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2016年11月30日(水)
『雨にゆれる女』

『雨にゆれる女』@テアトル新宿

半野喜弘初監督作。脚本、編集、そして勿論音楽も。近頃では珍しいハードボイルドメロドラマ。素性を隠して生きる男と、その日常に棲みつく女。変装し頑なな迄に無愛想な男は、その異質さで集団から浮き上がって見える。女もその昏さがむしろ人目をひく。雨を合図にふたりは近づく。互いに大きな傷を抱える火の男と水の女、一緒にいたのは二週間程。あっという間に距離が縮まり、あっという間に安らぎは断たれる。

実は女も素性を隠している。男の過去を知っていて、自身も偽りの名前をかたる。傷の在り処が明らかになるにつれ、死に向かう道しか見えてこなくなる。では、どちらが? 火と水がふれあえば、答えは自明だ。女の最後の台詞に一瞬困惑し、直後に激しく動揺する。ここを素通りするひともいるのだろう。あのひとことがふいに出る、彼女が歩んできた時間の過酷さを思う。傷は癒えない。

贔屓目もあるかもしれないが、こまごまとした疑問(それは省略でもある)を役者力と映像力が凌駕する。青木崇高と大野いと、どちらもひとになつかない。劇中姿を見せず、鳴き声だけでその存在を知らせるねこのようなたたずまいを見せる。ふたりとも凄まじい表情をする、それをしかとカメラが捉える。湿度が高く、陰影の強い映像。べっとりとはりつくような濃い闇の存在感が、光を渇望する。男の住居を固く閉ざす鉄扉が、女と暮らしはじめたある日大きく開け放たれる。外界のまばゆさ。目を瞠る。男は光と言うものを、そのとき初めて感じたのではないだろうかと思わせられる。

終盤の海辺のシーンが圧倒的。禍々しく、同時に神々しい光と影。時間とともにみるみる変化していく色彩。夜から朝になる限られた時間、これは一発撮りだったのか……ずっと観ていたくなる。しかし時間はすぎていく。忘れられない。撮影監督は山田達也。工場地帯のロケハン、男の住処の選択にも徹底した美学が感じられた。

似ている訳ではないけど、松本清張『断線』(松田優作がやったドラマの方)や中上健次『軽蔑』(原作の方)に胸を締めつけられたことがあるひとは、その感触を思い出すのではないだろうか。そもそも男の偽名が「健次」。あの路地にいる男女……パンフでも言及されていたが、どこ迄意識したのだろう。半野監督は永山則夫について語っていた。健次の本名は「則夫」だ。環境がひとをそうさせる、そう「なっちゃう」。しかし雨はどんなひとのうえにも降り、時間はどんなひとにも平等に流れる、とも言っていた。音楽は時間の芸術でもある。音楽家である監督らしい言葉。

映画館を出ると雨が降っていた。こういうの、ちょっとうれしい。

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・男の運命、タフに動く「雨にゆれる女」に主演、青木崇高:朝日新聞デジタル
確かにあの顔はすごかったな…素性がばれたとき、そして最後の顔。そして黒目力がすごかった。白目が全く見えず、黒目に映るハイライトだけが白く見える場面も。
ねこにえさをやったり、自販機に小銭をいれてあげたり、フライパンから直接食べたり、ケーキのセロファンをなめたり。「こんなにひととしゃべったのは久しぶりだ」と呟いたあと、劇中映る瓶のなかの金魚のように口をぱくぱくさせたり。このひとのどうぶつっぽい魅力も堪能出来ました



2016年11月19日(土)
『造られた殺人』、nine days wonder classic lineup reunion show "one more time"

『造られた殺人』@シネマート新宿 スクリーン1

原題は『특종:량첸살인기(特ダネ:リャンチェン(良辰)殺人記)』、英題は『The Exclusive:Beat the Devil's Tattoo』。2015年作品。韓国映画月間みたいになってます。やーこれは予想外の面白さだった、オロオロするかわいいチョ・ジョンソクが観られるわ〜なんて呑気に出かけてみたら……いい意味で裏切られました。

実際ジョンソクくんはずーーーーっとオロオロしてます。スポンサーを怒らせる記事を書いてしまった崖っぷちの記者。未解決の連続殺人事件に関する情報を得たことで大スクープを手にし起死回生、かと思ったらそれが誤報と判明し、嘘が誠に誠が闇に。えっこれがこんな展開でこんなことに? と最後の最後迄ハラハラ、展開の多さに終始驚かされっぱなし。

登場人物たちの心の弱さが印象的。ここ二週のうちに観た『弁護人』『華麗なるリベンジ』に出てきたひとたちと真逆です(笑)。ことが大きくなり過ぎて真相を言い出せない、視聴率を落としたくないので訂正はしたくない、強行捜査に踏み込めない、盗作を言い出せない、不義を言い出せない。皆自分に言い訳をし乍ら、打開の一歩を踏み出せない…というより踏み出さない。そんななか、警察とマスコミが癒着していないのはひとつの救いかも。それも皮肉だが。

ちいさな間違いが嘘を呼び、その嘘が真実を引き寄せるというホンが絶妙で、どうなるのか全く読めなかった。序盤はいつ誤報が明らかになるのか、嘘がいつバレるのか、という視点だったのが、だんだんそんな単純な構造ではないことに気づく。というか、単純じゃないのよという要素がどんどん増えていく。嘘の上塗り、捏造による捜査の混乱、そこへ真相に迫る横槍が加わる。しかもその嘘や捏造の小細工が笑える。緊迫感溢れる場面なのに吹き出してしまいそうな箇所も多々あり、サスペンスなのにコメディという……ど、どう観ればいいんだ? と困惑していると、業を煮やした(笑)真犯人が現れる。

ところがそのあとも一筋縄ではいかない。真犯人から記者への提案は、思わぬ介入者により予想外の展開に。真相を知るのは記者だけ。報道に携わる者として、彼はどうするか……。非常に後味が悪い結末なのだが、それも妙に間が抜けていて苦笑することしか出来ない。これだけ多層で複雑な展開を軽妙に整理した脚本・監督のノ・ドク、見事。監督二作目でこれとは。今後も注目していきたいです。

