2004年10月24日(日)  『月刊 加藤夏希』DVD

■編集を終えた『月刊 加藤夏希』DVDのビデオが届く。9月のNYロケにも編集現場にも行ってないので、映像を見るのはまったくはじめて。撮影期間が短いのでシーンを削られることを覚悟していたけど、脚本で気に入っているシーンはほとんどキープ。英語の台詞もそのまま使われていたりして、うれしい。「加藤夏希さんのいろんな衣装と表情を見せる」ことを狙って脚本を書いたのだけど、本編約17分の間に7回ぐらい衣装が変わっていた気がする。焦った表情、困った表情、怒った表情、ほっとした表情など、おどけた表情など、顔の動きもバラエティ豊か。わたしが今までに持っていた加藤夏希像をいい意味で裏切る新しいイメージに出会えた。内野政明監督の演出は、あちこちに遊びがちりばめられていて、ポップでコミカル。だけど単なるドタバタではなく、ちょっぴり夢のあるハッピーエンドを用意しているので、短編作品として楽しんでもらえるとうれしい。発売は11月25日で、ただいま予約受付中。

2002年10月24日(木)  JSAを読んで考える 北と南 東と西


2004年10月23日(土)  SLに乗ったり地震に遭ったり

鉄道と映画を愛するご近所仲間のT氏より「日帰り旅行」の提案。ほいほいと手を挙げ、「どこに何を食べに行くんですか」と聞くと、「ひたすら鉄道に乗ります」と渡された計画表には集合時間から解散時間までに乗る6本の列車の乗り継ぎ表。乗り換え時間以外は列車に揺られ続ける旅なのだった。「今日は年に一度の只見デーなんです」と言うT氏の恒例行事につきあって、お目当ての記念列車「SL会津只見号」をメインディッシュに前菜からデザートまで鉄道尽くしのコース。

まずは9:22上野発上越新幹線とき349号に92分揺られて新潟県浦佐駅へ。駅弁とおつまみとお酒を買って上越線下り普通で2駅先の小出駅に到着(距離8.3km 所要時間9分)。乗り換えで40分ほど時間があいたので駅周辺を散歩し、小出駅から46.8km先の只見駅までは80分かけてディーゼル車で行く。ボックス座席ではないので、横一列に並んで、紅葉のはじまりかけた山をおかずに駅弁とお酒を楽しむ。

入広瀬駅で停車したとき、「あの人いつも立っているんだよなあ」とT氏が窓の外を見て言う。「山菜共和国」の看板を掲げた駅舎前にたたずむ男性。委託駅員さんではないかとのこと。列車が動きだした瞬間、その人が車両に向かって頭を下げた。じーんとなる光景だった。大白川駅でタブレット交換。タブレットとは、単線の列車の衝突を防ぐための通行手形のようなもの。

只見駅に着くと、レトロなチョコレート色のSL車両がお待ちかね。朝9:07に会津若松を出て12:30に只見に着いた下りの会津只見号が、今度は会津若松に向かって折り返す。下り列車から乗り込み、酒盛りしていたT氏の鉄道仲間(通は片道だけでなく往復するのだ)と車内で合流。すでに皆さん酔っ払っていい感じ。「サボ(=サイドボード。行き先表示)と一緒に記念撮影だ!」「スカッ(=煙の出が悪いこと。逆は爆煙)だなあ」などとディープな鉄道用語が飛び交う。機関車の蒸気が窓につくと「曇った」と歓声を上げ、「煙が巻いてる」と言ってはしゃぎ、煙が目にしみては泣きながら喜び、灰が飛び込んだお酒を「シンダー(灰)入りだあ」とありがたがって飲む。合間には鉄道ファン掲示板の書き込みを携帯でチェック。こんな世界があるのか、とカルチャーショックだけど、実に面白い。

鉄道ファンと一口に言っても「撮り鉄」「乗り鉄」「模型鉄」など様々。乗り鉄のT氏に巻き込まれたわたしは、しいてジャンル分けするなら「食べ鉄」。停車駅には地元自慢のきのこ汁や粟まんじゅうの販売があり、食べ歩きならぬ食べ乗りを楽しめる。道連れの酒、地元の銘酒吉乃川もすっきり飲みやすくて気に入る。会津柳津駅では、白いスーツに「一日駅長」の襷をかけた柳津町長がホームでお見送り。只見号は地元の人たちに支えられて走っている。

ところで、この只見号には「支社長」と呼ばれる紳士夫妻が同乗していた。大宮駅からわたしたちと同じルートだったのだが、気づいて教えてくれたT氏によると、只見号企画を実現させたJR東日本の元・仙台支社長さんらしい。真岡鉄道に二台ある機関車の一台を借りて記念列車を走らせるという発想には反対の声もあったそうだが、それを乗り越えた情熱の人で、鉄道ファンの間では「神様」と呼ぶ声もあるのだとか。そのカリスマ性はJR関係者の間にも浸透しているようで、只見駅のホームでは「いらっしゃった」「どこ?」「一号車」という駅職員たちの興奮した声が飛び交っていた。一往復の記念列車にもドラマがある。

