2005年01月31日(月)  婦人公論『あなたに親友はいますか』

昨日の朝日新聞の読書ページ、「亀和田武さんのマガジンウォッチ」というコラムで、「婦人公論」(中央公論新社)2月7日号を取り上げていた。特集タイトル<35歳からの友達づきあい>の中で亀和田氏がもっとも興味深く読めたのは「あなたに親友と呼べる人はいますか?」という読者120人アンケートの結果だという。《【親友と思う人は何人?】には、「1人」から「3人」と答えた人が7割を占めた。ただ「線引きを変えると、親友は0人かもしれないし、100人かもしれない」というように、まず親友の定義がむずかしい》というくだりを読んで、聞き覚えがあると思ったら、自分の書いた回答が引用されていた。わたしもアンケートに答えた一人だったのである。

親友にまつわる突っ込んだ設問が20問ほど用意されていたのだが、一問一問考えさせられるので、答えるのにけっこう時間がかかった。で、いちばん悩んだのが、【親友と思う人は何人?】。わたしの交際範囲は広く浅く型なので、友達と呼べる人は多いのだが、親友と呼べるのはそのうち何人かと考えたときに、「どこで線を引くのだろう」と困ってしまった。

アメリカに留学したとき、日本語の親友にあたる言葉を英語で探したら、"best friend"だと言われたが、"one of best friends"という表現があるように、bestと言いつつ一人とは限らない。時は流れ、社会人になって、"soul mate"という言葉を知った。生まれ変わってもめぐりあうような魂の友。こうして考えると、best friendはたくさんいるけど、soul mateとなると難しい。学生時代からの十数年を振り返っても、いちばん仲のいい相手は、その時々で変わっていたりする。「一生もの」という絞込みをかけ、結局、「1人」と答えた上で、「線引きを〜」の断り書きを添えた。

一人問答の過程で、自分にとっての「いい友達」の定義がいくつか見えた。その人のためにお金と時間を使うことが気持ちいいこと(食べものの趣味が合うことも大事な要素)。その人と会って別れた後に、また会いたい気持ちになっていること。そういう人たちには、100人はいかないけれど、恵まれている。わたしの片想いでなければ。

2003年01月31日(金)  トップのシャツ着て職場の洗濯
2002年01月31日(木)  2002年1月のおきらくレシピ


2005年01月28日(金)  G-upプロデュース公演『ブレインズ』

■知り合いの川上徹也さんが戯曲を書いたG-up(代表者:赤沼かがみさん)プロデュース公演『ブレインズ』を観る。売れない脚本家・大山田鉄男(遠山俊也)のもとに超特急の仕事が舞い込み、彼の脳内に生息するキャラたちが喧々諤々のアイデア出し(これぞまさにブレーン・ストーミング)。果たして鉄男の書きたいものは見つかるのか、締め切りに間に合うのか、という史上初(かも)脳内シチュエーション・コメディ。キャラづけ命のような内容なので、役者さんも個性派ぞろい。プライド(桂憲一:花組芝居)、モラル(宮下今日子:サードステージ)、インテリジェンス(前田剛:BQMAP)、バランス(ムロツヨシ:紳士スラックス)の【左脳系】、エモーション(木村靖司:ラッパ屋)、デザイア(福田転球:転球劇場)、コンプレックス(高倉良文:ネコ脱出)、プチデビル(武内由紀子:吉本興業)ルーズ(櫻井智也:MCR)の【右脳系】、中盤で正体が明かされる【不明系】のトラウマ(杉浦理史bird's-eye view)。それぞれ濃いけど、全員そろうと濃縮ソース状態。怪しいエモちゃんを演じた木村さんは、『バット男』(2004年10月22日)の上司役で光ってた人。大阪弁こてこてキャラの福田さん、長台詞ペラペラで本当に頭よさげな前田さん、キュートな武内さんも印象に残る。「劇団←女主人から最も離れて座る」公演『Kyo-iku?』(2004年7月22日)で「すごいキャラだ!」と驚いた杉浦さんは、水槽のような檻(?)の中で漫画読んだりバナナ食べたり。演技というより生態。別名ピエール。サイト『ピエール風呂』も不思議な世界。達者なムロさんはどんな役にも染まって、こういう人いるよなーと思わせる。MOTHER時代から観ている高倉さん、途中まで彼だとわからなかったほど、劣等感男になりきっていた。■脚本家が書いた脚本家の話なだけに、「時間ないのは本命が降りたから」なんて自虐的エピソードはリアル。「一人ぼっちでも書かなくちゃいけない」という言葉がしみる。鉄男の書きたいものが定まり、脳内キャラが団結したときに現れるミューズ、プロデューサーの南青山さゆり、鉄男の妻・美代子、ラストのどんでん返しに登場する女性脚本家は、同一キャスト(藤田記子:カムカムミニキーナ)。川上さんがそれを狙ったかどうかわからないが、「自分の信じているものが真実とは限らない。所詮、脳が信じ込んでいる幻だから」と示唆しているように感じた。■観劇の友は、女優の鈴木薫。アフターシアターは、ぐるなびで目星をつけたタイ東北料理の『カオタイイサーン 一ツ木店』。定番とはひと味違うメニュー充実で、店員さんも感じ良し。シアターV赤阪へ行ったときは、また寄ります。

2004年01月28日(水)  舞台『クレオパトラの鼻』(作・演出:上杉祥三)
2002年01月28日(月)  心意気


2005年01月27日(木)  石井万寿美さんとお茶

ドラマ『彼女たちの獣医学入門』のロケ地になった酪農学園大学出身の獣医師の石井万寿美が上京されたので、一時間ほどお茶をする。大阪で『まねき猫ホスピタル』という名前の動物病院を運営する傍ら、執筆活動や講演を精力的にこなす石井さん。去年立て続けに出版した著書『動物の患者さん―まねき猫ホスピタルの診療日記』『ペットロスの処方箋』と「今井さんがブログに書いてたから」と神戸のケーニヒスクローネのお菓子をお土産に持ってきてくれた。

