初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2016年03月31日(木)
『Original SHINSEKAI Final Special 4days』千秋楽

Original SHINSEKAI Final Special 4days 千秋楽『完全オリジナルメンバーで一夜限りの大復活!! S-KEN & HOT BOMBOMS』@音楽実験室 新世界

S-KEN & HOT BOMBOMS(Vo:S-KEN、G:窪田晴男、Perc:ヤヒロトモヒロ、Drs:小田原豊、B:佐野篤、Key:矢代恒彦、Tp:多田暁)
MC:ハスキー中川、DJ:エンドウソウメイ(Original SHINSEKAI Director)

夜の薫りをまとうスペース、西麻布新世界がクローズすることになりました。幕引きはS-KEN & HOT BOMBOMS。やっぱりこういう場に現れるバンドです。スカパラと共演する「GYO」とニュースが流れてきたとき素で多田暁さん? と思う(いやしかしこのさかなクン格好よかったですねえ)、この辺りの者としては無条件で駆けつけますよ。アフロ、キューバン、ブーガルー、全部エスケンから教わった。世間がジュリアナで盛り上がっているとき六本木インクに行く輩です。イヤダヨサラバをまた聴くんだなあ、と思いつつ六本木からの道を歩くと、遠くからでも長い行列が目に入る。ソールドアウトの大混雑。ちょっと不良で、だけどジェントル。夜の遊びを知っている。そんな大人たちが集うサロンは、いつの時代にも隠れ家のようにどこかに存在していてほしいな。とフロアを眺め乍ら思う。ここでは私も若手です。

リハは三日と言っていたかな、傭兵部隊の面目躍如。集まったのは七年ぶり、これ以来だとか。ボンボンズとなれば窪田さんも颯爽と立奏だぜ! エスケンがあんだけパワフルに唄ってるんだから座奏もなかろうという……いやさ、始まる前にMCの中川さんがしみじみしたこと仰って。川勝さんや芝浦インク松山さんも亡くなった。さびしいね。エスケンも二週間前迄はごはんも食べられなくて、でも一週間前から急に元気になった! なんて。いやだもうこういうの、皆元気でいてくれようと願う。新世界のステージは、『ASYMMETRIA』で横町さんが立った場所でもある。そりゃせつなくもなる。

皆さんいい感じのおじいちゃんになってきましたが、演奏はキレッキレであった。演奏するときだけ窪田さんがかける眼鏡は老眼と思われむしろ萌えた。それにしても多田さんはいつ見てもダンディで素敵ですわね……トレードマークのレッドラッカーtp、おいくつになっても似合います。「月は悪魔」はゲストヴォーカルに久和田佳代さん、エスケンとデュエット。「これ、アルバムでは誰と唄ったんだっけ?」と言うエスケンに「(村上)里佳子〜」と即答する窪田さん。そうそう、エスケンといるときの窪田さん、いくつになってもちょっと小僧っぽくて好きなんだ。腕利きだったこともあり、年長者から声がかかることの多かった窪田さんですが(言動も若年寄だったしな・笑)、エスケンといるときは特に気心の知れた仲って感じがする。「初めて会ったときのこと、憶えてる?」「憶えてるよ」ってやりとりも微笑ましい。このときの窪田さんの口調がまたね、威勢よくも慈愛に満ちた感じでね。ちょっとセンチメンタルにもなったりしました。しかもエスケン、「こうやって皆生きてて嬉しい」みたいなこと言うんだもの。

いろんな国に行った。いろんなやつらに会った。あいつは元気かな、今どうしてるかな。そんな思い出話から「わが船ハバナを発つ時」。しみる。大人の歌ってないもんだね、若い頃を歌うものばかり。歌は青春でなければならないのか? 頷く観客多数。大人の粋にあふれるステージ。プロデュース作が100越えて、そろそろまた自分のをつくりたいなと思って。なんと新曲も披露。これがまた格好いい。新譜で聴けること、楽しみにしています。

「よろめきながら地下鉄へ」は「鉄カブトの女」と兄弟みたいな楽曲構成だったんだなあと改めて思う。「ジャングル・ダ」「でてこい!マドロス」「サブウェイ・ジョー」「感電キング」「スーパーバタフライ」……サルサのリズムで踊る、拍手でリズムを刻む。いやー刷り込まれてますわ。率先して手拍子を煽る窪田さんの姿と言うのも貴重だったわ……。「この時期には結構ラブソングがあったんだ。東京ロッカーズの反動かな」。じっくり聴かせる。本編ラストはやはり「イヤダヨ」。イヤダヨ、サラバ。手を振る、唄う。

なんか窪田さんのことばっか書いてますがフロア満杯でほぼ窪田オンリービューだったんですよ! 他が殆ど見えなかった……。しかし少しずつ入ってきた視界では、皆が皆格好よく、いい顔をしていた。演奏は勿論最高だった。アンコールは飛び入りでリュックしょったままのスティーヴ衛藤(現スティーヴ エトウ)。と言うか、エスケンに「スティーヴ来てんだよね? 出てよ」と無茶ぶりされてえええ? ってな感じで袖から出てきてオロオロしたまま演奏に入った(笑)。スティーヴとヤヒロさんが揃ったパーカッションなんて貴重も貴重、いいもの聴けました!

オーラスは佐野さんのヴァイオリンと矢代さんのエレピで「バラ色」。やっぱり思い出すのは窪田さんの常套句、「そんじゃまた、そのうち会おう。出来れば、絶対に」。

-----

記念撮影
エスケンのtwitterより。皆さんいい面構えでいらっしゃる

ライヴ画像
エスケンのFBより。皆さんいい顔してらっしゃる



2016年03月30日(水)
矢野顕子 40th Anniversary『ふたりでジャンボリー』

矢野顕子 40th Anniversary『ふたりでジャンボリー』@東京グローブ座

motk10周年、JOA20周年、高橋徹也20周年ときて、矢野顕子40周年〜。尊敬。ソロデビュー40周年記念企画第一弾とのこと。ピアノ弾き語り公演に、日替わりゲストを招きます。清水ミチコさんとのゆうべに行ってきました。ステージ上には向かい合わせのグランドピアノが二台。上手側にギターとアンプ、スタンドマイクがあったのでもうひとりゲストがいるのかな? と思う。

オープニングからふるってた、まず出てきたのは清水ミッちゃん。衣装も雰囲気も似せているので、一瞬わっと拍手がわいたあと、あ、あれ? やのさんじゃなかった! とどよどよとした笑いが起こります。そのまま弾き語りで一曲、「丘を越えて」。わかっちゃいるけど似ている。笑いと拍手が波のように続きます。にっこり笑ってやのさんと入れ違いに退場、残ったやのさん、ひとこと「もうっ!」。ウケるウケる。やのさん、山吹色のドレスがとても素敵。長い腕と脚が映える。

