ケイケイの映画日記
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2009年12月31日(木) 2009年年間ベスト10

今年は仕事が大変だったこともあり、劇場鑑賞数は75本と激減。とっても物足らない数です。数が少なかったといういことは、それだけ厳選しているので、あまり外れはなかったのが、唯一の救いでしょうか?

では洋画から。

1 「3時10分 決断のとき」

2 「レスラー」

3 「チェイサー」

4 「チェンジリング」

5 「母なる証明」

6 「私の中のあなた」

7 「コネクテッド」

8 「愛を読むひと」

9 「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

10 「パイレーツ・ロック」

邦画は恒例ベスト3です。

1 「サマーウォーズ」

2 「風が強く吹いている」

3 「大阪ハムレット」

いや〜、こうして並べてみると、「母もの」ばっかり。「3時10分」だって、西部劇に名を借りた「父もの」だし、「サマーウォーズ」など「「一族郎党もの」。大不況の中、私が家族の有り難さを痛感した年だったみたいですね。おかげで「グラントリノ」が落ちちゃった。

年末からはシフトが固定となり、お休みが火曜日・木曜日・日曜日となり、来年こそ復活100本!を目指し、頑張りたいと思います。

昨年に続き書けなかった作品が三本ありましたが、その辺はライフスタイルに合わせて臨機応変、無理せずサイトを続けて行く事を大事にしたいと思っています。

皆様、今年も大変お世話になりました。
またたくさんの方々に掲示板にもおいでいただき、本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い致します。
では、どうぞ良いお年をお迎え下さい。


2009年12月30日(水) 「パブリック・エネミーズ」




今年最後の鑑賞作(多分)。有名なデリンジャーのお話で、マイケル・マン×ジョニデのコラボなので、取りあえず観ておこう、的な鑑賞前だったのが功を奏したのか、割りと不評な作品ですが、私はそこそこ楽しめました。すみません、年末につき忙しく、あらすじは今回カットね。

まず良いところは、クラシックカーやファッションなど、時代の再現の仕方です。どれも凝って作りこんでいるという風ではなく、サラリと堅実に再現しています。

マンと言うと漢な作風の代名詞的監督ですが、今回マリオン・コティヤールとジョニデ演ずるデリンジャーの恋模様もしっとりと描かれています。美男美女が演じるラブシーンは、男は女を守り、女は性根を据えてついて行く様子は、男は男らしく女は女らしくあった時代のクラシックな風情がよく出ていて、ロマンチックもOKなんだと、マンの意外な手腕を確認出来ます。

狙いは悪徳銀行に定め、味方は絶対見捨てないデリンジャーは、「社会の敵(パブリック・エネミーズ)NO・1」と警察から手配されても、民衆からはヒーロー扱い。その背景には大恐慌時代の鬱屈した国民の感情があったのでしょう。

敵対する警察の指揮を執る捜査官メルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)。出世を目論む上役(ビリー・クラダップ)の駒の一つである悲哀に耐えながら、失態も経験しながら辛抱強くデリンジャーを追い詰めます。でもこの人がなぁ。悪くはないのですが、イマイチ印象に残りません。時代の変遷により、経済ヤクザ的になっていくバックのシンジケートの協力が得られず、デリンジャーが次第に時代から取り残される哀しさはとても浮かび上がるのに、パーヴィスの方は、不本意な捜査をしなければいけない葛藤の描写が薄いです。ここはもっと深く描いた方が、作品にコクが増したと思うのですが。

ケレンのないオーソドックスな銃撃戦、鮮やかな手並みの脱獄、どこでも素顔を晒すデリンジャーの大胆不敵さ、素敵な美男美女のラブシーン。そして死にゆく者に哀悼の念を感じさせる演出と、各プロットでは、マンの男の美学が炸裂していて楽しめるのに、テンポはやや冗長で散漫。あまりよろしくないです。140分と充分に尺はあるのですから、もっとパーヴィスにも焦点を合わすなり、警察内部の悪役も一人に絞るなどした方が、お話はまとまったと思います。ラストに同じ捜査官のウィンステッドにより、とても心に残るシーンがあるのですが、ここも実話なのかもしれませんが、そこは脚色してパーヴィスにその役をふった方が良かった気がします。なので不評の感想もわかります。

それでも私はダンディなジョニデ、エキゾチックなマリオンを筆頭に、役者がそれぞれ好演していたし、流れは楽しめなかったけど演出の細部には、やっぱりマンは上手だなぁとしばしば唸ったので、楽しめました。

