セクサロイドは眠らない

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2001年10月31日(水) 声が、細く高くなって行く。次第に艶を増し、部屋中を満たす。僕の官能は刺激されっぱなし。

僕の作った人形を、みんな、素晴らしいと言う。その生き生きとした表情。今にも動き出しそうだ、と言う。その愛らしい表情に魅了される、と言う。

そうかな?本当にこういうのがお好み?

どれも同じ顔。人に好かれる顔なんて、大してバリエーションはないものだ。似たような顔ばかり作るのは飽き飽きした。それでも、求められるから作るけれども。

--

その女は、深夜、電話をしてくる。僕のファンだと言う。電話番号なんてどうやって調べたのか?とにかく、悪い気はしなかった。その女の声は、ハスキーで甘く、耳元で低くささやく。その声がなかったら、即座にその電話を切っていたことだろう。

彼女が何をしゃべったかは思い出せない。ただ、僕は、彼女の声に聞き入っていた。

「とてもお会いしたいの。ねえ、会ってくださる?」
と言われて、僕は、
「いつでもおいでよ。」
と浮かれて答える。

--

「あなたの人形、素晴らしいわ。」

その、美声の持ち主は、僕の家のソファに座って、どんなに僕の人形が素晴らしいかを語り続けている。彼女の狙いが何だっていい。僕のアトリエを見たいのかもしれないし、ただ、高名な人形作家なるものに近付いてみたいのかもしれないし。

「ねえ。あなたが抱いた女にそっくりの人形を作るっていう噂、本当?」
「そんなこと聞いたことあるの?」
「ええ。その彼女のためだけに作るって。けれど、誰も、その特別な人形をモデルとなった本人以外見たことがない。そんな噂。」
「確かにその噂は本当だ。」
「素敵だわ。」
「きみも作って欲しい?」
「ええ。」

抱いてくれと言っているのか?それもいいだろう。

僕は、その美声を抱く。鼻にかかる甘い声に、顔をうずめる。素晴らしいBGMがずっと鳴り響く間、僕は、酔ったように彼女を抱き締める。その旋律は、甘く途切れることなく僕の耳をくすぐり続ける。彼女の声が、細く高くなって行く。次第に艶を増し、部屋中を満たす。僕の官能は刺激されっぱなし。

僕は、彼女のありとあらゆる声を指でなぞり、記憶に刻む。

--

彼女が訪ねて来る。

「ねえ。約束のもの、出来た?」
「ああ。出来たよ。」
「楽しみだわ。早く見たい。」

彼女は、欲に目をキラキラさせて、僕のアトリエに付いて来る。

「ここが僕のアトリエだよ。きみの人形、ついさっき出来たばかりだ。」

きゃっ。

彼女は、一目見て悲鳴を上げる。

「何これ?のっぺらぼうじゃない?」
「そう?素晴らしい出来だよ。気に入らなかった?」
「ひどい・・・。それに、何?この部屋の人形達。気持ち悪いったら。」

彼女は、真っ青になり、部屋を出て行ってしまう。

駄目だってさ。これで充分じゃないか?大体、僕は、街で会ってきみの顔を見ても、きみとは気付かない。声を聞かないうちは、きみを思い出せない。

そのアトリエで。

眼だけの人形が、その潤んだ瞳を僕に向けて、睫毛を伏せる。

唇だけの人形が、その肉感的な唇を歪めて微笑む。

美しい指を持つ人形が、その手をひらひらさせる。

僕は、新しく生まれたばかりの人形を抱き締める。人形は、甘く魅惑的な声で鳴く。

僕の指は、魅惑的なパーツをコピーする。それで充分。


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