2005年05月05日(木)  店主も冷蔵庫も味な居酒屋『串駒』

昨日『アビエイター』を観に行った帰り、ご近所の会仲間と合流し、大塚の居酒屋『串駒』で飲んだ。畳となじむ木の戸棚は特注冷蔵庫。引き戸の中には、ラベルの筆文字に自信をたぎらせた、こだわりの日本酒がずらり。蔵元が作ったという「旨き水」の一升瓶も。お通しで出されたあたたかいもの(かす汁)と冷たいもの(揚げだし茄子)を皮切りに、自家製のさつま揚げ(他の練り物も自家製とか)、サラダ、串焼き……どこの居酒屋にもあるメニューが、どれもうならせる味。肴も進むが酒も進む。「日本一の居酒屋」と呼ぶ声もあり、知る人ぞ知るお店らしいが、ゴールデンウィーク真っ只中のせいか他の客はおらず、貸し切り状態。

と、ザガットサーベイに「くせのある店主」と紹介されていた店主が登場。どこが髭でどこが髪がわからない特長のある風貌。そっくりな似顔絵がkushikoma.comにある。「25年前に店開いてね、オヤジが49で死んだんだけど、ようやくオヤジを超えて、次どうしようかなって思ってる」。初対面とは思えないほど、いきなり語り出す人だが、わたしもご近所仲間も話好きなので、すぐに打ち解け、楽しくご一緒する。「向かいでおでん屋やってんだけど、それもうまいから食ってよ」とすすめられるまま取り寄せた『串駒房』のおでんをつまみ、「これはめったに飲めない、いい酒だよお」という山形の『十四代』などをくいくい飲み、すっかりごきげん。このまま泊まってしまいそうなほどくつろいでしまったが、二階も見せてもらうと、こちらはさらに昭和のお茶の間な雰囲気。美しい女性の写真が飾ってあったので、「誰ですか」と聞いたら、店主のお母様。タカラジェンヌだったそう。

2004年05月05日(水)  映画『チルソクの夏』
2003年05月05日(月)  日本橋三越に「風じゅー」現る!


2005年05月04日(水)  一緒に飛べなかった『アビエイター』

■観た友人たちの間で賛否両論の『アビエイター』を池袋ロサで観る。映画製作にのめりこみ、金をつぎこむハワード・ヒューズと彼を取り巻く人間模様は興味深く、よそものに冷たかった(今でもそうなのかもしれないけど)ハリウッドの内情も垣間見られて面白かった。スクリーンから目をそらさせないスケール感もあった。でも、全体としては、最後まで映画に置いて行かれた感じだった。劇中のハワード・ヒューズに感情移入し辛かったせいかもしれない。精神的にトンデル部分の描き方が、単なる壊れた人にしか見えず、愛せなかった。史実では精神的に不安定になりながらもカリスマ性を失わなかったそうだが、そう思えなかったのが惜しまれる。この作品を見るまでaviatorやaviationという単語を知らなかったが(手元にある英独辞書でaviationを引くと、「Luftfahrt(=空中を進むこと)」とある)、飛行機が民家につっこんだときに、瀕死のヒューズが「I'm Haward Hughes,the aviator」と告げたのが印象的だった。生きるか死ぬかのときにTWA社長という肩書きではなく飛行家という生き方を名乗ったところには人間くささを感じる。

2002年05月04日(土)  フランスのパコダテ人、函館のアメリ。


2005年05月01日(日)  天才せらちゃんと神代植物公園

『パコダテ人』で古田まゆ役を演じた前原星良ちゃん&せらままと神代植物公園へ。映画撮影時は幼稚園児だった星良ちゃんは、はや小学4年生。せらままが幼稚園の行き帰りに手をつないで歩きながら毎日いっぱいお話しした賜物か、とても面白い感性の持ち主で、同じ風景を見ていても、星良ちゃんにはまったく違った世界が見えている。色とりどりのプラスチック椅子が積み上げられているのを見て、「虹」と呼ぶなんて、「この子は天才じゃないだろうか」とせらままと二人で親バカ状態。天井からロープがぶら下がっているのは「雨」だそう。「作文も面白いのよ」と小学校の授業で書いた「なりきり作文」をせらままが送ってくれたので、せら画伯のイラストつきでご紹介。

題:『本の気持ち』

ぼくは『本』です。
ぼくのご主人は『前原さん』です
前原さんは、よくぼくを開いてくれます。
でも、1回読むと、なかなか2回目を開いてくれません。
楽しい本は、よく開きます。
僕はうらやましいです。
ぼくもああいうふうになってみたいです。
そしてある日、あきらめていたぼくが、
おおあくびをするように開いてくれました。
ぼくは安心しました。
すると、読むのが速くてすぐに読んでしまいました。
そして1ヶ月後に、また開いてくれました。
ぼくはそれだけでじゅうぶんです。
そしてぼくはまたねむりにつきます。
また開いてくれる日を待って…。