でもお客さん少ない!12月29日の朝9:20の回というのを差し引いても、3人で観る映画ではないと思うぞ。こういう作品がそこそこヒットしてこそ、映画興行も安定するんでしょうね。


2009年12月23日(水) 2000年代ベスト10

お友達のつんちゃんに誘われて、やってみました。いや難しい!手帳には観た作品は残してあるものの、2003年くらいから、劇場鑑賞は年間80〜100本ほどに。毎年のベスト10だけでも四苦八苦なのに、もう大変!劇場で鑑賞した作品だけに的を絞り、映画的完成度は度外視して、自分の「大好き」な作品だけ選んでみました。以下、日本公開の年代順です。紺の字はサイトを初めてからの作品なので、リンクで飛べるようになっています。

★ アメリカン・ビューティー(米・2000)
★ インファナル・アフェア(香港・2002)
★ 少林サッカー(香港・2002)
★ アントワン・フィッシャー/君の帰る場所(米・2003)
★ 東京ゴッドファーザーズ(日本・2003)
★ シティ・オブ・ゴッド(ブラジル・2003)
★ オアシス(韓・2004)
★ 嫌われ松子の一生(日本・2006)
★ 善き人のためのソナタ(独・2007)
★ イントゥ・ザ・ワイルド(米・2008)

今の気分でババンと浮かんだ作品数十本を書きだして、悶絶して悩みながら残したのが、この10本。全体的に感動する・解りやすい・元気になれる・面白い、が選んだポイントみたい。みたいって他人事風ですが、選んだ後で気付きました。誰もが入れる作品あり、どちらさん?的作品ありです。

どちらんさん?の代表は、「アントワン・フィッシャー」だと思います。大阪ではシネコン一館だけで上映でしたが、あのデンゼル・ワシントン初監督作品で、彼らしい真面目な熱意と誠実さに溢れる作品です。不幸な生い立ちの主人公が、愛する人と巡り合い、彼女の手助けで辛い過去に立ち向かい、親に会いに行くまでを描いた作品で、天涯孤独だと思い込んでいた主人公が、扉を開けると、たくさんの初めて会う親戚に大歓迎されるシーンは、オーソドックスながら、心が愛で包まれる様な演出で、今でもしっかり覚えています。昨今新聞やネットで、親から虐待される子供たちの事を目にすることがたくさんあり、パソコンの前で思わず涙が出る事もしばしば。そんな子供たちに、大きくなったら是非観て欲しい作品です。

「東京ゴッドファーザーズ」は、狭いテアトル梅田の100席余りのスクリーンの最前列で、当時小5だった三男と観た作品。一見実写でも可能なストーリーですが、細部に目が届くと、絶対実写じゃ無理な作品。実写じゃツッコミの嵐になります。この作品ほどツッコムと人でなしの作品はありません。ちょうど今の時期にぴったりの作品です。二人で笑いまくり、私だけ感動して泣きまくりました。いや息子も感動はしたそうですから!

え〜、一位だけ発表(他は順不同)。「シティ・オブ・ゴッド」です!大好きなフェルナンド・メイレレスの記念すべき長編初監督作品。「神の街」と呼ばれるブラジルのスラムを舞台に、将来は野球選手になりたいです、と同じ感覚で、将来はヤクの売人になりたいデス、と不敵な面構えで応える年端の行かない少年たちの、主に子供時代から青年になりかけまでを描いています。こう書くと湿っぽくて悲惨さばかりが浮き上がるように思うでしょ?それが信じられないほど超面白い!熱気とバイタリティに満ち溢れ、先の読めない展開に行きつく暇もありません。だから一瞬の隙に描くユーモアや、切ないという感情もわからず生きていた彼らの哀しさが浮かぶ時、深い余韻を残します。

公開当初、スタイリッシュだ、いや子供が銃撃戦するなんてけしからんと、色々な感想を拝読しましたが、どれも私的にはしっくりきません。私は子供から思春期までの子たちの凄まじい生命力と、その有り余るバイタリティを生かすも殺すも大人次第だと、監督が政治家や権力のある大人たちの鼻先に突き付けた作品だと感じました。多分生涯の10本でも選ぶ作品です。未見の方は是非どうぞ!