実は風邪をひいてしまい…プロとしてあるまじきことでかたじけない……しかも花粉症だったらしいの、今回医者に行って初めて知ったのよ。だってNYでスギとかヒノキとか、わからないじゃない! そんな訳で、今出る音域を考えて、曲を厳選(ここ力入ってた)しましたのでね。一本二万円の点滴も打ってきましたし、精一杯務めさせていただきますよ。にっこり。確かにしゃべる声は嗄れ気味でうわあつらそう、と思ったのだけどそこは40年選手のザ・プロフェッショナル。いやいや聴かせてくれました。今聴く「すばらしい日々」はしみた。いつもしみるが。いやもう泣いた泣いた。

まあなんというか、この歳になるとこの歌詞のとおり「暗い話にばかり やたら詳しくなったもんだ」。……それにしてもこの曲を書いた奥田民生の年齢を考えると、その達観ぶりに敬服する。唄い終えたやのさん、「この曲はユニコーンが解散を決めた頃に奥田民生が書いたものですが……そのユニコーンも、今では何もなかったように再結成してますからねっ」「やっぱりね、つらいことって本当にあるけど、変わっていくものなんです。そんな深刻にならないでいきましょう」。いやもう頷いた頷いた。

やのさんもいろんなひとを見送ってきた訳で、そういうこともあってか、今回は死にまつわる話が沢山あった。NHK『ファミリーヒストリー』に出ることになって、というトピックからご両親のことに。余命を宣告されてから一切の治療を断り、自ら遺影を選び(「しかもそれ40代のときのなのよ、ずうずうしい」。それを受けてミッちゃん「し、偲びにくい!」。大ウケ)墓や葬式の手配もし、その葬式の手伝いにやってくる近所の方々が食べる仕出し弁当の選定も済ませていかれたという、お母さまの剛毅な話がすごかった……み、みならいたい。墓もウチは士族(白虎隊のルーツなんですって)の立派な墓があるんでこっちに入ります! と言いだして、お父さまがえええ……となったとか。それはなんとか回避して、お父さまも亡くなった今では同じお墓に「(お骨の)配置に気を配りつつ」入っているそうです。個人的に、今こういう話を笑い乍ら聴けたのはよかった。ハイバイ岩井さんじゃないけど、こういう話いっぱい聴きたいんだよね。不幸は間違いなく誰にでも訪れるもので、だけどなかなか他の家がどうなのかはわからない。笑えることもある筈で、むしろ笑いたい訳で。そして時間が経てば笑える訳で。

そんなこんなでハラカミくんの話題も出て、キヨシローもミッちゃんのモノマネによりステージに降臨、ミッちゃんの弟さんである清水イチロウさんによる細野さんもやってきて(いや細野さんはご健在ですが!)この世とあの世が入り乱れ。ステージ上に何人いるやら。それにしても清水家どういう姉弟……お姉ちゃんがやのさん界隈を聴かせまくって「洗脳」し、ふたりでモノマネセッションを繰り広げていたそうです。今では本家と同じステージで堂々としたわたりあい。萎縮するなんてむしろプロとしてあるまじき行為ですものね。「数あるゲストのなかからこんなねえ、演芸の日を選んで頂いて有難うございます」と言っていたけど、いやもうホント、やのさんの言うとおり「アート」ですから、これ! どんなに悲しいことやつらいことがあっても、『趣味の演芸』の「感極まってピッチがおてんばになる黒木瞳」を聴けば全てがどうでもよくなる、元気になりますよ、とやのさん。笑いってだいじなものだよね。圧巻のモノマネを繰り広げるミッちゃん、ピアノを弾くときは真顔であった。そしてイチロウさんへのふるまいは姉であった。いくつになってもきょうだいはきょうだい、見てて楽しいやりとり。

今週頭に、横町慶子さんの訃報が伝えられた。先月写真展を観に行ったばかり。次作を心待ちにしていた。ご本人も再演に意欲を燃やしていたし、舞台に立ち続けることを強く望んでいた。果敢にいろんな公演を観にいらしていて、バリアフリーが整っていないスペースでもよくお見かけした。復帰してからはちいさなスペースでの公演が主だったため、離れていったひとも多かったのかもしれない。観客のレスポンスを欲しておられたのだと思う。私が書いたものに迄、わざわざメッセージをくださった。無念でならない。矢野さんも細野さんも、横町さんと縁のある方だ。細野さんはモノマネだけど。横町さんもここにいればいいのに、と思った。

-----

セットリスト
参照画像。有難うございます)

01. 丘を越えて(清水ミチコの矢野顕子)
02. ふりむけばカエル
03. そりゃムリだ
04. すばらしい日々
05. ほめられた
---(以下カッコ内はミッちゃんが真似した人物)
06. 相合傘(矢野顕子。つまりふたりアッコちゃん)
07. モスラのうた(ザ・ピーナッツのどっちだったんだろう)
08. 恋のフーガ/老人と子供のポルカ(左卜全)
(ここで「ゆーないとデザインのてぬぐいのうた」。「清水ミチコがゲストの回だけ何故かやたらてぬぐいが売れたと言われたい」とのことで・笑)
09. 風のブランコ(森山良子)
10. 恋は桃色(w/清水イチロウの細野晴臣)
11. Lover, Come Back To Me(綾戸智絵、瀬戸内寂聴、ユーミン…五十音順で何人いたか? 圧巻ものまねメドレー)
encore
12. ひとつだけ(忌野清志郎)
13. 夏は来ぬ(やのさん、リクエストを募ったあと「インストで!」と即興ピアノソロ)

-----



2016年03月27日(日)
高橋徹也『The Orchestra』

高橋徹也 20th ANNIVERSARY 弦楽ライヴ『The Orchestra』@下北沢SEED SHIP

Vo, G:高橋徹也、Arr, Pf:佐藤友亮(sugarbeans)、Vn:矢野小百合、Vla:田中詩織、Vc:今井香織。

三年前からシリーズとなっている(三回目(2015)二回目(2014)一回目(2013))弦楽ライヴの四回目。天の利、地の利、人の和揃った感がありました。ひとつの完成形を見た思い。楽曲の素晴らしさ、アレンジの妙、歌唱・演奏のコンディション、音響のよさ、観客の集中度、そしてハコの外からの影響がなかったこと。 神がかっていた……音楽に奇跡が宿る瞬間に立ち会えた、その幸運に感謝したい。心からそう思えたライヴだった。

それぞれの要素についてもうちょっと詳しく。佐藤友亮によるストリングスアレンジが回を重ねるごとに磨かれ、決定版と言えるものになっている。そのアレンジにより、楽曲そのものの新しい魅力に気付かされるのは毎回のことだが、同時に原曲の持つ多面性にも恐れ入る。そして音響のバランスがとにかくよかった。演奏用のスペースではあるものの、観客がランダムに位置するフロアで、自分のいた位置はチェロの斜め前二列目。楽器にはマイクが装着してあるが、生音もダブって聴こえるくらいの距離だ。ところがオープニングのチューニングがインプロへと変容し、そのまま「美しい人」の導入へと繋がった(この構成も見事だった!)ときには、全ての音がハーモニーとなってスピーカーから現れ、そのハーモニーがハコを響かせる、といった形で耳に届いた。いや、頭上から降ってきた、といってもいい。えーとこの説明でわかるか? どう書けばいいんだ? スペースそのものが楽器になったかのようだった。