ジョンソクくんが間抜けでたいへん。しかもアホだわ! しょうもないわ! ずっと泣きそうな顔で奮闘しており、それがかわいいので困ります。ラストシーンが思わせぶり。終盤自分の部屋(ひとりぐらしの方)に戻っていたと思うんだけど、あの最後の台詞。仕事も生活もうやむやにして、このさき生きていくのかなと思うと気の毒です。気の毒といえば事件担当の刑事班長、ペ・ソンウ(ハン・ソッキュ似)がいい味出してました。

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・輝国山人の韓国映画 特ダネ:リャンチェン殺人記
今回パンフなかったのでとても助かります! ノ監督って女性だったのか

・映画『造られた殺人』レビュー|BEAGLE the movie
説明しづらい展開を明快に言語化しています。こう書けばいいのねと感心もした……ああ、こういう風に書けるようになりたい

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nine days wonder classic lineup reunion show "one more time"@FEVER

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・nine days wonder - landfill at FEVER 09092016

前回はこんな感じ。

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ワンモアタイム。9月のリユニオンショウに来れなかったひとたちのための追加公演、という趣もあったようです。フロアライヴと告知されていて、整理番号も結構よかったので川さんの真後ろのポジションをとろうとやる気満々で入場してみれば楽器はステージにセッティング。あ、あれ? お知らせを見逃していたのでした。追加だけどやっぱり盛況でござった。

そんなこんなで二列目ほぼセンターをゲット、川さんの正面ですがな。mouse on the keysだとプレイヤーが向き合う扇型の配置なので、こんな正面切って演奏を観られることはありません。貴重。ネルシャツ姿で演奏する川さんも貴重。すぐ脱いで黒Tシャツになったけど、Tシャツってのも貴重。そんで前回8ビート叩くの聴くのも貴重、と思っていたところ実際には殆ど8じゃなかったので改めて注意して聴いてみるとドンタンタンドドタンタン、とかドンドンタタンドドタンタン、てなパターンが主だった。タンタンのとこは両腕でヒット。スネアも。あああこういうとこだよ! 90年代の! USの! そして改めて聴くとUKも…90年代のシューゲ……ジザメリとかRIDEとか、一周まわってULTRA POPとかPOINTERですわ。似てるってんじゃなくてそういうシーンの音だというね。好きに決まっとろうが。

自分が好きだからとかその時代にモロぶち当たりだからってこともあろうが、今聴いても瑞々しいし、いつ聴いても血が騒ぐ。懐古でなく。はー聴けてよかったな。

羽田さんはメロディアスで流麗なベースでブリブリのグルーヴを掘り起こす。齋藤さんはマーシャル積みあげて轟音なのにクリアな音色を聴かせる。軽妙なのに重戦車。トリオでこの音の厚さよ……。終演後齋藤さんの足元のエフェクターセッティングを撮影するひとの多いこと多いこと。今回は視界も良好だったのでプレイヤーのやりとりも見えて面白かった。齋藤さん、登場時はメガネかけてて…というのは前回と同じだったけど、一曲目はじまる前に自分で外してたわ。なんだ、演奏に熱が入って頭振って飛ばしたかと思ってた(笑)。ことほどさように齋藤さんは終始穏やか、音とのギャップがすごかった。川さんが羽田さんをじーと見てるのに羽田さんが気づかなかったりする図も笑えた。

ひとまずブレイク、またやるときはお知らせしますとのこと。楽しみに待ってます。

ところで川さんですが、11月10〜17日はmotkの北米ツアーに行ってます。七日間休みなし(サンディエゴ〜シアトル2000kmの移動込み)のスケジュール。帰国したのはおそらく18日。ちなみに11月5日迄motkで国内ツアー、それも24日に再開。十周年だから毎月ライヴするとは言っていたけど、それにしてもタフすぎる。この日は時折ふわっと笑顔を見せて叩いており、ああ楽しいのだなあ、充実してるのだなあと思いましたが、身体にだけは気をつけてくださいね……。そういえば前回(nine days wonderのライヴで)喋ったの、「……つかれた………」だけだったような(苦笑)。今回はひとことも喋りませんでした。

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・nine days wonder - empty promise|mobypicture

今回はこんな感じ。公式があげてたから転載してもよいかなと。



2016年11月15日(火)



19:30くらいに着くと、長い行列。入場する迄に一時間程かかった。列はどんどん長くなる。スーパームーンの翌日、十六夜(上記画像の「A」の上に写っている)。悪天候で前日には見られなかった、おおきな月をぼんやり見上げながら並ぶ。終了時刻の21時になっても集まってくるひとはいるだろう。それでもきっと、彼らは入口を開けておいてくれる。追い返すことはしない筈だ。そういう優しいひとたちだから。

フロアには(福田)洋子さん。スタッフらしきひとたちと談笑していた。遊佐辰也撮影の、初期の写真も沢山(というか、発表されたものは全てではないだろうか)飾られていた。DICEのヨーコさんや、WALRUSのカオルくんも来ていたとか。ステージのスクリーンには『EXPERIENCED II -EMBRACE TOUR 2013 武道館』の映像が映し出されている。丁度「NINE」のあたり。「DIG THE NEW BREED」が終わると、フロアから自然に拍手が起こった。そのあと「LAY YOUR HANDS ON ME」が流れてきた。恐ろしく音がいい。大きな音ではないが、フロア仕様の音響で聴くのは初めてだ。ライヴで聴くことは一度も叶わなかった。そもそもライヴで演奏されることがない、とわかったうえで作られた楽曲だ。改めて中野くんの音作りに感銘を受ける。フロアに中野くんを探すが、見つからない。中野くんは、全ての来場者を見送ると言っていた。この季節にしては暖かい日だったが、それでも外に居続けたら身体が冷えるだろう。無理してほしくない。

ライヴで飾られていたバックドロップをくぐり、フロアから出口に向かうスペースに中野くんがいた。しっかり目を見て、微笑んで、カードを両手で手渡してくれた。もともと小柄なひとだが、体格自体は筋肉質でしっかりしている印象があった。ライヴで観ているとそう感じた。でも目の前にいる中野くんはひとまわりちいさくなったというか、華奢になったように見えた。実際そうなのだろう。

イシイさんのリミックスで、とか、ウォールオブサウンドのイヴェントで、とか、一度呑み屋で偶然隣席になったことがあるんです、とか(笑)。言いたいことは沢山あったが、声にならなかった。

川島さんのことは忘れない。中野くんのこれからを待ってる。急がない。出会えてよかった、これからも聴いていく。ただただ、感謝を。有難うございました。




2016年11月13日(日)
『華麗なるリベンジ』

『華麗なるリベンジ』@シネマート新宿 スクリーン1

原題は『검사외전(検事外伝)』、英題は『A Violent Prosecutor』。2016年作品。今年の一月に渡韓したときあちこちで予告編を目にしていた『検事外伝』がなにやら素敵な邦題になって公開されましたよ。か、華麗……?

