HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2004年04月28日(水) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『新版 指輪物語2旅の仲間(上2)』

先週やっと映画の完結編を観てきたばかり。 ラストでは涙しているファンもいた。 映画『王の帰還』には、なつかしいホビット庄出発の回想や ビルボとの再会、ゴクリの過去など、原作のはじめに出てくる 場面も多く盛り込まれている。

さて、私はこの原作を、小さい人たちが指輪を捨てるという 役目を背負った本だから、小さいサイズで読んでいる。 というわけではなく、 この小さい新版の装丁も気に入っているのだ。 しょっちゅうひっくり返して調べるのにもいいし、積みやすいし。 と言い訳のようにしているが、本当に、予算のためだけでは ないのである。

第2巻では、フロドたちが本格的にホビット庄を離れる。 とたんに古森の中で柳じじいに襲われ、 森の住人トム・ボンバディルの家に助けられて身を寄せ、 塚山古墳で塚人にさらわれたりしながら、 ブリー村の「踊る子馬亭」でアラゴルンこと 野伏の馳夫(はせお)と出会う。 執拗に指輪の運び手を追う黒の乗手たちに フロドが刺され、闇の傷を負う。 命からがら裂け谷のエルロンド館をめざし、 川を逃げ渡るところまでが描かれる。

この巻では一行が魔法使いガンダルフと行き違うので 本人は登場せず、彼の残した手紙が読めるのみ。 ただ、1巻でも兆しはあったが、 このあたりから本格的に、ガンダルフは前作の『ホビットの冒険』と 異なり、指導者的な責任ある人物として描かれているのがわかる。 なんといっても、ビルボとの旅では、しょっちゅう大切なときに 消えてしまって、理由はあったにしても、 当てにならない人だなあ、という印象だったから(笑)。

森の主人トム・ボンバディル(とゴールドベリ)は、 映画には登場しなかったが、監督の敬愛するキャラクターと聞く。 フロドたちの困難な旅の始まりに、 このような超自然的存在が介入することは、 すでにこの旅が、なされるべくしてなされるのだという お告げにも近いトールキンからのはなむけにちがいない。

指輪物語を読む楽しみのひとつは、 『指輪』以降の、指輪ファンの作家やクリエイターたちが つくった作品の拠るところが、 ああ、この場面はあそこにつながっているのだ、と 浮かび上がってくることだろう。

ゲドも、この種から生まれたのだ。 そしてナルニアは、著者どうしの共有と対立も映し出しながらの パラレルワールドですらある。 (『妖精国の騎士』も忘れずに!)

ナルシアも以前書いていたけれど、 さまざまな人種(種族)でにぎわう酒場で起こる 敏腕助っ人との出会いなど、懐かしの『スターウォーズ』だし、 ダースベーダーの黒さ加減は、黒の乗手そっくり。

さてもハン・ソロめいた、しかし高潔な人物は言う。

「だが、幸いにしてわたしが本物の馳夫だよ。」 ホビットたちをじっと見おろしながらかれはいいました。 その顔は不意に浮かんだ微笑にやわらぎました。 「わたしはアラソルンの子、アラゴルンだ。 そしてわたしは、命にかけてあなた方を助けることができる。 助けて差し上げよう。」(引用)

・・助けてください、仕事やめてついて行きます。 (マーズ)


『新版 指輪物語2 旅の仲間(上2)』 著者:J・R・R・トールキン / 訳:瀬田貞二・田中明子 / 出版社:評論社1992

2003年04月28日(月) 「聖なる夜に」

お天気猫や

-- 2004年04月27日(火) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

☆最近古本派。

最近、よく古本を買います。 潔癖症というのからはほど遠いのに、どちらかというと私は、 人の読んだ本が苦手で、図書館で借りてきた本も すごく、用心をして読んでいます。 もともと、本を読むときの姿勢が悪いので、 寝転がって読んだりもするのですが、 図書館の本は、正座をして、まではいきませんが、 すごくきちんとした姿勢で読みます。 よく借りてきた本には、お菓子のくずとか、 虫とか、ひどいときには髪の毛なんかがはさまっていて、 まあ、それでちょっと嫌な思いをしたことがあるからです。 だから、私は古本が苦手なのです。