音響のよさを実感するのは、大概音の分離のよさなのだが(個人の判断です)、今回はもう各々のパートが、と言う域ではなく“The Orchestra”の音としてしか聴こえなかった。どの音も等価。どの音も欠かせない。まさにそれがオーケストラなのだ。前回も似たような位置から聴いていたのだが、こんな鳴り方はしていなかった。同じ場所での演奏を重ねることで、プレイヤーだけでなく音響スタッフにもノウハウが蓄積され、コントロールが自在になったのだろう。数回ハウリングがあったけど、これはプレイヤーが動くことによって起きる不可抗力。

この響きはどこから生まれる? 耳を澄ます。この非日常の正体はどこにある? 目をこらす。そうしていると歌詞の世界が眼前に現れる。白眉は「海流の沸点」。“どちらから?”、“安い洗浄液”。高橋徹也そのひとしか持ちえない声で唄われるこれらのラインで、ライヴスペースがぐにゃりと歪んだような錯覚に陥る。夜の“古いサービスエリア”の風景に放り込まれたかのよう。文字通り鳥肌がたった。すごい、と思う前にこわい、と思った。くわばらくわばらと唱えそうになりましたよね…いや、演奏のすごみのことを言いたいんだが、実際この歌のストーリーにとりこまれたらエラい目に遭いそうな気がしたんだ。だってトワイライトゾーンみたいじゃないの…うっかりその角を曲がったら、恐ろしい世界が待っていそうじゃないの……。バックミラー越しに後部座席を見ると、ほら。キエーーーーー

とりみだしました。いや、それ程すごかったと言いたい(伝わるのか)。「Praha」もすごかったな……演奏を通し、その作品の世界を浮かび上がらせるその力量。音楽は水面に絵を描くようなもので、そのすがたかたちを捉えることは叶わない。しかし、その世界を共有する場をつくることは出来るのだ。あとなんだ、えらそうですが高橋さんの歌の表現力、安定感がいつにも増して素晴らしかった。ピッチといい声の伸びといい……歌は身体の楽器で、体調や鍛錬によっていくらでも変化するものなのだ、と強く思い知らされる。相互作用もあっただろう、いい環境、いい演奏を前にすることで観客側の感覚も研ぎ澄まされる。この空間、この時間を壊さないように、たいせつなものにしよう、という意識が(無意識であっても)働いていたように思う。

いやね…先日劇場での携帯の扱いについて話題になりいろいろ思うところがあったので。ステージに立つ側がどんなに気を配っても、観客側の不注意で全てがだいなしになることは決して少なくない。その日そのとき、その空間でしか表せない世界をつくりあげるために日々準備するアーティストへの敬意があれば、それを阻害する原因になるものなど持ち込める筈がないのだ。電源を切る必要はないと言う主張には絶対に頷けないと今回改めて思った。終演後「あのときもし携帯が鳴っていたら……」とふと考えてゾッとしましたよ。携帯だけには限らない。ステージに立つ側、それを観る、聴く側両方の協力によって生まれる奇跡と言うものはある。

それを後押しするかのように、外部からの騒音が一切なかった。茶沢通りに面しているので、大きな音をたてて走る車や救急車のサイレン等の音に水を差されることが過去何度かあった。しかしこの日はそれがなかった。SEED SHIPにいるひとたちの思いが通じたかのようでした。こんな幸運はそうそうない。演奏する側も手応えがあったのではないだろうか、こうなるともう自由自在だ。「ブラックバード」のグルーヴ(中盤のスローダウン!)、「大統領夫人と棺」のテンション、「別れの朝 歓びの詩」の名残惜しさ。繰り返すが、奇跡のような時間だった。

「このとき、この場所でしか聴けない」ことはとても贅沢。居合わせたことに感謝したが、同時にこれだけ素晴らしい作品は広く知られ、聴かれてほしいとも思う。もうホント、このシリーズの音源を出してほしい。高橋さんの何度目かの代表作になるようにも思います。20周年おめでとうございます! やー、この一週間は20周年づいてました。

-----

その他。

・メンバー紹介で矢野さんの苗字を間違える。演奏や歌にのめりこんで集中してると回路が混線することありますよね!(とフォロー)
・すっごい気にしていた。「香織さん、詩織さん、小百合さんって語感が似てるって言いたかったんだけど(まざってしまったらしい)」「これは許されない」「罪は消えない」「今夜眠れないかも」「ひとの名前を間違えるなんて……自分が高橋って結構ある苗字で、学校とかで『高橋(テ)』とか書かれるのがすごくいやだったのに。なんだよ(テ)って! 人権侵害だと思っていたくらいだったのに」「でもウチの母親が兄貴のものと区別するためパンツにまるて(㋢)って書くのはすごく好きでした(笑)」

・「大統領夫人と棺」で盛り上がったあと「やー、やっぱロック向いてるわ」
・ライヴ前近所を散歩して気持ちよかったって話。「柴犬のおっきいやつを二匹つれてるひとがいて……」秋田犬のことかな……
・ノンアルコール・ビールに凝ってる話。これでつまみ食える。「ビール、いるかな?」
・『The Endless Summer』は去年の秋出したので、まだ夏を迎えてない。「創作意欲はすごくあってすぐ次、となるし、周りも次々って感じになってるけど、もうちょっとね。まだ新譜気分でいさせてくれよって感じです」

・アンコール。「はあ、思えば…」と言い出すので弦楽ライヴシリーズのことをふりかえるかと思いきや「初めてグミを食べたのもこのライヴのためのリハーサルで……」。何を(笑)
・「女性がいるってのが珍しくて。『お菓子、どうですか?』なんて……はああ、俺たち…なあ!」と佐藤さんを巻き込む
・「もう、格好よくてね。堂々としてて。俺たちもう…ねえ……」どんどんうつむく。おもろい……
・今後は道場破りシリーズもやりたいそうです。先輩の胸を借りたいし、久しぶりに一緒にやってみたいひともいるし、とのこと。柔道着で待ってるそうです。待つのか

(セットリストは高橋さんの更新待ちです)



2016年03月21日(月)
Joan of Arc 20 Years Anniversary Japan Tour

7e.p. presents Joan of Arc 20 Years Anniversary Japan Tour@TSUTAYA O-nest

対バンはmouse on the keys、こちらは十周年(十年目?)。二十年選手でもヘンテコに瑞々しいJoan of Arc、十年選手でも生きがいいmouse on the keys。数々のインディーバンドを紹介し続けてきたnest二十周年記念公演でもあります。みんなおめでとうおめでとう、そしてありがとう〜。楽しゅうございました!

