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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2004年03月31日(水) --

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☆春はロマンスの季節?

春は、別れと出会いの季節。  
別れの切なさと同時に、新しいことが始まる、新鮮な緊張感。  でも、わくわくする間もなく、新しい仕事に追われています。  せめて、小説の中だけでも、新しい出会いにドキドキしてみたくて、  ロマンス小説を開いています。

◎ 上質のロマンス小説といえば…

ロザムンド・ピルチャーについて、あれこれ調べていて、ピルチャ  ーがかつて、JANE FRASER名義でロマンス小説を書いていること、ハー  レイクイン・ロマンスにも何冊か作品を残していることを知りました。     
[ Harlequin Romances ]       
A Long Way From Home       
The Keeper's House       
Young Bar       
A Day Like Spring

ピルチャーの本には、20歳前後の若い女性を主人公にした、ほほえ  ましい物語がいくつかあります。どれも最後は容姿や社会的地位では  なく、心が惹かれあう、内面の豊かな青年と結ばれる、気持ちの良い  上質のロマンス小説となっています。      
『メリーゴーラウンド』(東京創元社)      
『もうひとつの景色』(青山出版社)      
『夏の終わりに』(青山出版社)e.t.c.

また、最近のピルチャーの長編小説では、60〜70代の女性が主人公  で、年齢に関係なく、人を愛するということ、愛がもたらす人生の豊  かさがたっぷりと描かれています。「ロマンス」がテーマではないけ  れど、それでも、優れたロマンス小説の一面があると思います。   
『シェルシーカーズ』(朔北社)   
『九月に』(朔北社)   
『冬至まで』(日向房)

◎ 時をも越える、ロマンス小説…

 ロマンス小説というと、私は「タイムトリップ(スリップ)」物の  ロマンス小説の大ファンです。「時」を越える愛というのは、究極の  ラブロマンスでしょう?タイムトリップやタイムスリップで、過去か  ら王子様がやってくるなんて、強烈にロマンティック。きっかけは  『時のかなたの恋人』(ジュード・デヴロー/新潮文庫)ですが、最  近は、ちょっと間口が広がってきて、「時を越える」ロマンス物であ  れば、タイムトリップ物かどうかに関わらず、チェックするようにな  りました。

ヘザー・グレアムの『四世紀の恋人』(MIRA文庫)は、タイトルに  ピピッと反応して、ネットで注文しました。実際は、「タイムトリッ  プ」ではなく、「生まれ変わり」系のロマンスでした。   
※四世紀前のイギリスで、魔女に仕立てられ、火刑に処せられた女    性。現代のNYの宝石デザイナーのジリアン。17世紀の英国と現代    NY、過去と現在の愛が交錯する、時空を超えたロマンティックサ    スペンス。   
ロマンス小説は、設定がお粗末だったり、訳がこなれてなくて、変  な日本語だったりと、当たりはずれの大きいジャンルだと思います。  でも、この『四世紀の恋人』は、意外と物語やミステリの要素もちゃ  んとしていて、面白く、さには良心的な本とまで、思ったほどでし  た。

今読みかけのノーラ・ロバーツの『愛は時をこえて』(扶桑社ロマ  ンス)も、タイムトリップ物ではないけれど、『百年の時を超えて交  錯する、ミステリアスな愛の物語』ということなので、期待して読ん  でいます。

その他にも「時を越える」ロマンス小説を探してみると、テリー・  ヘリントンの『フラッシュバック』(MIRA文庫)はまさに、「タイム  トリップ」物の王道と言えそうです。   ※ヒロインがタイムトラベルによって、「現在」の自分が知らなか    った「過去」の恋人のもとへ。時空を越えたセアラのせつない恋    が始まる。

ピルチャーの小説世界のロマンスには、あたたかな気持ちになると  同時に、現実の人生についてじっくり考えさせられます。また反対に、  「時を越える」ロマンス小説は、非現実であるがゆえに、ロマンティ  ックな気分にどっぷり浸り、しばしの現実逃避が楽しめます。

◎ その他のタイムトリップ(スリップ)ロマンス
 
2003年03月28日(金)『時の旅人クレア』(その3)  
2003年03月27日(木)『時の旅人クレア』(その2)  
2003年03月26日(水)『時の旅人クレア』(その1)  
2001年02月14日(水)☆ 恋人は、「時」の彼方から   
☆ タイムスリップ・ロマンス特集 