さぁ今年も後少し。2010年からの10年は、どんな作品に巡り合えるのでしょうか?すごーく楽しみです。


2009年12月17日(木) 「ジュリー&ジュリア」

とってもとっても素敵な作品。大好きです。ポスターのメリル・ストリープの屈託のない弾ける笑顔と、今一番お気に入りのエイミー・アダムスが共演のお料理の映画、とだけ頭に入れて観ましたが、ブログを書く事で成長していくヒロイン・ジュリーに自分を重ねて、何度も涙ぐんでしまいました。監督はいつも温かいノーラ・エフロン。

1949年。40過ぎのアメリカ人ジュリア・チャイルド(メリル・ストリープ)は、外交官の夫ポール(スタンリー・トゥッチ)の赴任に伴い、パリで暮らす事に。食べる事、お料理することが大好きな彼女は、フランス料理の名門ル・コルドン・ブルーで修業することに。やがてフランス料理本の出版の夢を抱きます。現代のニューヨークで暮らす30歳のジュリー(エイミー・アダムス)は、夫エリック(クリス・メッシーナ)と共働きです。学生時代は作家を夢見ていた彼女ですが、今は政府機関で911で被害を被った人たちのカウンセリングに当たっています。学生時代の友人たちは軒並み出世していき、取り残されて焦るジュリー。そんな彼女に夫は、料理好きだから料理のブログを書いてみたら?と勧めます。ジュリーが選んだのは、今も愛されるジュリアの料理本。365日で500種類以上の料理を作るというもの。さてジュリーの計画は無事遂行出来るのでしょうか?

まずはメリルの成りきりぶりを得とご覧あれ。ジュリア・チャイルドはテレビ出演も豊富だった、今もアメリカ人に愛される実在の女性です。185cmの大柄な体と甲高い声。天真爛漫な大らかな明るさで、次々と出会う人の心を掴みます。メリルはこの役のため体重も増量。自身とは異なる高い声で話し、のそのそした緩慢な動作をみせるも、ホントにホントに可愛いのです!辣腕編集長、ベテランジャーナリスト、不倫妻、逞しいシングルマザーと、とにかく何を演じても完璧なメリル。ジュリア役も余裕綽々で実に楽しそうに演じて、こちらまで嬉しくなります。観客に喜びと感動を与える、本当に素晴らしい女優さんです。

対するアダムスも大健闘。愛らしい外見に目が行って忘れがちですが、彼女もオスカー候補になった、立派な演技派です。笑って泣いて怒って不貞腐れて、いつもポジティブなジュリアと対照的な、素直に自分の感情を表すジュリーを好演。平凡な等身大のアメリカ女性を絶妙に演じて、アダムスにも非常に共感出来ます。

ジュリアとジュリーの共通点は、共に結婚して安定した家庭を築いていても、自分らしい生き方を模索していた点です。特にジュリアなど、当時裕福な生活を約束された夫がいるのに、「私が何が出来るか探さなきゃ」と思う人は少なかったでしょう。ジュリアは185cmの自分の体にコンプレックスを感じて、それがため婚期が遅れたと思うのです。それが「モテモテだったポールが私に恋をした(ジュリア談)」のですから、その時の女心の嬉しさは、充分察せられます。新居に入れば「ベルサイユ宮殿のようね!」、夫が仕事で成功すれば「私も誇りに思うわ」などなど、劇中彼女の絶え間ない夫への愛と敬意が描かれます。コンプレックスから解放された後の、新しい自分を見つけたかったのだと思いました。

対するジュリーは、平凡ですが誠実な夫もいて、ジュリアほどお金はないけれど、それなりに安定した生活です。周囲の出世を目の当たりにし、夫の出世を望むのではなく、自分が変化しようとする心意気がとても頼もしいです。

そして忘れちゃならない夫たち。妻たちに「君の好きなことは?」(ポール)「ブログを書けば?」(エリック)と、現状を打破して自分探しをしたい妻に、助言をして支える素晴らしさ。思えば二人のテーマである料理は、食べてくれる人がいてこそ、作り甲斐があるものです。「おいしかった」の一言は、何より料理するものを喜ばす言葉です。夫婦喧嘩して意気消沈のジュリーが、「今日の夕食はヨーグルト・・・」とブログに綴るのは、やはり脚本(アン・ロス)も監督も女性だなぁと、その繊細な演出にしみじみと感じ入ります。

ブログに熱が入り過ぎ、ロムしてくれる人ばかりを気にかけ、エリックとの家庭生活がお留守になってしまうジュリーは、喧嘩して初めて夫が自分の支えだったと思い知ります。ジュリーの敬愛するジュリアは、どんな事があっても笑顔を忘れず、夫を大切にしていました。それに比べて自分は・・・と反省するジュリー。読者が増えた、今日の料理の出来は最高だと一喜一憂する中、ブログを綴る事を経て、人間的に大きく成長していくジュリーに、私は自分を重ねます。

