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2015年08月15日(土)
『SUMMER SONIC 2015』1日目

『SUMMER SONIC 2015』1日目

サマソニすごい久し振り〜前回行ったのいつだっけと調べてみたら、2011年だった。RHCPがヘッドライナーで、矢野さんがひとりでyanokamiを務めた年ですね。とにかく暑さに弱い自分にとってサマソニはフジの何倍も過酷なもんで、よっぽどの目当てがなければ二の足踏みまくるんです。しかし今年はその「よっぽどの目当て」があった、ふたつも。

午前出演の注目株、Dinosaur Pile-Upを観たかった…が、ホステス含め朝迄の参加なので体力温存、15時過ぎに会場入り。入場制限あるかなと行ってみればすんなり入れたので、MOUNTAIN STAGEのBABYMETALからスタートです。おおー、これが…と観光気分で見る。ギターがdCprGの大村くんの筈なんだが、どんなに目を凝らしても本人かどうか自信が持てない。白塗りメイクだから。メタル特化ですからとにかくバックバンドがバカテク。歌も上手。フロアはパンパン、WoDもサークルモッシュも起こり、凄まじい。十代半ばでこれだけのひとを掌握する、その眼下に拡がる光景…すごいことだ……この子たちの将来ってどうなるのかしらと恐ろしい気にもなる。月末にはレディング&リーズにも出るそうです、すごいな。

続いてSONIC STAGEでTHE JON SPENCER BLUES EXPLOSION! ノンストップのインプロセット、普遍のスタイル。こーれーがー鬼格好いい。往年の映画コラージュループに「JSBX」のロゴが重なるだけ、と言うシンプルなバックの映像が激烈に格好いい。ジョンもジュダもラッセルも相変わらず格好いい、そう徹頭徹尾格好いい! 痺れまくるあっと言う間の60分。
・Photo Gallery - SUMMER SONIC 2015|THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION
(20150819追記:・JSBXの歌詞とセットリストについて - Togetterまとめ
だばーこの日も初っ端いきなり「2 Kindsa Love」でぎゃーとなったら途端に次にいっちゃって「? ?」てついてくのに精一杯だったもんね…うーワンマン観たかった)

さて今回の「よっぽどの目当て」、Manic Street Preachers。performing ‘THE HOLY BIBLE’と題されているとおり、『THE HOLY BIBLE』再現ライヴです。早めに行ってKODALINEをちょっと聴く。優しく沁みる音でした。もうこの時点で胃が痛くなっており(察して)、観たいけど観たくないオエーとかなってたんですが観てよかった、よかったです。

改めて説明すると、1994年にリリースされた『THE HOLY BIBLE』はマニックスのオリジナルメンバーであり精神的支柱でもあった詩人、リッチー・ジェームス・エドワーズの心象風景が最も表出したアルバム。当時はwebも身近ではなく、彼が心身ともに荒廃していくさまを知るにもタイムラグがあった。数週間遅れで目にする度に痩せ、自傷が増えていく彼の姿。嫌な予感ばかりが膨らんでいた1995年2月1日、遂に彼は失踪し、今も行方が判っていない。2008年に死亡宣告が下された。リリースから20年と言うことでの再現ライヴだが(本国では昨年開催されている)、本音を言えば単独公演で観たかった、フェスの祝祭空間で観る気分ではなかった。しかし日本とは縁の深いバンドだけに、このセットを持って来日してくれたことは本当に嬉しかった。来てくれるからには見届けなければ。

