2004年12月08日(水)  『frame』 by Takeshi Sasaki

■わが家のテレビの上には「チャチャキ」という名前のパキラの木がいる。会社で隣の席だったデザイナーのチャチャキこと佐々木健君が会社を辞めたときにくれたもの。そのチャチャキ君とひさしぶりに会ってお茶をする。フリーのデザイナー業の傍らコレクターズアイテムのミニカーを買い付け、次は家具も手がけるとか。「そうそう、俺、こういうの作ってるんだよ」と見せてくれたのが『frame』という作品。雑貨好き仲間がやっているお店『SUNNY DAYS』に遊びに行ったとき、商品を見ながら「俺も学生時代こういうものを作ったな〜」と昔を懐かしんだところ、「ホントに!?作って欲しい!」と言われて作り始めたのだそう。まずは夏に『マリン』をテーマにした第一弾を発表したところ大好評。第二弾の秋は味覚をテーマに『ドーナツ』がモチーフ。浮き輪からドーナツへ、輪っかつながり。「季節以外にも楽しい表現が出来そうなものがあれば、制作していく予定」とのことで、『ハート』をリクエスト。チャチャキ君、楽しみにしています。■『SUNNY DAYS』はチャチャキ君いわく「フレンチカジュアルな生活雑貨からベビー用品まで、幅広い年齢層の女性に喜ばれそうなものでいっぱい。商品セレクトやレイアウトにも、オーナーのセンスの良さがとても感じられる素敵なお店。布物やアクセサリーなど作家さんの個性溢れた作品を中心に販売。メディアにも沢山取り上げられている人気のお店で、オーナーの気さくな人柄も愛される理由のひとつ」とのこと。frameについてのお問合せは件名「frameの件」と明記の上、メールにてどうぞ。
Frame
by Takeshi Sasaki

季節を感じるシーンを小箱にパッケージ。暮らしの中に、ここちいい小さな空間を。波の音を感じたり、スイーツの味覚を感じたりするようなFrameの世界で、お部屋のちょっとしたスペースを演出。ただリアルにシーンを表現するよりも、あえてイメージにする事で遊び心を表現しました。
frame取扱い店『SUNNY DAYS サニーデイズ』
●川崎市多摩区登戸2701 小田急線の向ヶ丘遊園駅から徒歩2分
●tel 044-932-0916 ●11:00〜19:00 木曜定休


