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2011年09月14日(水)
『irreversible』

■mouse on the keys『irreversible』

普通にショップやAmazonでも買えますが、バンドとも縁が深いFLAKE RECORDSのレヴューが素敵だったのでこちらにリンクを。

最近ソフトものの感想はtwitterにちょこちょこ書いてばっかりでしたが、これはちゃんと感想を書こうと。それくらいよかったし、今これを観て思ったことはちゃんとまとめとこうかなと…と言いつつまとまっていません。まああれだ、関連記事のリンク等も残しておきたいので。結局は自分用ですね……。興味があったら観てみて!関連記事も読んでみて!

まずはトレイラーから。



そして関連記事(今後も見付かったら追加していく予定)。

・[インタビュー]mouse on the keys | 彼らと時代のアーカイブ | CONTRAST

・diskunionのフリーペーパー『FOLLOW-UP』最新号がまだwebにアップされていないけど、いずれPDF版が載りますvol.101、Page40)

・今作のディレクターMINORxUさんのサイト

・MINORxUさんのtwilog | 2011年3月

川崎さん、新留さん、佐々木さん、ネモジュンさんもtwitterやってるんだけどtwilog登録してないからログを辿りきらん……皆さん臨場感溢れる書き込みなさってたんですけどね。

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タイトルはリヴァーシブルの逆で「裏返せない、逆行できない、取り消しできない」、つまり「もう前のようにはいられない、戻れない」と言う意味。7月のライヴのときに川崎さんが「3.11以前にはもう返れないと言う意味を込めた。(中略)それと僕、頭痛が酷くなって、MRI撮ったら脳の上の方の毛細血管が切れてきてるんでもうヘドバンはやめなさいって言われたんです。だから以前の僕には戻れないと言う意味もある(笑)」と言っていた。

2011年3月4日〜12日に行われた欧州ツアードキュメンタリー。上記インタヴューでも語られていますが、震災の日彼らはリヴァプールにいました。そのときのライヴでのMCが印象的。ステージ上で新留さんが話すの初めて見た。それに対する観客たちの反応も心に残ります。ライヴや移動の様子は基本時系列順に収められていますが、オープニングは11日のライヴの映像です。

演奏は鮮烈で流麗、そして破壊的。“ライヴバンド”motkがビリビリ伝わってきます。『Sezession』をリリースした頃のライヴからするとこの変貌は驚異的。motkのライヴを最初に観たのは2008年だけど、その頃は川崎さんがDrsとKeyを兼任するスタイルで、Gが入った編成もあった。当時から洗練された音作りやコンセプチュアルな映像を駆使したライヴは格好よかったけど、そこからこれだけフィジカルなバンドになるとは予想しきれなかった。その後新留さんが定着して今のメンバーに固まったのが2009年かな。“an anxious object”tourのとき川崎さんが改まって「(川崎、清田、新留)この3人でmouse on the keysです」と言っていた。このメンバーが揃った、と言うのがやはり大きかったのだろう。それぞれがソリストとして演奏出来るし、インプロ部分も増えた。コンピュータでガッチリ作り、練習によって身体に憶え込ませていた曲が個々に馴染み、どんどん成長していく。

それはメンバーにも実感としてあったのでしょう。今回のツアーは自分たちでブッキングしたものだそうで、とにかくライヴをやりたい、ライヴが楽しくてしょうがない、と言った意気溢れる空気が見て取れる映像です。観ているこっちもワクワクしっぱなし。少数精鋭、motkの3人とサポートの佐々木さん、ネモジュン、PAの山下さん、MINORxUさん(見た限りではこの7人で行った様子)のチーム。VJは佐々木さんがTpと兼任、MINORxUさんはご自身の信念通りワンカメ。そう、これ何がすごいってワンカメなんですよね。相当な距離を短期間で移動し、夜な夜な各都市のハコに入り、セッティングをし、リハをし、演奏をし、現地のファンやスタッフと交流する。そんな彼らが遭遇した、異国での東日本大震災。言葉にし難い雰囲気を、カメラは独特の目線で捉えています。ワンカメで躍動も静寂も撮る。それはMINORxUさんの目線でもある。これが「魔法が宿る」と言うことか。

移動中や都市ごとの美しい風景、どっからどう撮った?と言うショットも格好いいし、ここぞと言う瞬間は逃さない。実際どのくらい撮っていたんだろう?皆が寝てる間も撮ってる訳で(余談だが初見時リモコンの操作を間違えて、いきなり川崎さんと新留さんが同衾してるところが映ったので狼狽した・笑)、このひといつ休んでたんだろうと思ってしまった。ツアー最終日、ロンドンでのライヴはフロア中央に楽器をセッティングし、バンドを観客が囲む形になっているのだが、カメラはその中央に陣取ってプレイヤーと観客両方のイイ表情を撮っている。これだけ密着して撮れるのも、撮影者と演奏者の信頼関係がしっかりしているからでしょう。motkがいるシーンと言うか、ひとの繋がりの為せる業だなと思いました。一朝一夕でこの関係は作れない。

編集も絶妙で、ライヴシーン以外の声がない。唯一言葉があるのが前述のリヴァプールでのMC。これは是非本編で観てもらいたいので内容は書きませんが、新留さんの英語でのMC、それに応えるリヴァプールの観客たちの姿はこの作品のハイライトでもある。確かにもう3.11以前には戻れないのだ。移動中数回にわたって映る、広大な土地にポツポツ点在している風力発電機の風景を、以前とは同じ気持ちでは見られない。バンドは川崎さん曰く「5歳児的な成長期に入っている」。二度と訪れない“三月の10日間”を、60分で一気に見せきる映像作品です。

それにしてもエンドロール、メンバーの名前とパートが出るんだけど、そこに映ってるメンバーがことごとくそのクレジットとは違う楽器を演奏していたのにウケた。特に川崎さん、ドラムって出てるのにやってることは…(笑)。あ、あと川崎さんすごいピカチュウの絵がうまいー!