2004年05月01日(土)  池袋サンシャイン国際水族館『ナイトアクアリウム』
2002年05月01日(水)  きもち


2005年04月25日(月)  美保子さんちで桃を愛でる会

■「先日のコレクション(展示会)を見に来れなかった友人が家に来るんだけど、今井さんもどう?」と猫又短歌つながりの宮崎美保子さんからお誘いを受けたのは2週間前。「お隣の庭で育てているのに、うちからしか見えない桃の花がきれいに咲いているの。それを見ながらおいしいワインを飲みましょう」という言葉を楽しみにこの日が来るのを待っていたのに、残業になって2時間遅刻。美保子さん以外は初めてお会いする個性的な女性たちが五人。わたしの席の両側が同年輩の人で、すでに美保子さんから聞いてわたしのサイトを見てくれていたので、すぐに打ち解けられ、話がはずんだ。美保子さんがずいぶん持ち上げてくれていたようで、あらかじめ興味を持ってもらえていたのが、ありがたい。雑貨のこと、おいしいパンのこと、映画のことなどを話し、「さあ、美保子さん、営業しなきゃ」のかけ声がかかってジュエリーの品定めタイム。気に入る色や形は人それぞれで、ちゃんとその人らしさを表しているのが面白い。皆さん、自分に似合うものをわかっている。美保子さんの話の中に「ルネのママ」が出てきたので、「もしかして、東銀座の『シェ・ルネ』ですか?」と聞いたら当たり。わたしの大好きなレストランと美保子さんは三十年来の家族のようなおつきあいをしているとのこと。だったら今度一緒に行きましょう、と盛り上がる。ネックレスみたいに、すてきなことがつながっていく。

2005年3月13日 宮崎美保子さんの四角い指輪

2003年04月25日(金)  魔女田本「私、映画のために1億5千万円集めました」完成!
2002年04月25日(木)  田村あゆちの「ニュースカフェ」に演


2005年04月23日(土)  根津神社のつつじまつり

■ひさしぶりに締め切りのない週末。天気もいいのでてくてく歩いて、「文京つつじまつり」(5/5まで)でにぎわう根津神社(根津神社にちゃんとサイトがあったのですね)へ。約五十種三千株のつつじが咲き競う二千坪のつつじ苑には、つつじに負けない数の人々が押し寄せ、花を愛で、歓声を上げ、カメラを向けていた。何年か前に一度来たことがあったけど、こんなにきれいだったっけ、とはじめて見たような驚きに包まれる。桜も良いけど、つつじも良い。白から赤の間にもいっぱい色があるんだなあと感じる。「つつじって、ほっときゃ育ちそうだよね」と風流のかけらもないダンナは、記念撮影するカップルたちを身勝手に批評して楽しんでいた。
■さてお昼。春日においしいパン屋さんを出しているフレンチレストラン『マヌビッシュ』は、満席のままラストオーダーとなり、断念。根津神社手前で行列を成していた讃岐うどん屋『根の津』が気になり、15分待って「あげ持ちぶっかけうどん」にありつく。ゆで置きしないというこだわりの麺は、モチモチした食感。しっかりした味のおだしとよくからんで、するする食べられる。つつじ祭期間中はいつもよりメニューを減らしての営業のよう。

2004年04月23日(金)  くりぃむしちゅー初主演作『パローレ』(前田哲監督)
2002年04月23日(火)  プラネット・ハリウッド


2005年04月20日(水)  東京ハートブレイカーズ公演『黒くやれ』

NHKオーディオドラマのパーティーで知り合った脚本家の大先輩、吉村ゆうさんよりお芝居のお誘いをいただき、中野のザ・ポケットへ。東京ハートブレイカーズによる三話のオムニバス『黒くやれ DO THE BLACK』。演出の西田シャトナーさんが第1話、THE SHAMPOO HATの赤堀雅秋さんが第2話、吉村さんが第3話を執筆。登場人物はまったく違うが、「黒」から連想される「灰」「影」「闇」「死」を匂わせる話が連なる。喪服、遺灰、海の底、精神の闇、後悔、戦場……。全編を通して黒のつなぎの衣装、手には抽選箱のような黒い箱を各々が持ち、中から黒い紙片を取り出しては、まいたり口に含んだりする。紙片は顔にはりつく小麦粉にもなり、小学校時代の作文にもなり、落ち葉にもなり、血にもなる。