映画が大好きで、映画が好きだと言う人と話をすると、段々相手が引いていくのがわかるのね。自分では普通の映画好きだと思っていましたが、どうもマニアック過ぎた様です。ネットに夢中になったのも、映画の掲示板に出会ってから。そこには私の好きな映画忘れられない映画を語る、評論家以上の人たちが、いっぱいいました。

やがて午前中を中心の仕事に変わり、子供たちの手が離れ出したのを機に、夢にまで見た「映画館で映画を見る」ということが、私の日常で復活します。映画を観る事が一番好き、その次が文章を書くことだったので、勢いでサイトまで作っちゃった。

映画をたくさん見るということは、たくさんの種類の人生の哀歓を見るということです。大まかでは幸せだと頭ではわかっているものの、心の隅では日常生活に、細々不満がいっぱいだった私は、たくさんの人生に触れるにつれ、頭だけでは無く心の底から、私は本当に幸せなのだと実感し始めます。何より主婦の身で趣味として、年間100本前後の映画が見られる生活は、夫がちゃんと働いてくれて、子供たちにも大きな問題がないということです。家族にも感謝の念が耐えなく湧くのです。そして映画から受けた感情を文章にするたび、自分の中からストレスが減っていくのがわかりました。一言でいうと、心が豊かになったのです。

今年の秋、「東京グラフィティ」という雑誌からお声がかかり、恋愛映画について書いてみませんか?というお誘いがあり、少し書かせてもらいました。ほんのちょっとの記事でしたが、私には一大事。実は秘かに自分の書いた文章が、投稿ではなく寄稿と言う形で活字になるのが夢でした。勇んで夫に報告したところ、「良かったなあ、お母さん!」と、夫は私の手をがっちり握り、満面の笑みで応えてくれるではないですか。予想以上の喜びぶりに、こちらがびっくり。夫は秘かな私の夢を知っており、「こんなに一生懸命書いてるんやから、いつか実現して欲しいと思っていた」とのこと。とても嬉しかったです。まるでポールやエリックみたい。でも夫は昔はこんな理解のある人ではありませんでした。私が変わると、夫も変わったと言う訳です。

一皮も二皮もむけながら、前進していくジュリー。そんな彼女に対する存命中のジュリアの反応は、意外なものでした。よくよく考えてみたのですが、出版された本は、ジュリアにとって、子供だったのでしょう。ジュリアは子供の出来ない自分に哀しみを覚えていました。それを365日で全部作ってブログに載せる行為は、ジュリーには人生を賭けた行為であっても、ジュリアに取っては、ゲームに思えたのでしょうね。ジュリーの成長に対して、少々天然ながら、ジュリアは一貫して愛深く心豊かでお茶目な、そして負けない人でした。そこには並はずれて大柄に生まれたこと、子供に恵まれなかった事を受け入れ乗り越えてきた、彼女の人生が反映していたのですね。

自分はパン、伴侶はバターの例えが、最初は夫のポールからジュリアへ、次には妻のジュリーから夫のエリックへ、感謝の言葉として述べられます。自分の人生を味わい深く豊かにしてくれたのは、伴侶だということです。臨機応変に攻守交代、支え合いお互いの人生を深く豊かにするのが、伴侶の務めだと、私は解釈しました。

出てくる料理は本当にみんなとってもおいしそう!でもあんなにバターを使っちゃ、すんごい太るわ。ジュリアの本って、和訳あるのかしら?私も作ってみたいです。さぁ皆さん、監督とジュリアとジュリーの愛情がいっぱい詰まったこの作品、どうぞ「ボナペティ!(召し上がれ)」。


2009年12月14日(月) 「2012」




公開されてだいぶ経ちますが、昨日鑑賞です。私事で恐縮ですが、昨日は27回目の結婚記念日。平日ならちょっとごちそうを作ってお茶を濁すところですが、せっかくの日曜日なので、映画を観て外食することにしました。で、公開直後の「パブリック・エネミーズ」にしようかと提案したのですが、夫からは「銀行強盗の話なんか、観たぁない」と却下。「そら『2012』やろ!」というので、観るのを待機しておったわけ。単純な能天気夫婦のワタクシドモ、鑑賞後は「面白かったなぁ!」と、これまた単純に盛り上がったのでした。監督はローランド・エメリッヒ。

2009年、インドで地球が滅亡するかも知れない予兆が発見され、それはアメリカ政府に伝えられます。各国首脳が会議し、極秘に避難用の船が作られますが、ごく一部の金持ちと要人しか乗船出来ない手はずになっていました。果たしてその他の人類は生き残れるのか?