(シィアル)

2003年03月31日(月) 「南の国へおもちゃの旅」

お天気猫や

-- 2004年03月29日(月) --

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『夜明けのフーガ』

日本では1987年にハーレクイン版で登場した作品の文庫化。

セラピストのディオンヌと、 トラウマで歩けなくなった患者、ブレイクの ラブロマンス。

リンダはトラウマが愛の障害になる男女を 好んで描くが、今回のように犯罪事件抜きで 互いの「愛」だけがテーマ、というのは珍しいかも。

評判のセラピストとして多忙な日々を送るディオンヌは、 休暇先のビーチで、ある患者を診てほしいと依頼される。 休暇を切り上げて乗り込んで行った屋敷には、 かつての栄光が見るかげもなく衰えた 冒険家の青年、ブレイクがいた。 一切を拒絶し、死にかけているブレイクに、 ディオンヌは闘志を燃やす。 ブレイクを歩かせることが、 ディオンヌに与えられた使命となった。

セラピストと患者の擬似恋愛と かけがえのない愛に揺れながら、 患者だったはずのブレイクによって、 ディオンヌはみずからのトラウマを克服してゆく。

ブレイクの妹で兄思いのセリーナの役どころも、 リンダらしい微妙さだ。

先週の『カムフラージュ』から続けて、 最も弱った絶望的な状態の男性主人公が ヒロインによって元気になっていくというストーリー。 『カムフラージュ』では体が、 今回は心と体が、ともに動かない。 ヒロインの側がそういう状態に置かれる話も リンダは描いているのだろうか? まあ、ショックで一時的に喪失状態になるヒロインは 多くて、いつもしっかりと男性にサポートされている のだけれど。 (マーズ)


『夜明けのフーガ』著者:リンダ・ハワード / 訳:野沢まさみ / 出版社:MIRA文庫2004

2003年03月29日(土) 「いちばん美しいクモの巣」
2002年03月29日(金) 『グリーン・ノウのお客さま』
2001年03月29日(木) 『妖都』 

お天気猫や

-- 2004年03月26日(金) --

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『私が1番好きな絵本(3)』

シィアル文庫より借り出し(笑)

副題は「海外の絵本150選」となっている。 セレクトは上々、どれをとっても 目にも耳にも心にも おいしいことうけあい。 選んだ人たちとセレクト・テーマの妙も楽しめる 絵本ガイド。

名作とわかっていても、まだ読む機会の なかった絵本もたくさん紹介されていて、 わくわくさせられる。

このガイドのすてきなところは、 選者のこだわったテーマごとに「絵本世界」を縦横に 網羅して本を並べ、しかも ダブリがないという点。 口絵以外のページは1色刷りだから、 決して華やかではない。

でも、とても豊かな気持ちにさせられる。 実際に、ここに紹介された絵本を読むのと 同じくらい、というのは褒めことばになるだろうか。

執筆の13人は編集者や書店関係の方が多く、 そういう意味でも内容が深まっている。 (ちなみに1巻目は、日本の絵本特集)

今回のテーマは、 「くすっと笑える絵本」 「子ども力にめざめる絵本」 「クリスマスに贈りたい本」 などなどなど。 特に最後のクリスマスでは、 トリがティム・バートンの 『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』で、 急所にチョコ入りの雪つぶて、って感じだった。 (マーズ)


『私が1番好きな絵本(3)』海外の絵本150選 / 出版社:中央公論新社2002

2003年03月26日(水) 「時の旅人クレア」(その1)

お天気猫や

-- 2004年03月25日(木) --

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ロザムンド・ピルチャー(1)

☆あたたかな昂揚感を求めて

◆ ロザムンド・ピルチャーとの出会い

仕事に疲れて落ち込んでいる時、私が手に取る本、 それがロザムンド・ピルチャー。 つきあいはまだ浅く、一昨年図書館の棚で何気なく手に触れた 『ロザムンドおばさんのお茶の時間』がきっかけとなった。 どれも他愛のない短編だけれど、 ごくごく普通の人たちの日常の中の心のふれあい。 特別素敵なことはおこらなくても、 私たちの身近にも必ずある小さな幸せに気づかせてくれる。 ピルチャーの物語は、早春の温もり。 まだ、本格的な春はやってこないけれど、 雪の間から、春が垣間見えてくる。 時々、寒さがぶり返すことはあっても、 その寒さの向こうにあるものを、 私たちは知っている。 必ずしも、今が幸せでなくても、 その向こうで私たちを待っているはずのものを、 ピルチャーはそっと、教えてくれている。