2004年12月07日(火)  俳優座劇場『十二人の怒れる男たち』

俳優座劇場プロデュースNo.67『十二人の怒れる男たち』を観る。レジナルド・ローズ原作、映画にもなったこの有名な作品を観るのははじめて。十二人の陪審員の審議の模様がストーリーになっているという予備知識はなんとなくあったけれど、冒頭とラストと途中(審議に必要なものを差し出すとき)に守衛(小山内一雄)が顔を出す以外は、十二人の男たちが舞台に出ずっぱりで、本当に常に誰かが「怒って」いた。陪審員の個人的なキズに触れる発言が怒りを買ったり、陪審長の仕切り方にケチがついて喧嘩になったり。白熱する議論というのは、その展開自体がスリリング。陪審員たちのやりとりから、容疑者のバックグラウンド、犯行の様子など裁判の内容が明らかにされていくのだが、最初は十一人の陪審員が「クロ」だと信じていた事実が、少しずつ揺らぎ、引っくり返り、いつの間にか有罪無罪が逆転し、最後には無罪で全員一致し、審議を終える。推理劇に心理サスペンスが加わった形だが、この面白さは十二人の個性が際立っているからこそ。名前ではなく「1号」から「12号」の数字で呼び合う陪審員たちは、記号でありながら、それぞれあだ名をつけやすそうな明快なキャラクターを持っている。スポーツマンタイプの陪審長1号(大滝寛)、うだつが上がらないけれど愛嬌がある2号(荘司肇)、喧嘩っ早い3号(三木敏彦)、理知的で一目置かれる紳士の4号(立花一男)、冷静で穏やかだがスラムでの過去を持つ5号(井上倫宏)、調子のいい職人6号(緒方愛香)、ヤンキース戦が気になる無責任な若者7号(高橋克明)、最初に「有罪と決めつけたくないから無罪」に一票を投じた8号(松橋登)、老いているがプライドを失っていない9号(浜田寅彦)、言うことが極端な10号(鵜澤秀行)、メモ魔のヨーロッパ移民11号(里村孝雄)、優柔不断な広告屋12号(須田真魚)。この日記を書いているのは鑑賞して一週間後だが、十二人の席順とともに彼らの違いを思い起こせる。皆さん熱演だった。舞台右手のほうには「審議室に備え付けられた」設定の給水器があり、出演者はかわるがわる水を飲んでいたが、先日、上杉祥三さんの舞台を見たときに「二人芝居で一時間半出ずっぱりなので、舞台上で水を飲むシーンを作った」と話していたのを思い出し、これも小道具兼水分補給の工夫なのかなと思った。■今夜の観劇のおともは最年長の友人コンビ、余語先生とT氏。三人で熱心にアンケートを書いた後、近くの居酒屋『真希』へ。「もう少し謎解きよりも人間ドラマを見たかったですね」とT氏は鋭い意見。確かに、最後までクロを主張していた3号が「シロ」に寝返るところがあっさりしていた。「ああゆう奴らは潰していくべき」と主張していた彼自身に人には言えない過去があり、けれどそこからやり直せた人間だとしたら……などと勝手にアイデア出しして盛り上がる。先日オレオレ詐欺に危うく200万円かすめ取られるところを免れたT氏、お安いものですとご馳走してくれた。

2003年12月07日(日)  どうにも止まらぬ『剣客商売』


2004年12月04日(土)  『父と暮せば』@岩波ホール

■7月31日から神保町の岩波ホールで公開されている『父と暮せば』(黒木和雄監督)をようやく見る。週末はしばらく補助椅子を出しても入りきれない盛況を見せていたが、5か月近く経ち、ようやく座席にも余裕ができていた。とはいえ7割強の入り。見る前から作品の力を感じさせてくれる。すでに脚本を読み、涙していたが、映像になると、さらに感涙度はアップ。井上ひさしの原作の力を受け止め、より大きなエネルギーを発散させる父の原田芳雄、娘の宮沢りえの熱演に心を打たれる。他の配役は考えられないほどすばらしかった。■原田芳雄さんは、わたしがデビューする前の函館映画祭でご一緒して、一方的に記憶し、好感を持っている。赤ちゃんを抱いた若いお母さんに「かわいいですね、何ヶ月ですか」と気さくに声をかけるような人情味あふれる人だった。そのとき上映された『ツィゴイネルワイゼン』(鈴木清順監督)の舞台挨拶で、「飛行機に乗れないので、東京から8時間かけて電車で来ました」と話されていたが、映画と鉄道を愛するご近所仲間のT氏によると「相当有名な鉄道通でいらっしゃいます」とのこと。■主人公父娘の葛藤をしっかり描きつつ、原爆投下という歴史の重さも痛いぐらいずっしりと伝える『父と暮せば』は、『TOMORROW/明日』『美しい夏キリシマ』とあわせて黒木監督の戦争レクイエム三部作となる。原爆といえば、わたしが子どもの頃は原爆記念日は登校日であり、家族で写真展を見に行く機会もあった。アメリカからの留学生・ブラッド君の滞在中に一緒に広島の原爆ドームを訪ねたりもした(ブラッド君の希望というよりは、アメリカの人に見ておいてほしいというわたしの母の意向だった気がする)。でも年々、原爆投下の歴史はわたしのまわりからもわたしの心の中からも存在を薄め、消しつつある。『父と暮せば』の父と娘の語る言葉の背景には何千人、何万人のヒバクシャの声があり、それらは決して創作ではなく、確かな事実だったのだ。この物語が気づかせてくれるものの意味は大きい。多くの人に届いてほしい作品だと思った。

