ケイケイの映画日記
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2009年10月29日(木) 「パイレーツ・ロック」

わ〜、面白い!正確に言うと懐かしいかな?作品の時代(1966年)は、私はまだ幼稚園くらいで、私がラジオっ子になるには7〜8年後くらいになりますが、それでも時間きっかりにいずまい正して、ラジオの前に座った中高生時代が、目の前に現れたような気になります。洋楽が好きだった45歳前後以上の人は、必見の作品です。監督は「ラブ・アクチュアリー」のリチャード・カーティス。

民放局がなかった1966年のイギリス。BBSラジオ局はロック・ポップスを一日45分間しか流しませんでした。不満が国民の間に渦巻いていましたが、それを救ったのが24時間ロック・ポップばかりを流す、イギリス政府の管轄の及ばぬ海上に浮かぶ船のラジオ局”ラジオ・ロック”でした。ある日高校を中退になったカール(トム・スターリッジ)が、彼の母親とラジオ・ロックの経営者クエンティン(ビル・ナイ)が旧知の仲ということで、船に預けられることに。伯爵(フィリップ・シーモア・ホフマン)初め、個性的なDJや裏方たちに囲まれた、自由な生活を満喫するカール。しかし政府はロックは不道徳と決めつける大臣(ケネス・ブラナー)は、ラジオ・ロックを潰そうと懸命になっていました。

とにかく楽しいのなんの。本当に若い時を思い出しちゃう。実際はオープニングでかかったキンクスの「all day and all of the night」だって、私が知ったのはストングラーズがカバーしたのでしたが、キンクスのカバーつったら、ヴァン・ヘイレンの「 you really got me」は最高だったよなぁ〜と、スクリーンを観ながら、果てしなく芋づる式に青春時代が蘇るのね。知ってる曲知らない曲入り混ぜながら、上映中ずーとロックとポップスの洪水でゴキゲンな気分です。

今では遠く日本の子供たちの教科書にビートルズが載る時代ですが、確かに昔はロックというと、アナーキーで不良性感度満点、ドラッグにアルコールにグルーピーのお姉ちゃんとの乱交パーティ、ってな具合で、大英帝国のお偉いさんたちには、目をつけられても仕方無かったかもなぁ。とこれは私のような年寄りならわかることで、この辺は映画的には、当時を知らない若い人にはやや解りづらかったかも?でも不問

キャラの立っている個性豊かなDJたちがすごくいいです。髭面メタボながら、ワイルドな大人の男の余裕を感じさせるホフマンが私は一番好きだなぁ。紫のスーツ着て、キザで濃厚なフェロモンをまき散らす出戻りDJリス・エヴァンスとの、海上変形チキンレースもとっても良かった。男が腰ぬけと言われて、引き下がっちゃいけません。女も見てないのに意地張って、何て可愛いんでしょ。

可愛いと言えば、とにかく船上生活は下ネタまみれ。未経験のカールの初体験に総出で協力するとこなんかとっても楽しそうで、男の子の初体験を描くと、明るくっていいですよねぇ。でもそれだけじゃあーない!音楽に対しての熱い思いも描けていて、やんちゃなだけじゃない、ロックな男の心意気もちゃんと描けています。

間に挿入される老若のリスナーの描き方も、これまた楽しくって。私もあんなだったなぁと思いだす場面多し。DJに憧れる様子もとっても理解出来る。今は花形DJっているんでしょうか?私は中高、とにかく渋谷陽一が大好きで大好きで大好きで。同時代に大貫憲章や伊藤正則もいましたが、お茶目でバカっぽくやんちゃな彼らより、渋谷陽一はこの二人と同じ年とは思えぬ落ち着きとインテリジェンスがあってね、(今も昔はインテリ男に弱い)今じゃネットで簡単に顔も拝めるけど、昔はそういう訳にもいかず、渋谷陽一はアウストラロピテクスに似ているという噂が流れたこともありますが、北京原人だって、渋谷陽一ならいいわ!ってなもんですよ。創刊直後の「『ロッキン・オン』下さい」と本屋に行って、しばらくして手渡されたのが『ロッキン・F』でがっくりきたり、対していいとも思わないパリス(ヒルトンじゃないよ)のアルバム買ったり、本当はディープ・パープルの方が好きだったのに、必死でツェッペリンが上なのだと思いこもうとしたり(でも今は断然ツェッペリンがすごいと思うのだから、不思議)、本当に渋谷陽一命でした。だから映画が「タイタニック」化したその後の展開は、本当にものすごくわかる。ある意味リスナーとDJの、幸せな時代だったのでしょうね。

流れる音楽は、ロックというよりポップスが多かったかな?版権の関係でビートルズやツェッペリンはダメだと思っていましたが、クリームやヴァニラ・ファッジなんかは期待していたけど、流れなかったなぁ。でも不問。私の青春時代は、映画から10年後くらいですが、当時はいわゆる新御三家と言われる、郷ひろみや西条秀樹が人気で、その次がユーミンなどのニューミュージックで、ハードロック組は少数派でした。軽音楽部に走らず、ひたすら聞き手にまわる私のような子は地味目の子が多かったような。特にプログレ好きは哲学的文学少女が多かったです。だから「政治家って何にもわかってないんだよ」という劇中のセリフは、今も昔もいっしょなのよね。

この作品、正直言って、映画的には一味足りないような気がしないでもないんですが、でも不問。若い頃は復活のGSカーニバルに熱狂する私より年長の女性たちを見て、何が面白いんだろう?と、皮肉っぽく観ていた私ですが、GSがロックに変わっただけで、私も全くいっしょ。笑って下さいまし。青春時代洋楽まみれで、私は幸せだったんだなぁと、つくづく思わせてくれた作品です。さぁ今からクィーン聞こうっと!


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