノが、私の中にずっしりと入ってくる。急がないで、ゆっくりと。そこに嘘はないし、虚飾もない。ただ、彼が、彼の大きさのまま。ねえ。イクミのことなんか忘れて。私を見ていて。ねえ、今だけ、私のことを想ってくれている?

コウスケは私に背中を向けて服を着ながら、ボソリと言う。

「イクミとは別れたんだ。」
「え?」
「だから、俺達、もう隠れて会わなくていいんだよ。」

--

今日でバイトの最終日。

携帯が鳴る。
「もしもし?」
「ハルカ?俺、コウスケ。」
「だれ?」
「俺だよ。分からないの?」
「ごめんなさい。分からないわ。切ります。」

「また、イタ電?」
主任が聞いてくる。

「ええ。ほんと、困っちゃう。それより、主任、どうもお世話になりました。」
「ハルカちゃんいなくなると寂しくなるねえ。」
「うん。私も。すごくよくしてもらいましたもの。」
「また、遊びにおいでよ。」
「ええ。それより、主任、例の彼女どうなりました?」
「あ?ああ。へへ。」
主任は、急に顔がニヤける。
「デート誘ってね。それから急接近なんだよ。」
「へ〜。いつの間に???」

ずきん。

あ。胸が痛い。どうして、男の人はみんな、他の女の子を好きになっちゃうんだろう。

「ねえ。主任。」
「ん?」
「今日は、最後だから、このあと飲みに付き合ってくれません?私が奢りますから。」
「あ、ああ。いいけど?奢ってもらうのは悪いなあ。」
「いいんですよぉ。その代わり、今夜はとことん付き合ってくださいね。」

いつも、みんな、素敵な恋をして。

ねえ。

私はいつも置いてけぼり。


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