ピルチャーの作品は、ほとんど読み終えたけれど、 私にとって、彼女の作品は、『シェルシーカーズ』以前と、 それ以後とでは、大きく印象が違う。  ・短編集  ・『シェルシーカーズ』以前の作品  ・『シェルシーカーズ』以後の作品 私の中では、ピルチャーの作品は大きく、三分類できる。 実際には、ピルチャーの作品には、JANE FRASER 名義でかかれた ロマンス小説もあるから、厳密にはもっと細かな分類ができるのだろうけれど。 短編集や『シェルシーカーズ』以前の作品も好きだけど、 やはり、『シェルシーカーズ』以後の人生の円熟味を感じさせられる作品は 私にとっては特に大切な本だ。 「老い」ても、実りあるものとして人生は続くし、 自分の人生をいかに生きるかということを何の気負いも無く、さらりと描いている。 だから、私は常に傍らに、ピルチャーの本を置いておきたいと思うのだ。 (シィアル)

◆ ロザムンド・ピルチャー 著作リスト

[長編]  
Sleeping Tiger (1967)  
Another View (1969).....『もうひとつの景色』  
The End Of Summer (1971).....『夏の終わりに』  
Snow In April (1972).....『スコットランドの早春』  
The Empty House (1973).....『空っぽの家』  
The Day Of The Storm (1975).....『コーンウォールの嵐』  
Under Gemini (1977).....『双子座の星のもとに』  
Wild Mountain Thyme (1978).....『野の花のように』  
The Carousel (1982).....『メリーゴーラウンド』  
Voices In Summer (1984).....『コーンワルの夏』  
The Shell Seekers (1987).....『シェルシーカーズ』  
September (1990).....『九月に』  
Coming Home (1995).....『帰郷』  
Winter Solstice (2000).....『冬至まで』

[短編集]  
The Blue Bedroom (1985)  
Flowers In The Rain (1991)       
.....『ロザムンドおばさんの贈り物』         
『ロザムンドおばさんのお茶の時間』         
『ロザムンドおばさんの花束』      
      
※『イギリス田園の小さな物語』

[JANE FRASER 名義]  
Half-way to the Moon (1949)  
The Brown Fields (1951)  
Dangerous Intruder (1951)  
Dear Tom (1954)  
Bridge of Corvie (1956)  
A Family Affair (1958)  
A Long Way From Home (1963)  
The Keeper's House (1963)  
Young Bar (1965)  
A Day Like Spring (1968)

[その他]  
The World of Rosamunde Pilcher (1996)  
Christmas With Rosamunde Pilcher (1998)

2003年03月25日(火) 「木馬のぼうけん旅行」

お天気猫や

-- 2004年03月24日(水) --

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『カムフラージュ』

疲れて遅く起きた朝に、動かない身体で ダーッと1時間、我が人生を追いやって読むなら、 このロマンス。

本国での発表は1988、昨年文庫に再録された短めの 作品だが、内容はしっかりしていて、 ロマンスだけでなく、リンダお得意の ハードな特殊任務の世界も味わえる。

なぜか、見返しの主要登場人物リストに、 男性主人公の名が見えず、あれ?と いぶかっていたら、読むうちに納得した。

ヒロインのジェイが、勤め先をクビになった日に FBIの訪問を受け、連れて行かれた軍の病院。 そこには、包帯に巻かれた重傷者が横たわっており、 それが元夫のスティーブかどうかの確認を迫られる。

その患者が実際は誰なのか、というのが ストーリーの鍵でもあるのだから、これは公表できない。 ・・・ということで、主人公はこの患者である。

あの、アーロン・ソーキンのドラマ『ザ・ホワイトハウス2』で バートレット大統領が、対外的な裏工作の決断に、 「私には200人の、身寄りのない男達がいる。私は何を迷う」 というような科白があったけれど、 その200人の一人が、リンダのロマンスに抜擢されたわけだ。