年は石井さんのほうがちょっと上だけど、意外なところで話が妙に合って面白い。今日は「若いモンは気合が足りん!」と意気投合。わたしも体育会の血のせいか、たいていのことは気合で何とかなると体で覚えてしまっているし、すぐに諦めてしまう人を見ると「もったいない」と思ってしまうのだけど、石井さんが出産の二日前まで働いていたと聞いてびっくり。

意外なところでは、数学者の藤原正彦さんの話で盛り上がった。「今井さんはどうやって英語を勉強したんですか」と聞かれて、「言いたいことがあれば、手段である語学は自然についてくる」という話をして、「そういえば、『国家の品格』という本に面白いことを書いていました。英語ができるけど中身のない日本人が海外でぺらぺらしゃべるおかげで、日本人が薄っぺらく思われるのは困る。中身のないやつは海外で黙っててほしいって」と続けたら、「藤原正彦さん! あの人の話はわかりやすくて、いいですね。わたし、藤原さんの書いた記事を読んで、新聞社に投稿したばかりです」と石井さん。さらにはわたしが大好きな『博士の愛した数式』(小川洋子)にインスピレーションを与えた数学者というのが藤原さんで、小川洋子さんとの共著で『世にも美しい数学入門』という本も出されていると聞き、「つながりますねー」と興奮。

2004年01月27日(火)  映画『問題のない私たち』(脚本・監督:森岡利行)
2002年01月27日(日)  詩人


2005年01月23日(日)  中国禅密気功の師曰く

■「今週末、僕は気功に行くから」とダンナは勝手に決めて、一人で行ってしまった。知人からすすめられ、健康不安もあって短期集中講座を受けることにしたらしい。「気」というものには興味津々なわたし、誘ってくれればついて行ったのに。各地の気功教室を訪ね歩いた人が最後にたどり着くというほど評判の中国禅密気功の内容はいかに。2日間の講習を終えたダンナが復習も兼ねて自宅でレクチャーしてくれたが、ポーズでいうと4種類ほどで、型だけならビデオでも十分覚えられそう。でも、大事なのは型よりも「気をコントロールする」という心構えのようで、「背骨の下のほうから熱がらせん状に上がってくるのをイメージしましょう」といった中国人師匠の声に耳を傾けて習得することに意義があるらしい。「背骨を回す」全身ふにゃふにゃ運動は血のめぐりを良くし、内臓の動きも活発にするとかで、例えて「内臓の按摩」。便秘解消も兼ねて、わたしもふにゃふにゃ。■気功の道は奥深く、極めるには根気が要るが、自分の中に「気」というものがあることを意識し、それをコントロールすることで、健康面はもちろん精神面でも強くなれるという。講義の最後に師曰く「どんなときも自分の中に自分を持つことを忘れないで。そうすれば、外で何が起こっていても揺るがない」。いいことを言う。宗教と気功の違いは「幸せになるためではなく、健康のためにやる」ことにあるとか。ちなみにダンナは「あなた、落ち着きないね」と突っ込まれる落ちこぼれ生だったようで、「『気』はよくわからなかった」。部屋を暗くし、先生が右手と左手で気を送りあったところ、白い線のようなものが見えたが、驚くというよりは「あれが気なの?」と半信半疑だったらしい。早速、わが家で電気を消し、右手と左手で気を送ってみる。「なんか、あったかいものを感じる」とわたし。「君は暗示にかかりやすいからね」とダンナ。「ねえねえ、白い線見える?」「いや、見えないけど……っていうか、そんな気軽なものじゃないと思うよ」。「気」は手軽には出てこない。

2004年01月23日(金)  今日はシナリオの日
2002年01月23日(水)  ラッキーピエロ


2005年01月22日(土)  変わらない毎日。変わらない大統領。

■ブロードキャスターをなんとなく聴きながらパソコンを打っていると、面白い台詞が耳に飛び込んできた。「変わらない毎日を男は安定だと思い、女は退屈だと思う」。結婚や同居をしている男女が別れに至るのはなぜか、といった話の流れで、山瀬まみさんが発言。わたしも夫も思わず大きくうなずいた。安定を求める男と変化を求める女。そんな二人が一緒に暮らしていくには、ときどきハプニングはあるけれど穏やかな日々が理想なのだろうか。■ブロードキャスターは情報量が多くて、なかなか面白い。お父さんのためのワイドショー講座でランクインしていた「ブッシュ大統領2期目風刺ビデオ」(番組でのキャッチは「ブッシュアニメ化大統領」)を見たくて「President Bush Animation」で検索。JIBJABのサイトにたどり着くまでに寄り道、回り道。クリエイター魂をくすぐるキャラクターなのか、ブッシュ大統領主演のビデオやアニメは大量生産されている。

2002年01月22日(火)  夢


2005年01月21日(金)  1人1ピッチャー!? 体育会飲み会

■大学時代に入っていた応援団は体育会という組織に入っていて、他の運動部ともコンパや打ち上げや研修(結局どれも飲み会)などの交流があった。その体育会のメンバーが恵比寿で集まるというので、2次会のZESTから参加。1次会は飲み放題コースだったはずだが、テーブルにはビールがピッチャーでどかどか。「わたしはフローズン・マルガリータが飲みたいなあ」と言うと、それもピッチャーでどかどか。オシャレな飲み物にはまったく見えない。さらにワインもどかどか。ワインとマルガリータを混ぜる者あり、持ち込んだワインボトルのコルクをナイフで無理やりこじ開ける者あり。体育会魂、百まで。それでも「昔はもっと飲めたのになあ」と若かりし頃を懐かしむ面々。皆いいおっさんになり、パパになっていたりする。お会計になると、先輩風を吹かせたがる者ぞろいで、一万円札を出して「釣りは、いらん」。幹事の手元は一万円札が扇状態。そのお金で、意識のある人もない人も一風堂へ向かう。みんな、食べたこと覚えてる?