それに、借りて読んだ本でも、気に入った本は、 手元に置きたい方なので、図書館で借りても、 結局、後で買うということもよくあります。 気に入った本だから、きれいな本を持ちたいので、 当然、新しい本を買うのです。

それなのに、なぜ、最近、古本を買うようになったのか。 いろいろ理由はあるのですが、 まあ、ひとつは、本の回転が速く、 本の寿命が短くなったからでしょうか。 1・2年前の本でも、あっ!と、気づいたときには、 もう、品切れ、ということもよくありました。 昔読んだファンタジーが懐かしくて、 もう一度読み返したいと思った時、 近隣の図書館にもなく、ネット上の古本屋さんで 探さざるを得ない、ということもしょっちゅうです。

そんなレアな本でなくても、 今は、本の値段が高すぎて、連作となると、 ちょっとおいそれとは手が出ない、という事情もあります。 ハードカバー本で、2800円の三部作とか。 文庫本だけど、1冊1000円前後の本のシリーズとか。 送料を入れても、ネット上の古本屋さんで買えば、 すごく安く買えるのです。 オークションなど、個人の出品だと、 一度しか読んでなかったりで、すごく本もきれいだし。 もちろん、個人の出品でも、もともと古書店で 買った中古品で、少々痛んでいる本もあるのですが…。

時には、ちょっと足を伸ばして、郊外の大型古書店の チェーン店めぐりをすることもあります。 こちらは現物を手にとってじっくり眺めて、 値段と見比べながらだから、まあ、納得しながら あれこれ、物色しています。

最近、よく古本を買うようになったのは、 そういうような理由からです。

そういいながらも、やはり、真新しい「新品の本」を開く時の 喜びは、私の小さなしあわせの一つです。(シィアル)


■こんなところで買ってます。

[amazon マーケットプレイス]
カードでそのまま古本が買えるので、 品切れ本とかを見つけると、とても感激。 でも、三部作を同じ古書店から買った時に、 三冊分別々に配送料(340円)がかかったので、 同じところからまとめて買えば買うほどに 損をしているような気持ちになったのですが。 宅配便か書籍小包かは、出品者の自由なので、 本(のサイズや重さ)によっては、実際の配送料より 多く払っていることもあるのです。 まあ、本によっては、逆もあるのですが。 (自サイトを持っている古書店の中には、複数冊分の送料を 割引券というような形で、バックしているところもあるようです。)

[ Yahoo! オークション ]
オークションだから、今流通している本については、 結構きれいな本が安価に買えます。 ずっと探していた絶版本とかにも巡り会えますが、 人気本はそれなりに価格も高騰していきます。 本によって、ネット上の古書店より、 すごく安く買えたり、結果的に高い買い物になったりと、 図らずも、ギャンブル気分まで味わえます。

[ Easy Seek ]
登録している古書店の蔵書からの検索結果を 比較しながら買えるのが便利。 お店によっては、値段交渉ができて、 少し値切ることができたり。 安いけれど汚れた本と、 ちょっと高いけれどきれいな本と、 どっちにしようか。 いやいや送料を考えたら、 新しい本を定価で買った方がいいかもと、 そんな風に迷いながら選んでいます。


2001年04月27日(金) 『心のおもむくままに』

お天気猫や

-- 2004年04月26日(月) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

☆私の「癒し系」ブック

 仕事のちょっとした合間とか、 何となく疲れていて、活字は読みたくないけれど、 手持ちぶさたな時とか、そんな時、最近はよく、 お菓子の本をめくっています。

 最近の料理本のヴィジュアルの美しさやセンスの良さについては、 ここでも前に何度か触れられてきているのですが、 スゥイーツの本も、ほんとうに可愛らしくておいしそうで、 見ているだけでしあわせな気分になります。 おまけに、見て喜ぶだけなら、太らないしね(笑)