先攻はmotk。ホーンゲストなしの三人編成でしたが、川崎さん側のステージ袖にマニピュレータらしき方が。「Reflexion」とか、楽曲によってsxやtpのソロが入るパートが三人だとちょっとさびしくなっちゃうんですね。リズムに変化をつけることで対応してはいるものの、基本的にその部分はリフになる。ホーン入りを聴き慣れているとちょっと我に返るのです。今回はマニピュレータがその部分に音を入れていた。ホーンのフレーズそのままではないのでいいアクセントになってました。VJも兼ねてたかも。そういえば先日のUNITも今回も、川崎さんが演奏前にイヤフォン装着してノートPC操作する場面がところどころあったけど、あれは何なんだろう。シンセとして使っているようには見えなかったが……イヤフォンも演奏始まると外してたので、モニターでは使ってなかったと思う。だいたいあの演奏でイヤーモニターもなかろう。

ほぼ二列目だったので、間近で演奏を観られた。そもそも毎回なんであんまり見えないんだっけ? と思っていたのだがあれだ、座奏だからだ。JOA観てたときさっきよりやたら視界いいなあ、なんでだ…と思って今更乍ら気付いた。三人とも座ってるから低いんだわ(笑)。スタンディングだとフロアに傾斜がかかってないし、ちょっと後ろになるとなかなか見えないわね……。今回は三人の手元や表情をじっくり観られてよかったなー、清田さんの眉がだんだん減ってきているようなってヘンなとこ迄気付いたなー。まあそれはともかくエラい迫力でした。音圧もすごかったし。タイトなドラミングでずれていくスネア、ゆるむシンバルのナットを川崎さんが曲間に、演奏し乍らなおす。あれだけ叩けばねえ、そりゃねえ。清田さんが単音弾くときの指は、ねこが獲物を爪でひっかけるような仕草だね。ねずみバンドなのに(笑)。あとどの曲だったかワンフレーズずらして本編に入ったやつがあったなあ、セッティングし乍ら叩いていた川崎さんの拍が動いたとき、咄嗟に新留さんが合わせた感じだったか。ブリッジ部分をインプロで進めていくときはアイコンタクトがあるけど、のってくると全員目閉じている場面も。練習好きとしても知られていますが、もう身体にたたっこまれてるんだろうなあと思った。

「Joan of Arc、ハタチ。おめでとうございます! 我々も十歳なんです。ハタチと十歳じゃあ、ねえ……僕らもあと十年は続けたいんでがんばっていきたいです」。頼もしい!

後攻Joan of Arc。「JOA20」とかたどられたバルーンがステージ後方に飾られました。かわいい。当方Owenをうっすら聴いていた程度でJOAのメンバー構成もよくわかってなかったんですが、キンセラ弟は今はいないんですね。で、キンセラ兄さんは脱力ヴォーカル脱力ダンス、ふわふわと気持ちのよい音を奏でているかと思えば突然鬼神のようなギターを弾くのだった。よ、読めない! どう展開するか見えない! そういう意味でもスリリング。時間を忘れましたよね……。

7e.p.のツイートで紹介されていたフェイクギターってなんだ? と思っていたのですが、実際に見てようやくわかった。メリーナが演奏するギターはのっぺらぼう、つまり弦を張っていないギターなのでした。本体もギターそのものじゃなかったような…素材も軽いものなんじゃないかな。そのギターをコツン、コツンと叩く音色でスタート。フェイクギターは打楽器だった! しかし個人的にはどんな楽器も、声すらも、空気を叩いて震わせ音を出すという意味では打楽器だと思うんだよな。そんなことを思い出させてくれるプリミティヴなステージ……と思いきや、飛び交うシンセ音、そこへたたみ込むドラムとギターリフから生まれるグルーヴはかなり強力。なんでこのメンバーが一緒にバンドやってるんだろう…と思うような、好き勝手やってるというか思い思いの演奏スタイル、連想するのは鷹の爪団。そんな彼らは音で一体感を見せてきた。楽しくてぐふぐふ笑いがもれる。ノイズ大会で大団円でした〜。

キンセラ兄さんの挙動はおかしくなる一方で、森を徘徊するくまのよう。終盤は前方のオーディエンスの首に巻くコードをまきつけたり、頭をつかんで乗り出したりしていた。お客がみっしりだったらあのままクラウドサーフしたかったのかもしれんが……。motkで耳がやばくなったのでセッティング間にさがっていたのですが、あのまま前にいたらキンセラ兄さんに頭つかまれてたのかと思うとホッとした反面惜しい気もした(笑)。や、なんかご利益ありそうじゃないの、キンセラ兄さんのシャクティパット。

-----

・文化を作り上げた名店ライブハウスO-nestの20年を店長らに訊く - インタビュー : CINRA.NET
「海外のアーティストは『すでに大きくなった人たちを大きいところで観るもの』っていうイメージだったと思うんです。だから『ライブハウスでも海外のバンド観れるんだ!』っていうのは驚きだったし、それによって、洋楽が好きな日本のアーティストも集まってきて、ネストにひとつの潮流ができてきたんだと思います」
「同じ夜はないと思って仕事してください」
いい記事! そういえば初めて観たnest公演って岸野雄一社長のイヴェントだったなあ、岸本店長になってから今の路線が固まったんですね。確かに2000年代に入ってからはUSインディーの巣窟ってイメージがある(ネストだけに)。これからも個性的なブッキング期待してます!
そうそう、nestのごはんおいしいってどこそこで聞くけど、ごはんだけ食べに行ってもいいんですかね…(本末転倒)あのバースペース、交流の場としても魅力的です

・ライブハウス「SHIBUYA O-EAST」が「TSUTAYA O-EAST」に | BARKS
そういえばこの界隈、TSUTAYA傘下になってからTポイントたまるんじゃなかったっけとふと思い出した。どこで提示すればいいんだっけか、ついつい忘れるんだよねえ…今回は入場時にレンタルサービス券がもらえました



2016年03月19日(土)
『家庭内失踪』

『家庭内失踪』@本多劇場

久々岩松了作品。ハァ〜イライラする〜〜〜もぉ〜だいすき!!! しかもなんか心あたたまった、今回。役者皆達者だし。

日常会話で実際にはしないだろうこんな言いまわし、と感じる整った(言葉として美しい)台詞の数々。それらが旨味のある役者により流麗にやりとりされると、観ているこちらは言葉ヅラだけをなぞることをしなくなる。登場人物の腹のうちをさぐる。本当のところは何を考えているのだろう? 心の奥底ではどう思っているのだろう? 想像をかきたてられる。ときに思わせぶりに、ときに気付けと言わんばかりに、登場人物は整然とした言葉で嘘をつき、嘘のなかに真意をにじませる。もどかしい。しかしそれがたまらない。