2002年12月04日(水)  カブレラ


2004年12月01日(水)  小原孝・佐山雅弘 Piano de Duo - 4

小原孝さんと佐山雅弘さんが二台のピアノを奏でる『Piano de Duo』を聴きに行く。好評のうちに回を重ね、今回で4回目。会場はJR上野駅向かいの東京文化会館の小ホール。小ホールといえども中は広々、天井は高々。コンサートというものとは長らく縁のなかったわたしは、そのスペースのゆとりに感激する。座席は、一段高くなる後方部の最前列ど真ん中。まわりからは「誰々の次のリサイタルは」「先日のどこどこで聴いた音は」といった通な会話が聞こえてくる。■第一部は二台のピアノが向き合う形。オープニングの後、座席の高さに差をつけた椅子が運ばれ、モーツァルトの「4手のためのソナタ」を連弾。また元の位置に戻り、「軍艦マーチによるパラフレーズ」(中田喜直)。「このホールに最も違和感のある曲」という紹介通りの面白い取り合わせだった。二人とも実に楽しそうに弾き、嫉妬を覚えてしまう。ピアノと一緒にこちらの心も躍り、歌うよう。繊細、理知的に見える小原さんと、旺盛なサービス精神が顔に表れている佐山さん、少年のような遊び心と茶目っけを備えた二人はトークも絶妙。ピアノコンサートでこんなに大笑いした記憶はない。ピアノの配置をハの字型(狭いほうが観客側)に変えた第二部は、ビートルズメドレー36曲を40分以上にわたってノンストップで披露。ソロパートを弾く小原さんの背中を見つめて笑いを誘っていた佐山さんは、演奏に熱が入って暑くなってくると、どんどん高音部に移動して最後は鍵盤の外まで行き、舞台裏に上着を預けに行った。仕草がいちいち微笑ましく、次は何をやってくれるのかという期待で目が離せない。二人ともどうしてこんなに美しい音をこんなに楽しそうに奏でられるのだろう。メドレー後半、Hey Judeの盛り上がりでは、なぜか涙が出てくる。アンコールに応えて、佐山さん作曲のマンボ(あだ名はサヤマンボウ)。その後のトークの流れで「もう一曲やる?」と小原さんが持ちかけ、日本の歌(タイトル失念)。弾くのが楽しくてしょうがない感じの二人の音を感じ、余韻に浸るのも、楽しくてしょうがなかった。■小原さんとは、脚本と作詞を手がけた2002年のNHK夏の特集『真夜中のアンデルセン』でご一緒した。全編を小原さんのピアノが彩った、市村正親さんのひとり舞台。あらためて、ぜいたくな企画だったと思う。

2001年12月01日(土)  函館映画祭2 キーワード:これが有名な


2004年11月25日(木)  ソウなのか、ソウでないのか。

■食事していたら、隣のテーブルから映像関係者らしいグループの会話が聞こえてきた。「ある映画」について話しているらしい。「どこで観たの?」「新宿歌舞伎町。あんまりやってないからさ」「でも伏線がないって聞いたけど」「何言ってんだよ。ちゃんと張ってるよ。あれ以上やると犯人バレバレだろ」「低予算だけどよくできている」「血が苦手な人は辛いかな」「役者はほとんど無名だけど、よかった」「あの役やってるの脚本家なんだろ?」「不倫相手の医者、鶴田真由そっくりじゃなかった?」「あの東洋人?」……聞けば聞くほど気になるのだが、話している全員が知っている作品なので、題名を口に出さないまま次の話題に移ってしまった。「犯人」と言っていたのでサスペンスらしいけど、わたしにとっては、タイトルが謎。「東洋人」というキーワードからすると洋画?■気になったので、ウォーカープラスで「新宿歌舞伎町」を検索。その中で「上映館の少ないサスペンス」を探すと、『ソウ(SAW)』という作品がある。ソウとは謎の犯罪者『ジグソウ』のことだという。「タイトルの意味が面白い」と言っていた記憶が蘇る。でも、血もたくさん出てくる様子。でも、公式サイトを見ても「脚本家が出演」とは書いていないし、鶴田真由似の東洋人も紹介されていない。果たしてソウなのか、ソウでないのか。わかる人、教えて!


