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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「ホーンブロワー」第二期発売、あと7日

来週の金曜日、9月24日に「ホーンブロワー」DVDボックス第2期、第2シリーズと第3シリーズの4枚組DVDが発売となります。
ホーンブロワー・サイト「順風満帆」には紹介ページが。
http://www.interq.or.jp/venus/blanca/blue/hornblower/release.html

第2期4本、とくに第2シリーズの2本は、海洋小説を人間ドラマとしてご覧になっている方には、最大級のおすすめです。(思わず強調してしまう)
小説のドラマ化という観点から見れば、これはこれまでに見た最高の作品、申し訳ないけどドラマという点では「M&C」より上だと思います。
「ホーンブロワー」第1シリーズと第3シリーズには私、そこまでの高得点を付けないんですけどね。第2シリーズは別格。

ひとことで言えば、
原作小説に欠けていた詳細なドラマを、見事に補完した脚本と俳優陣に拍手! でしょうか?
フォレスターの原作に足りないところを見事に補ったドラマだと思っています。

フォレスターの人物造形は、主人公のホレイショ・ホーンブロワーに特化しているところがあって、周囲の脇キャラの印象がどうしても薄くなるのですが、その部分を脇を固めた俳優さんたちが見事な演技で補っていて、ドラマに原作以上の厚みが出ています。
圧巻はやはりディビット・ワーナー演じる狂気にとりつかれた艦長ソーヤー。
他にも能力以上の重責に苦悩する副長バックランド(ニコラス・ジョーンズ)、どこまでも艦長に忠実な掌砲長ホッブス(フィリップ・グラニスター)、微妙な立場の軍医(ディビット・リントール)の人間味あふれる(というか、こんなこと現代の会社組織でもありそうというか)態度が、原作になかったドラマの面白さを加味してくれます。

ホーンブロワー第2シリーズの原作となった2巻「スペイン要塞を撃滅せよ」は、ミステリと要塞攻撃作戦の2つの側面があるのですが、これをミステリの側面に絞って、軍法会議から過去にさかのぼる形にした脚本も優れものです。
そして、後編の最後で泣かされました。原作には無い思わぬ展開に感動。

第2シリーズはみーはーにも最適でしょう(笑)。素敵な紳士(海尉)方(やっぱりあの格式にイケメンというのはちょっと…)が揃っていらっしゃいますので。
私も最初に見た時は、年甲斐もなくのたうちまわっておりました(あはは恥ずかし。4年前の過去ログが無いのは幸いなるかな)。

DVDではたぶんオリジナルの音声も聴くことができると思うので、もしよかったらオリジナルのブッシュ(ポール・マッガン)の声を聴いてみてくださいまし。
吹替えの郷田ほづみも良いですが、マッガンの声は、一種の悪声だとは思うのですが、森進一的な独特の味があって私は好きです。

第3シリーズのお勧めはやはりジュリア・サワラのマライアでしょう。
今回は私、フォレスターに厳しいですが、これはべつにフォレスターには限らず、海洋小説に限らず歴史冒険小説作家は、女性を描ききれない方が多いような気がします。
むしろパトリック・オブライアンとダドリ・ポープが例外的に女性キャラクターを描き出すのが上手いと言うべきなのかもしれません。

フォレスターの描く原作のマライアは、キャラクター性に乏しいのですが、彼女を演じたジュリア・サワラのキャラクター解釈と、きめの細かい演技は、見事にマライアに血肉を与えています。
見ているとむしろマライアに肩入れしてしまって、「ホレイショったらひどい亭主!」とか思ってしまうのですよね。

これは「シャープ」の時もそうでした。ジェーン・ギボンズというキャラクターは原作では結構「嫌な女」なのですが、彼女を演じたAbigail Cruttendenが上手いので、ジェーンの気持ちがよくわかる、これはシャープにだって悪いところはあるわよね、現代ならさしずめ寂しい妻のカード破産…うんうん、この気持ちわかるわ…などと思ってしまいまして。
このようなところも、ドラマ化の面白さかもしれません。

今までの数々の苦い経験(苦笑)から、「ドラマ化とはドラマを簡略化することであり、小説では丹念に描かれる主人公の心理状態などは映像で表現しきれるものではない」、と思いこんでいた私の価値観を、みごとにひっくり返してくれたのが「ホーンブロワー」のドラマ化だったような気がします。

また、上記の紹介ページに詳しく書かれていますが、9月24日発売の「ホーンブロワー」日本版には、欧米版にもない映像特典が数多く収録されています。
第2シリーズの「Behind the Scene」は欧米版のDVDにはありませんでしたし、キャスト・インタビューの半分以上も初めて見るものだと思います。
ホレイショはあぁいう性格なので、本編ではヨアン、ずっと眉間に皺をよせています。あの衣装のままで笑っているヨアンという珍しいモノ(失礼!)は、特典映像でしか見られないかもしれません(笑)。

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月曜(13日)からNHKBSで放映されている「コナン・ドイルの事件簿」はなかなかの秀作で、楽しみに見ています。
私はあのあたりには詳しくなので、どこまで事実に沿っているのかわかりませんが、ドイルのキャラクターがなかなか魅力的です。
コナン・ドイルというと映画「フェアリーテイル」でピーター・オトゥールが演じた老紳士のイメージですが、ロビン・レイン(学生時代)とチャールズ・エドワーズの演じるこのドラマのドイルと、老人になってからのドイルの間には一本筋が通っていて、あぁこの青年が年齢を重ねるとあの老紳士になるのだな…という時の流れは理解できるような気がします。

エジンバラ大学の医学部を卒業したドイルが開業したのは軍港の町ポーツマスなので、第3話の事件にはクリミア戦争で心の傷を負った元海兵隊員が絡んできたり、海洋ファンとしてはおや?と思うような脇エピソードもあります(あくまでも脇です。期待してはいけません)。

そういえば、自身も心の傷を持つドイルがアヘンチンキのもっと高級なもの(もうちょっと難しい名前の薬)を飲んでいるところを下宿の女主人に見つかって、「お医者さまが何を飲んでいるんですか! 患者より先に自分から毒を飲むお医者さまなんて、初めて見ましたよ!」と怒られるシーン。
…あら、初めてですか? 私、数十年前に同じことしていた別のお医者さんを知ってますが…と思わず笑ってしまいました。
つくづく…戸棚から頭蓋骨が出てきても驚かないグレーブス亭(誰かさんのロンドンでの定宿)の女将ミセス・ブロードは素晴らしい…と思った次第でした。

今度の3連休、旅行に行くかもしれないので(まだ宿がとれていないのでわかりませんが)、その場合は更新は無いかもしれません。
PCトラブル?…は解決をみてませんが、放ったらかしで行ってしまうでしょう。


2004年09月16日(木)