セクサロイドは眠らない

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2001年12月23日(日) 私は魔法に掛かったように眺める。その、繊細な手が、お互いの体の隅々までを満たし、満足の呻き声が上がるのを。

お金があれば、大概のことは何とかなる。

田舎から出て来て、売れっ子の漫画家になった私は、そのことに気付いた。お金があれば、自分を作りなおせる。別人になれる。

顔を整形して、高価な服を着ていれば、男のほうから私に声を掛けてくる。

そう。私が夢見ていた生活。田舎での辛い日々は、もう忘れてしまいたい。

だから、私は、変身した自分が再び醜い女に戻らないように、必死になってお金を稼ぐ。テレビのバラエティに出て、笑顔を振り撒く。それをネタに漫画を描く。

--

目の前の男は、どことなく退屈だった。背が高く、美しく、私を優雅にエスコートしてくれる男は、時間とともに、そばに置いておくのが苦痛なくらいに退屈な存在になってしまった。どこがまずいのだろう。一緒に歩けば人が振りかえるほどに美しい男なのに。

男は、私の退屈に気付いて、
「そろそろ帰るよ。」
と、私の額に口づけた。

「ええ。」
一刻も早く立ち去って欲しい私は、投げやりに答えた。

「ねえ。お金。」
「え?」
「お金、貸してくれませんかね。」
男は、私に媚びるような視線を向けた。

そういうことね。だから、あなたはつまらないんだわ。

「いいわよ。」
私は、財布にあるだけの紙幣を渡しながら、言う。
「もう、二度と私の前に来ないで。」

男は、どことなくホッとしたような表情を浮かべて、紙幣を内ポケットに仕舞うと、急いで帰っていった。

つまらない。心の空虚はどんどん広がる。気付かぬうちに涙が出ていた。お金だけでは、まだ埋まらない部分が心の中にはたくさんある。

私は、気分を変えるために、夜の街に出掛ける。

それから、フラリと、目についた店に入る。美しい男女がひしめいている。狩りをするための店。何人かの男に声を掛けられたのを無視して、私は、グラスを手に取る。私は、店に入った時から一人の少年に釘付けになる。

その少年の美しいこと。目立つこと。その傲慢な仕草が、どうしようもなく私の心の揺らぎ易い部分を掴んで、私はそこを動けない。

「僕のこと、ずっと見てるね。」
気付けば、彼がそばにいて。

「ねえ。今夜、付き合ってくれない?」
「いいけど。」

私と彼は店を出る。誰も私達に気付かない。

--

彼の美しい裸身は、私を拒絶する。

「ねえ。私じゃ、駄目?」
「ああ。駄目だよ。」
「どうして?」
「だって。きみ、醜いじゃないか。」

彼は、クスクス笑う。

私は、ひどい屈辱で体が震える。

「ねえ。駄目だよ。きみ。体中の毛穴からにじみ出てるよ。愛されたいと。そんなじゃ、駄目だ。傷付くばっかりで。みっともなくて、見てられない。」
彼は、美しい体を私に見せつけるように、どこも隠さず横たわる。

「あなたはどうなの?誰かに愛されたくはないの?」
「僕?僕は、僕しか愛さない。誰かの心を請わない。」
「ねえ。人はどうして愛されたいと願うのかしら。」
「愛されなくちゃ、ここに生きた意味がないからだろう。僕は僕しか愛さない。自分より醜いものは愛さない。そうすれば、一人でも悲しくないんだ。」

彼は、背中の黒い羽を広げると、一枚の羽を引き抜く。彼が息を吹きかけると、それは、美しいもう一人の彼になる。

目の前で、少年が二人で絡み合っているのを、私は魔法に掛かったように眺める。

その、繊細な手が、お互いの体の隅々までを満たし、満足の呻き声が上がるのを。

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目が覚めると、私は一人で冷たいベッドに寝ていた。

私は、背中に手をやる。

そこにある羽を引き抜いて、少年がやったように息を吹きかける。

羽は、私に変わる。

だが、それは、醜い女。田舎にいた頃の、太った醜い女。

私は、泣いて、ライターの火を向ける。醜い私は一瞬にして燃える。

もう一枚、羽を引き抜く。

悲しい女がいた。

私は、火を点ける。

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「何度電話しても出ないからって、事務所の方が心配してるわよ。」
彼女の母親が、心配して娘の家を訪ねて来た。
「なによ。これ?どうしたのよ?」

彼女の頭髪は、もうほとんどない。部屋に、髪の毛の焼け焦げた匂いが満ちている。

「醜い私にお別れしてたの。」
彼女は、母親に向かってぼんやりと答える。


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