2002年01月21日(月)  祭り


2005年01月16日(日)  サイレント映画『A Clever Dummy』『The Cheat』

■鉄道と映画を愛するご近所仲間のT氏より「日本人初のハリウッド映画スター、早川雪洲が出演する、90年前のフィルムを見ませんか?」のお誘いを受ける。ずいぶん前に「世界ふしぎ発見」で早川雪州を取り上げていたのを観て興味を持っていたこともあり、京橋のフィルムセンターへ。昔のサイレント映画をフィリップ・カーリ氏のピアノ伴奏つきで楽しむ「シネマの冒険 闇と音楽」企画での上映。「日本にも優秀なピアノ伴奏者が居ますが、海外の専門ピアニストを招いて伴奏させて映画を見る機会は滅多にございません。また、フィルムも、NFC所蔵フィルムだけではなく、海外のフィルム・アーカイヴから取り寄せた状態の良いものを使用し、映写速度も公開当時のものに合わせて上映するという贅沢なものです」というT氏の熱い言葉に期待も膨らむ。■雪洲出演作だけかと思ったら、まずは『機械人形(A Clever Dummy)』(27分)を上映。喜劇俳優Ben“やぶにらみ”Turpin(1874−1940)演じる使用人が自分そっくりの機械人形を見つけて巻き起こすドタバタ劇で、ノリはMr.ビーンに近い。パントマイム的な万国共通の笑いがちりばめられているうえ、ところどころに「にせ手紙」などと画面いっぱいに字幕が入るので、台詞がないのにわかりやすい。■引き続き、雪州の出世作『チート(The Cheat)』(59分)の上映。その前に「お断り」が入る。プログラムには「上映プリントは字幕でビルマ人役に修正した再上映版」とあるが、「ジョージ・イーストマンハウスによる新たな復元版を上映」すると言う。1915年上映のオリジナル版に近いものが観られるというわけで、これはうれしい。雪州演じるTori(日本語は「トリ」となっていたが、鳥居の焼印を押していたので、「トリイ」か?)の役どころは「金で心を買おうとする日本人」で、当時の日本では「こんな悪役で出るなんて国辱ものだ!」と大批判を受けたのだとか。作品の中の雪州は、確かに残忍な男を演じているのだが、何とも神秘的で美しくセクシー。彼の屋敷で仕えている下男たちもいい男ぞろい(全員が日本人かどうかは不明だが、出演者の中にジャック・ユタカ・アベ=阿部豊という名前がある)で、当時のアメリカにおける日本男児像はかなりいけてたのではと思う。太平洋戦争がなければ、第二第三の日本人ハリウッドスターが続き、「日本人ってカッコいい」がスタンダードになれたかもしれない。■物語では焼印が重要な役割を担っている。オープニングの人物紹介ではトリイが鳥居の焼印を押す。トリイの部屋を有閑夫人が訪れるシーンでは、焼印を押しながら、トリイが「(焼印は)自分の物という意味です」と語る(台詞は字幕)。慈善活動資金に手をつけてしまった夫人の補填を買って出たトリイは、夫の投資の成功で金が入った途端に態度が変わった夫人の裏切り(cheat)に怒り、夫人の肩に焼印を押す。そして、トリイを撃った夫人をかばった夫が裁判にかけられるのだが、法廷シーンでは夫人が「撃ったのは私です」と告白し、動機となった焼印跡を法廷でさらす。焼印=日本かどうかは疑問だが、トリイが焼印を押す日本間は日本風の家具や装飾品で占められ、障子窓を開けると日本庭園が広がる。トリイを「ビルマ人」に設定し直すのは無理があったのではないだろうか。■ピアノ伴奏のフィリップ・カーリ氏は、大柄でにこやかなおじさん。上映前と後に首をかしげるようにペコっと頭を下げて挨拶する姿が愛らしかった。あまりに内容と演奏がぴったり合っていて、生演奏なのを忘れてしまう。楽譜と画面を両方見ながら合わせているのだろうか。技術力はもちろん弾きっぱなしの集中力と体力も要求されるが、最後までタッチは乱れない。13歳から無声映画の伴奏をしている大ベテランの余裕を感じさせた。■アフターシアターは銀座一丁目の天龍(銀座2−6−1 中央宣興銀座ビル1F 03-3561-3543)へ。名物の餃子はエクレア並みに大きくてジューシー。他のメニューも味、ボリュームともに大満足。お酒も飲んで一人3000円でおつりが来た。

◆この日記を読んだT氏より指摘。
「焼印はもともとアメリカでは自分の牛に押したりするのに使われていた。それを女性の体に押すなどもってのほか。そんな野蛮男を日本人の雪州が演じたということで日本では国辱だと批判が上がった」「雪州がハリウッドでの活路を絶たれたのは戦争のせいというより恐慌の影響が大きい。少ない仕事を奪う勤勉な日本人への風当たりがきつくなり、雪州もいやがらせに遭ったりして日本に引き上げるに至った」とのこと。