ふと昭和のホームドラマでこういう言葉遣いをよく聞いていたような、と思い至る。わざとらしさも含め、一歩ひいて観ることが出来る。静かな丁々発止を対話劇として楽しめる。しかしときどき、舞台から客席に目をやる女優たちに「対岸の火事だと思っているのか?」と呼びかけられたような気になりドキリとする。そのいったりきたりがとてもスリリング。向き合う相手を値踏みするような素振りで、小泉今日子と小野ゆり子がそのイライラを沸点ギリギリ迄あげてくれる。

そんな女性たちに振りまわされつつ、日々を安穏と生きている男性たち。女性の「謎」を前に右往左往する彼らは、その鈍感さ(呑気さ、といった方がかわいいかな)とともに偏執的で、グロテスクな顔を見せていく。風間杜夫、岩松了は、その気味悪さを愛嬌で見せる。岩松作品によくあらわれる「男性同士のじゃれあい」は健在で、今回はそこに落合モトキ、坂本慶介というふたりの若手が加わり、すっとぼけた味わいがより深い。先輩風を吹かす老境の男たちと、押されつつもペースを変えない若者たち。そんな理解しあえない男と女がひとつ屋根に集い、住みつき、離れ、出て行く。未知への興味と諦めと。気色悪さも意外と居心地がいいものだ、なんて思わせてくれる岩松流ホームドラマとして観た。最後にその家に住みつく(ちょっとの間と言っていたが長引きそうだよなー・笑)人物に、シェアハウスに代表される現代の共同生活の片鱗を見た気にもなった。そう考えると、ホームドラマというものの変遷にも興味がわく。一戸建てやマンションといった容れものではなく、その中身―住まうものの変容に伴い、描かれるものも変わっていく。

一階は夫婦の寝室である和室とキッチン、二階は娘の部屋。一階部分の三分の一は舞台袖に隠れる横幅で、場面によってスライドする。そのスピードがギョッとするくらいの速さ。立っている役者がふらつくくらい。演出の意図なのか、転換を急いでやるための不可抗力なのか…おぼつかない家庭や人間関係を表すものとしてもとれるけどどうなのか…ちょっと笑ってしまう程、コントか! と思うくらいのスピードだったので(笑)。シアターコクーンでの岩松作品に気になるものは多々あれど、個人的には会話の機微に敏感になれるこの本多劇場くらいの空間、五人前後の登場人物が心地いいなあと思った次第。



2016年03月17日(木)
『親切なクムジャさん』

『親切なクムジャさん』@韓国文化院 ハンマダンホール

おっきなスクリーンで観る機会を待ってた甲斐があった〜パク・チャヌク監督復讐三部作、最終章。しかし前の二作(『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』)をまだ観ていないのでした…や、やっぱ初見をスクリーンにしたくてね……。原題は『친절한 금자씨(親切なクムジャさん)』、英題は『Sympathy For Lady Vengeance』。日韓ともに2005年公開作品。

と言う訳で十年以上も前の作品なのか〜と初見なのに感慨深くもなったりしました。監督や出演者の今の仕事ぶりを知っていて、遡って観ている訳ですから。チャヌクさんもミンシクさんももう大御所の域ですし……。変わったところがあるかは判断出来ないが、変わらないところ、素地のようなものについて意識的に観る。ヴァイオレンス、グロテスク、ユーモア、映像美、そして宗教観。『渇き』でも感じた「信仰を持つ者の罪の意識」について考えさせられる。監督のインタヴュー等にふれると必ず出てくる、彼がクリスチャンであること、それは親の影響下にあること(つまり親がそうだったので、生まれたときから自分の意志とは関係なくクリスチャンとして生活することになった)、自分が成長するに従いその信仰に疑問を持ったこと、しかし幼少期からの刷り込みでもあるその宗教観からは逃れられないこと……それらを監督は、作品を通して追求し続けている。そう感じるのは、私自身の育った環境に共通するものがあるからだろう。母の死によりその縁は消滅したが、受けた影響は消えることがないし、それによっていいこともわるいこともあった。得たものは多い。失ったものがあるかは、他の環境で育ちなおすことが出来ないので判らない。

信仰への疑問が憎しみや軽蔑に転ずるかというと、必ずしもそうではない。安息を得る方法としてそれを選んだ、生きていくためのツールと解釈することも出来る。そもそもそう解釈すること自体が宗教への冒涜なのかもしれないが、神という存在に対しての冒涜にはならないと自分は考える。チャヌク監督の描写はシニカルであり乍ら愛嬌がある。「バカだなあおまえ、そんなことを信じきって。でも、決して否定出来ない」。罪は消せない、抱えて生きていくしかない。生きることを選んだならば。では、生きていくうえで救いを求めるのはどこなのか? 生きている間か、死んでからか。未来へと生きていく娘にか。クムジャさんが選んだ道、イ・ヨンエが最後に見せた表情が忘れられない。

ガッちゃん(Dr.スランプ)のストラップがふいに映ってハッとする。「こどもが好んで持つものを大人が持っている違和感=犯人には余罪がある」ことを表すための小道具なのだが、日常に紛れ込む近くて遠い国のことをまた思う。韓国におけるクリスチャンの数、欧米への養子縁組の多さ、出所時に食べる豆腐の意味。知識が増えると理解も増える。こんな積み重ねも、個人の貴重な思い出になる。

-----

・輝国山人の韓国映画 親切なクムジャさん
過去作品について知りたいときはまずここ! 毎回本当にお世話になっております有難うございます〜! こちらのデータにありますが友情出演多数。スンワンおにいちゃんどこに出てるかわからんかった…ガンホさんとハギュンさんはわかった

・Sang-gyeong Jo - IMDb
衣装を担当したチョ・サンギョンの作品データ。ワンピースの柄からケーキ屋さんの制服迄どれもスタイリッシュで素敵だなあ、『渇き』のセンスと共通しているような……と気になって調べたら同じひとだった。『新しき世界』から『暗殺』迄、レトロもモダンもお手のもの。手掛けた作品群の多彩さに驚くと同時に、チャヌク監督の美術におけるヴィジョンはとても明確なのだなと思う。作家性ともいえるか。そしてその要求に応えるサンギョンさんの仕事人ぶりにも瞠目。本当に服がいちいち綺麗なんだよ……色彩、ライン、目が醒めるような美しさ。しかしこの頁、IMDbなのに日本語(ローマ字)タイトルになってるのが多いのはなんでだろう…おかげでわかりやすかったけど

・ナム・イルが映ったとき「松本隆がなんで出てる?」と素で思うなど
いやホントに素で思った



2016年03月13日(日)
『焼肉ドラゴン』

鄭義信 三部作 Vol.1『焼肉ドラゴン』@新国立劇場 小劇場

鄭義信が新国立劇場に書き下ろした作品から、在日コリアンと昭和の時代が描かれている三本を三ヶ月連続上演する『鄭義信 三部作』、その第一弾。キャストは2008年の初演、2011年の再演から一新(劇中演奏家でもある朴勝哲、山田貴之は続投)。