最初はその患者が重要だとは思っていなかったので こんな状態なのに大丈夫なのだろうか?と心配したりもしたが、 まあ、そこはそれ、リンダの強力な熱によって 事態はしっかり、甘くハードに決着する。

前半は病室、後半は雪のロッヂが舞台。 原題は『ホワイト・ライズ(白い嘘)』。 そう、包帯も雪も、白い。「疑いなし」も、白。

読むのも面白いけれど、これは描くほうも相当 ヒートアップしたことだろう、と満足。 (マーズ)


『カムフラージュ』著者:リンダ・ハワード / 訳:中原聡美 / 出版社:MIRA文庫2003

2003年03月24日(月) 「魔法使いハウルと火の悪魔」

お天気猫や

-- 2004年03月23日(火) --

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『ぬいぐるみ団オドキンズ』

クーンツが初めて書いた児童書。

魔法のおもちゃ職人ホドキンズさんが作った 善なるぬいぐるみ、「オドキンズ」が おじさんの死後、悪いおもちゃと悪い存在の魔手から、 おもちゃ工房を守るために戦う。 そしてもちろん、世界の良い子を守るために。

善と悪がくっきりはっきりしていて、 悪いものはあくまで悪く、決してどっちつかずには ならない。迷わない。 だから終盤まぎわまではどちらかというと、 「大人が子どものために書いた」お話で、 「大人のなかの子ども」にはどうなのだろう、と ラストシーンに期待をかけて読んでいた。

というのも、『ウォッチャーズ』での モンスターの描写に、作家として次の展開をとてつもなく 期待させるものがあったから。 今でも、あれはどちらかというと、一部のラブシーンを 除けば、あれこそ児童書だと思っているが。

それで、ラストシーンは? 大丈夫でした、などというと生意気だけど、 ちゃんと児童書ファンを満足させてくれると思う。 巻末に訳者が書いているように、

読書家のあなたなら、 「ルーマー・ゴッデンの『人形の家』や ラッセル・ホーバンの『親子ネズミの冒険』、 そしてリチャード・ケネディの『ふしぎをのせたアリエル号』といった、 現代の人形ファンタジーの代表作を思いついたことでしょう。(引用)

この三作、付け加えるなら、マージェリィ・ウィリアムズの 『ビロードうさぎ』を愛するあなた。 これらをこよなく愛するなら、大丈夫、 オドキンズのフニャ腹は、 あなたをしっかりハグしてくれるはず。 (マーズ)


『ぬいぐるみ団オドキンズ』著者:ディーン・R・クーンツ / 訳:風間賢二 / 出版社:早川書房2002

お天気猫や

-- 2004年03月17日(水) --

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夢の図書館 春のお休み

いつも訪ねてくださる皆さま、ありがとうございます。
お彼岸がくるとなぜかお休みをいただいている
夢の図書館ですが、恒例の春休みとなりました。
再開は、23日(火)の予定です。
桜も咲いてますね、きっと。
from 猫やの三魔女

2003年03月17日(月) 「象と耳鳴り」

お天気猫や

-- 2004年03月16日(火) --

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『しあわせいっぱい荘にやってきたワニ』

児童書の文庫を主宰する友人に借りた絵本。 『木馬のぼうけん旅行』のアーシュラ・ウィリアムズと 思えば、1970年の作品でもじゅうぶんに新しい。

絵は『ハロウィーンの魔法』(ルーマ・ゴッデン著)で 好きになった堀川さん。 このタッチで他意のないワニを描くと、なんともいえず のほほんとしてしまう。 裏表紙でお猿が読んでいる本は、よく見ると この絵本だったり、アーシュラ・ウィリアムズとの 時間と空間を超えた名コンビぶりがうれしい。

しあわせいっぱい荘というのは、 船乗りの青年ジョニー・ゴライトリーの下宿。 大家さんのミネアポリスさんとジョニーは大の仲よしで、 いつも、いろんな国から、おみやげを持ち帰る。 しかし。 今回のおみやげ「キティ」は、じつは「ワニ」で しかも、あろうことか、ミネアポリスさんを ぱくっと、飲み込んでしまったのだ。 そこから先のお話が、この絵本の面白いところ。 ハリウッドならサメに喰われた恐怖映画になるのが、 ここではのんびりモードで終始する。 キティの口を開かせようと、試みられた数々の思いつき。