 "究極の食いしん坊"、みたいな気もしますが、 枕元に置いてあって、寝付けない時にもぱらぱらと開いています。 私の生活では、衣食住の中で、最初に切り捨てるのが「食」で、 実は「食」にはさほどの執着もないのですが。

 「コーヒーテーブル・ブック」とでもいうのでしょうか。 いつもテーブルの上に置いてあって、何気なくぱらぱらとめくる 写真集のような、そんな感じです。 ちょっと前までは、インテリア系の本だったのですが。 パリやオランダの子どもたちの部屋とか、 小さな庭の写真集とか。

 見ていてちょっと手が届きそうな感じの、 小さなあこがれの詰まった本が好きです。

 お菓子の本を持ち歩いているのも変ですが、 『十二ヶ月のバスケット』と『ひとりぶんスイーツ。』が バッグに入っています。 昔、『みんなの歌』で『食いしん坊カレンダー(?)』というのを 聞いたことがあるのですが、四季それぞれの特徴を生かした お菓子を見ながら、季節を感じています。(シィアル)

■ 現在のお気に入り
『十二ヶ月のバスケット−sweet recipes'basket』 著者:松長絵菜 / 出版社:女子栄養大学出版部2003
『ごちそうさまから20分の ひとりぶんスイーツ。』 著者:松田美智子 / 出版社:河出書房新社2004

■ ちょっと前のお気に入り
『パリの子供部屋』 著者:ジュウドゥポゥム / 出版社:エディシォンドゥパリ2002
『オランダの子供部屋』 著者:ジュウドゥポゥム / 出版社:エディシォンドゥパリ2004
『パリのテラス』 著者:ジュウドゥポゥム / 出版社:エディシォンドゥパリ2003


2002年04月26日(金) 『ニーベルンゲンの歌』

お天気猫や

-- 2004年04月19日(月) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『新版 指輪物語1旅の仲間(上1)』

このぐらいの年齢になったら読もう、と思っていた 大作古典ファンタジーを、今年ちょうど読むことになった。 数ヶ月かけて、締め切りに合わせて読んでいく予定。 この数年の間に、まさかこんなに多くの人に読まれる 状況がくるとは思いもしなかったが、 映画のおかげで、楽な部分も確かにある。

『ホビットの冒険』は2年くらい前に読んだ。 だから、中つ国やホビット族への下地はできているとはいえ、 やはり、今回の旅は先が長い。 ずっと前に20ページかそこらで挫折してから、 私のこの本に対する印象もずいぶん変化した。 『ホビットの冒険』を読んでいないと、序章は 確かに、とっつきにくい。

それにしても、『ホビットの冒険』で気になっていたのは、 主人公のビルボが、いつも、仲間とはぐれ、気づくとたった ひとりきりで闇のなかに取り残されたりすることである。 映画でおおまかなストーリーはつかんでいたが、 この第一巻の、旅の始まりを読むにつけ、 若い(といっても50歳)フロドが主人公の今回は、 心を許せるホビット仲間がともにいて、 良かった良かった、とそのことを私は一番喜んでいる。

映画では当然あっというまにホビット庄を出ていったけれど、 本のペースはゆっくりと遅い。 1巻の後半になって、やっと出発するのだから。 『ホビットの冒険』での出発があまりにも唐突だったことを 思えば、これぐらいがちょうどいいのだろう。

フロド一行が旅に出てすぐ、あこがれのエルフたちに会う場面がある。 高貴なエルフ族のギルドールが語ることばは、私たちの世界、 2004年の不安定な世界につながるメッセージを帯びているように思えて、 ひとしきり胸をふるわせられた。

