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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
雑多な情報いろいろ

本日は雑多な情報をごたまぜにお伝えいたします。
まずは海外雑誌情報から、

Interview with Paul Bettany by Stelllan Skarsgard
英国のインタビュー・マガジンに掲載されたポール・ベタニーのインタビュー。インタビュアーはベタニーと「ドッグヴィル」で共演したStellan Skarsgard。ベタニーとジェニファー・コネリーの間に誕生した男の子の名前の由来になっている俳優さんです。
「M&C」の話題はほとんど無いので要約はしませんが、ベタニー・ファンの方は必見。
ファン以外の方もクリックして写真だけでものぞいてみたら…って女性の私が言ったら「すけべ!」って後ろ指さされるかしら? 一枚はお風呂場の写真なもので。
このインタビュー記事のタイトルのStellan Skarsgard氏の横に「(King Arthur)」とあってリンクがつながっています。これはSkarsgard氏が全米ではこの夏公開の映画「キング・アーサー」に出演されているかららしいのですが、ここのリンクをクリックするとびっくり。「King Arthur」の情報一覧ページにつながっていました。
ご存じの方はご存じでしょうが、この「キング・アーサー」には、英ITVテレビのドラマ「ホーンブロワー」でホーンブロワーを演じたヨアン・グリフィスがランスロット役で出演します。ヨアン・ファンの方はこの情報ページをブックマークしておかれると良いのではと思います。

さて毎月21日は各映画専門誌の発売日ですが、今月発売の各誌、ほとんどが「LOTR:王の帰還」一色で、「M&C」の本格特集は来月のようです。その中で比較的詳しくあらすじまで書かれていたのが「スクリーン」誌でしたが…詳しすぎて大ねたばれになっています。これじゃぁストーリーの6割を語っているじゃないの。
お読みになる方はご注意ください。

さて、現在アメリカでは、「マスター・アンド・コマンダー」の映画公開をきっかけに、ちょっとした海洋小説ブームが巻き起こっているようです。原作2巻「Post Captain(邦訳:勅任艦長への航海)」は増刷が間に合わず品切れ状態のようですし、Naval Institute Pressが出版している当時の解説本は軒並み「品切れ・再販予定不明」。2003年10月29日の日記でご紹介した関連書籍のかなりのものが現在アメリカからは手に入りにくくなっています。
メイキング本やBrian Lavery氏の解説本など英国でも出版されているものは、Amazon.ukから購入されることをおすすめします。英国の方はまだ1〜2日で入手可能な状態のようです。
かくいう私は、12月23日の米Amazonに出したオーダーが、未だに入荷予定未定で発送されていません。う〜ん。まぁドルはこの1ヶ月で3円ばかり安くなったから少しはなぐさめになりますけど、映画のサントラ版なんてグズグズしているようちに日本で発売になってしまいますね。とほほ。

先週の火曜日、ついにオーブリー&マチュリン・シリーズの9巻「Treason's Harbour」を読了しました。ぎりぎりセーフで今週の10巻邦訳発売に間に合ったことになります。
やっと和書が読めるようになったので、「青い地図」を入手しました。これはジャックよりひと時代前のキャプテン・クックの航海を追った旅行記風のノンフィクションです。
クックの第一回南太平洋探検航海には、博物学者のサー・ジョセフ・バンクスが同行しました。このバンクスという人物、「青い地図」を読む限りなかなか魅力的な人物なのですが、「M&C」の原作者パトリック・オブライアンもこの人物には惹かれるものがあったようです。
オーブリー&マチュリン・シリーズの執筆以前に、オブライアンは「ジョセフ・バンクス」の伝記を上梓しています。
ところで、英国版オーブリー&・マチュリン・シリーズの各巻末には、専門家の解説が付されていますが、9巻「Treason's Harbour」の解説は、Louis Jolyon West氏の「The Medical World of Dr. Stephen Maturin」で、当時の英国医学界を紹介したもの。
その解説の中に、このサー・ジョセフ・バンクスが登場します。
マチュリンは英国学士院(Royal Society)との関係が深いのですが、これはカトリックでアイルランド人とカタロニア人のハーフで私生児であるという彼の背景からすると非常に異例のことでした。英国の貴族階級とつながりの深い学士院のようなところは、異端者には厳しいのが当たり前だからです。
にもかかわらずマチュリンが学士院に認められた設定になっているのは、オブライアンが「ジョセフ・バンクス」の伝記作者であることを考えれば当然のことだろう…とWest氏は解説します。ジャックとスティーブンが活躍していたこの時代、実際の歴史上で英国学士院の中心人物だったのがサー・ジョセフ・バンクスだったからです。バンクスは伝統・格式や政治にとらわれない自由な見識の持ち主で、ナポレオン戦争のさ中ですら科学の発展のために、敵国フランスの科学者と交流を試みようとしていました。バンクスであれば、マチュリンの背景がどれほど異端なものであれ、喜んで学士院に迎え入れたであろうと。
さらにWest氏は、諜報機関でのマチュリンの上司サー・ジョーゼフ・ブレインについて、そのモデルはジョゼフ・バンクスではないかと推察しています。
そう聞くと空想の翼は広がりますね。あの昆虫への奇妙なこだわりと言い、少々のことには動じない肝っ玉と言い、今は好々爺のサー・ジョーゼフ・ブレインも、若い頃はきっと、バンクスのようにとんでもない命がけの探検航海に出て、それこそ世界の果てまで旅をしたのではなかろうか。それだけの識見と修羅場経験がないと、おそらく諜報機関の長などつとまらないでしょうし。

サー・ジョセフ・バンクスについてもっと知りたくなって、パトリック・オブライアンの「ジョゼフ・バンクス」を注文してしまいました。
はぁっ、苦労して1年かかって洋書9冊読み終わったばかりだというのに、我ながら物好きなことです。


2004年01月23日(金)