も〜、解りやすいでしょ?取りあえず家庭内では、大きな問題はない我が家ですが、ご多分にもれず、この大不況には被害をこうむっております。なので世知辛い年の瀬に夫婦して、辛気臭い映画なんか観てられるかい!(辛気臭い映画は私一人で観るに限る)と言う訳で、この作品をチョイスしました。エメリッヒの特徴と言うとですね〜

1、アホでもわかるストーリー展開。
2、大味感満点だが、料金に見合うほどくらいには観ている間楽しい。
3、ざるの様にツッコミ満載で脱力しつつも、愛嬌のある脚本。
4、底は浅いが、必ず人間愛が謳われる。
5、上記の事から「エメリッヒって、ええ人やん」が画面から滲み出る

  という感じでしょうか?

今回CGが凄いと言うので、期待しておりましたが、確かに堪能しました。次から次から大がかりな地球崩壊シーンの羅列ですが、真っ向勝負の描き方なので、変な船酔い状態にもならず、わ〜すご〜い、と感動も何にもなく、軽やかに楽しめます。見世物小屋とかアトラクションの世界観ですね。これでもかこれでもかなんですが、観ていて飽きない作りにはなっており、そこには、エメリッヒの「お客様には喜んで頂こう精神」がありました。決してやりたい放題の独りよがりじゃありません(←ここはエンタメ監督として重要なポイントだぞ)。

それが延々二時間危機また危機が続く中、合間合間に、グランドホテル形式で、それぞれの家族の事情や親子愛、夫婦愛、人間愛、ペット愛が描かれます。この辺りの小技は結構上手くてね、キウェテル・イジョフォー扮する科学者が、父親に電話する会話の内容なんか、ウルウルしました。他にも離婚した売れない小説家のジョン・キューザックが、元妻アマンダ・ピートの今の恋人と力を合わせ、愛する彼女や子供たちを守る姿なんか、変にリアリティを出す為に諍いを起こされるより、観ていてとっても気分が良かったです。

いやな奴や悪役はいますが、基本的に悪人は出てきません。オリバー・ブラット扮する政府の要人は、職務に忠実で冷徹に仕事を推し進めますが、決して悪い人ではないです。ちょっと冷たいけどね。切れ者で仕事は出来る人なんですね。しかし土壇場でイジョフォー科学者の人間の善意に訴えかける演説の前には、仕事出来るのがなんぼのもんやねん!というくらいに、地に落ちてしまいます。一言でいうと、ブラッド要人は「人徳」がないのですね。人徳とはなんぞや?愛なんですよ、愛。なのでイジョフォー科学者の発言がこの状況下で如何に不適切でも、発言に人徳を感じるので許せるし、その後のそんな訳あるかい!のトンデモな展開にも、愛を感じて許せてしまうのですね。うんうん。

最後の皆さん方の拍手喝采の様子など、あんたのためにこんな状況になったんやぞ、などど誰も言わず、何てみんないい人なんだ、人間はこれくらい器が大きいのが理想だと思いませんか?と、エメリッヒに囁かれている気がしますよ。

エメリッヒは多分、一生このスタンスで仕事するんでしょうね。彼を嫌う人の感想も解ります。そういう人は、もうエメリッヒ作品は観ない方がよろしいですね。一般大衆には支持されている模様で、公開後だいぶ経つのに、劇場は結構満員でした。これはこれで、立派な娯楽作だと思います。

気分よく劇場を後にして、その後は夫婦でウィンドーショッピング、そしてお寿司を食べて喫茶店でお茶して、息子にお土産を買って帰宅。我が家の財政の厳しさにぜいぜい言いつつ、雨風しのげる家があり、夫と息子二人は正社員、私もパートながら有職の身、三男は学校へはクラブ活動だけしに行っているようなもんですが、非行に走らず不登校にもならず、いじめもせずされず、天真爛漫(過ぎるのが困りもんだが)に学校に通っていて、何より家族全員心身ともに健康です。そして夫婦で映画を観て外食するくらいの、ちょっぴりの余裕もあるじゃないですか。今年ほど、ああ幸せだなと感じた結婚記念日はありません。お父さん(夫)、これからもよろしくね。あぁ、エメリッヒにして良かった。


2009年12月12日(土) 「カールじいさんの空飛ぶ家」(2D・吹替え版)



3D・字幕版もあるけれど、我が愛しのラインシネマには3D装置なし。字幕版も夜8時だけ。お金は出来るだけ地元で落とす主義なので、こちらの選択に。さすがは安心印のピクサー、充分堪能致しました。