吉村さんの書いた最終話はストーリーの起伏がはっきりしていてとっつきやすいが、1話2話は観念的な匂いが強く、行間にしっかりと想像を働かせないと取り残されそうな緊張感がある。3話が終わる頃に、なんとなく全体がつながったような気もして、ボディブローのようにじわじわと効く作品だった。固定ファンがついているのか、お客さんはリラックスして楽しんでいる様子で、拍手や笑いなどの反応も良かった。東京ハートブレイカーズは首藤健祐さん(去年観た吉村さん脚本の『父帰る』に息子役で出演されていた)が立ち上げたユニットで、出演者は毎回変わるらしい。今回は平野くんじさん(TEAM・発砲・B・ZIN)と保坂大和さんが出演。

打ち上げで吉村さんのさらに大先輩の脚本家・竹内日出男さんとご一緒する。「わたしの記憶違いでなければ、対談していますよね」と話しかけると、思い出してくださった。2000年3月のNHK-FM新人作家特集でインタビュアーを務められたのが竹内さんだった。漫画原作を中心に書かれている矢澤和重さんは、吉村さんと20年来のおつきあい。お互い出会った頃からあまり変わってないとか。

西田シャトナーさんは関西弁の豪快な人だった。神戸大学在学中に惑星ピスタチオを立ち上げたそう。解散前に公演を観ときたかった。観たいと言えば、TEAM・発砲・B・ZIN主宰のきだつよしさんも見えていたので「気になってます」と話す。宮崎映画祭で観た『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』とPLAYMATEの『隣のベッド』に出演していた小林愛さんのいる劇団で、チラシもポップ。

2002年04月20日(土)  16年ぶりの再会


2005年04月19日(火)  ありがとうの映画『村の写真集』

■『パコダテ人』を魔法のような手腕で実現させたビデオプランニングの三木和史社長(でいいのかな)が製作・プロデュースする映画『村の写真集』(三原光尋監督)の最終試写に駆け込む。この作品、ラインプロデューサーに石田和義さん、ヘアメイクに小沼みどりさん、出演者に徳井優さん、木下ほうかさん、粟田麗さんとパコ度高し。しかも、『雪だるまの詩』主演、『彼女たちの獣医学入門』出演の斉藤歩さんも出演……という贔屓を抜きにしても、いい作品だった。故郷で写真館を営んでいたがしばらくカメラから遠ざかり、山仕事をしていた寡黙な父・高橋研一(藤竜也)。父に反発しつつ写真の道に進み、「東京で活躍する写真家」ということになっているが助手どまりの息子・孝(海東健)。そんな二人がダムで水底に沈むかもしれない故郷の風景と村人たちを納めた写真集を撮るために向き合うことに。言葉もなく距離を置いて山道を行く父と息子の姿は『山の郵便配達』の父子に重なる。一軒一軒訪ね歩いた先との小さなエピソードを積み重ね、父と子がぶつかりながらも心を通わせていく展開もまた、『山の郵便配達』を思い起こさせるが、この作品で印象的なのは「ありがとう」の言葉。頑固だが人情味のある研一は、写真を撮り終えるたびに「ありがとう」と頭を下げ、撮られた人たちも「ありがとう」となる。息子を戦争で亡くし、山の上で一人暮らしする山本のおばあちゃん(桜むつ子)は、手を合わせ、人やお天道様やあらゆるものに感謝を示す。その笑顔を見ているこちらもありがたい気持ちになる。そう、「ありがとう」という言葉がThank youより多謝よりありがたく聞こえるのは、この五文字の中に「こんなすばらしいことはなかなかない」という意味が込められているからではないか。でも、聞き慣れたありがとうの響きが流れてしまうのと同じように、日々のささやかな幸せをありがたく思うことも忘れがちになっている。たとえば、故郷がそこにあること。家族がそこにいること。歩けば見えてくるものがあること。淡々と、だけど、しみじみと忘れ物に気づかせてくれた映画に、ありがとう。この作品の撮影後、今年1月23日に83才で亡くなった桜むつ子さんの天真爛漫な笑顔にもありがとう。エンドロールに延々と百行近く映し出されるロケ地・徳島の皆さんの名前に、三木さんがパコダテ人で見せた「ありがとう」を思い出した。公開は、東京都写真美術館ホール(4月23日〜)、梅田OS劇場C.A.P(5月7日〜)、シネマスコーレ(陽春公開)、OS・シネフェニックス(5月7日〜)、広島宝塚(5月14日〜)、京都シネマ(6月)、高知東宝(初夏)、津大門シネマ・札幌シアターキノ・仙台フォーラム・新潟シネウインド(時期未定)。