いやーしかし面白かった、良質エンタメ。熱血検事が冤罪で収監、かつて送り込んだ犯罪者たちにリンチを受ける、やがて刑務官や服役囚たちから信頼を得て先生と呼ばれるようになる、個室なんかももらっちゃう、その個室を自分好みに飾ってたりする、賄賂も差し入れもあるよ! そこへ彼の無実を証明できる新入り詐欺師が入所してくる……。『ショーシャンクの空に』?『親切なクムジャさん』?『検察側の証人』? さまざまなモチーフが連想されますがそのさじ加減がいい。コメディ演出も絶妙で、笑いで許せる隙がある。しかし筋が通っている。検事は収監されたことで自分を省み、事件にならなかった数々の罪を償い、冤罪には裁判で決着をつける。

映像はスタイリッシュ、シーンを時系列順には並べず観客の興味をひき、のちにその謎を明かすという展開も巧み。詐欺師が筆跡を練習していたサインが誰のものかわかったとき、その使いどころが判明したときのカタルシス! 詐欺師がソウル大学のスタジャン着るシーンなんて、一瞬なのに客席にドッと笑いが起きました。テンポ、リズムがいい!

詐欺師とか潜入捜査官とかスパイってホントに怖い職業。変装と言ってもたかがしれてる、基本的に素顔を晒しているから面は割れてるし、ひとりきりだし、己の口八丁手八丁だけがたより。余程の度胸がなきゃ出来ない……と思わせられる場面も多く、詐欺師は何度も命に関わるようなピンチに直面する。ところがこの映画、悉く笑える展開で危機を脱してしまう。だんだんそれが観客にも周知され、「あっ大丈夫大丈夫、ハラハラするけど悲劇にはならない!」とある意味安心して楽しめる。こういうとこも巧いなあ。

ファン・ジョンミンとカン・ドンウォン、全くタイプの違うふたりがバディになるという設定も楽しい。ふたりとも決して褒められる人物ではない、欠点も多い。しかしどちらも頭がキレる。バディなのに離れて行動する。ジョンミンさん演じる検事は、檻のなかからドンウォン詐欺師に指示を出す。裏取引で手にした携帯電話、面会での対話のなかにひそませるヒント。検事は策を練り、詐欺師は瞬時にその意図を理解する。聖書の一節が暗号になるくだりは韓国ならではだなあと思う。登場人物の育った背景を説明せずとも通じますもんね。

まーそれにしてもふたりとも、自身のチャームを存分に発揮しておりました。ジョンミンさん、鳶色の瞳が物語る物語る。それをまたいい光の具合でカメラが撮ってる。声の力、しなやか立ち居振る舞いが法廷シーンで発揮される。「私は罪を償った」と宣言するときの格好よさと言ったら。詐欺師を個室に招待してチキンでもてなし、取引成立! となったときの表情の、なんともいえない色気もな……。ここで色気使ってどうするのよ…素敵すぎるわ……。ドンウォンさん、かわいいかわいい。「顔は殴らないで!」と言っても素直に「そうよね〜そんな綺麗な顔に傷つけられないわよね〜」とか思う。若い頃のSMAP中居くんが大柄になった感じです。顔立ちも、ときどき見せる邪気を含んだ表情も似てるよねえ。詰めが甘く嘘も下手、よくもまあこんな甘々で詐欺師やってこれたな…いや、前科9犯てことは全部バレてるのよね。懲りないね、アホなのね……てな人物像だけど、なんというか……「美形のオ・ダルス」といってしまいたいくらいの愛嬌なのだ。素晴らしいひとたらしっぷり。

しかしかわいいには最強がいたのだった。ジョンミンさんのライバル検事を演じたパク・ソンウン。おまえ、かわいい! 天然か! 仲間外れにしないでよ〜僕だって仕事デキるんだぞ、えっここで活躍したら有名になっちゃう? ドラマ化されたりして! どうしよう! がんばる! みたいな。実際仕事はデキる。小心者だけど善人、正義感はあるけど矮小な人物(酷い言われよう)。それをあの大型犬みたいなソンウンさんが演じるわけですよ。ちょっとした表情や口調に虚栄、保身、見栄をにじませる。アクション俳優のイメージが強かったけど、コメディリリーフの実力もあったのだなと感心しきり。

本編以外にも楽しみがありました。前日観た『弁護人』で新聞記者を演じたイ・ソンミンがゴリゴリの権力側。恵まれない環境から努力でのしあがった主人公が法廷で戦うという同じ図式、その仕上がりの違いが興味深い。

そしてですね…『新しき世界』好きからすると、これでもかってくらい面白要素がてんこもりでして。まずキャストがめっちゃ被ってるんですわ。皆が悪者に見える!(笑)エレベーターはそのままドアが閉まる筈ないし駐車場ではろくなことが起こらないと思うよね……。朝鮮族ネタも出てくるし、詐欺師が検事をヒョン(兄さんというか兄貴というか。心を許したいうか親しみが一段階あがったときに使われる)って呼んだ瞬間をひとつの盛り上がりにしているし。おまっそれ潜入捜査官がヤクザのNo.2をヒョンって慕っててそんでどうなったよ!(いろいろ混同中)

ジョンミンさんとソンウンさんの面会シーンでは、収監されているジョンミンさんが帰ろうとするソンウンさんに「気をつけて帰れよ」ってニヤニヤしながら声をかける。これ、新世界と同シチュエーション、立場が逆…なんなの…狙ってるの……? 「ドゥルワ」(「来いよ」。『新しき世界』のジョンミンさんの台詞で流行語にもなった)とか言うシーンもあるしさ〜〜〜。


(ここだけ抜き出した動画があがってるとこにも笑う)

まあそんな訳で心中で悲鳴を何度あげたことか。楽しかった……ちなみに今作の音楽監督はファン・サンジュン、ジョンミンさんの弟さんです。仕事で組んだのは初めてだとか。選挙運動でドンウォンくんが踊りまくるとこの選曲よかったですねー。

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・輝国山人の韓国映画 華麗なるリベンジ
いつも詳細な作品紹介有難うございます〜!