ジョージはキティを連れて、 ロンドンの自然史博物館にもゆく。 動物園にもゆく。 ああ、なつかしくなってきた。 また行けるかしら?という不安が頭をもたげる。

さて、キティとミネアポリスさんの運命やいかに。 しかしほんとに、英国人は生きものをアフリカから 連れ帰るのが好きな人種だと思う。 『ひとまねこざる』もそうだけれど。 (マーズ)


『しあわせいっぱい荘にやってきたワニ』著者:アーシュラ・ウィリアムズ / 訳:吉上恭太 / 絵:堀川理万子 / 出版社:福音館書店2004

2002年03月16日(土) 「海は小魚でいっぱい」
2001年03月16日(金) ☆春休みのお知らせ

お天気猫や

-- 2004年03月15日(月) --

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『京都の値段』

京都に住む友人が送ってくれた京都案内。 「0円からの京都案内」と帯にあるように、 見開き写真入りで、京都の「いいもの」を、 0円から27000円まで紹介してゆく。 染井の名水にはじまり、さまざま路地を徘徊し、 最後は読んでのお楽しみ。 値段はどんどんグレードアップしてゆくが、 もちろん、ぜんぶ、値にかかわらず「いいもの」ばかりである。

まず、京都の何を選ぶのか。 そこがこの本の出発であり、鍵ともなっている。 続編も出ていて、ついでにと両方買った当地の友人がいた。 京都へ行って、この本の名物に出会ったろうか。

写真も大切だが、京育ちのエッセイストで歯科医という 著者の文章もよく切れるので、 文章の練習をしようという方には、タイプするのを おすすめしたい。

私が京都にいたのはずいぶん昔で、 しかも郊外で暮らす貧乏学生だったから、ここにあるものは ほとんど縁がなかった。 というより、今でこそ知ったものもあるけれど、 当時知っていたものは、ただのひとつも ないような気がする。

「いいもの」をどんどん探してゆけば、 私の住む町でも、この本をつくることができる。 けれど、何でもあけっぴろげな当地の気質とちがって、 一見さんお断りの風情たなびく京都ならではの、 洗練され凝縮された都ならではの、 これはガイドブックなのだ。 (マーズ)


『京都の値段』著者:柏井壽 / 写真:ハリー中西 / 出版社:プレジデント社2003

お天気猫や

-- 2004年03月11日(木) --

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『あの日を探して』

このリンダは、ちょっとハード。 いや、いつもハードではあるけれど、 二人の設定がすでに越えられないような柵を 感じさせて、どうなることかと思わされる。

ヒロインのフェイスは、当時14歳、赤毛で街中の評判だった 浮気性の母親にそっくりだが、内面はまったくちがう。 その夜(原題は『アフター・ザ・ナイト』)、 フェイスの母親レネイと、自分の父親ガイが駆け落ちしたと 信じた青年、グレイによって、 フェイスの家族は強制退去させられ、散り散りになる。 ルイヤードの一族には、それほどの影響力があった。

そして12年後。 ビジネスで成功したフェイスは、自分をさげすんだ 街へ、その街を牛耳るグレイ、かつてあれほど あこがれたグレイのいる故郷へ戻ってくる。 抵抗しがたく惹かれあう二人の愛憎と、 グレイの父親の謎を追うラブ・サスペンス。

話はそれるが、他の作品でもそうだが、 本書でもニューオーリンズの街が登場し、 ニューオーリンズの男性も描かれる。 リンダ・ハワードを何冊も読んでいると、 アメリカ南部、アラバマやニューオーリンズの 男達のイメージが、勝手に形成されてくる。 ビジュアル面では映画のようにはいかないけれど、 彼らの女性への接し方にしてもそうだし、 南部というところがどういう空気を 生きているのか、だんだんにわかってくる ような気がしてしまう。

今回、魅力的だった(グレイは別として)のは 私立探偵のプレザント。フェイスの父親ほどの 年齢で、妻を亡くしたばかりである。

「あなたはクライアントで、お目にかかった ばかりだというのに、気がついたら 肩をお借りして泣いていた」(引用)

