2003年12月07日(日)  どうにも止まらぬ『剣客商売』

■今年は年初から時代小説をよく読んだ。FMシアター『夢の波間』が江戸時代と現代を行き来する話だったので、廻船問屋が出てくる話や物語の舞台となる元禄の頃の話を中心に、勉強させてもらった。時代ものといえば宮部みゆきの怪談ぐらいしか読んだことがなく、これまでは「わからない地名や単語ばかりだし」と敬遠していたのだが、今年読んだものはどれも心から楽しめた。時代小説を味わうだけの感性が熟したのかもしれない。川崎市から文京区に引っ越したせいか、今住んでいる辺りに近い「茗荷谷」や「根岸」といった地名が出てくるのも親しみが増す。■このところはまっているのが、池波正太郎の『剣客商売』。まわりの時代小説好きにおすすめを聞いたら必ず挙がる名前で、読みだしたら、これがもう止まらない。人物の置き方が絶妙で、あっという間に頭の中に登場人物が住みついてしまう。それぞれの個性が際立っているから、短い台詞に奥行きや深みが感じられ、脚本の勉強にもなる。どうしてこんな面白いものを今までほうっておいたのか、とも思うけれど、今だからこれほどのめりこめる気もする。文字が大きくて読みやすい新装の新潮文庫の解説は、作家の常盤新平さん。放送文化基金賞ラジオ部門の審査員として『雪だるまの詩』をほめてくれた上に、授賞式でお会いしたとき「こんなに若くてかわいい人が書いていたんですね」とめったに言われないお世辞を言ってくれた貴重な方なので、これまたオマケつきの気分。この勢いで全巻集めてしまいそうだが、まわりを見渡せば、「全巻持ってる!」人の何と多いこと。仲良しのT嬢にいたっては、「剣客商売に出てくる料理のレシピ本を買って、実際に作っている」という熱の入れよう。先日、ウエストでお茶をしていたら、隣のテーブルの老紳士が「剣客商売に出てくる店で、今もやっている店がけっこう出てくるんですよね」と話しているのが耳に入り、お、ここにも、とうれしくなった。ネットで検索すれば、やはりあるあるファンサイト。「ペンは剣より強し」なんて言葉があるけれど、これだけ読者を引きつける作品を書かれた池波氏の「ペン客商売」にも賞嘆が尽きない。

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