・【インタビュー】ファン・ジョンミン「静かに見えながらも燃える目をしているように演じました」|韓スタ!
法廷シーンはワンカット。「ラブ・ユー」はドンウォンさんのアドリブだったそうです。カ〜ひとたらし!

・シネマートで今やってます。『華麗なるリベンジ』|Cinem@rt Magazine
これはよいレヴュ〜。ひとことキャプションも笑える



2016年11月12日(土)
『弁護人』『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』

『弁護人』@新宿武蔵野館 1

原題は『변호인(弁護人)』、英題は『The Attorney』。2013年作品。韓国の第16代目大統領、ノ・ムヒョン(盧武鉉)が弁護士時代に担当した裁判をモチーフとした作品。

「金に汚い弁護士が人権に目覚め……」てな感じのあらすじ紹介もぼちぼちあった作品ですが、実際に観てみるとそうは感じなかった。演じるソン・ガンホの表現力もあり、人物像がプリズムのよう。金の亡者という印象は受けない。アイディアにあふれ、営業能力があり、確実に仕事をこなす有能な弁護士。台詞にもあるとおり「一生懸命生きてるだけ」。高卒で司法試験に合格した努力家で、学歴差別の根強い法曹界で奮闘する。貧しい時代食い逃げをした食堂への恩をずっと返し続ける。そんな彼がひとつの裁判を引き受ける。

機動隊と対峙し、催涙弾が撃ち込まれるなかまっすぐ前を向き立ち続ける彼は、自分の未来をまだ知らない。映画本編では語られないが、その後大統領になったノ・ムヒョンは苦いかたちで人生を終える。功績が再評価されるには時間がかかる。彼が亡くなったのは2009年。本国での公開は2014年だそうなので、没後五年でこうした作品がつくられたのは早い方ではないだろうか。かつての彼がどれだけ国民を力づけ、国民に愛されたかを意味するのかもしれない。日本にはそれは伝わりづらいが、映画を通して感じとることは出来る。ちょっとした逡巡、ちょっとしたタイミングでひとは足を踏み外す。そのとき味方になってくれるひとは誰か、声をかけてくれるひとは誰か。助けは弱みになるか、それとも。韓国の現大統領のことを思う。

理不尽な裁判を見るのはとても体力を使う。スクリーンを通してすらビリビリと伝わる緊張感の凄まじさたるや……「国家保安法」がどうやら韓国語で「クッポッポなんちゃら」と発音するようで、クッポッポクッポッポと連発されるとついクスッと和んでしまったが、それも次第に頭の隅に。舞台を観ているかのような、迫力ある質疑応答が続く。しかしここぞというときにはしっかり表情を捉える、カメラの力は映画の力。専門用語も多い台詞を明瞭に、なおかつ感情をにじませて演じるソン・ガンホという役者の凄み。頼む、不正を暴いてくれ、罪をでっちあげられた青年たちを助けてくれ。思わず拳を握りしめる。

対する警監を演じるクァク・ドウォンも素晴らしかった。ま〜にくたらしいこと! しれっと捏造、しれっと偽証、しれっと揉み消し! カー!!! しかしここで思い出す、釜山での仕事を任命されたときの彼の複雑な表情を。ひとはこうして変わるのだと背筋も凍る思い。それを見事に演じたドウォンさんに感服する思い。

それにしてもあの状況で真実を証言した軍医の勇気には頭が下がる。権力に屈しない、人間の良心を信じるエピソード。それだけに彼のその後が気になる。せつない。彼のことも、主人公のことも。人間を信じるという信念で制作された作品だとも感じた。そして作り手たちは、映画の力というものも信じているのだ。

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・ガンホさんと、旧友の新聞記者役イ・ソンミンがけんかして、ぶっきらぼうに元サヤに収まるとこもよかったですねー。謝んないけど服かしてくれて、協力してさ……同じ劇団出身だそうです
・オ・ダルスがまた妖精っぷりを発揮していた。どんなに困難な場でも笑いを忘れず楽観的なキャラクターを演じさせたら右にでる者はいませんね
・キム・ヨンエ、素敵〜。こういうおばーちゃんになりたい〜
・それにしてもガンホさん、プロポーションがよい。脚長いわ…スーツが似合うわ……と深刻なシーンでときどき目を瞠ってましたすみません

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新宿武蔵野館がリニューアルオープン、そのお祝い? なんとこの日はガンホさんが十年ぶりに来日し、舞台挨拶が行われたのでした。『弁護人』の公開は武蔵野館の姉妹館であるシネマカリテなのですが、舞台挨拶は武蔵野館で開催。発表されたのは公開週の月曜日、チケット発売はその翌日。直前すぎるわ! しかも最初は情報が錯綜してカリテでの舞台挨拶なの? とかtwitterのTLが阿鼻叫喚になってました。カリテだったらチケットとれなかったよきっと……。

というわけで韓国映画界の至宝を肉眼で見ることが出来ました。ぎゃー素敵だったー。日本語で挨拶してくれた、落ち着いた声がまた格好いい。プロデューサーのチェ・ジェウォンさんとともに、ユーモアを交えながらも真摯にお話ししてくれました。「韓国と日本は近い国ですが、文化や歴史は違う。でも映画を通じてお互いを理解したり、心がひとつになれたりする」とガンホさん、「頓挫した時期もあったが、勇気を持って製作した」「日本で豚のクッパが食べられるかわかりませんが、とんこつラーメンを食べるときにこの映画のことを思い出してください」とジェウォンさん。

サプライズは是枝裕和監督が来場したこと。「皆さんと同じくただの大ファンで……」と花束をガンホさんに渡して握手する様子はほんとファンだった、ただ観に来ただけなのに舞台に出てくださいよ! と周囲に押し切られた感じだった…ガンホさんから妙〜に離れて立ってたのがまたファンっぽい……(笑)。「こういう映画が作られ、大ヒットするのが素晴らしい。日本では現代史を扱う企画は通りにくい」「志の高い映画」。司会の方が気軽な感じで「自分の映画にガンホさんを起用したいと思ったりは?」と訊ねたら「ちょ、何言ってるんですか!」「勿論撮ってみたいですけど……」とすごく恐縮していた。

新しい武蔵野館はつくりはそのまま、綺麗になってた。席の段差が多少は大きくなってたかな、最後列でも全くストレスなく画面全体が見えた。あと音がよかったなー。隣席は年配のご婦人、ガンホさんの大ファンの様子。映画本編では残酷な拷問シーンをこわがっていた。「マスコミに若いひとが多いわね……」「今の韓流のイケメン俳優ってわけじゃないのに……」と困惑しておられました。最後列だったのでクッションかりてきて「これならよく見えるかしら」とか、すごいかわいかったー。

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・輝国山人の韓国映画 弁護人
いつもお世話になっておりますサイト、今年で満20年を迎えたとのこと。おめでとうございますそしてこれからも宜しくお願い致します!