初・再演に思い入れがありすぎて今回観られない、というひとのツイートを見かけたが、解るような気持ちになった。私は今回が初見なので、今回の演者=登場人物になる。架空の人物が演者を通じて目の前の現実に立ち、物語を通じて過去を生きている。この結びつきは忘れ難いし、愛おしい。彼らが目指した国や夢見た未来がどうなっているか、今を生きる観客は知っている。彼は、彼女はあれからどうなったのだろう。どこで、どうしているだろう。思いを馳せる。思いは募る。

1970年、大阪万博前後の高度経済成長後期。順番としては『パーマ屋スミレ』初演の次にこれを観たので、時系列的にも入りやすかった。1960年代に“アリラン峠”で働いていた在日コリアンたちが、炭鉱閉山後、伊丹空港(大阪国際空港)拡張工事等の労働力が必要とされる関西地方都市へと移り住む。その空港そばの集落でホルモン焼肉店―通称“焼肉ドラゴン”を営む家族と、そこへ集うひとびとの悲喜こもごもがを描かれる。

語り部は焼肉ドラゴン店主の長男。彼の回想ともとれる話運びで、彼はきっとこの街を出ていったのだろう、大人になった彼が過去を、故郷を振り返っているのだろうと思っていた。『パーマ屋スミレ』でもそうだったなあ、『ガラスの動物園』のトムのようだな、と思っていた。きっと彼は今、この土地とも、ここのひとたちとも無縁の生活を送っているのだろう。そして今は亡きこの集落やひとびとについて思いを巡らせているのだろう……。ところが物語は後半、予想外の展開になる。再演が重ねられているのでネタバレするが、彼は物語の途中で自死を選ぶ。彼は彼岸から観客に、そして今を生きる家族に語りかけていたのだ。思い返せば過去を語っている筈の彼は、十代当時の姿のままだ。演じるのはイキウメの大窪人衛。彼の童顔と高く澄んだ声が、幼いままで長い時間を過ごした存在として活きる。僕はこの街が、ここにいるひとが嫌いだった。でも、本当は……大好きだった。

在日コリアン放浪の物語でもある。彼らには祖国に帰らない理由、帰れない理由がある。さまざまな事情が知られているが、全てではない。自分が歴史を知らないということでもあるが、国家と社会が闇に葬り去ったできごとはいくらでもある。2000年代に入りようやく法と報告書が確定したという済州島四・三事件のことは今回初めて知った。翻弄され打ち棄てられるのは、いつも懸命に働く市井のひとびとだ。隆盛の犠牲にされる労働力、そこに必ず生まれる差別。差別をなくすために必要とされる教育、その教育の場である進学校で、凄絶ないじめに遭う長男。いじめの光景が実際に描かれることはないが、失語症となりバラックの屋根から身を投げる程追い詰められた長男の姿を見れば、それがどんなものだったかは想像がつくというものだ。おぞましさは想像の果てにある。彼の父親である焼肉ドラゴンの店主は、店も土地も失ってなお、明日はきっといいことがある、昨日より悪いことはないと自分に言い聞かせるようにくりかえす。未来への希望にも絶望にもなる想像なくして、ひとは生きていけない。

しかし鄭さんは、シリアスな各場面を必ずといっていい程笑いで〆る。涙にくれるひとたちを、観客たちを、ほっとひと息つかせる笑いでもてなす。舞台両端に映し出される字幕は、韓国語も関西弁に訳されている(笑)。吉本新喜劇が日常にあることも、鄭さんの原風景だ。と言う訳でツッコんでおきたい、ボンカレー作るのに何分かかっとるんじゃおかーちゃん!(笑)そして歌。ひとびとのくらしに寄り添う流行歌は、苦い思い出をほんの少し甘くする。甘いといえば色恋。気恥ずかしくなるような直球の告白、哀願。己の全てを晒け出す。照れ乍らもそれにグッとくる。

焼肉ドラゴン店主ハ・ソングァン、伴侶のナム・ミジョン。寡黙な夫の物語る表情、そして背中。明るく強く、そして情の厚い妻。それぞれの連れ子である馬渕英里何、中村ゆり、チョン・ヘソン。美しく、深い悲しみを秘めてなお前へと歩む三姉妹。次女から長女の夫となるややこしい(苦笑)高橋努、三女の夫となる日本人大沢健は丸出駄目男属性だが、それを凌駕する一途さを持っている。二役を演じたあめくみちこ、怪演。次女の次の夫ユウ・ヨンウク、長女の婚約者キム・ウヌは当て馬感あれど、それぞれの孤独がにじみ出て笑い泣きを誘う。惹かれたのは櫻井章喜が演じた店の常連客。集落の他のひとたち同様かなり過酷な環境の筈だが、それを嘆き乍らも機嫌よく存在する。個人的には理想の人物。

残念なのは、今回のキャストでの韓国公演がないこと。再演から五年、あれから日韓両国の緊張感は増した。近くて遠い国の距離。血ではなく縁で繋がる家族は、やがて別の道を選んでいく。集落はバラバラになる。役者たちが登場人物にしか見えなくなる。舞台を見つめ、どうか無事で、と祈るように拍手を贈る。

-----

・開場は開演30分前、しかし劇場内に入れるのは20分前。しばしロビーをうろうろ(パンフ、関連書籍の他に韓国のりやお菓子も売ってたよ)、入場してみればガチで焼肉焼いてました。いいにおいに腹が減る
・しかし食べたくなったのはボンカレーなのであった(笑)
・幕間のロビーでは朴さんと山田さんによる「立ち退き反対運動」ミニライヴ。募金箱もあったよ。実際にお金を入れていくひとも

・それにしても観る度思うが、鄭さんて男がなさけなくなったり不様になったときに見せる色気の演出がうまいわね……
・あのシーンで高橋さんを水も滴る(具体的に)いい男にするかという
・そこに栗原直樹の擬闘が加わるとまー絵になるのなんの。酷くてつらいシーンなのにね。そもそも「このアクションシーンのディレクション、誰?」と最初に思ったのが『パーマ屋スミレ』だったなあ
・いやーしかし高橋さん、難しい役どころをモノにしてましたわ。次女の立場からするととんでもない男だし、頭でっかちだしプライド高いしで相当なんだけど、陰陽織り交ぜて見せよった。強い……
・しかしなんか痩せてた。華奢になってたというか……憔悴?
・そしてあの頭皮はヅラなんですとtwitterでしきりに主張してるのにウケた。ホッともしたが、あそこ迄何度も強調すると逆効果なのでは……(笑)

・「人生って悲劇と喜劇が同時に進む」在日のリアルを描いた舞台『焼肉ドラゴン』 | ウーマンエキサイトニュース
・『焼肉ドラゴン』稽古場レポート 感激観劇レポ|おけぴネット