2004年11月20日(土)  高倉台・三原台同窓会

■5か月ぶりに大阪に帰る。今回の目的は同窓会。中学3年のとき同じクラスだったはるちゃんが関空まで迎えに来てくれる。はるちゃんの車でフレール・ド・シャンソニエ(堺市百舌鳥陵南町3-413 TEL072-276-1888)というカフェレストランへ。『泉州のスイーツ&ベーカリー+カフェ』というムックに大きく取り上げられている。泉州のスイーツで一冊できることに驚き。わたしが住んでいた頃はカフェ文化なんてほとんど根付いてなかった。■はるちゃんはわたしの作品の強力なサポーターの一人。『冷凍マイナス18号』のバッジプレゼントに応募して当選したのを、封筒ごと持ち歩いて職場で自慢している。しわしわになった封筒を見て、「これ、わたしがラベル貼ったのよー!」と感激。食事をはじめたところに、はるちゃんの幼馴染の陽子が到着。わたしとは中学・高校の同級生。中学校ではソフトボール部で一緒だったけど、仲良くなったのは高校1・2年で同じクラスになってから。わたしが留学した一年間にいちばんたくさん手紙をくれたのが彼女。最後に会ったのは5、6年前だけど、いつ会っても高校時代から変わってない気がする。■はるちゃん、陽子は夜に先約があり、同窓会は欠席。わたしの実家でお茶を飲んで、陽子に駅まで送ってもらい、同窓会場行きワゴンバス(運転手は幹事の葛ちゃん)に乗り込む。わたしを引き渡すつかの間、陽子は同級生と再会。■同窓会といっても立食のかしこまったものではなく、居酒屋でワイワイのスタイル。小学校から中学校にかけての同級生25人が村さ来に集まった。男子も女子も全体的に若い。女子はますますたくましくなり、男子をアゴでこき使い、男子もぼやきながら楽しんでいる様子。「みんな変わってへんなー」とお世辞を言っていた男子は、酒が回るにつれ、「みんなオバハンになったなー」と本音。座敷なので席を自由に動いて、いろんな子と話せた。ブレーン・ストーミング・ティーンを読んだよ、とか買ったよ、と言ってくれた子が何人もいて感激。同級生っていいなあ。■2次会はカラオケスナック。歌よりもおしゃべりに夢中だった。カウンターに座っているやたら声のいい男性が自慢の喉を鳴らしては、こっちのテーブルをちらちらと見て拍手を求めるそぶり。確かにうまかった。歌手と言えば、同級生の女の子の長女が樋井明日香としてアーティストデビューしていた。美人のお母さんに似て、かなりかわいい。女優としてもドラマ『ピュア・ラブ』にルナ役で出演していたそうで、「坊さんラブ、見てたでー」と昼メロ好き主婦組は大喜び。ドラマや映画の主題歌の仕事が多いようなので、作品で遭遇するチャンスもあるかも。■8時間の同窓会の間にいろんな話をしたけど、普段東京で出てこない話題が多くて新鮮だった。考えてみると、高校、大学、広告会社、脚本の世界と進むにつれて、どんどん似た者同士がまわりに集まってきている。価値観の近い人の中にいる居心地の良さはあるけれど、見落としている感覚や感性もあることを同級生との再会で気づかされた。同い年、同じ町という理由で机を並べ、運動会やお楽しみ会を一緒にやった仲間。誕生日が1年違えば、家が1キロ離れていれば、同級生になれなかった人たち。この不思議で貴重な縁を楽しみたい。最後に、幼なじみの寺岡佳夏へ。佳夏を偲ぶ会でひさしぶりにみんなに会ったとき、せっかく佳夏がつなげてくれたんやから大事にしようなって話して、今日集まることになったんやで。佳夏のおかげで、またみんなに会えて、おもろかったわ。佳夏がおったら、もっとおもろかったやろうけど。