仲の良い老夫婦のカールとエリー。しかしエリーに先立たれ、カールはすっかり頑固者に。家の立ち退きを巡って小競り合いがあり、とうとうカールは老人ホームに入居するはめに。しかし一計を案じたカールは、家にたくさんの風船をつけ、果たせなかったエリーとの約束を果たすべく、伝説のパラダイス・フォールを目指し、家ごと空に飛ばしてしまいます。しかし近所の少年、ラッセルが玄関に居るのを知らず、彼も道連れの冒険旅行となってしまいます。

前評判通り、冒頭10分間のカールとエリーの出会いから別れまでのパートが素晴らしい。シャイで大人しい男の子と、お転婆でよく喋るキュートな女の子が、「冒険」を通じて知り合い結婚し、家を建てお金を貯めて冒険に出ようとすると、出費が重なり果たせず。颯爽として元気いっぱいの妻は足腰が弱り、病魔に侵される。老いても仲良く暮らしていた夫婦だったのに、最愛の妻に先立たれ、夫には味気ない日々が残される・・・。

本当に本当に極々平凡な夫婦の人生を描いているだけなのに、観ているうちに笑いが微笑みに代わり、いつしか涙に変わります。冒頭でこんなに泣かされるとは思いませんでした。数奇ではない、平凡な暮らしに込められた人生の哀歓だからこそ、万人が自分に置き換えて共感出来るのだと思います。どこかでこんなの観たなあと思いましたが、「クレヨンしんちゃん・大人帝国の野望」でした。ひろしの人生が回想されるシーンです。後者はまだまだ現役の人の回想でしたが、こちらは人生終盤まで描いているので、老いる事の意味も強く感じさせます。

空飛ぶの家の様子は、壮観で胸がわくわくしました。本当に子供の様な気持ちで観られます。ここは3Dだと尚更見所になると思います。不承不承のラッセルの同行でしたが、途中から犬と鳥まで加わり、桃太郎みたいだと何だかクスクス。しかしお伴達にも諸般色々事情ありで、ラッセルの背景など、子供を持つ人なら必ず胸が締め付けられるでしょう。

この子がとってもいいんです。太っちょで愛嬌があり、お喋り。、頭はあんまり良さそうではないけど、とっても素直で優しさと心の強さを持っています。そして命からがらの出来事が続いても、必ず「面白かった!」と、満面の笑みで応えます。これは幼い頃のエリーそっくりです。それを一番感じていたのは、私はカールだったと思います。

冒険中のある出会いから、危機また危機の「インディ・ジョーンズ」並みの大冒険活劇が始まります。この辺もアニメの特性を生かし、あり得ない場面もユーモアを交えながら一大スペクタクルが繰り広げられます。充分手に汗握る展開でした。

何度も空飛ぶ我が家に、「エリー」と語りかけるカール。家や写真、使い慣れた家具など、カールにとっては、全てがエリーなのでしょう。これが追憶というものなんだなぁと思います。

そんな前を観ない、後ろしか観なかったカールが、ラッセルの為全てを捨て去る瞬間はとても感動的です。私くらいの年になると、老人が過去を捨て去るのが如何に困難か、とても理解出来るのです。明日に向かって生きるのはもっと困難。事実もう一人出てくる老人は、過去の栄光にすがり、その栄光を汚すものの挽回にだけ生きています。過去にだけ向いて生きている。 ラッセルは子供。明日そのものです。自分の過去=全てを投げ打ってまでラッセルを助けようとするカールに、堪らず号泣してしまいました。

ラッセルが吐露する「どうでもいい事って、何故だか覚えているんだよね」というセリフ。そのどうでもいい「楽しかった思い出」の積み重ねが、どんなに人生の支えになるか、老人のカールには痛いほどわかっていたでしょう。エリー似のラッセルによって、元の優しく温厚な人柄に戻ったカール。カールがラッセルの「どうでもいい楽しい思いで」を、共に作る様子をフォトしたエンディングが素晴らしい。それはカールの老境を支える事でもあるでしょう。

エリーのアルバムにしたためた、カールへの遺言が忘れられません。私も夫より先に亡くなりそうだったら、絶対書いておかなくちゃ。お仕着せがましさもあざとさもない、そして解り易い、ピクサーが描く人生哲学でした。


2009年12月06日(日) 「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」

いや〜この作品はね、会社勤めした事がある人なら、誰でも思い当たり、頷きながら笑ったり怒ったり、胸にジーンとくるんじゃないかと思います。監督は「キサラギ」の、佐藤祐市。

