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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
[Sea Britain 2005] 6月末国際観艦式と海の祭典

1月にロンドンで開催されたスクローダーズ・ロンドン・ボートショーの席上で、第一海軍卿(*)サー・アラン・ウェスト提督は「トラファルガー海戦200周年を記念した「Sea Britain 2005」において英国海軍は中心的な役割を果たす」と語った。
その皮切りとなるのが、ソレント海峡(ポーツマス沖)で6月に行われる国際観艦式(International Fleet Review)である。
6月28日に行われる観艦式には、既に30カ国が参加を表明。軍艦、帆船、ヨットなど150隻以上が参集する。

また6月30日〜7月3日にかけて開催される世界の海の祭典(International Festival of the Sea)には、さらに多くの船が集まり、総数は500隻を超える。古い小型船舶、業務用船舶なども一般公開される。
ポーツマスでは同時に、陸の上でも数多くのイベントが企画されている。海の祭典にちなんだパレード、コンサート、海洋画展、19世紀を再現したストリート・マーケット、目を見張るような模擬戦(combat display)、伝統的な海の手仕事の実演、模型展、陸海空軍のデモンストレーションなども予定されている。

詳しくは以下のプレスレリースをご参照ください。
30 Nations to attend international fleet review
Europe's greatest celebration of the sea returns to Portsmouth - IFOS 2005

*訳注
ここの原語は、Admiral Sir John West, First Sea Lordです。敢えて19世紀ふうに第一海軍卿と訳してみましたが、First Sea Lordという役職は、現代では正式は「Chief of Naval Staff and First Sea Lord」で、ジャパンタイムズ発行の「主要国行政機構ハンドブック」によれば「海軍参謀長兼海軍委員会第一委員」という訳が正しいのだそうです。
この行政機構図を見ていると、このChif of … Staffというのは、陸海空軍省(英国国防省の各下部組織)のトップのようですが、and以下がついているのは海軍だけで、陸軍と空軍はChief of … Staffのみです。これはやはり名称に伝統を残していると考えて良いのでしょうか?
ちなみにChief of Naval Personnel and Second Sea Lordという役職もあって、これは海軍人事局長兼海軍委員会第二委員だそうです。


さて、英国の観光産業は今年よほど熱心に「海のイベント」を売り込もうとしているようですね。
こんなものがあるのをご存じですか?
「マスター・アンド・コマンダーと英国海洋地図」
海洋関係の史跡を訪ね歩くには便利な地図のようですが、ちょっとM&Cがダシにされているというか…(苦笑)。


さて、6月のポーツマスでのイベントのニュースは、「Sea Britain 2005」のプレスレリースHPから引いていますが、ここには他のマイナー・イベントのニュースも掲載されています。
その中に英国マン島の海の伝統を紹介したドキュメンタリーがレリースされるというニュースがありました。
これはあまりに地味かつ英国ローカルなのでここでご紹介するまでもないと思いましたが、ちょっと驚いたのは、このドキュメンタリーのナレーターがサー・アンソニー・クエイルだということ。

アンソニー・クエイルと言えば、アレック・ギネスの艦長にダーク・ボガードの副長が反旗を翻す映画「デファイアント号の反乱」で、渋い掌帆長を演じていたり、個人的にはジャック・ヒギンズの「鷲は舞い降りた」のヴィルヘルム・カナリス提督役が印象的で、冒険小説ファンにはおなじみの名脇役。
すでに鬼籍に入られていますが、作品は残っているということなのでしょう。
確認のためフィルモグラフィーを調べていて、おや?と思ったのは、1980年代半ばにドラマ化されたヒギンズ「黒の狙撃者」(原作はハヤカワ文庫NV)で、クエイルが教皇を演じていたことでした。

私はこの小説の原作が好きだったので、むかしわざわざこのドラマを見たのですが…、原作をあまりに踏みにじったストーリー改変が行われていて、途中で悲しくなって投げてしまいました。
ところが今回知ったのですが、この「黒の狙撃者」の主演はなんと、「ホーンブロワー」のペリュー提督ことロバート・リンゼイだったのですね。
いやはや…、でまぁ今回埋め込んでいたビデオを掘り出して見てみたんですけど。
当たり前ですけど、15年前なのでリンゼイ…若いです。アイルランド人の父とロシア人の母の間に生まれたソビエト連邦の工作員…IRAを装って英国の要人を暗殺するのが任務ながら、内省的で自身の行為に悩む男…を好演しています。
危険な男のように見えて実は繊細…という表現が上手い。いやはやさすがだと思いました。


2005年01月23日(日)