2004年6月20日 日本一おしゃべりな幼なじみのヨシカのこと
2005年05月08日 佳夏の置き土産、高倉三原同窓会やるでー。

2002年11月20日(水)  カタカナ語


2004年11月15日(月)  「トロフィーワイフ」と「破れ鍋に綴じ蓋」

最近知った言葉、トロフィーワイフ。文字通り「トロフィーのように見せびらかす妻」を指すらしく、「あの人の奥さんはトロフィーワイフよね」などと羨望と嫉妬をブレンドした口調で使われていたのだが、今まで聞いたことがなかった。わたし自身は「みっともないから引っ込んでいなさい」と隠されるほうなので、自覚する機会がなかったとも言える。ところがトロフィーワイフの意味をよく調べてみると、もともとは「成功した男が糟糠の妻を捨てた後に手に入れるステータス妻」のことで、決してほめ言葉ではない。美人妻と結婚した男友達に「トロフィーワイフだね」などとからかったら、友情にひびが入るところだった。妻だけじゃあ不公平という声に応えてか「トロフィーハスバンド」という言葉もある。こちらは「バリバリキャリアの妻を支える専業主夫」を指すらしい。ほめてつかわす、ということなのか。

お似合いの二人を指す言葉だと勘違いして使っていたのが、「破れ鍋に綴じ蓋」。そもそも「割れ鍋に閉じ蓋」だと思っていたのだが、その前に「割れ鍋煮閉じ豚」という料理か何かだと思い、「煮閉じ豚っておいしそうですね」と言ったら、「ワレナベニトジブタじゃなくて、ワレナベニ、トジブタですよ」と教えられた経緯がある。「綴じ蓋」は「壊れた部分を修繕した蓋」のことで、「破れ鍋」とは不良品同士のカップル。おめでたいわたしは「運命のように相性ぴったり」の意味だと勘違いしていたのだが、実際は「どんな人でもそれなりの相手(配偶者)が見つかる」というあまり救いのないニュアンス。どちらかと言うと、「蓼食う虫も好き好き」「捨てる神あれば拾う神あり」に近い。ムッとさせてしまった方、ごめんなさい。

2002年11月15日(金)  ストレス食べたる!


2004年11月14日(日)  『バニッシング・ポイント』@ルテアトル銀座

■フィリップ・ジャンティ・カンパニーの『バニッシング・ポイント』を観る。チラシで知って気になっていたのだが、昨日打ち合わせで会ったプロデューサーが「今日観てきたんですよ」と言うまで忘れていた。「日曜までですよ」と言われ、調べてみると、東京公演は今日の14時の部を残すのみ。前売り券は売り切れで当日券は1時間前から発売とある。1時にル テアトル銀座に着くと、エレベーターホールにはすでに行列。一人ずつ受付に呼ばれ、自分で席を決めてチケットを購入する。20分並んで順番が回ってきたときには、最後列か左右の補助椅子席しか残っていなかったが、ここまで待ったからには観る。通路に椅子を置いているので、人が通るたびにぶつかって椅子が動き、肩身の狭い思いをするが、我慢がまん。■幕が開き、いきなり日本語の台詞が出てきたのには驚いた。「あなたが見ているのは私ではなく、あなたの内面かもしれない」といった作品のテーマを告げる。全体的には台詞はほとんどなく、ところどころ入るやりとりは英語だったり日本語だったり。不気味な人形、意志を持ったように躍動する巨大ビニール、首だけの「おじいちゃん」……見たことないものが次々出てくる。チラシからはサーカスのようなものを勝手に期待していたのだが、肉体的というより精神的離れ業という感じ。「バニッシング・ポイント」とは遠近法で言う消失点。重力や遠近感や常識やいろんなものが消える。頭マッシロ状態で『舞台の魔術師』の魔法にかかり、舞台空間を浮遊するパフォーマーのように空想の世界をたゆたうのが、心地よい楽しみ方かもしれない。■いちばん感動したのはカーテンコール。満席の会場から沸き起こる拍手と「ブラボー!」のかけ声は、楽日ということもあり、なかなか鳴り止まない。それを受け止める出演者とスタッフの胸中を想像し、なんて幸せな仕事だろうと思う。そして、何度目かのカーテンコールで見せた、遠近法を覆すとっておきのサプライズ。最後の最後まで遊び心を忘れない姿勢に、いっそう大きな拍手が贈られた。このあと名古屋(11/18 愛知厚生年金会館)、山口(11/20・21 山口情報芸術センター)、大阪(11/23 12:30/17:30 シアター・ドラマシティ)、松本(11/26 まつもと市民芸術館)、新潟(11/28 新潟市民芸術文化会館・劇場)公演が続くそう。