2004年01月16日(金)  尽在不言中〜言葉にならない〜
2003年01月16日(木)  ど忘れの言い訳


2005年01月15日(土)  ノンストップ『Mr.インクレディブル』

■ようやく『Mr.インクレディブル』を観る。作品ごとに新境地を拓いているピクサー。苦手だといわれてきた「人間」がついに主人公に。リアル追及ではなく2Dアニメのデフォルメ手法をうまく取り入れることで、生きたキャラクターを創り出すことに成功したのは、さすが。主人公一家のキャラクター設定のデフォルメ具合も、これまたさすが。冒頭から息もつかせぬ展開で、どうなるどうなると観ているうちにラストに突入。起承転結でいうと、起承転転転結と思ったらまた転結といった感じで、絵の動きはもちろんストーリーもスピード感抜群。このスピードに乗って観ていると痛快なのだが、破壊シーンが多すぎて、途中でしんどくなった。戦闘もの、破壊ものは観ていて疲れる。『スチームボーイ』『スパイダーマン2』そしてこの『Mr.インクレディブル』と、人間の作った「黒くて足がいっぱいの機械」が人間に制御できなくなって混乱を招くという図式が流行りなのだろうか。『ハウルの動く城』の城も黒くて足いっぱいだけど、あの城も反乱を起こすのか、観に行かなくては。■クレジットロールがはじまり、ようやく一息と思ったら、タイトルバックのモーショングラフィックがこれまたよくできていて見入ってしまった。『キャッチミー・イフユーキャン』のタイトルロールはCM界ではけっこう話題になったけど、それを彷彿とさせる。『Limony Snicket's...』のクレジットロールも凝っていたし、タイトルやクレジット周りまでエンターテイメントに仕立てるのが流行りだとしたら、うれしい。「(本編よりも)そういう映像に惹かれてDVD買っちゃう人もいるよね」と同僚グラフィックデザイナーの意見。

2004年01月15日(木)  谷川俊太郎さんと賢作さんの「朝のリレー」
2003年01月15日(水)  ひつじの国 ひつじの年
2002年01月15日(火)  ノベライズ


2005年01月10日(月)  オペラシアターこんにゃく座『森は生きている』

三軒茶屋の世田谷パブリックシアターにて、オペラシアターこんにゃく座公演『森は生きている』を鑑賞。イギリス旅行以来、オペラ・ミュージカルづいている。

今日の観劇に至ったきっかけは、半年前の発見。小中学校の同級生で、現在はチェロ奏者として活躍している中田有ちゃんのことをネット検索してみたら、『ぼくたちのオペラハウス』というCDを出していることがわかった。演奏者のところを見ると、中田有と並んで林光という名前がある。もしかして、義父がよく話している「こんにゃく座の林さん」だろうかと思って義父に聞いてみたら、そうだった。宮澤賢治の研究に関わっている義父は、宮澤賢治作品を題材にすることの多いこんにゃく座とは長いおつきあいだが、知り合ってもう三十年近くになるわたしと有ちゃんも負けていない。その有ちゃんがこんにゃく座の公演で演奏すると聞いて、義父とともにかけつけたのだった。

『森は生きている』の原作は『十二月物語』というロシアの児童文学。日本での初演は1954年だが、なんとそのときの作曲が林光さん。以来、半世紀以上も林さんの音楽とともにこの作品は日本で上演され続けている。そういえば、子どもの頃、おやこ劇場の鑑賞会で観たことがあった。そのとき聞いた歌も林さんの作曲だったのだろうか。全体的には聞いたことがあるような、ないような。でも「燃えろ燃えろ」ではじまる歌には確かな聞き覚えがあった。女王様の気まぐれでまつゆき草を探しに行くというストーリーも、観ているうちに思い出してくる。

役者が歌っているというより、歌手が演じている。表現力豊かな歌に引き込まれた。出演者は十二人。十二月の精だけで十二人以上なので一人二役以上を早変わりでこなしている。心優しい村娘が「十二月のみなさん」と言うとき、実際には十一人しかいなかったり、女王が精を兼ねていたりするのだが、それを不自然に感じさせないことに感心。隣の女の子は途中から数え直しては首を傾げていたけれど。面白かったのは、小道具のトランク。早変わりの着替えを入れるスーツケースであり、椅子であり、積み上げて馬車にもなり……と場面に応じて自在に変化。十二月の精たちが手にしたトランクを一斉に開けると、白いまつゆき草の花が咲きこぼれていたのには、思わずため息がこぼれた。

お目当ての有ちゃんのいるオケピには第二部の開幕と閉幕のときに光が当たり、有ちゃんの顔もしっかり見えた。どの音がチェロなのかまでは聞き分けられなかったけれど。楽屋を訪ね、少しだけ世間話。最近はクラシック以外での活躍が増え、Kinki kidsのコンサートでは5万人の歓声のなかで弾いたそう。教え子という小学一年生の男の子がお母さんと一緒に挨拶に来ていた。小学生の頃、有ちゃんが抱えているチェロはとても大きく見えたことを思い出す。

大阪の母に電話し、わたしが以前観た『森は生きている』を演じたのは劇団仲間だったとわかる。同劇団は今も公演を続けているが、作曲はやはり林光さんだった。さらに、小学校教諭をしていた母が参加した研修会でパネラーとして話されたのも林さんだったという。わたしが生まれる前の話。

2004年01月10日(土)  ラブリー「ニモ」!