・ソン・ガンホ「映画がお互いを理解し合えるきっかけになればいい」10年ぶりの来日で主演映画「弁護人」初日舞台挨拶に登場!|コレポ!
・「韓国の至宝」ソン・ガンホとの邂逅に是枝裕和監督「今一番撮ってみたい役者さん」 映画『弁護人』初日舞台あいさつ|SPICE
是枝さんがまたいー顔してる〜。ほら、妙に離れて立ってるでしょ……

・ニュー武蔵野館の控え室、最初にサインしたのはガンホさん
「誰も書いてないよ?あとでペンキ塗り直さないよね?」。かわいい〜

・【会見全起こし】『弁護人』のソン・ガンホが『グエムル-漢江の怪物-』以来10年ぶりに来日!|ムビッチ
・ソン・ガンホ、日本でも知られているノ・ムヒョン大統領を演じることは「怖かった」と告白|Kstyle
そうそうお肉が苦手でお魚が好きなんだよね〜。それはともかく“ブラックリスト”に入ってしまったって話、チョン・ウソンもしていたなあ。笑い話では済まされないけど、笑いにする勇気が示されることには希望がある

・日本が伝えない「バカ大統領」自殺の真実|ニューズウィーク日本版
twitterで教えていただきました、ノ・ムヒョンがなくなって一ヶ月後の記事

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『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』@世田谷パブリックシアター

『奇ッ怪』シリーズも三作目、今回は柳田国男の『遠野物語』がモチーフ。前川知大の「超常現象を理詰めで追っていく」理系で文系な筆はますます冴えているが、近年そこに「何故記録するのか」という自問が加わっているように感じる。もともとあったものではあるが、それがより前面に出るようになってきたというか。

今作に登場する作家は記録を残すことに執着する。静かだが揺るがない、青白い炎のような情熱をもって。記録が自分の手を離れたとしてもそれはあたりまえのこと。人間の命は有限なのだから、次のひとにバトンを渡せばいい。「託したよ、頼んだよ」と。絶やしてはいけない、それは次世代に生きる者の使命なのだというように作家は去る。

ただ、今はその記録を残すことすら危ぶまれている。単に忘れ去られるだけではない、記録そのものを規制、操作しようとする社会の動きに作家は敏感だ。同じ日に観た『弁護人』のことを思い出す。「なかったこと」にされる記録はどのくらいあるのだろう?

以前前川さんと岩井秀人が対談で「なんでも最悪なことから考える」「家族に電話して出ないと『あ、死んだ』と思う」というようなことを話していた。これは私もそうなのだが、単に過度の心配性なのか(これがエスカレートすると不安神経症と呼ぶのかもしれない)、最悪の予想からスタートしておくとその後の衝撃に多少は耐えられるという自己防衛からくるものなのか、判断しかねてもいる。事例が増えればそれがどちらなのか判るだろうか? サンプルを増やすことで、浮き上がってくるものがある。これは私が前川作品を観る度に考えることであって、前川さん自身がそんな思いで作品を書いているのかはわからないが、ある種の指針は示しているように思う。無念というと重いが、行き場のない悲しみや怒りの受け皿となる作品を前川さんは書いている。

本筋と関係ないことを書くと、川島さんのことを思い出した。何せ岩手だし。山に帰ったんだなあ、と思うことが出来れば。今作の登場人物のひとりのように、近しいひとは折り合いなんてつけられないだろう。何故あのひとが、何故こんな目に? いくら考えても答えは出ない。そこで伝承の出番だ。先人たちの知恵か、それとも実際そうなのか。もういないひとを傍に感じる手段でもあり、悲しみを癒す手段でもある。喪の仕事にもなるだろう。それを知っていると、後々の光にはなる。

それにしても鬼のような八百屋舞台であった。そのうえ同空間を取調室(椅子)と和室(座敷)に見立て、地続きで行き来させる演出なので、座ったり立ったりの動作が繰り返される。全員が複数の人物を演じ、ときには効果音も自分たちで演奏。段取りも多い。演者には相当負担がかかってると思う。が、がんばれ…気をつけて……。

先週『はたらくおとこ』アフタートークでべらべら楽しいおしゃべりをしてくれた山内圭哉、自分の持ち場ではたらいておりました。奇ッ怪と現実、虚構と事実。それらのハブとも言えるいい仕事っぷり。仲村トオル、人を食ったような言動から顔をのぞかせる作家の業、その鋼の意志。絶妙なさじ加減。そして銀粉蝶、「人間は生きてる人間と死んでる人間しかいない」その人間をズバリ体現。演技陣ホント素晴らしかったな、ユーモアをまじえ、しかし誠実に役に寄り添う。そして皆声がいい。ゴリゴリの東北弁からちょっとわかりやすくした(所謂「標準語」をミックスした)方言のスイッチングも絶妙、観客の耳をならしていく過程も巧い。特に瀬戸康史、全然聴きとれない第一声の東北弁から、標準語を交えた東北弁の流れが見事だった。そして声のよさといえば思い出す、岩本幸子。今回そのポジションに池谷のぶえが配されていたが、岩本さんが演劇の世界から去ったことは残念としかいいようがない。池谷さんは勿論素晴らしかった。

そうそう、導入がハイバイみたいに感じられた(笑)こないだのには僧正出てたから尚更ね。観客を奇妙な世界へ滑らかに招待してくれました。人間は生きてる人間と死んでる人間しかいない、そして死んでる人間の方が断然多い。ずっと皆、ここにいる。



