セクサロイドは眠らない

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2001年08月24日(金) 「ねえ。誰かに見られながら、セックスしたいとか思う?」

あ。

また。

カラス。

見ている。

私の行く先々に、カラス。漆黒の。いつ頃からだったろう。カラスがいつも私を見ている。他の人には見えていないのかもしれない。忘れていることも多いが、気付いてみれば、カラスが、私のほうをじっと見ている。

一度、友達に言ったことがある。

「やだ?気持ち悪い。それなに?守護霊?」
なんて、笑われて、それきり。

部屋にいても。ふと、窓を見上げると、ベランダの手すりからじっと見ているカラス。

カラスは、待っているのだ。何かを。何を?

--

恋人は、私の乳首を執拗に吸って。私は、何となく、ボンヤリと窓の外に視線をやる。

「どうした?今日はやる気ないのか?」
と言われて、慌てて、恋人の愛撫に意識を戻す。

「ねえ。誰かに見られながら、セックスしたいとか思う?」
「なんだ?見られたいのか?」
恋人は、笑って、カーテンを開ける。

暗闇にカラス。恋人には見えないのだ。

カラスに見られて、私は、妙に落ち着く。

恋人は、また乳首の愛撫に戻る。恋人の指が、少し乱暴に挿入される。痛みが快感に変わる時、カラスのクチバシを思う。カラスの濡れたような翼が、私の体にかぶさってくるところを想像する。もう充分に潤った、そこに恋人がヌルリと入ってくる。私は低くうめく。恋人の体にしがみついて。

カラスの黒が、瞼の裏で舞う。カラス。ねえ。来て。ここに来て。

私は、ほどなく達する。

--

事を終えると、恋人は背を向け、煙草を吸う。もう、前のように抱き締めていてくれない。私が冷蔵庫にミネラルウォーターを取りに行った隙に、携帯のメールを確認している。

カラス。
ねえ。
そろそろ、ね?

私は、冷蔵庫から包丁を持ち出す。恋人の体は想像していたより、固い。血がぬるぬるするのをシーツで拭って、何度も力を込める。それから、最後に、「カラス、行くよ?」と、心の中でつぶやき、自分の喉を掻き切る。自分の首から流れる血が、乳房の脇をつたうのを感じる。

カラスが、私の上に静かに舞い降りるのを感じる。私の、血と肉を待っていたカラス。

--

小学生の頃、クリスマス会で天使の役だった。

友達が、私の衣装につける白い羽をうらやましがった。

私は、悪魔の漆黒の羽をつけたかった。

黒い羽が空を舞うところはなんて美しいのだろうと思っていた。


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