2005年01月05日(水)  英国旅行10日目 オクトパスと三越とママの会とフレンチ


Heron Lodgeでの4泊は快適そのもの。夜遅いと心細いのでタクシーを使わなくてはならない不便はあるが、一泊一人£23でバスタブつきの部屋はありがたく、歩き疲れた体をお湯にしずめて癒す時間は至福だった。"Inspired Breakfast Award"受賞の朝食は4種類あり、全部制覇。何よりもChrisとBobの心づかいがすばらしい。財布事件では自分のことのように心配し、見つかったときには心から喜んでくれた。また帰りたくなる場所。9:42 Stratford発Marilbone行で11:55ロンドン着。少し歩いてcircle lineの駅からSlone Squareへ。駅前のブラッセリーで昼を食べ、Y邸に預けておいたスーツケースをピックアップし、タクシーでイギリス最後の宿The Rubens at the Palaceへ。

今回の旅で唯一のホテル宿泊で、チェックインするのもはじめて。ここは駆け込み宿泊をディスカウント予約できるサイトlaterooms.comで知ったのだが、ホテルのオフィシャルサイトに行ってみると、「ここで提供しているレートより安いところがあれば、お知らせください。その料金からさらに10%下げます」と表明。朝食つきツインを£99でおさえたが、通常レートだと£250以上するらしい。ディスカウントしているからといって安っぽいホテルではなく、建物も装飾もクラシカルで格調があり、従業員は皆フレンドリーで親切。red carnationというホテルグループのひとつで、隣には41hotelというワンランク上のホテルが建っている。従業員の胸にもバスルームにも赤いカーネーション。バスローブにも刺繍されている。なぜゆえレッドカーネーション?と聞くと、"Red carnation is the flower the owner fell in love with"とコンシェルジュ。なんだか素敵。

38番のバスに乗ってピカデリーサーカスへ。地下鉄とバス1日乗り放題券£4.5は3つ乗れば元が取れる。たまたま入ったショッピングモールで、わたしの目を釘付けにしたのがoctopusという雑貨屋。イギリスに来てこれほど物欲が湧いたのは初めて。引き出し、ライト、トースター、全部変で全部欲しい!シュガーポットと自転車のベルとバッグを買う。ポップな見た目の割には、けっこういいお値段。

舞台のPhantom of the Operaを上演しているHer Magesty Theaterをのぞくと、今夜もチケットはSold out。三越でしか売っていないという紅茶を買いに行くと、店内は日本!値札もポスターも日本語があふれ、店員さんもお客さんも日本人。地下のお土産コーナーでは「日本未入荷」と誇らしげな紅茶やジャムが並ぶ。京都に住む友人に「電車男に出てくるレノアって紅茶買ってきて」と頼まれて、あちこちの街で探したのだが、結局見つからなかった。(帰国して調べると「ベノア」だった。そりゃあ見つかりません)

三越近くの広場の露店でハートのキャンドルを買い、一人でホテルの部屋に戻る。5時過ぎ、留学時代の同期のN子が10月に生まれた長男君を抱いてやってくる。続いて、先日泊めてもらったご近所仲間で元同僚のI嬢が訪ねてくる。2月に出産を控えているI嬢とN子を引き合わせ、女三人で出産の話。この展開を予知したダンナは買い物を続けているが、「赤ちゃん連れなら部屋で会ったら?」と提案したのも彼だった。医学生でもあるN子の話はわかりやすく、わたしも今後のためによーく聞いておく。長男君でオムツ換えの実演、抱っこの練習も。イギリスは「自然なお産」の世界最先端を行っているそうで、好きなCDで音楽をかけ、アロマを焚いて水中出産なんてことができるらしい。

夕食はC君I嬢夫妻とともにチェルシーのLa Poule au Potへ。今回の旅行ではじめてのフレンチで、ジビエ料理が自慢のメニューはフランス語。フランス語もわかるC君にチョイスはまかせる。ダック、うさぎ、鹿などがそれぞれの肉に合った調理法で運ばれてくる。しっかりした肉の味は赤ワインによく合う。パンやバターはさすがフレンチ、つけあわせの野菜もおいしい。今回の旅の途中、ダンナが「結婚していちばん良かったことは何だろう?」と言い出し、それはご近所の会を結成したことではと二人で話した。ご近所仲間の二人がいなかったら冬のイギリスを訪ねることはなかっただろうし、ロンドンでこんなに楽しい時間を過ごすこともなかっただろう。人生をおいしくしてくれる友人がわたしたち夫婦の財産だとあらためて思った。

2002年01月05日(土)  知ってるつもり


2005年01月04日(火)  英国旅行9日目 ティーとブラッセリーと中華とショコラ

■やっとパブリックバスが走る!今日こそコッツウォルズの村へ。タウンセンターのBridge St.から本数は少ないが定期便がある。終点のMorton in Marshからバスを乗り継げば、前回訪れたときに感動した村Borton on the Waterに行けるのだが、接続に期待はできない。一本で行ける村はBroadwayとChipping Campden。まず遠いほうのBroadwayへ。一人£2.2。30分ほどで着くが、羊あり、はちみつ色の街並みあり、バスから眺める風景も楽しい。Broadwayはレストランや商店が並ぶ一本道のHigh Streetの他には教会があるぐらいの小さな町。30分も歩けば見て回れるが、観光協会(どんな小さな村にも必ずあり、親切なおじさんかおばさんがいる)ですすめてもらったティールームでゆっくりランチとお茶をすることに。
■とてもラブリーな店だが、応対したロッテンマイヤーさん風おば様は、他の客にはにこやかに愛想をふりまくのにわたしたちには注文をとる以外は口をきかず、「ここ座っていいですか?」「トイレはどこですか」などと質問しても、眼鏡の奥から上目遣いに見据えるだけだった。日本人は何か嫌な思い出でもあるのだろうか。そういえば、「日本人が何かやらかした跡」にあちこちで出くわす。「ドアは持ち上げて引く」「走行中は立ち上がらない」「お勘定は出口でお願いします」といった日本語の貼り紙のまわりに英語や他の言語のものが見当たらないのは、「言葉は通じないがトラブルを起こす日本人対策」だと思われる。中には書き写したようなたどたどしい日本語もあり、よっぽど差し迫った事情があったのだろうかと想像すると、痛い。ドアがうまく開かなくてもなるべく騒がないようにしよう。
■Chipping Campdenまではバスで15分ほど。元来た方角に戻るのに、なぜか降りた停留所から乗る。Broadwayよりはひとまわり大きな街だが、Broadwayよりも観光地っぽくなく自然な佇まいがある。こっちで昼を食べるべきだった。洒落たブラッセリーに入り、「飲み物だけでもいい?」と聞くと、快い返事。何でも作れると言うのでモカチーノを注文。ここのトイレは、木の便座、テラコッタタイル率の高いイギリストイレの中でも特筆もので、エンボスつきトイレットペーパーに感激。この村は買い物も楽しく、キッチュな指輪(£2.25)や紙と布でできたミニミニスーツケース(£8.5)を衝動買い。
■醤油の味が恋しくなって、夕食はStratfordのMayflowerで中華。スープとおかず3品と炒飯で二人前£24は、ボリュームの割におトクだが、ここでも感じのよくないおばさんに当たってしまった。映画『The Marchant of Venice』を見ようかどうか迷うが、寝そうなので早めにHeron Lodgeへ引き上げる。部屋に置いてある本や雑誌の中に映画ショコラの原作Chocolatを発見。原作ものだったとは知らなかった。途中まで読んでいたら、いい感じで眠くなる。