高校時代のいじめが原因で引きこもりとなった大根田真男(マ男・小池徹平)。息子が自立するのを願っていた母(朝加真由美)が交通事故で亡くなり、真男は発奮。高校中退と8年間のニート生活のため、次々と不採用になるも、IT企業黒井システムに採用されます。一見温厚そうな社長(森本レオ)に安堵するマ男でしたが、社員がクセモノばかりな上、初日からあり得ない量の仕事をさせられたり、徹夜でサービス残業は当たり前、社員の出入りが激しい”ブラック”会社だったのです。

社長の前ではヘラヘラ、実は傲慢で威張り散らすリーダー(品川祐)、リーダーの腰ぎんちゃくで、仕事は出来ないのに要領だけいい井出(武田鉄洋)、この二人にあり得ない量の仕事をさせられ続けて、奴隷のようになってしまって、挙動不審の上原(中村靖日)、社長の愛人でお局の瀬古(千葉雅子)、一見普通の人、実は愛だけに生きる非常識人の中西(マイコ)、会社を乗っ取るため、あえてブラック会社の黒井システムに入社した木村(田中圭)。そして会社のオアシス、人格者の藤田(田辺誠一)。と、マ男を含めて、全員キャラが総立ち。その一人ひとりが、デフォルメはしているものの、いるいるこんな人!と、サラリーマンなら絶対共感出来るはずです。

デスマ(死の行進)と呼ばれる連夜の徹夜、上司や先輩による屈辱的な行為、社内恋愛、学歴差別、リストラなど、現実的な会社の縮図を盛り込んでします。真面目に描けば鬱になってしまうような暗ーい出来ごとばっかりなのですが、ユーモアにくるんでライトに仕上げているので、現実の自分を思い出し、涙してしまう・・・なーんてことは、ありません。

数々の困難を乗り越え、ひと回りもふた回りも成長したはずのマ男が、何故「限界かもしれない」と思ったか?これは会社勤めの人なら、100%同意するはず。仕事にはこれが一番大事と言っても、過言ではないです。会社は友達を作りに行くところではありません。しかしどんな仕事だって、組織にいれば、自分ひとりで仕事は出来ないはず。仕事においての人間関係は、「助け合い精神」に尽きるのじゃないかなぁと、観ていてつくづく思います。

その折れた気持ちを、マ男はどうやって建て直したか?仕事するのは何のためか?ニートから脱出した彼の叫びは、素直に胸を打ちました。でもね、リーダーや井出が、この作品では途中からちょっと変身しますが、現実の腐ってる奴は腐ったままですから、希望は抱かないように。

さて私が何故働くか?それは家計の足しです。父ちゃんの給料だけじゃ、映画に行くにも気を使うわけ。事実子供三人が学校行きだったときなんか、働いてるのに自分に回るお金なんか、全然なかったもん。夫の給料が今の倍とは言わん、1.5倍とも言わん、1.3倍くらいになったら、仕事辞めてるかもなぁ・・・とも思いましたが、やっぱり仕事しているでしょう。

辛い思いしんどい思いetc。しかし振り返ってみれば、その時は辛いだけだったことが、確実に自分を成長させているのに気が付くからです。思えば短大を出てすぐ結婚して、ちゃんとした職歴も資格もなく年もいった私が、今の就職難のご時世で、パートとは言え切れ目なく仕事をゲットしているのは、奇跡に近い事です。多分前世の功徳は全て、これに使われている気がして、老後が恐ろしいです。でも嬉しい事にこの頃では、社会人の息子たちに仕事の相談をしたりして、会話も大人同士の内容になってきました。夫が高給取りなら、私ごとき無能な主婦は、ずっと座敷豚だったと思うので、そう思うと「ちょっと足りない夫の給料」(うぅぅぅ・・苦しい表現)にも、感謝ってとこでしょうか?