やっぱり、南部なのだ。 (マーズ)


『あの日を探して』著者:リンダ・ハワード / 訳:林啓恵 / 出版社:二見文庫2001

2002年03月11日(月) 『村上レシピ』

お天気猫や

-- 2004年03月09日(火) --

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☆装いの苑。

このごろ、すすめられて、装宛を買っている。

文化出版局といえば、あの『銀花』と同じ 雑誌社なのだが、編集スタッフの数はずっとずっと多い。 というのは余談・・・

実をいうと、装宛とは縁がなかった。 オシャレなわけでも、服を作りたいわけでもない 私にとっては、昔から知っているけど友人じゃない みたいな雑誌だった。 私たちが学生のころからある、 というのは、もうそれだけですごい。 (銀花よりずっと古いのだ)

ページの半分以上を占めるファッション記事も、 私には縁の薄い世界である。 縁はないに等しいけれど、業界の内幕ものは好きなので、 特集記事にはなるほどね〜と納得する。 どだい、対象年齢がぐっと若いはずなので、 私にアピールしているカルチャーページにしても、 見えない壁はあるのだろうけど、 そういう意味では、銀花だって高い壁だ。 私にとっては、微妙なチャンネルをチューニングしながら 遠いところのニュースを手元に引き寄せるような 『装宛』の楽しみが、ちょっとうれしい。

15年くらい前のマリー・クレールを オリーブ化したようなニュアンスで、 けっこうすみずみまでめくっていられる。 色合いがきちんとしていて、目を刺さないから、 目の疲れた仕事の合い間に広げるのにもいい。

連載もユニーク。 いまをときめく皆川明のフォトエッセイがあったり、 等身大で楽しめる市川実日子のお店探訪記があったり。 本、映画、音楽など、新しい風にうとくなってきた カルチャー情報の仕入れ元になったり、 センスのよい雑貨たちにヒントをもらったり。

そういえば、『装宛』にはそれらしいキャッチフレーズがない。 単に、「ファッション・マガジン」(注:実際は英語)。 これだけで勝負してます、というわけなのだ。 (マーズ)


『装宛』(月刊誌) / 出版社:文化出版局

2001年03月09日(金) ☆本を売る

お天気猫や

-- 2004年03月08日(月) --

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『ジンは心を酔わせるの』

友人のおすすめエッセイ。

森瑶子その人は、今ここにはいない。 けれど、彼女のエッセイを読むとき、まぎれもなく 森瑶子はここにいて、生活している。

育ちざかりの三人娘たちと、英国人の夫、 家庭に負担を強いる遅咲きの人気作家業、 本音でしかつきあってこなかった友人たち。 お酒の愉しみ。 呼吸音やため息が聞こえてくるような、 喧騒と静けさをもった、大人の女性の声。

彼女の小説を読んでいない私にとっては、 今はこの一冊がすべてだ。

35歳で初めての小説を書いた森瑶子は、 父親が作家(日曜作家、と書いている)だったために、 いずれ自分も書くことになると予感していたという。 愛情表現のできない母との確執も、書く原動力となったはずだ。 しかし、18歳で読んだサガンに「脳天をなぐられ」、 書くことから遠ざかった。 青春はヴァイオリンに費やされた。 しかし、埋め合わせのごとく、膨大な翻訳小説を読み込んだ。 そして結婚し、あるきっかけで、 堰を切ったように書き上げたのが、最初の小説、『情事』。 時をおいて確実に用意される運命のスイッチというのは、 なんと周到なのだろうと思う。

何かをしなかったこと、するべき時期に 成し得なかったとりかえしのつかない気持 ──これほど空しく、切なく、悲しいことはない。 無念なことはない。後悔してもしきれない。 いまだにその無念さが内側から私を咬んでいる。 (引用)

「できなかった」のではない。 「一番になれなかった」のでもない。 自分の欲することを、何をおいてもしようとしなかった、 それだけが心を惑わす。 それは結局は、そういう成り行きにはならない話だったのだ、 と冷静なときには納得しているのだが、 そしておそらくは、 今こわごわと一歩を踏み出しても、 かつてとは違った意味で道は開けるだろうと知っていても、 そのとき、その年齢でしか感受できない体験を、 人生から受けとろうとしなかったことには違いないのだ。 (マーズ)