「勇気は思いがけないところに見いだされる。」 と、ギルドールがいいました。 「望みをもて!さあ、もうおやすみ!朝にはわたしたちは、 行ってしまうが、わたしたちの伝達を国々に送っておこう。 旅するエルフ仲間たちに、あなたの旅のことを知らせておこう。 また、よい事をする力をもつ者たちに、あなた方のことに 気をつけてくれといっておこう。 わたしは、あなたをエルフの友とよぶ。 星々があなたの道の果てまでを照らすように! わたしたちは、多種族のひとと出会って、これほどの喜ばしさを おぼえたことが滅多になかった。(以下略)」(引用)

(マーズ)


『新版 指輪物語1 旅の仲間(上1)』 著者:J・R・R・トールキン / 訳:瀬田貞二・田中明子 / 出版社:評論社1992

2002年04月19日(金) ☆あの作家の作風。
2001年04月19日(木) 『愛の続き』

お天気猫や

-- 2004年04月17日(土) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

☆絵本が絵本を呼ぶ。

今週は、更新ができなくて参りました。 なんだか、更新をさぼると、地に足がつきません。 悪いことをしながら、いい顔をしているみたいです。

さて、絵本ブームはますます盛んですが、 今朝の流通新聞に、 「読者がネット投票した面白い絵本ランキング」 (『絵本ナビ』から)が大きく取り上げられていました。

子どもたちに一人一冊、絵本を持たせた写真も載っています。 その並んだまんなかに、私の大好きな絵本があって、 しかも、その絵本はどちらかといえば、主流ではなくて マイナーなほうだと思いこんでいたので、うれしい驚き。

絵本は、『おおきなきがほしい』(佐藤さとる・村上勉/偕成社)。 1万8475通の投票(5段階評価による)のうち、第3位です。 (最近2年間の集計)

このコンビを見れば、私たちの世代にはとてもなつかしいし、 最近MOEでコロボックルの特集もあったりしたし、 村上勉の絵で装丁された小説も出たりしたけれど、 これまでの絵本ガイドやランキングには あまり上位に入ってなかったはずなのです。 (と思うのですが、そうでもない?)

ちなみに、1位は、『えんそくバス』(中川ひろたか・村上康成) 2位が『バムとケロのそらのたび』(島田ゆか)です。

『おおきなきがほしい』は、私のデスク横の本棚に、 長いこと場所を得ています。 めったに取り出して見ることはないけれど、 この世界はとても大切に思っています。

読んだのは大人になってからですが、今思えばそのころは まだまだ子どもで、急に外に出た迷子にも似た状態でした。 そして、自分の家をもつこと、質素でもセンスのいい、 自然の要素にあふれた、こぢんまりと居心地のいい巣を いつか持ちたいという強烈な思いとともに、 この絵本を開いたものでした。 (猫やのどこかにもそのことを書いています)

だから、小さい子どもたちが、この絵本をどんなふうに 感じながら楽しむのか、ほんとうにはわからないのですが、 この絵本が、これほど支持を得ていることは、 うれしい驚きであり、まるで福引きにでも当たったかのようです。 (そんなことを書くのは、作者の先生方には失礼ですが)

同じ著者コンビの『ねずみのまちの一ねんせい』(偕成社)も 同じ本棚に並んでいますが、こちらは20位までには 入っていません。こちらも、特に画家のファンにはたまらない絵本です。

ともあれ、いまだに、自分の家を得ていず、自立もしていない 私にとっては、思い描く未来の家は、どこかあの『おおきなき』の 上にある、カオルの家の面影をしています。 (マーズ)

絵本ナビのサイト→http://www.ehonnavi.net/home01.asp


2002年04月17日(水) 『星の海のミッキー』(その2)
2001年04月17日(火) 『葉っぱのフレディ』

お天気猫や

-- 2004年04月12日(月) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『椰子・椰子』(その3)