2016年03月09日(水)
『ヘイトフル・エイト』

『ヘイトフル・エイト』@新宿ピカデリー スクリーン8

わーいタランティーノの新作ですよー。Ultra Panavision 70(オープニングでもドーンとロゴが出ましたね)! とのふれこみだったので大きなスクリーンで体験したかったのだが、新宿ピカデリーでスクリーン1にかかっていたのは先週迄だった……しかしヘイトフル8でスクリーン8、八並びで縁起もよろしかろうと。

スクリーン8でも確かに見え方は全然違った。どう説明すればいいか難しいのだが……細部迄撮られてる、捉えられてるというのは把握出来ても、後方にピントが合わないので、画面の陰影にかなりメリハリがつく。冒頭、長回しによってじっくりと撮られた広大な雪景色を注意深く見つめていたのに、駅馬車が忽然と現れたような錯覚を受けた。雪のなかで動いているものは、他に何もなかったのに。ある程度の距離迄近付いてこないと、こちらの目の許容範囲に入らないのだ。アメリカの広大な土地にぴったりなフィルムなんだな……と思わせるも、馬車が洋品店に到着してからは一転。密室のミステリーにその威力を発揮する。

いちばん手前にいる人物以外、どこに誰がいて、何があるかが目に留まりづらい。クローズアップによって初めてその存在に気付く。登場人物誰もが嘘つき、心理的にも物理的にも何を隠し持っているか判らない。そして誰もが話が長い(笑)ので、その台詞に注意を向けつつ、喋っていない人物たちが今どの位置にいるか、どこでその演説(と言ってもいいくらい、皆大仰に話す。そこがいい!)を聞いているか少しでも頭に入れておきたいのだが、それが出来ない。どこから何が襲ってくるか判らない緊張感が続く。そのうち自分も、雪に閉ざされたロッジのなかにいるような気がしてくる。

登場人物たちは差別意識の塊でもある。その差別意識を持つ者同士として対等でもある。南北戦争終結直後、北軍と南軍、白人と黒人、そしてメキシカン=ヒスパニック。賞金首の女性。タランティーノは彼らを、ヘイトフル・エイトとして分け隔てなく描く。そして分け隔てなく末路への花道を用意する。興味深かったのは、賞金首の女性の扱い。彼女の罪状を見た極悪人たちは、皆一様に眉をひそめる、あるいは絶句する。彼女がどのように、どういう理由で殺人を犯したのかが一切語られないのは、おそらく彼女がそれだけおぞましいことをしたからだ。言葉に出来ない程の。女性だから、というエクスキューズは一切通用しない。その罪により、彼女はこの場にいる男性たちと対等になる。

彼らは罵り合い、暴力の限りを尽くし、刻々と変わる状況により敵になったり味方になったりする。演者たちが活き活きと笑い、歯を剥き、唾を吐く。こんな彼らは他では観られない。タランティーノの作品でしか観られないチャームだ。そんな彼らが愛おしい。彼らがひとりづつ、やがて同じ道を辿る予感しかないから、もっとくだらない喩え話をしてくれ、汚らしい身の上話を続けてくれ、と思う。そのやりとりは、最後の最後で「リンカーンの手紙」は本物だったのではないか、と信じさせる魔法をかけてくれる。言葉の魔法だ。本当かもしれない、でも嘘でもいい。タランティーノのロマンティストな面が強く出ている。嘘だらけのなかに、真実が紛れ込んでいる。誰にでも平等に訪れるもの、それは死だ。三時間近くあったのに終わりが近づいてくるのがさびしかった。彼らと別れるのがさびしかった。

登場人物は回想シーンを入れても15人、ナレーションはタランティーノ本人。本編の四分の三程はワンセットの薄暗い室内。それなのにこの大作感、そして得られる満足感と余韻。プロダクションデザイナーは種田陽平。カラフルな瓶詰めジェリービーンズ、ミントのストライプ。それらが砕けて飛び散ったとき、ひとときの戦後の安堵も消えてしまった。終わりのないアメリカの物語。そしてそれはきっと、世界の物語。ぐったりめで入場したのが嘘のように、風をきって映画館を出ました。おさえきれないニヤニヤを噛み殺すのがたいへんだった。

----

・『ヘイトフル・エイト』種田陽平インタヴュー|webDICE
見出しはアレだがすごくいい読み応えのある内容。日本には「撮照録美」といった伝統的な序列がある、それは何故かというところから演劇の歴史に迄話題が及ぶ。
「プロデューサーたちが最も大事にしているのは、クリエイティブなんです」「日本人が西部劇やるというのは、タランティーノじゃなければ実現しなかったことかもしれませんね。タランティーノは黒人にもメキシカンにもアジア人にも、偏見がない人だから」

・サミュエル・L・ジャクソンもカート・ラッセルもホントかわいい〜
・ティム・ロスは『レザボア・ドッグス』のあれがあるから最初から信用してなかった(笑)後ろの方でもぞもぞ動いてんのがちょこちょこ見えると何かするんじゃないかと気が気でなかった
・で、レザボアといえばマイケル・マドセン! こちらはうっかり信じちゃった(笑)クリスマス休暇に拘るとこにちょっとグラッと……(御されやすい)
・ジェニファー・ジェイソン・リー最高! 歌も最高!
・ゾーイ・ベルラブー♡シックス・ホース・ジュディ(六頭立て馬車の御者)って愛称の由来がひねりなく最高。それをわざわざ小粋な台詞のやりとりにするところも最高だし、こういう役を彼女にふるってところも最高
・ねこはどうなったのだろう…無事でいてくれ……馬もな
・チャニング・テイタムがどの役か知らなかったので、雪のなか全裸で歩かされてたひとを凝視しましたよね…テイタムなら脱いでるかなあとも思って……



2016年03月06日(日)
mouse on the keys『Live at Red Bull Studios Tokyo』release tour

mouse on the keys『Live at Red Bull Studios Tokyo』release tour@UNIT

昨年六年振りにフルアルバム『the flowers of romance』をリリースした際、レコーディングに使ったRed Bull Studios Tokyoの感触がとてもよかったらしくまた使ってみたい、いろいろ試してみたいとメンバーがインタヴューで話していた。再会は早かった、スタジオライヴレコーディング〜CDリリースとなりました。いやーこれは聴きたかったやつ! 出してほしかったやつ! 過去リリースされた作品はどれも完成度が高く、かつ長く聴き続けられる強度を持つものばかりですが、プレイヤーのスキルとアイディアはどんどん更新されているのです。2011年に出たライヴドキュメンタリーDVD『irreversible』に収められている楽曲も、アルバムとは違う演奏、違う空気、違う熱さがつまっていますし。インプロから展開が拡がる場面も増える一方なので、現在の演奏をなんらかの形で残してほしいなあ…と思っていました。嬉しいわ〜。