2016年11月10日(木)
三宅純@BLUE NOTE TOKYO

三宅純@BLUE NOTE TOKYO

二日目、2nd set。選んだ席の目の前に宮本大路の写真が飾られていた。写真の下には「May his soul rest in peace: Mr. Dairo Miyamoto」の言葉。開演前から胸がいっぱいになってしまう。宮本さん、平幹二朗、ピナ・バウシュ。彼らゆかりの楽曲が演奏されたとき、マライア(!)の村川聡が第一声を放ったとき、「時間を操作できるのが音楽の特権」という三宅純の言葉を思い出す。

幻の楽団が街にやってくる。演奏を終えると跡形もなく消え、次いつ遭えるかわからない。本当にいたのかな? 答えは自分の記憶のなかにしかない。こういうところ、自分のなかでは維新派に通じるものがある。『エレンディラ』の、砂漠に現れ消える旅団のイメージもある。二年前、そのヴィジュアルイメージに新たに加わったものがある。『Lost Memory Theatre』だ。

今回のステージは二年前を思い出すものだった。KAATの赤がBLUE NOTEの青に、といった色彩の変化はあれど、楽団のなまめかしいような妖しさは、記憶を呼び起こすのに充分だった。違ったのは、今回は劇伴という要素がなかったこと。ステージが客席から近いこともあり、演奏陣のリラックスした表情を見ることが出来たこと。裸足で現れたリサ・パピノーの呪術的な踊り、その存在感! プレイヤーは基本イヤーモニターをしていたが、三宅さんだけはヘッドフォン。ピアノとフェンダーローズをいったりきたり。フリューゲルホルンを手にステージ前方に現れたとき、「待ってました」と言わんばかりにフロアの空気が動く。どの曲だったか……決して広いとは言えないステージ、ソロに出てきた三宅さんの前に勝沼恭子がいた。彼はそっと彼女の背中に触れ、ソロに出るからちょっとスペースをちょうだい、というようなジェスチャーをした。そのあとの勝沼さんがとてもかわいらしかった。演奏は続いている。自分が立ち位置をずらしたら、後ろのストリングスのメンバーは客席から見えるかしら? そんな気遣いが感じられる表情と仕草。劇伴では見られない光景だ。

視線を合わさない三宅さんと金子飛鳥のスリリングなやりとり。コスミックヴォイセズからは三人の歌い手とコンダクターがやってきた。「ライヴがはねたあとのうちあげで延々唄ってくれるんです。いつまでも唄えるみたい」と紹介されたフォークロアも披露し、フロアがわく。パリ、LA、ソフィア、東京。国籍にすると全部で6カ国から集ったメンバー。静かで優雅なのに混沌としている。この感じ、何かを思い出す……いつだ、どこだ。

村川さんが登場したとき、それが像を結んだ。彼が現れた途端、場が一気にグランドキャバレーの空気になった。無骨な歓声がとぶ。応える村川さんのふるまいがまた粋。旧友ともいえる人物と、異邦人として出会ったひとたちとが一堂に会する。これは見た、かつて見た。BLUE NOTEから15分ほど歩けば辿り着く、南青山CAYで。あの時間が鮮やかに甦る。繋がっているのだ。エレガントなモンドミュージック。国を行き来し、ひとと出会い、ひとりひとりが立っている。雑種の逞しさ。

リサと勝沼さんが微笑み合い、抱き合う。リサがイヤモニを投げる。激しく踊り、開脚で着地する。イグナシオとヴァーニャが手をとりあってダンス、そしてビズ。誰もがこどものような笑顔。なんて幸せなアンコール。天国ってこういうところかな、と思ってしまうほどだった。そこには宮本さんがいる。平さんが、ピナがいる。音楽が時間を呼び戻す。あるいは、これからの時間を見せてくれる。そんな場所に居合わせることが出来て嬉しい。感謝、感謝。またいつか会えますように。

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セットリスト(Kiev@三宅 純公式サイトツイートより。123

2nd Set
01. zed fate
02. the here and after
03. Deciduous
04. frozen tide
05. Easturn
06. Red shadow
07. A Lua pela grade
08. Tres
09. Miraculous Mandarin
10. Bre Petrunko
11. Easy To Let Go
12. flutter
13. Colors
14. Niji wa Tohku(vo:村川聡)
15. Petal
Encore
16. est-ce que tu peux me voir?
17. Alviverde

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三宅純(flh, fender rhodes, p)

Lisa Papineau(vo)

Cosmic Voices :
 Vanya Moneva(conductor)
 Anna Natskova(vo)
 Veselina Kurtiyan(vo)
 Diana Teneva(vo)

Ignacio Maria Gomez Lopez(vo)

Ze Luis Nascimento(per)
伊丹雅博(g, oud, mandolin)
Andy Wulf(fl, afl, ss, as, bs, bcl)
渡辺等(b, mandolin)
勝沼恭子(vo, chorus)

金子飛鳥(vln)
吉田篤貴(vln)
志賀恵子(vla)
多井智紀(vc)

Guest :
村川聡(vo)

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・JUN MIYAKE : BLUE NOTE TOKYO 2016 trailer 3


・宮本さんの代役について
ライヴが決まった時点で出演が難しいことは予感されていたのだろうが、彼が亡くなる迄その名が消えることはなかった

・JUN MIYAKE|LIVE REPORTS|BLUE NOTE TOKYO
これは一日目のレポートかな。二日目の2nd Setでは村川さんジャケット脱いでた。出てきたときBLUE NOTEのギャルソンさんかなーと思った(ごめん)。
千秋楽では1st Setのゲスト、おおたか静流さんも最後は挨拶に出てきてくれました

・三宅純はなぜ世界に羽ばたくことができた? エレガントな鬼才サウンド・クリエイターが明かす、新しい過去と懐かしい未来|Mikiki
「時間を操作できるのが音楽の特権。“過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい”」。キャリアも振り返る、まとまった濃い記事。宮本さんのお話もされているが、これはまだまだ、言葉にすることが難しいだろう

・三宅純 INTERVIEW『日本中が驚嘆した「君が代」アレンジ その舞台裏とクリエイティブの真実』|Arban
こちらもよい記事。「支持して頂いた皆さんのキャパシティに感謝いたします」の言葉、印象的だったな