『ジンは心を酔わせるの』著者:森瑶子 / 出版社:角川文庫1986

2002年03月08日(金) 『エマヌエル 愛の本』
2001年03月08日(木) 『ガラスの麒麟』

お天気猫や

-- 2004年03月04日(木) --

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『宇宙の根っこにつながる瞑想法』

瞑想・メディテーション、といっても そんなに極めたいわけではない。 どこかの仙人みたいに、宇宙まで飛んで行こうとか、 そんな大それたことは考えていない。 ただ、それなりにでも、やはり瞑想を体験してみたいし、 座禅から始まって本当に方法は多趣済々なので、 誰かに、わかりやすくて安全で簡単なおすすめの瞑想法を 教えてもらいたかったのである。 身近に指導してくれる人がいないわけでもないが、 いつでもというわけにもいかないし。

というわけで、天外さんの実践する瞑想法を書いた本書。 CD付きというのにも惹かれたが、よく考えると部屋のプレイヤーは 壊れたまま。 PCで聞くしかないので音が悪くて 活用していない。(尺八の音が入ってる、と思ったら 天外さんの演奏するケーナだった。失礼) CDをPCで再生したら、色のオーラみたいな画像も入っていて それはそれで面白かったから、CDはおまけでいいかなと。

天外さんは、SONYにいて、まさにこのCDやAIBOを開発した 責任者クラスの人だった。 精神世界の本を出したり、 「理想的な死に方を求め、輝かしい生を取り戻す」ために 「マハーサマーディ研究会」という団体を作ったり さまざまに活動していて、講演活動も多い。

「野次馬根性のかたまりなので、 ありとあらゆる瞑想法の方法論をかじってきた」という 天外さん。 本書では、瞑想中に陥る危険な状態への アドバイスも書かれているので、途中で波動の違う世界に 踏み込んでしまった場合も、ちょっと安心できる。

後半の方法論では、イラストでわかりやすく おすすめの瞑想法を解説してくれる。 マントラや印の結び方も少し教えてくれて、 初心者〜中級にはじゅうぶんだと思う。

さて、いつから始めようか。 (マーズ)


『宇宙の根っこにつながる瞑想法』著者:天外伺朗 / 出版社:飛鳥新社2001

2003年03月04日(火) 「アカデミー賞−オスカーをめぐる26のエピソード」
2002年03月04日(月) 『指輪物語』(その1)

お天気猫や

-- 2004年03月02日(火) --

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『アンデルセン童話集1』

恋も、復讐も、殺人も、涙も、笑いも、 子どもたちには必要なのだ。 何よりも、子どもたちは毒のリアルな酔い心地が 好きなのかもしれない。

ここに収められた「小クラウスと大クラウス」のお話は、 昔話であれば安心して読めるかもしれないが、 創作である以上は、かなりの毒だ。 殺したり殺されたり、奪ったり奪われたり。 大クラウスは、ケチでイジワルだというだけで、 小クラウスにそそのかされて親を殺し、 自分も結局殺されてしまう。

「エンドウ豆の上のお姫さま」だって、 よく考えれば、かなりあやしい。 嵐の晩にたったひとりで城にきて、自分で 「私はほんとうのお姫さまです」と言うのだから。 けれど、ほんとうのお姫さまとしか結婚できないと 豪語していた王子さまのお相手には、 ぴったりだとは思うけれど。

アンデルセンは生涯独身で、 晩年は、毎日、親しい友人宅を訪ねて夕食を共に したそうだ。 アンデルセンのところに、ほんとうのお姫さまは 来なかったのだろうか、それとも。

前々から気になっていたルーマ・ゴッデンによる アンデルセンの伝記を、やはり読まねば終らない。 ゴッデンの人形譚が、アンデルセンの畑から芽生えた ような気がして、なおさらに。 (マーズ)


『アンデルセン童話集1』著者:ハンス・クリスチャン・アンデルセン / 訳:大畑末吉 / 出版社:岩波少年文庫2000新版

2003年03月02日(日) 第75回アカデミー賞 ノミネーション
2001年03月02日(金) 『カフェめし』

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