2004年01月04日(日)  じゅうたんの花の物語
2002年01月04日(金)  ひだまりでウェイクアップネッド


2005年01月03日(月)  英国旅行8日目 妻・母・長女の家と財布とシーザー

■5つあるShakespeare Houseのひとつ、シェイクスピアの妻、Ann Hathewayの家は宿泊先のHeron Lodgeから歩いて10分ほどの緑の中にある。木の上を走り回るリスを見上げながら10時の開館を待つ。「シェークスピアも興味ないのに、妻の家を見せられてもねえ」とダンナは渋々お付き合い。シェークスピアは結婚前、現在タウンセンターにある生家から徒歩でここまで通っていたそう。わたしたちは昨日Ann Hatheway Houseからタウンセンターへ抜けたのだが、もしかしたら同じ道を歩いたのだろうか。「シェイクスピアとアンが会うときは必ずアンの家族の目があったが、なぜか結婚したときアンはすでに身ごもっていた」らしい。ここは庭が素敵で、寄付した人のメッセージ("Eternity is in your lips and eyes""I loved nothing in the world so well as you"など詩のようなフレーズも)が刻まれたベンチや彫刻や植え込みでできた迷路などが上品に配置されている。これらは最近の試みのよう。■ギフトショップで買い物しようとして、トラブル発覚。財布がない!あわててHeron Lodgeに戻ると、部屋にもない。最後に使ったのは、昨日タクシーで宿に戻ったときだから、落としたとしたらタクシーの中。ベルを鳴らし、ChrisとBobに助けを求めると、ストラットフォード中のタクシー会社に電話してくれるが、答えはことごとくNO。ところが最後に警察に電話したBobが「Fantastic!」と叫んだ。なんとわたしたちの後に乗った乗客が車内で拾って届けてくれたらしい。警察署に現れたわたしを見るなり、窓口の女性が「あなたがラッキーレディーね」とにっこり。クレジットカードに顔写真が入っているおかげで本人確認もスムーズ。届けてくれた親切な人の住所と電話番号を聞き、電話でThank youと伝えると、良かったと喜んでくれる。お礼なんていりませんよと遠慮されたが、日本から何か送ろうと思う。ほっとしたらおなかがすいて、EDWARD MOONでスープとビーンライスをもりもり食べる。綾戸智絵風な元気笑顔のウェイトレスさんがとてもいい感じ。■バンクホリデーなので今日もパブリックバスは走っていない。シェイクスピアハウスを解説付きで巡回する観光バスを使うしかないが、£8もするくせに解説の日本語はコピー的にもナレーション的にも改善の余地大いにあり。「妻の家も興味ないけど、お母さんの家もねー」とぼやくダンナを引きつれ、郊外にあるMary Arden's Houseへ。タウンセンターに戻り、「今度は長女夫妻ですかい?」。長女の夫は外科医で、当時の医療器具やカルテも展示されている。このハウスに併設されたティールームはとてもいい雰囲気なのだが、4時でclosed。残念。■近くに教会があるので行ってみると、ここにシェイクスピアが眠っているという。妻のアンや母のメアリーの名前もある。高い天井、ステンドグラス、閉館前で他に訪問客はいない。あなたの今日のdonationもTSUNAMIで被害に遭った人に届けられますよと案内の男性。どこの教会へ行っても「TSUNAMI DISASTER」への募金と理解を呼びかけている。「正面は鍵閉めちゃったから、こっちから出て」とおばちゃんが先導してくれ、立派な教会とギャップの事務室のようなところを抜けて裏口に出る。「バックステージを見られてラッキー」と言うと、おばちゃんは笑っていた。
■昨日一昨日に比べると今日は人出が多く、Avon川のほとりを散歩する人の姿も目立つ。シェークスピア気分が高まり、「今夜はシェイクスピア劇に挑戦しよう」。「Caesar」のチケットを求めると、立見しか空いていないが£5だと言うので購入。劇場のSwan TheaterはRoyal Shakespeare Theaterの隣。ここには小さなミュージアムがあり、過去の公演で使われた衣装が展示されているが、点数は少ない。川の近くのダイナーで腹ごしらえ。カウンターでテーブル番号を伝えて注文するスタイルだが、チップの煩わしさもなく、長居出来た。ここも店員さんはウェルカムな感じ。さて、Caesarは予想を裏切り、ウエストサイド物語の決闘シーンのような衣装とライティングで幕開け。ダンスが始まるのではと期待させたが、ひたすら台詞、台詞。元ネタがよくわかっていない上に現代風にアレンジしているので、わけがわからない。聞き取れるのは「シーザー!」だけ、と思ったら、もうひとつ、「ブルータス!」も出てきた。この状況で、バーにつかまっての立ち見もキツイ。客席を見回すと、皆腕を組み、神妙な顔つき。退屈しているのか反芻しているのか。と、万雷の拍手。すばらしーというより、やっと終わったーと聞こえる。1時間半かけて第一部が終了したのだが、見続ける体力はなく劇場を出る。£5のチケットに未練なし。
■パスタが食べたくなり、CAFFE UNOというイタリアンへ。二人合わせて大人一人分の小柄なわたしたちはどの店に行っても「一皿をシェアします」と言うのだが、取り分け皿を出してくれるお店さえ稀なのに、この店は最初から二皿に盛ってきてくれた。「わたしもコレ、今日の夕食に食べたのよ」と言うウェイトレスにも好感。味も期待以上。