始終きょろきょろしている。 だから、交差点でふと上空を見上げ、もやのような 白雲のなかを、うっすら飛行機雲を残して 音もなく見え隠れしながら飛ぶ飛行機を見つけても、 周囲にたくさんいる人は、だれひとりとしてそんなものを 見てはいない(目線から察するに)し見たくもなさそうだ という事実に、 「私はこれではいけないのではないか」 とうなだれずにはいられないこともある。

世の中には「変な人」がいるのだから、 変なものを書く人もいるわけで、 あまりにも奇妙だったりファンタスティックだったり こわいお話だったりすると、どこか救われる。 あまり裏側が見えないようになっているのが ちょうどいい。 それに、世の中にはあまり胸をはって口に出せないこともある。 だから、ちょうどいい。

などとたとえ話をだらだら書いているが、 『椰子・椰子』は、足穂の小編集を 日常の変な話に置き換えたような架空日記である。 主人公の「わたし」は家族持ちの女性らしいが、 四六時中不思議な動物や人と出会い、 あるいは恋人がいたりして、家族の影はぼやけている。

巻末の対談によれば、「やし・やし」というのは 川上さんの長男が、子どものころ、「おやすみなさい」が まだうまくいえなくて、こう言っていたそうだ。なるほど。

こんなきてれつなうそっぱちの世界を、 しかも山口マオの絵で楽しめるというのは、 私には縁がないが、酒飲みの快楽に似ていそうだ。

私を含め、自分がどこか変わっているということが 才能なんかではちっともなくて、 「これではいけないのだが、どうにかこうにか このままやっていくしかないのだろう」と ネガティブに自覚している歳を経た大人たちには、 いいくすりだろうと思うのである。 (マーズ)

→『椰子・椰子』1 →『椰子・椰子』2


『椰子・椰子』 著者:川上弘美 / 絵:山口マオ / 出版社:新潮文庫2001

2002年04月12日(金) 『地獄の悪魔アスモデウス』

お天気猫や

-- 2004年04月08日(木) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『炎のコスタリカ』

1986年、ハーレクインから刊行され、 日本では1989年に出た作品の文庫化。

誘拐された富豪の娘ジェーンと、元諜報員のグラントは、 悪名高きコスタリカの長官トゥレゴの追っ手を避け、 ジャングルを逃避行する。 ジェーンがトゥレゴに誘拐されていたのは、 国家機密をおさめたマイクロフィルムの 行方を知る唯一の手がかりだったから。

リンダの作品でジャングルの強行軍というと、 古代文明のロマンを描いた『石の都に眠れ』を思い出す。 どちらのヒロインも相当タフだが、 今回のヒロイン、ジェーンの魅力は、 『虎』の異名を取る鉄の男サリバン・グラントを 『守ってあげたい』と思う女性的な本能と、 トラウマに苦しむ脆さ、敵を欺く演技力のアンバランスさ。

グラントはベトナム以来、過去と決別し、 諜報活動に人生を費やしてきた。 38歳で、すでに引退しているのだが、その後 ほとんど引きこもり状態で農場に住んでいる。 しかし、このジャングルでの人質救出作戦には、 「虎」こそ最も適任だと、だれもが判断した。 ジェーンの父は、グラントに娘の命を託す。

次作の『ダイヤモンドの海』では、 本書にグラントの親友として登場する 諜報部員ケル・サビンが主役とのことなので、 楽しみにしている(これから読む!)。

今回、非常にリンダらしいと思った場面。 危険きわまりない逃避行を終え、 文明社会に戻ったふたりは、諜報部へ立ち寄る。 そこでサビンを交えて三人で、 部屋の外にいる者が耳を疑うような、 大笑いをするのだ。 なんといっても、男二人は「絶対笑わない」ので 有名なコールド・ブラッドなのだから。 命がけの冒険を終え、この発作的な笑いの伝染を 共有した男女三人は、 一生の絆を、その数分で結んだにちがいない。 (マーズ)