カーディフ郊外の森をイメージしているのだろうか、緑の葉でステージが覆われていく。ステージ下手側にkeyがセッティングされたが、それも葉で隠されてしまった。THBのセットはマニックスの三人でやりきった。サポート(よく見えなかった。ショーン・リードだったか?)はTHB以外の、残りの4曲のためだけに来たんだ。三人だけのマニックスを観るのは久し振りだった。2006年にギターのサポート(リッチーのパートではない。ステージ上のリッチーのスペースはずっと空席だ)としてウェイン・マーレーが迎えられたとき(日本では2007年に初披露)は、素直に「ジェイムズの負担が減った」とは思ったものの、こうして今ギターをひとりでこなすジェイムズは負担も何のその、粉川しの氏言うところの「2.5人分」だ。ジェイムズ側の二列目で観たので、その仕事人っぷりに改めて舌を巻く。スタッフに指示を出し、ショーンとニッキーにアイコンタクトをし、エフェクターをせわしなく踏み替え、コードからリフからカッティングからギターを弾きまくり、あのメロディに乗せるのが難しすぎるリッチーの言葉をパワフルに紡いでいく。それはまるで、所謂“ゾーン”に入った職人のようだ。I am an architect!「Faster」の歌詞を思い出す。

と言えば、「Ifwhiteamericatoldthetruthforonedayit'sworldwouldfallapart」をライヴで聴いたのって多分初めてだったと思うんだけど、これショーンが八面六臂の活躍な! 偉そうですみませんがショーン上手くなったなあと思った…それはニッキーもそうか……。ここらへんも話すと長くなるんであれだが、これだけ演奏と思想(曲の世界観)の分離がハッキリしているバンドも珍しい。そして思想をどれだけ表現に結びつけるかがジェイムズにかかっているのだなと思う。つくづく稀有で、特殊なバンドだ。

前のひとが熱狂的なファンのようで、最前列の柵にウェールズ国旗を掲げてくれていたこともあってか、ジェイムズがよく寄ってきてくれた。ジェイムズは恒例の「オゲンキデスカイ!」の挨拶もあり、気っ風のいい寿司職人のよう。曲間のMC中、ずっとギターのシールドをムチのようにブンブン振りまわしている様子にも笑いが漏れる。何故か江戸ッ子とか祭りの男衆とか言う言葉が似合う…ウェールズの子なのに……。終始シリアスなステージ中、ところどころ我に返ってニヤニヤする。アルバム全曲の演奏を終えたメンバーに、暖かい拍手(そう感じた)が贈られた。そしてここからはアクセル全開の鉄板曲+最新アルバムからの4曲。瞬時にフロアが湧き、シンガロングが起こる。

『THE HOLY BIBLE』は三人で演奏しなければならない、4REAL以外の誰をも介入させてはならない、と言う潔癖さ。その潔癖さ故にリッチーは消え、メンバーも傷付いた。しかしそれから20年経っても、彼らは変わらない。この潔癖さがある限り、一生聴いていこうと今でも思える。マニックスは私にとってそんなバンドだ。

あの時代はやっぱりどこかおかしかった。カート・コバーンが自殺したのも1994年だった。翌年の1995年は、リッチーがいなくなってFOO FIGHTERSがデビューした年でもある。思い入れがあるふたつのバンド、その両方の現在をひとつき弱の間に観ることが出来た。2015年の夏は、夏が苦手な自分にとって、20年前に思いを巡らせる特別なものになった。

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セットリスト

01. Yes
02. Ifwhiteamericatoldthetruthforonedayit'sworldwouldfallapart
03. Of Walking Abortion
04. She Is Suffering
05. Archives Of Pain
06. Revol
07. 4st 7lb
08. Mausoleum
09. Faster
10. This Is Yesterday
11. Die In The Summertime
12. The Intense Humming Of Evil
13. P.C.P
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14. You Love Us
15. Design For Life
16. Walk Me To The Bridge
17. Motorcycle Emptiness

"YOU MAY THINK I'M SMALL, BUT I HAVE A UNIVERSE INSIDE MY MIND"
― YOKO ONO
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引用はオノヨーコ。ちなみに大阪は安部公房("THE FUTURE IS FOREVER A PROJECTION OF THE PRESENT." ― KOBO ABE)。

・Photo Gallery - SUMMER SONIC 2015|MANIC STREET PREACHERS performing ‘THE HOLY BIBLE’

ぼんやりしたままSIDE-SHOW MESSEで『稲川淳二の怪談ナイト』、体育座りでお話を聞きます。歓声と拍手に迎えられた稲川さん、ニコニコと手を振ったりしてちょうキュート。しかし怪談は怖かった。