2004年11月12日(金)  何かと泣ける映画『いま、会いにゆきます』

■渋谷の渋東シネタワーで話題作『いま、会いにゆきます』を観る。「タイトルの意味がわかった瞬間、しびれる」といろんな人が言う意味がやっとわかった。『シックスセンス』よりも驚きと感動があった。映画館を出てから会う人ごとに「よかったですよ。でも中身は言いませんから見てくださいね」と話す。すでに原作を読んでいる人は「泣けるよー」と絶賛。岡田恵和さんの脚本もうまいが、市川拓司さんの原作、着想がすばらしいのだろう。市川さんのデビュー作「Separation」(ドラマ『14ヶ月』原作)は友人・さちよちゃんのダンナさんの運営するサイト、アルファポリスで連載され、出版された。力のある作家さんなんだろうなと想像する。早速、映画の原作も読んでみるつもり。■「何度出会っても惹かれあう二人」という話は大好きで、『楽園』(鈴木光司)や『One』(リチャード・バック)は繰り返し読んだ。ダンナにも『いま、会い〜』をすすめたが、「夫婦がもう一度恋に落ちるんだよ。素敵でしょー」と言っても、現世でババを引いたと思っているフシのあるダンナは乗ってこない。知人男性いわく「30代既婚の男がいちばん泣けるらしいですよ。あんな恋愛したかったなあって」。そういう涙もあったのか。主演の中村獅童さん、竹内結子さんは、何度恋に落ちても初恋に見えるような、しっくりくる組み合わせ。だからこそ観客はすんなり劇中の恋に寄り添えたのかもしれない。ポケットに手をしのばせるシーンが好き。竹内結子さんは今までに観た作品でいちばんキレイだと思った。

2002年11月12日(火)  棗
2000年11月12日(日)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)


2004年11月10日(水)  トレランス二人芝居『嘘と真実』

■FMシアター『夢の波間』で船問屋『佐野屋』の主・茂右衛門を演じた上杉祥三さんと長野里美さん出演の『嘘と真実』を観る。二人芝居は、お二人が演劇ユニット『トレランス』を立ち上げたときからの夢だったそう。物語の舞台は演劇ホールの楽屋。そこで服毒自殺を図ったとされる大女優の死に疑問を抱いた刑事が、助手に指名した女性刑事とともに事件を検証する。女性刑事の上げた報告書をもとに二人の刑事が容疑者や被害者をかわるがわる演じ、事件の解明という「真実」に演技という「嘘」で迫っていく。笑いあり、サスペンスあり、上杉さん・長野さんのコスプレと芸達者ぶりも堪能できて、素直に楽しめる作品。推理が成立したところで一件落着かと思ったら、さらなる展開があり、伏線が一気につながったラストはお見事。さすが上杉さんの本! 古きよきアメリカの探偵ドラマを思い出させるような音楽は、『夢の波間』でつながった大河内元規さん。打ち上げ以来ごぶさたしていた大河内さんとも劇場のシアタートップスで会えた。上杉さんとも大河内さんとも、またお仕事したいですねと話す。

2002年11月10日(日)  黒川芽以フォトブック

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