『炎のコスタリカ』 著者:リンダ・ハワード / 訳:松田信子 / 出版社:MIRA文庫2002

2003年04月08日(火) 「キャラクター小説の作り方」
2002年04月08日(月) 『妖精国の騎士』

お天気猫や

-- 2004年04月07日(水) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『リビイが見た木の妖精』

『グリーン・ノウ』シリーズで知られる ボストン夫人の珠玉小品集。

『リビイが見た木の妖精』は、少女リビイが 田舎のマナーハウス(の薫りがただよう館)を訪れ、 川がもたらす洪水の恵みを通して、自然の不思議と 一体化するという、グリーン・ノウの「いとこ」的作品。 館の主は、ジューリアさんという不思議な独身女性。 この人が魅力的なので、緑につつまれた館の様子が いっそう真に迫ってくる。 原題は『Nothing Said』、これは物語の最後に リビイが家に帰ったとき、お母さんに、 ジューリアさんの館で起こったことを、 あれこれと話すことができなかったことを指している。 「みんな心のなかに、大切にしまっておくことにした」 リビイの心境こそ、この珠玉作品の根っことなっている。

『よみがえった化石ヘビ』は、タイトルの通り、 化石のヘビが現代によみがえり、少年ロブの 友となるというSFジュヴナイルめいたストーリー。 こちらは、9歳のチャールズ(息子のひとり?)に捧げられている。 ヘビがだんだん成長して大きくなっていく様子は、 苦手な人には相当不気味だと思う。 ともあれ、神秘的なエンディングは、 外国の風物を作品によく取り入れてきた ボストン夫人ならではの幕である。

黒く力強いタッチながら、繊細な感性を漂わせる絵を 描いているのは、息子のピーター・ボストン。 グリーン・ノウでもおなじみだが、とりわけ リビイの作品のタッチは、子どもの世界を叙情的に 描いている。 (マーズ)


『リビイが見た木の妖精』 著者:L・M・ボストン / 絵:ピーター・ボストン / 訳:長沼登代子 / 出版社:岩波少年文庫1980

2003年04月07日(月) ☆「おもちゃ文学」としての鉄腕アトム。

お天気猫や

-- 2004年04月06日(火) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『英国セント・キルダ島の何も持たない生き方』

☆表紙を見て、衝動買いした新刊本。

渡英経験の豊富な著者が真摯に語る、 英領のさいはて、セント・キルダ島の人々の歴史。 鳥も通わぬ・・というけれど、 この島の人々は、有史以来、 この絶海の地で、きりたった険しい山岳の小島で、 外の世界と隔絶した文化を受け継ぎながら、 海鳥を主食にして生きてきた。 ここでは金など、何の価値もない。 ケルトの風習が色濃く、内乱の火種になった キリスト教すらも、後になって強制されたものだ。

だからこそ、英国でかつてこの島がブームになった とき、観光客はここにユートピアを見たのだろう。 セント・キルダの人々は、私たちの胸に巣くうような 個の孤独とは縁のない暮らしを営んだいたのだ。 かつては、かつて確かに存在した時代には。

しかし、本書はユートピア紀行ではない。 もうそこに、人々のユートピアはないのだから。 厳しい自然だけが、今は島を覆う。 本書は、文明社会の「よかれと思ってした」暴挙が、 いかに簡単にこの楽園を損ねていったのかを訴えながら、 あえて現在の世界で泥沼化している「大義のもとの戦争」にも 警告を発していると思われる。 本書を読む前と後では、意識において、 何かがパチッと変化するだろうし、私たちは セント・キルダの島民たちの過去を知ることで、 何によって今を損ねられているかを想像することができる。