2004年01月03日(土)  庚申塚の猿田彦神社
2002年01月03日(木)  留守番


2005年01月02日(日)  英国旅行7日目 生家と古城とリモニー・スニケット

■「今日は日曜日なのでバスは走ってないよ」と言われ、電車でWarwick Castle(ウォーリック城)へ行くことに。Heron Lodgeからfootpath(小道のようなもの。あちこちに「footpath」の看板がある)を40分かけて散歩しながら10時前に駅に行くと、「次の電車は11時57分」と言う。待ち時間にShakespeare's Birth Place(シェークスピアの生家)を訪ねる。シェークスピア関連ミュージアム5館共通チケットは£13。別々に買うと£25.6。こっちのcombine ticketは割引率が大胆。ちなみにWarwickまでの往復切符と入場料のcombine ticketが£14で、入場料だけだと£13.5。■Shakespeare's Birth Placeではシェークスピアが暮らした時代をできるだけ再現。当初は手袋職人として生計を立てていたシェークスピアの工房も当時の風情を伝えている。「手袋職人は、いい仕事だったの?」「手に職があるというのはいつの時代もいいことですよ」といったやりとりがゲストと案内係の間で交わされている。とても小さなベッドに驚く。
■駅へ向かう途中でHathaway's Tea Room(Hathawayはシェイクスピアの妻の旧姓)でクロワッサンザマンドとティーをテイクアウト。あわせて£1.85とリーズナブル。イートインもできるお店だが、ショーウィンドウに並んだパンやスイーツがそそる。何より驚いたのが、店番していた女の子たちが恐ろしくかわいかったこと。美人遭遇率の低いこの国で一度に三人の美少女が出現。顔立ちからすると東欧系かもしれない。結局、この旅で出会った美女ベスト3は彼女たちが占めることに。■電車の切符はFrom:Stratford To:Warwick Castleとなっている。Warwick Castleという駅があるのではなく入場券込みの意味だが、Warwick駅の手前にWarwick Parkway駅があり紛らわしい。日本のような親切な路線図が車内にあるわけでもなく、電車乗るのもドキドキ。約25分で着き、駅から10分ほど歩く。ただの城跡かと思いきや、見所満載でテーマパーク化しているWarwick城。有名なマダム・タッソーが蝋人形で再現した当時の優雅な暮らしは、蔵書3000冊のライブラリー、客人のためのベッドルーム、マダムたちが集うオリエンタル長の部屋……と何部屋にもわたり、見ごたえ十分。外では530段の階段を上り下りして要塞に上ったり、水車小屋のある川べりを散歩したり、Peacock Gardenで目の前をうろうろする孔雀に驚いたり、地下牢跡をのぞいて身震いしたり、中世の拷問道具の展示にギョッとしたり。一時間ごとに人形劇や大道芸(派手にお皿を割るヘタクソな兄ちゃんが愛嬌で勝負)があり、さらにお金を出せば占いや輪投げ、お化け屋敷にスケートリンクまである。カフェテリア形式のレストランの食事も動物園とは大違い。なんたってお城だし。野菜コロッケ風メニューがおいしそうだったので注文すると、レシートにはkid's menuと印字されていた。日曜日で電車が2〜3時間に1本しかなかったのだが、遊びきれないので5時間滞在。
■今夜のストラットフォードは芝居もなく、昨日以上にひとけはない。そんな中、妙ににぎわっているレストランVintnerに入ると、大当たり。対応よし味よし、アスパラとルッコラのバルサミコ酢&パルミジャーノ、ケイジャンチキン&アボカド、ほうれん草とリコッタチーズのラビオリをぺロリ。親切なウェイターが「この街にはcinemaがある」と隣の客に話しているのを聞きつけ、場所を教えてもらったのも収穫。
■映画館は、何度も通っている時計台前から少し奥まったところにあった。8:30からMarchant of VeniceまたはLimony Snicket's a series of Unfortunate Eventsの上映。シェイクスピアの里でベニスの商人を観るのも粋だけど、ジム・キャリーが怪しいオッサンになって三人の子どもたちをびびらせているポスターに惹かれて後者を選ぶ。ここでも一人£5.5。このLimony Snicketが掘り出し物。「げ、スクリーン間違えた?」と焦るような明るいアニメではじまり、「これはこれから上映する作品とは別物。ハッピーエンドがお好みなら、今からでも遅くないから他のスクリーンへどうぞ」と人を食ったナレーションが入る。主人公はBeaudelaireの三きょうだい、inventer(発明家)の姉Violet(Emily Browning)、reader(読書)の弟Klaus(Lian Aiken)、biter(何でもかじる!)の赤ちゃんの妹Sunny(Kara and Sherby Hoffman なぜ二人?)。 両親を失い、孤児になった三人は莫大な遺産を相続するが、それを狙うのがジム・キャリー演じる初代後見人Count Olaf。本気で子どもたちを殺そうとするし、2代目3代目後見人guardianにも容赦なく手を出すし、長女との偽装結婚まで企てるし、子ども相手に本気で立ち向かってくるのだが、きょうだいは発明したり本の知識を応用したり噛んだりしてピンチを乗り切る。はちゃめちゃのまま突っ走るのかと思いきや、ラストには泣ける手紙。あなたたちにはお互いがいる。どんなに小さくてもサンクチュアリを作ることは出来る。どんなときにも何かできることがある……。"There is something"は何度も出てくるフレーズ。絶望的に見える状況でも何かある、何かできる、と希望を失わない三人のたくましさに拍手。演技もブラボー。語り部リモニー役はジュード・ロウ、文法命の後見人Josephine役はメリル・ストリープと贅沢なキャスティング。クレジットロールの屏風調アニメも凝っていて、ビジュアル的にも楽しみが尽きない。わたしは知らなかったけど、原作のリモニー・スニケットは全世界で1800万部売れている人気シリーズなのだそう。映画の邦題は『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』。