某SNSで仕事に関するストレスや、転職のコミュに入っていますが、ロムしていると今のご時世、皆さん頭が下がるほど頑張っておられます。そこで私も励まされましたが、そういう方たちが、明日も頑張ろうと思える、コーヒーブレイク的になる作品だと思います。


2009年12月02日(水) 「ニュームーン/トワイライト・サーガ」




これを観ずして、年が越せるか?日本全国の婦女子の皆さま、待望の「トワイライト〜初恋」の続編でございます。今回監督が「アバウト・ア・ボーイ」のクリス・ワイツの変更に伴い、「あなただけよ」の純愛から、現実的な三角関係なども盛り込んでおります。前作ほどではありませんが、今回もまずまず満足致しました。

18歳の誕生日だというのに、ベラ(クリスティン・スチュワート)は絶望の真っただ中。恋人のヴァンパイア・エドワード(ロバート・パティンソン)は永遠の17歳だというのに、自分はこれから毎年年をとって行くのです。誕生日パーティーに、ふとしたはずみで流血してしまったベラは、エドワードの一族に波紋を投げかけてしまいます。熟考の末、ベラに別れを告げるエドワード。嘆き悲しむベラ。そんなベラの唯一の心の慰めは、幼馴染のジェイコブ(テイラー・ロートナー)だけでした。

へぇ〜、アメリカの若い子も、女は若い方がいいと思ってんのね〜と、前作同様の古式ゆかしい男女感に感慨を抱きました。この若さで年齢を気にしなくちゃいけないベラの憂鬱に同情しつつ、キスシーンがいっぱいなので、エドワード君、この半年間、鍛錬を積んでキスしても血を吸いたい衝動を抑えることが出来るようになった模様。

エドワードに失恋してからのベラの壊れっぷりが凄まじいです。最初は、うんうん、「あなたと別れるくらいなら、私死ぬわ!」の人だったんですもの、哀しいわよね〜、女の子はこれくらい純情でなくっちゃと思ったんですが・・・。

廃人のようにうつろな眼差し、ろくろく食事も取らず、友人たちとの付き合いもシャットアウト、悪夢に苛まれ毎夜大声を上げ父親を起こし、果ては危険な目に遭うとエドワードの幻影が見えるようになるや、進んで危険な目に遭うよう自分を仕向ける・・・。

ハッキリ言って、メンヘラです。

お父さんがすっかり手を焼いて、「フロリダのお母さんの所へ行きなさい」という始末。男に振られてメンヘラになる娘を観るのは、男親として耐えられませんわね。お父さん可哀想。しかしメンヘラ娘の底力というか、男を呼び寄せる吸引力や凄いものがありましてね、「守ってちょうだい」オーラが発散しているのでしょうか、元々ベラに気があった同級生やジェイコブなど、次々陥落。しかも本人に悪意はないのでしょうが、思わせぶりだったり、「あなたを失いたくないの。だからお友達でいましょう」などの小悪魔ぶりなのですが、本人は全く自覚なし。男の子たちはいいように扱われるのに、ベラ命なわけ。

男に振られたのを癒すのは、男しかいない、ということで、フラッグが立ったのは前作からぐんと精悍でたくましくなったジェイコブ君。憂いと誤解されるメンヘラで男にモテまくり、女友達は現実の子たちを大事にせず、独り言のように、受け付けてはもらえないエドワードの姉アリスに、メールをしたためるベラ。現実にこんな子がいたら、女の敵ですよ。しかし!ベラが心を寄せるジェイコブにも、大きな秘密があったのですね。それもエドワードに匹敵するような秘密が。前作を覚えている方ならピンとくる訳ですが、知らなかったとはいえ、こういうゲテモノばかりに心奪われるとは、ベラさん選球眼悪過ぎです、とは、相手がエドワードとジェイコブなので、思いませんが。ワタクシのようなおばさんはこのように冷静に観ますが、お若い婦女子は、悲劇のスパイラルにはまるベラに、感情移入しまくることでしょう。でも冷静にこのシリーズを観てしまうって、かなり哀しいのよ〜。




今回ロバート・パティンソンは、最初と最後で頑張ってくれますが、中抜きなので、彼のファンの私は、ちょっと物足らず。その代わり憔悴しきったベラとお話を引っ張るのは、テイラー・ロートナーです。メカに強い男の子らしさと、童顔で爽やかな笑顔とは対照的なたくましい肢体をみせまくり、今回新たなと「トワイライト」ファン獲得に貢献したことでしょう。




「ヴァンパイアのお国」みたいなのが出てきて、そのエライさんに、子役から美女に絶賛進化中との噂が高い、ダコタ・ファニングが特別出演。しかし、ゴスメイク@ヴァンパイア仕様なので、進化の程は、あまり解りませんでした。

三角関係はどうなるか?それは映画を観てのお楽しみ。まずまずでしたが、正直私はベラのメンヘラぶりには、途中でイライラ。まぁそれだけクリスティンが上手かったってことです。青春ファンタジーロマンスからは大道外れず、今回もまとまった出来でした。次の作品では、「〜初恋〜」くらい、またうっとりさせて欲しいです。


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