著者が訪れたとき、すでに36人(この数が、ニューエイジで よく言われる、世界を救うという36人の善人と同じなのは 偶然に過ぎないのか?)の島民は、 なかば強制的に離島させられており、 島は夏の間だけの観光地と化していた。

それでも、ふとしたきっかけで著者とつながったこの島は、 ほかのどの土地よりも深く強く、異郷の日本人の魂を呼んだのだ。

とりわけ、本書の主人公、 フィンレー・マックィーン(1862-1941)という人物。 彼は、生まれたときから、この島の一部であった。 口絵に写真が載っているが、 あごひげとほおひげにふちどられたこの長老の まなざしに、著者の旅の始まりがある。 彼もまた、最後の島民のひとりとして、 本土へ移住したのち没し、ついに島の土にはなれなかった。

島を離れたフィンレー老のその後の生活にも 一時帰島など、いくばくかの救いはあるものの、 そこにあった人々の生活は、きれいにデリートされ、 もう二度と、再現されることはない。 また違った方法はあるかもしれないが、 失われた種族の生きもののように、どこかへ その魂たちは、飛んでいってしまったのだ。

今の私たちから見ればあれほど「ものを考えている」かに見える 英国人ですら、過去にはこれほどに無知で傲慢だったなら、 現代の私たちが「よかれと思って」していることは いったいどんな結果を、この地上にもたらすのだろうと そらおそろしくもなってくる。

ほんの200年くらいのあいだに、 人はどれだけ変われるというのだろう。 人を変えさせようとする暴力は、いつでも勝つのだろうか。 それとも、他人をコントロールしたいという欲求は、 他人を受け入れたいという願いのもとに、 少しでも膝を折ることができるのだろうか。 (マーズ)


『英国セント・キルダ島の何も持たない生き方』 著者:井形慶子 / 出版社:講談社2003

お天気猫や

-- 2004年04月05日(月) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

☆ライオンとチョコレート。

『ハリー・ポッターシリーズ』『指輪物語』と 空前のファンタジー映画大ヒット現象を受けてか、 ついに「あの」作品が映画化される。

ディズニー映画となる『ライオンと魔女』。 実写である。監督はアンドリュー・アダムソン。 しかも、主役はニコール・キッドマン。 いや、本来の主役は、4人の人間の子どもたちでなければ ライオンのアスラン(善)なのだろうけど、魔女(悪)を 主役にするということは、けっこうダークなコメディに するつもりか?などとあれこれ憶測している。 ともあれ、無慈悲で欲深い背の高い魔女役に、 ニコール・キッドマンはぴったり。 公開は2005年のクリスマス・シーズンという。

注)その後ニコールの魔女役は誤報と判明。実際のキャストはティルダ・スウィントンでした。

魔女が退いたナルニアに、雪につつまれていた世界に、 春と緑があらわれる場面を、ぜひすばらしい映像で 見たいものである。 ロケ地は指輪と同じくニュージーランド。 まあ、英国でも撮るだろうけど、異世界ナルニアは ニュージーランドで、ということなのだろう。 ずっと以前、BBCだったかで映像化されていたときみたいに ライオンがぬいぐるみっぽくありませんように(笑)。 姿だけでなく、どんな声なのかも、楽しみのひとつ。 うまくいけば、続編もシリーズ化される予定とか。

指輪のCG制作スタッフも関係しているというから、 そのあたりは信じているけれど。 ナルニア国ものがたりをつらぬく精神性を、 どう表現してくれるのか、ディズニーといえども 期待している。 そしていずれ近い将来、未映画化ファンタジー最後の金字塔、 『ゲド』の映画化も、この流れでいくと、実現しそうである。