2004年01月02日(金)  金持ちよりも人持ち
2002年01月02日(水)  パワーの源


2005年01月01日(土)  英国旅行6日目 嵐とプリンと美女と野獣

■ロンドンからシェイクスピアの故郷Stratford upon Avonへ行くには「Paddington駅から」とガイドブックに書いてあったので、Paddington発Stratford upon Avon着で列車を検索し、プリントアウトを持ってきた。乗換えがいっぱいで厄介だなあと思っていたら、乗換え1回というルート見っけ。London Paddington駅から地下鉄で2駅のLondon Marylbone駅へ行けば、あとは一本。地図で調べると、Marylboneは「ロンドンにいくつもある鉄道始発駅のひとつ」だとわかる。二日酔いのC君に直接駅まで送ってもらい、乗換えなしで終着駅のStratford upon Avonまで約2時間半。今夜から4泊するB&B、Heron Lodgeは駅をはさんでタウンセンターと反対側へ約1マイル。ご主人のBobに駅でピックアップしてもらい、宿に到着すると、夫人のChrisが温かいお茶とクッキーで迎えてくれる。
■外は強い風雨だが、傘を借り、タウンセンターまで歩く。雨の元旦ということで人出は少なく、開いている店もまばら(商店は5時で閉まることを後で知る)。だが、ロイヤルシェイクスピア劇場では今夜上演があると言う。窓口で「なるべく舞台に近い席」をお願いすると、前から3列目が空いていた。芝居前に腹ごしらえする客目当てのレストランが集まるSheep StreetのOppoという店で海鮮サラダとラザニアの夕食。イギリス料理にしては繊細な味つけ。バースより食事のレベルは高いのかも。調子に乗ってデザートも注文したら、甘さに卒倒しそうになる。
■7:15Beauty and Beast開演。黒いスーツとドレスに白塗りの顔の男女が客席側から舞台に上がり、呼吸を合わせてサングラスをかけ、スポットライトがONになる。かっこいいオープニング。このお芝居では彼らが黒衣とダンサーを兼ねる。対照的な白い衣装の男女8人が登場。お金持ちの夫婦と6人の子どもたち。長男は天文家を夢見る勉強バカ。次男はオリンピックを目指すスポーツバカ。三男は嫌われ者のただのバカ。長女は高望みな生意気娘。次女は物欲狂いの病気ちゃん。今度こそ、の望みを託されて生まれた三女は生まれたときに"Qu'est bella la Monde(世界は何て美しいの!)"と言ったことからBeautyと名づけられ、姿も心も美しい子に育つ。■舞台装置は極めてシンプルだが、想像力をかきたてる計算が尽くされている。母が亡くなり、父が事業に失敗し、召使つきの生活から一家が没落するシーンでは、天井から吊るされた7本のハンガーに父子がそれぞれの上着をかける。天井に引き上げられる上着を見上げる7人は客席に背を向けているが、もう手が届かない優雅な暮らしを惜しみ、行く末を案じる気持ちは、表情を見せないことでかえって伝わる。そして、自らが耕すことになる荒野へ向かう7人は、天井から吊るされた大きなブランコに乗り込む。ステージ上をスイングするブランコの上で力強く歌う父子。その下では沼地を表す茶色い布が張られ、布の下を動き回る黒衣の動きがぬかるみを表現。左右からパペットのウサギが現れると、"What's that?""Dinner!"と笑いを取ることも忘れない。ロープ使いといえば、道に迷ってBeastの屋敷に迷い込んだ父がBeautyのために摘むバラの花は、左右からピンと張られたロープの真ん中に咲いていた。Beastが天井から壁を這って登場したり、Beastの屋敷のMirror Roomの「鏡」を枠と黒衣のパントマイムで表現したのも面白かった。役者もレベルが高く、Beauty一家とBeastはもちろん、三枚目役のロボット召使(三男、長女が二役)のコミカルな演技も爆笑を誘っていた。■ディズニー映画のBeauty and Beastは大家族の設定でなかった気がするが、この舞台は、バラを摘んだのを見つかった父がBeastに「生きたまま食うぞ」と脅され、「さもなくば、Beautyという愛娘を差し出せ」と持ちかけられる。父の苦悩を知ったBeautyが自ら宮殿に乗り込み、Beastと心を通わせ、呪いを解く。感動的なストーリーだが、呪いが解けて人間の姿になったPrinceが立ち上がったとき、観客の目に最初に飛び込んだのが淋しい頭髪で、ちょっと夢がさめてしまった。大団円のウェディングパーティーの後、冒頭と同じく黒衣たちが舞台中央に集まり、ポーズを決め、サングラスをかけ、指で「オフ」の合図をするとライトが落ちる。その瞬間沸き起こる拍手の嵐にゾクゾク。シェークスピア作品ではないけど、さすがシェークスピア劇場!

2003年01月01日(水)  2003年の初仕事
2002年01月01日(火)  幸先
1999年01月01日(金)  テスト

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