2002年04月19日(金)  金一封ならぬ金1g


2005年04月18日(月)  日比谷界隈お散歩コース

■昨日、シネスイッチで『コーラス』を観た後、銀座から大手町まで歩いた。この辺りは冷やかして楽しいお店が多くて、散歩にうってつけ。日比谷まで来て、いつも通りがかるたび気になっていた東京會舘のカフェ・テラスへ。窓際のテーブルについてからブラインドを上げてくれたことに感激。天井は高くて、テーブル間隔は余裕があって、ホテルのラウンジは豊かな気分にしてくれるのが好き。ここはホテルの割には値段もお高くないのがいい。ベーカリーも100円でおつりが来る揚げどーナツなど良心的なお値段。
■ひとけのない日比谷公園の桜を愛で、遊歩道を歩いているうちに、噴水のある一角に出た。デジャヴのある光景だと思ったら、以前夜景スポットとして紹介されているのを見て、一度行ってみたいと思っていた和田倉噴水公園。夕景もまた幻想的だった。


2005年04月17日(日)  ティッシュちりぢり映画『コーラス』

■新聞で激賞されていた『コーラス』を観にシネスイッチ銀座へ。上映30分前にも関わらず「立ち見になるかもしれません」と窓口で告げられる。前のほうにかろうじて席が残っていたが、前評判はかなり高いよう。はじまってみると、『ニュー・シネマ・パラダイス』でサルヴァトーレを演じたジャック・べランが高名な指揮者ピエール・モランジュ役で登場。彼の元に、一冊の日記を携えて少年時代の友人ペピノが訪ねてくる。日記は二人が出会った寄宿舎学校「池の底」に舎監として赴任したクレマン・マチュー(ジェラール・ジュニョ)が遺したもの。日記に書かれた1949年の出来事を追想する形で物語は進む。家庭環境に恵まれない少年たちは校長のスパルタ教育に抑圧され、ますます荒んでいく毎日。そこに現れた風采の上がらない失業音楽教師は、少年たちに合唱を教えることを思いつく。少年たちの歌は次第に磨きがかかり、暗く沈んでいた瞳にも光が宿ってくる……という読める展開なのだが、予定調和になりそうなところで小さな裏切りが仕掛けられ、登場人物たちを人間くさく描いている。うまくいくかと思えばハシゴを外し、がっかりさせておいて不意打ちのような救いが用意されている。脚本は、この作品が長編デビュー作となるクリストフ・バラティエ監督の手によるもの。フランス人監督のデビュー作にしては手堅くまとめた印象もあるが、ツボを押さえたストーリーと演出にしっかり泣かせてもらった。■何より涙を誘ったのが、少年時代のモランジュを演じたジャン=バティスト・モニエの声。サン・マルク少年少女合唱団のソリストだそうで、まさに天使の顔と奇跡の声の持ち主。彼の澄んだ歌声が響くたびに、客席からは洟をすすり上げる音が聞こえる。チラシのキャッチコピーには、「涙がこぼれそうなとき、歌があった」とあるが、わたしは「歌が流れるたび、涙がこぼれた」。心洗われる声というのは、人をこうも無防備にして揺さぶってしまうのか。不覚にもハンカチを忘れ、花粉症対策のティッシュは水を含みすぎてちりぢりになり、金魚のように腫れた目で銀座の街を歩くことに。ハンカチに加えてサングラスも持って行くべきだった。■作品のサイトによると、フランスでは7人に1人が観て、サントラ盤を150万枚売り上げたそう。さらに少年時代のペピノを演じた愛らしい男の子マクサンス・ペランがジャック・べラン(製作にも参加)の息子だったと知る。


2005年04月16日(土)  オーディオドラマ『アクアリウムの夜』再放送中

■「怖いです」「夢に出そう」「眠れません」「助けて」という悲痛なメールが今週はたくさん届き、わたしを喜ばせた。11日からNHK-FM青春アドベンチャーで再放送が始まったドラマシリーズ『アクアリウムの夜』(全10話)の感想。怖い怖いと言われるほどうれしいのは、稲生平太郎の原作を脚色するにあたり、わたしも相当怖い思いをしたから。怖がりなくせに執筆にあてられる時間は夜しかなく、人一倍たくましい想像力のせいで恐怖が増幅され、夜中に半泣きでワープロをたたいていた。停電事件なんてものにも肝を冷やされ、わずか150センチの身がさらに縮む思いをした。そんなわけで、ラジオの向こうの皆さんに怖がっていただけると、報われたような気持ちになる。出演者(松田洋治 國府田マリ子 有馬克明 清水紘治 秋元紀子 谷川清美)の力演、ミステリアスな音楽(選曲:伊藤守恵)に盛り上げられて、脚本よりもさらに鳥肌度倍増。来週18日からは後半6〜10話の放送(月〜金22:45〜23:00)と前半1〜5話の再放送(月〜金17:45〜18:00)がスタート。途中から追いつく人はあらすじをどうぞ。

2002年04月16日(火)  イカすでしょ。『パコダテ人』英語字幕

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