2012年06月19日(火)  小さな焦げ跡より大きな傷

夕飯を終えて、たまが「きゃんどるやるぅ」と言い出し、テーブルに出してあったキャンドルを灯した。

たまをテーブルに残し、オープンキッチンの流し場でお皿を洗っていたら、「わ! どうしよう!」と悲鳴のようなたまの声がして、あわてて駆けつけると、テーブルの上に、赤々と燃えるマッチ棒が横たわっていた。

わたしも「わーわー」と大騒ぎして、消してみると、マッチ棒だと思ったのは、爪楊枝だった。

キャンドルをいくつか灯すとき、マッチ棒がもったいないので、わたしが爪楊枝で火を移していたのを見て、覚えていたのだろう。キャンドルの火を爪楊枝で受けたものの、炎が指に迫ってきて、持ちきれず、落としてしまったらしい。

新居に合わせて数週間前に届いたばかりのテーブルに、焦げ跡がついた。「もう、なんてことしたの!」と叱りながら、テーブルをごしごししていると「だって、どうしていいか、わかんなかったんだもん」と、たまが泣きだした。

考えてみれば、手元に火を持つ体験といえば、花火ぐらいで、指先から数センチ先に炎を受けて、それが迫って来たのは初めてのことだったのだろう。怖くて、あるいは、熱くて、思わず落としてしまったら、テーブルの上で火が燃え続け、「わ! どうしよう!」の悲鳴となった。

そのことに気づいて、ごしごしの手を止め、「たま、怖かったね」と抱きしめると、たまはいっそう強く泣いた。

その後、「まま、だいっきらい」と言い捨て、寝室にたてこもった。

テーブルには、うっすら焦げ跡が残ったけれど、無垢の木ならではの木目や傷に紛れて、目を凝らさないとわからない。それよりも大きな傷を、球の心に刻んでしまった。

「たまへ おこってごめんね。こわかったね。けがしなくてよかったね。でてきて、あそぼ」と手紙を書いて、ろう城を続ける寝室のドアの下に滑らせると、しばらくして「もどってきたよ」と部屋を出てきた。

大きな焦げ跡なら、見るたびに思い出すのだろうけれど、記憶を呼び覚ますきっかけにはなりそうにないささやかさなので、書き記しておこうと思う。


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