この日はmotk+ケンジー(sx)の四人編成。ステージ後方に縦長スクリーン三面、VJは誰だったのかな。ケンジーくんは昨年秋のCUTUP STUDIO(タワレコ)でのミニライヴで初お目見え(確か。私が観たのが初めてだったってだけかもしれない)だったひとですね。このときのライヴも、sxがネモジュンとふたりっていう初めて聴く編成で面白かったんだよなあ。

いんやーすごかった。いつもすごいけど。結成十年目とのことで今年は毎月ライヴやります、そのライヴが国内とは限らないけどと川崎さんが仰ってましたが、十年目にしてこんなのびしろあるってなんなの…あんまりすごいもの観ると笑いがこみ上げますわ、あまりの凄まじさにニヤニヤするやら真顔になるやらで忙しかったわ! 当初はコンピュータで構成迄ガッチリ作り込んだ楽曲を完璧に再現する、ということに主眼がおかれていたように思いますが(実際川崎さんもインタヴューでそう話していた記憶がある)今はその先への意識がある。タフなツアーと日々の本番、再現を追求していくうちに、完璧に作り込んだと思っていた楽曲には可能性がいくらでも秘められていると気付く。そしてその可能性を掘り起こす技術が、ライヴとリハを繰り返すことで身についている。柔軟性も備わる。「十年もやってると飽きたりもういやになったりするけどこのバンドにはそれがない、やりたいことも試してみたいこともどんどん出てくる」。川崎さんのMCに大きく頷きましたよ……。

コードやリズムパターンから次は何の曲か、どういう展開になるのかを予想する楽しさも増えた。川崎さんと清田さんはお互いをよく見ていて、フレーズやリズムを仕掛けたり仕掛けられたりしている。清田さんってあの高速パッセージからmotkのクールを体現しているような印象もあるけど、ときに川崎さん以上に熱いひとですよね…ハッチャケたときの爆発力がすごいというか。それでいてあれだけ運指が乱れないってところもすごいんですけど。この川崎×清田のガチンコを要所要所で押さえているのが新留さん。ベースラインを担当するところも多いから、というのもあるだろう。彼がいないと崩壊するんじゃないか、と思うこともときどき。

川崎さんのドラミングはインパクトといいパワーといい、それと相反するゴーストノート、ショットの柔らさといい魅力だらけ。曲の流れによってスネアドラムもスナッピーのオンオフで響きを細かく変えているし、ひとつのドラムのセッティングをどこ迄使い倒せるかという求道者な趣も。そしてそれが楽曲の新しいチャームを引き出している。豪放磊落なふりして繊細な音もとても多いというギャップもたまりません。演奏中の表情や声も面白いので目も耳も離せないね〜(笑)。毎回言ってるけど、このひとのことはシーザー@動物のお医者さんだと思っているのですが知性的なシーザーだよね〜。それどんなシーザーだ。つい先日迄ツアーをしていたケベックでは-15℃の野外会場もあったそうで、動かないと死が迫ってくるので演奏がファストコアみたいになったって話には爆笑した。犬ぞりがよくひけたことでしょうとか思った(いやホントすごいファンですごいドラマーだと思ってるんですよ……)。ケベックに比べるとここはあったかい、身体がすごく動くってことでキレッキレの演奏でございました。元ジェラート屋の店長、一月に42歳になり身体に鞭打ってドラム叩いてます! とのこと。シビれる。でも身体はだいじにね…病気もしてるしね……。

どの曲もすごかったが特に「Aom」と、新曲「Untitled」のたたみかけっぷりはすごかった……聴いてるこちらが追い込まれる気分。か、狩られる! と畏怖の気持ちが起こる程でした。しかしタイトル「Untitled」て。今後ヴァージョンアップされたものが別名で出るかもしれませんね。対バンのLITEは確か八年ぶりに観ましたが普遍の格好よさでした。いい夜。

-----

・mouse on the keys 『Live at Red Bull Studios Tokyo』


・mouse on the keys: Live at Red Bull Studios Tokyo|NEWS|Red Bull Studios Tokyo
実のところ会場限定発売というのは勿体ないなあと思っている。ライヴでの鉄板曲+未発表曲+新曲という現時点でのベスト選曲で、その自信作の数々が今の演奏力でパッケージされているんだもの

・ライブ会場限定盤『LIVE AT RED BULL STUDIOS TOKYO』リリースツアー直前インタビュー|ぴあ関西版WEB
しかしこの川崎さんのインタビューを読むと、この作品を配信で…というのも正直違うなとも思うしなあ

・で、聴きました。ライヴレコーディングならではの「熱」も見事にパッケージされた好盤です。アートワークや楽曲の構築美から洗練されたイメージも強く、ライヴを観て度肝抜かれた! てひと多いと思うんですが(私だ)、その両極端の魅力を繋げるという意味でもこのアルバムは広く聴かれてほしいー
・そういえばsx、tpのクレジットがなくて気になる。上の動画見る限りネモジュンとケンジーくんはいるけどtp佐々木さんだっけ? よく見えない〜

・カナダ/ケベックツアーは-15℃どころか-30℃になる日もあるわ風邪が流行るわでホント大変だったそうです。疲れてバスタブにお湯ためてる最中に寝込んじゃって、ホテルの床を水浸しにしちゃう事故もあったとか。ホテルのひとが暖かく対応してくれて嬉しかったって。よかったね
・あんな風土だからなのか、たいへんでも人生を楽しもう、のんびり楽しくすごそうって感じですごくおおらかなひとばかりだったとのこと

・新留さんのinstagram(@daisukeniitome)
過酷なツアーの様子がよくわかる……

・Winter Jazz Fest Heats Up the Weekend|Ottawa Life Magazine
ツアーのなかの一本、Ottawa Winter Jazz Festの記事。川崎さん、ウサイン・ボルトに喩えられてます(笑)

・Andre Gagne@argagnephotos
・Myka Burke@MykaBurke
Ottawa Winter Jazz Festでの画像など

・[SPECTACLE] Mouse on the Keys, Harfang, Le Cercle, 11 Février | ecoutedonc.ca
ケベック州はフランス語圏なのでフランス語のレヴュー。翻訳サイト有難い。「アティテュードは間違いなくパンク」、おお、伝わってますな。なんじゃあこりゃって印象をライターの方は受けた様子。ジャパノイズって用語あるんだ

・で、転換中のBGMが全曲RATMだったのを思い出す。ワチャセーイ
・新留さんのインスタによると音がデカいと怒られた? 会場もあったそうですしね……(笑)
・そういえばかわさきさんて川崎さんなの川さんなの? 最近になって川表記ちょくちょく見るようになった。どっちなの〜

(20160310追記:動画がアップされた〜)

・mouse on the keys Live CD Release Tour 3/6,2016 @Daikanyama UNIT


・mouse on the keys Live CD Release Tour 3/6,2016 @Daikanyama UNIT