・おまけ、平さんのかわいらしい思い出
勿論この夜も三宅さんはくるぶし丈のパンツでした

(追記:20161209)
・SIGN & MESSAGE | Blue Note Tokyo
ライヴを終えてのスペシャルメッセージ



2016年11月08日(火)
MANIC STREET PREACHERS 'EVERYTHING MUST GO' 20th Anniversary Tour

MANIC STREET PREACHERS 'EVERYTHING MUST GO' 20th Anniversary Tour@studio coast

『THE HOLY BIBLE』20th Anniversaryはリリースから一年後の来日、そしてフェスでの出演でしたが今回は同年で単独来日。うれしい、うれしい。上記の日記にも書いているが、『THE HOLY BIBLE』再現はもうつらいことばかりが思い出されそうで観たいけど観たくない、と直線迄胃痛でキリキリしてたバカなんですが、今回は仕事の方でストレスがな! 久々に神経性胃腸炎おこしてな! しかし体調はわるくともライヴは素晴らしくよかった! 楽しんだ! マニックスのライヴに行くと元気になるよ〜。

後述のインタヴューにもあるとおり、『THE HOLY BIBLE』アニバーサリーツアーは規模のちいさいものだった。バンドのアティテュードが最も表れていると言われる代表作ではあるが、リッチーの心象風景が最も色濃い作品でもある。その内容や制作過程、後に起こったことを考えると、盛大にお祭り騒ぎなど出来ない心境にもなるだろう。リスナーとしてもフェスで聴くのは複雑な思いだった。今回の『EVERYTHING MUST GO』はリッチー不在のまま動かざるを得なかった迷いの一枚だが、第一歩でもある。素直に祝福したい。

曲順どおり、ブリッジのSEも再現。あのラジオから流れてくるようなひずんだ歌声を、ジェイムズがエフェクトなしでまっすぐに唄う。曲順どおりなので当然二曲目に「A Design for Life」、わかっていたのに涙腺決壊。序盤から佳境です。久しぶりに聴く曲も、ライヴで初めて聴く曲もあったかな。当時何度も繰り返し聴き、今でもよく聴く思い入れの強いアルバムだが、それにしても全ての楽曲が素晴らしい。アルバム構成も見事。あの状況のなか、どうしてこれだけのものを創れたのだろう……バンドのポテンシャル、特異さを思い知る。

ライヴは感傷を振り払うように進む。ジェイムズの溌剌、テキパキとしたふるまいもあり、体感時間も短い。そうなのだ…ジェイムズの勤勉さといおうか、実直さといおうか……(余談だがこのツイート、あまりにもジェイムズだわ〜と笑ってしまった)いつものことではあるが、マニックスのライヴはこれなのだ。八面六臂という言葉がこれほど似合うひともいなかろう。豆タンクな体躯で軽やかなステップ、サポートギターが加わり負担は減ったとはいえ、ソロもリズムもギターを弾きまくり、情熱的に唄い、その歌声は澄み切っている。二部構成のライヴが全然二部じゃない(笑)、『EVERYTHING MUST GO』演奏後すぐジェイムズだけ戻ってきてせっせと唄う、弾き語り前の小噺(としかいいようがない)やメンバー紹介の口上(としかいいようがない)も弁舌なめらか、手拍子を煽る姿は極道のようであった。惚れる。いつも惚れてるけど何度見ても惚れる。あんなに美しい声であんなにガラッパチなところにも惚れる。ウェールズのひばりです。

二十年を経たバンドの成長にも驚かされる。マニックスはメンバーの繋がりと、はっきりとした分業制が特徴でもあった。演奏はジェイムズが牽引し、スポークスマンはニッキー。それは作品には強みを発揮するが、ライヴでは厳しい局面もある。ところが近年は、そのバランスがうまくとれてきている。ニッキーとショーンの演奏力があがっている。素人がいうのもなんだが本当に上手くなったなあと思う。バンドの「今」で演奏される、普遍の名曲。メロディアスできらびやかといってもいいアレンジが施された『EVERYTHING MUST GO』の楽曲が、彼らが演奏することにより攻撃的になる。本当に不思議な、唯一無二のバンド。

サポートはすっかりおなじみウェイン・マーレー(g)、ニコラス・ネイスミス(key)。今回は「Kevin Carter」や「Ocean Spray」でtpがフィーチャーされる楽曲がある。このときと一緒なら、演奏していたのはCogan Cannonかな。哀愁を帯びつつも力強い音色、生の管楽器はいいなー!

「オゲンキデスカ、トーキョー!」と、ジェイムズの日本語も進歩? 以前はオゲンキデスカイ! だったよね。基本の挨拶とかはもうわかっているので、フロアからとんだ「ありがとう!」の声に笑っていた。「世界一!」なんて声もとんでいたけどそれはわからなかった模様(笑)。随所でフロアに歌を任せてご満悦、地元なら終始大合唱なんだろうなあ。日本ではサビだけ元気よくなります。「Stay Beautiful」ではファッコフんとこがすごい元気いい(笑)。しかし「A Design for Life」や「Motorcycle Emptiness」はフルでシンガロングだったよねー。そういうコミュニケーションも長年のつきあいでわかっているのではないかな……何度も日本での思い出や、日本のリスナーへの感謝の言葉を口にしてくれた。うれしい。

そうそう、フロアの雰囲気もよくてね。メンバーとともにリスナーの年齢層が高くなり落ち着いている、というのもあるけれど、特にこの日はスーツ姿の男性の多さが印象的だった。後ろの方で観ていたので白髪頭も結構目に入った。役職ついて部下もたくさんいますよって感じ。そんなひとたちがジャケット置いて、腕をあげて、すごくいい笑顔で、あるいは感極まった表情で唄う唄う。アンコールはしないバンド、それもわかってる。次のライヴ迄こっちもがんばるぜ。また会おう!