さてさて、映画化といえば、もう一篇。 こちらも、あの、おお!びっくりなファンタジー、 ロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』が、 ジョニー・デップ主演でもうすぐクランクインという。 監督のティム・バートンとのコンビである。 プロデュースにブラッド・ピット夫妻の名があったり、 何かと話題も多い。 さて、気になるデップの役は、謎多きチョコレート工場主、 ウィリー・ワンカさん。 なんたって、世界一のチョコレート工場のオーナーだ。 工場のなかを見た者は誰一人いないという、正体不明の人物。 きっとあのもみあげを長くのばし、 シルクハットに燕尾服かなんか着て、 笑ったり踊ったり、すべったり、 思いっきり怪演してくれるのだろうなぁ。

もうもう、こちらの映画に関しては、 なんの心配もなく、できあがりを楽しみにしている。 『パイレーツ・オブ・カリビアン』でのデップに脱帽した後だし、 本来コメディアンの素質にすぐれたデップのこと、 監督との名コンビがまた増えることだろう。 ほんとは主役のはずのチャーリー少年は誰がやるのか? 誰にしても一躍スターが誕生するわけだ。

こちらは、ミュージカル映画『夢のチョコレート工場』の リメークとなる。ジーン・ワイルダー主演のこの映画は 見ていないのだが、ロアルド・ダールも、今回の 映画にはきっと、満足のため息をもらすだろう。 私たちがあの原作を読んだとき、そうするように。 (マーズ)

2003年04月05日(土) ☆Happy Birthday、鉄腕アトム
2002年04月05日(金) 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

お天気猫や

-- 2004年04月02日(金) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『サーカスの小びと』

友人のおすすめで、文庫からお借りしてきた。 『ケストナー少年文学全集』の別巻。

サーカス&小びとというと、子どもくらいの背丈を想像するが、 ここで描かれるのは、身長5cmの、 まさに「小さい人」(原題もそうなっているという)。

彼の名前は、メックスヒェン。 思いがけないアクシデントで両親を亡くしてからは、 サーカスの芸人になるべく決意し、 魔術師のヨークス教授に弟子入りする。 弟子といっても、彼らの関係は父と子のようでもあり、 この二人の絆が、奇妙きてれつな物語の芯となっている。

マッチ箱のなかで眠る、小さな人。 自分だけの豆本を印刷してもっていたり、 大きい人の胸ポケットから、こっそりのぞいていたり。 彼の生活描写は、すでにそれだけで面白くて わくわくさせられる。 そんな彼も、ついに教授と一緒にサーカスの大スターとなって、 有名人ならではの事件に巻き込まれてしまう。

メックスヒェンが眠って夢を見るエピソードでは、 不思議な緑や赤の薬で体が大きくなったり小さくなったり。 あの『メルモちゃん』のアイデアはここから?とか、 さらに大先輩の『不思議の国のアリス』を思い出しながら楽しんだ。

ファンに豪邸のようなドールハウスをもらっても、 小びとがこよなく愛したのは、自分になじんだ 古いマッチ箱のベッド。 そして、たったひとりの、親であり仲間でもあるヨークス教授。 いろいろたくさんのものは、結局もてない。 小びとが小さいからではなくて、誰にとっても、 大事なものは、そんなに多くはないのだと。

『木馬のぼうけん旅行』(A・ウィリアムズ)の 木馬が、ピーダーじいさんのもとへ帰るために 苦しい旅をしたように、 『ピノキオ』がゼペットじいさんのもとへ帰ったように、 ラストの小びとと教授の再会は、 メックスヒェンの勇気と冒険の結果である。

この小びとはおもちゃではないけれど、 小びとそっくりに作られた人形も登場し、 奇妙な味わいを添えている。

あとがきによれば、この物語は、 『ふたりのロッテ』が出てから、 じつに14年ぶりに書かれたという。 ケストナー60代の珠玉作品である。 (マーズ)


『サーカスの小びと』 著者:エーリヒ・ケストナー / 絵:H・レムケ / 訳:高橋健二 / 出版社:岩波書店1964

2002年04月02日(火) 『ハリー・ポッターと賢者の石』
2001年04月02日(月) 『カモメに飛ぶことを教えた猫』

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.