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セットリスト(setlist.fmより)

Everything Must Go
01. Elvis Impersonator: Blackpool Pier
02. A Design for Life
03. Kevin Carter(w/tp)
04. Enola/Alone
05. Everything Must Go
06. Small Black Flowers That Grow in the Sky
07. The Girl Who Wanted to Be God
08. Removables
09. Australia
10. Interiors (Song for Willem de Kooning)
11. Further Away
12. No Surface All Feeling
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2nd Set
13. Stay Beautiful (Acoustic)
14. Ocean Spray (Acoustic, w/tp)
15. You Love Us
16. You Stole the Sun From My Heart
17. Walk Me to the Bridge
18. Your Love Alone Is Not Enough
19. A Song for Departure
20. If You Tolerate This Your Children Will Be Next
21. Born to End
22. Show Me the Wonder(w/tp)
23. Motorcycle Emptiness

“Become One with Eternity.. Forget Yourself. Make Love. Self-destruction is the only way to peace” - Yayoi Kusama

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当日使われていたセトリ画像
twitterより拝借。これを見ると「Stay Beautiful」が当日オンリー選曲だった模様、しかも直前に決めたっぽい。「プレゼントだよ」ってジェイムズ言ってたもんね、いったん出てきたtpのひとが帰らされてたし(笑)。恒例の引用は草間彌生

翌日大阪のセトリ
同じくtwitterより拝借。「Stay Beautiful」のとこが「Little Baby Nothing」になったようです。引用は東京と同じく草間彌生、テキストは違うもの。“I followed the thread of art and somehow discoverd a path that would allow me to live” - Yayoi Kusama

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・「異邦人の感覚を味わうのはすごくいいことだ」|Manic Street Preachers|BARKS
EMG以降のセットリストは演奏する国によって変えてるそうです。てかすごくいいインタヴューだなこれ。「ずっと、日本で『Generation Terrorists』をやりたいって思い続けているんだ」って言葉もうれしい、待ってます

・マニック・ストリート・プリーチャーズ @ 新木場スタジオコースト|洋楽ライブレポート|RO69
マニックス好きのジャーナリストといえば粉川さん、愛情あふれる熱いレポート。そう、ジェイムズに説教された「制服姿の私」とはこのひとです(微笑)

・OAはGRAPEVINE。会場に辿り着いたら最後の一曲(「CORE」)やってるとこだった……これのアウトロがえれえ格好よくてな。うえーいバインもちゃんと観たかったよ〜、てかOAでバインてすごい贅沢だよね



2016年11月05日(土)
『はたらくおとこ』

阿佐ヶ谷スパイダース presents『はたらくおとこ』@本多劇場

ネタバレしてます。

12年ぶりの再演とのこと。初演は観劇叶わず、同年シアター・テレビジョンでオンエアされた映像で観たのだった。その録画VHSも、デッキが壊れた今となっては観られない。なのにまー憶えてること憶えてること、あのセリフ、その音程と言いまわし、あの動き、あの表情。どんだけ繰り返し観たのかって話ですね。といいつつ途中からすっかりストーリーと迫真の演技陣に引き込まれてしまった。「とよみつがのうやくでしんじまっただ〜♪」のパートは素で虚を突かれ爆笑した。そのあとの「ガラスの林檎」とメロディからませるとこにも大笑い。体感時間も短い。積荷の匂いまで伝わってきそうで、思わず呼吸が浅くなる。生身を目の前で見る体験、その凄まじさ。

今回の再演は「あ〜、当時長塚くんこういうの書いてたねえ、こういう作風だったねえ」と懐かしむものではなかった。作品の普遍性を思い知った。トラックの積荷は何か? ちなみに初演では「サリンじゃないけどとにかくヤバイもの」と言われていた。今回は今回で、あるものをより具体的に想像することが出来る。時代とともに積荷の中身は更新される。これ以上更新されないことが願いだが、世の中はどっちに転んでいくだろう。そして演者の年齢。初演のキャストが揃ったのは奇跡的だが、見かけはともかく(特に伊達くん・後述)皆歳をとっている。体力はおちる。代謝の悪そうな汗で全身をドロドロにして彼らは叫ぶ、のたうちまわる。人生のドンづまり、現実への希望と絶望。肌で感じるものがある。こんな演者が再び揃う、その機会を待っていた、とも言える。そして観客もそれを待っていた。

時代は変わっているが、作品の強度は変わらない。いや、より切実さは増している。最後の台詞をどう捉えるか。夏目はいつから、どこから何を見て聞いたのか。茅ヶ崎は夏目に強烈なパンチと強烈なハグを贈る。しかし、それだって夏目が見た幻かもしれないのだ。自分の人生を重ねるごとに選択する答えは変わる。あのひとことは自分の指針でもあるが、そこに至るには日々もがく。あの台詞をまことさんの声で聞けたことが嬉しく、苦しい。

しかし成志さんも仰ってたけど、もう芝居やめてるひとがいてもおかしくない12年という時間。パンフレットに寄稿されていた、当時シアターガイド編集長の今井さんは今東京にはいない。そして同じくパンフレットで長塚くんが明かしているのでここに書いても問題はなかろうが、中山さんは今作の初演で涼を演じた女性と結婚している。阿佐スパは長塚くん次第、というかプラス中山さんと伊達くんの三人次第だというのは承知しているものの、こういった過去作再演の機会は積極的に設けてほしい。残念乍ら逃してしまったが(どうにもこうにも日程が〜〜)今夏『イヌの日』が上演されたのは、本家を待ちきれないひとが増えているからではないだろうか。

チケットの売れ行きが芳しくないことは耳に入る。というか、心配症の成志さんがtwitterで頻繁にそう書いているので、心配するひとが増えているような気がする。しかし、初演時も幕が開いてからの評判が評判を呼び、続々と当日券の列が長くなっていったという話を憶えている。これから口コミ(今はSNS効果、でもあるか)で観客が増えてることを期待している。そういう力を信じたい、とも思っている。そしてまた、この作品が刺さる観客が増えていくことを願っている。

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・前の席の男性、終盤のシーン(あれね)で本気で気分わるくなってしまってたようで気の毒でした……。カーテンコールではすごく拍手してたので最終的にはよかったのかな
・演者につられてオエーとなってしまうひとも結構いるようなので、えずきやすい方はご注意を…って、どう注意すればいいのか

・それにしても皆さんかわらん…伊達くんはopの映像(ムーチョ村松!)撮りなおしてないかと思ったくらい。この日アフタートークがあったんですが(知らなかったんでラッキーな気分。毎日やるのかな?)によると、実際撮りなおさなくてよくね? って話にはなったそうです
・『奇ッ怪 其ノ参』マチネを終えた山内僧正がトークゲスト。客席には前川さんの姿も

・今回の涼役北浦愛さん、『誰も知らない』の長女役のあの子だったのか。「初演当時は12歳だった」そうです。ヒー
・で、阿佐スパの面々の今の年代が初演時の成志さんたちの年代だそうです。ハァ〜
・アミノバイタル何本飲んでるって話に実感が……