西若松駅で地元の役場勤務という方が合流。きのこ採りで遭難者が出て、「今頃○○辺り走ってるなあ」などと思いながら捜索に出ていたそうだが、無事見つかり、終着駅直前で追いついた。「西若松駅が鶴ヶ城前駅に名称変更されるかも」などと話すうちに会津若松に到着。あっという間の88.4km、193分。お酒とおしゃべりに酔い、車掌さんの美声と冴え渡る名調子にも酔いしれた。会津坂下の駅を離れたときの「万が一に備えてディーゼル車を待機させておりましたが、空振りに終わりました。このまま自力で走らせます」など、ユーモアのある語り口が微笑を誘っていた。「会津若松で一番いい声の車掌さん」という噂。「佐藤」と名乗られた気がしたが、いつかナレーションをお願いしたいくらい。

会津若松駅での待ち時間に、裏手にある機関区を見学。列車たちが体を休める車庫のことで、正式名称は会津若松運輸区だけど、「クラ(庫)」とも呼ばれるそう。ターンテーブルで回る機関車をはじめて見る。「去年乗ったSLばんえつ物語クリスマス号を牽引していた機関車ですよ」とT氏に教えられ、「こんなところで再会しましたね」とわたしもすっかり鉄モード。

会津若松で飲んでいくというT氏と鉄道仲間よりひと足早く17:31発のJR磐越西線の快速郡山行きに乗る。早起きしたので熟睡。ふと目が覚めると猪苗代駅、時刻は18:00。「17:56頃震度5の地震があり、運転を見合わせます」と車内放送がある。1時間経っても余震は続き、かなりグラグラ揺れる。外に出るよりは車内にいたほうが安全。

災難に遭ったからにはネタ銀行に預けるべし、と車内の様子を書きつける。後ろのボックスのおばさまたちは「カメラつき携帯電話の画素数」について熱心に話していた。携帯には暇つぶし機能と安心機能もあることを知る。誰かとつながっている感覚が心を落ち着かせる。予定時刻より3時間遅れて郡山駅に到着。64.6kmに230分、時速16.6km。森と水とロマンの鉄道、JR磐越西線を堪能(?)。その間に会津若松で飲んでいたT氏たちはバスで郡山へ向かい、わたしを追い越してしまった(急がば回れ!)が、約1時間待って郡山駅のホームで出迎えてくれたことに感激する。
17:31 会津若松駅を出発。
18:00 猪苗代駅で運転停止。「17:56に地震発生」のアナウンス。アナウンスの途中にも揺れ、「ただいまのが地震でございます」。
19:10 「線路点検にかかります」のアナウンス。徒歩のため時間がかかる。振替え輸送のバスも要請しているという。
19:48 再び大きな余震
19:50 「線路点検は中山宿と沼上信号所間の一区間を残すのみ」のアナウンス。 
19:55 T氏と鉄道仲間を乗せた会津若松発の民間バスが猪苗代を通過
20:08 「異常なし確認。間もなく出発」のアナウンス。
20:30 2時間半ぶりに運転再開。「各停、磐梯熱海までは35kmの徐行運転」。
20:55 しばらく停車。「磐梯熱海まで徐行運転の予定でしたが安全が確認できたので通常の速度に切り替え」。
21:20 郡山駅到着。

不思議だったのは、足止めを食らった車内で誰も文句を言っていなかったこと。東京の地下鉄が30分止まっただけで乗客が駅員につかみかかる光景を見ているので、この差はなんなんだろうと思っていた。「分厚い時刻表を持っている乗客が目についたので、その人たちは只見号帰りだと思うんですよ。でも、他のお客さんたちもどら焼きを分け合ったりして和やかでした」と快適な新幹線やまびこの中で話すと、「それはこのどら焼きですか」と真岡鉄道を応援しているM氏が大判のどら焼きを取り出した。朝の只見号で配られたものらしい。足止め号の乗客の大半は只見号帰りだったよう。移動「手段」ではなく、鉄道に乗っている「過程」を楽しむ人たちゆえ、トラブルを柔軟に受け止める余裕があったのかもしれない。閉じ込められていた150分も含めて、一日で690分も電車に乗っていたのは新記録。いろんな意味で忘れられない鉄道旅となった。

自宅に戻ってニュースを見ると、震度6の新潟は予想以上の被害。親しみを覚えたばかりの地名が被害に遭っていることを知る。今朝通ってきた風景を思い返しながら、あの辺りは大丈夫だろうか、あの人は無事だろうかと案じている。

2000年10月23日(月)  パコダテ人P面日記 誕生秘話


2004年10月22日(金)  クリオネプロデュース『バット男』

■いつもわたしに刺激と情報をくれるマルチアンテナ搭載の医師・余語先生より「『バット男』なるお芝居がございますが、いかがでしょう」とお誘い。プロデュースしているクリオネは芸能プロダクションで、先日観た『SWAP』に出演していた野口かおるさん(劇団は双数姉妹)のマネージメントもしているよう。サイトを見てみると、『彼女たちの獣医学入門』に大地役で出演していた水橋研二さんが主演。ちょうど水橋さん主演の映画『くりいむレモン』の脚本を読んだとこだったので、タイムリー。タイトルのバット男は「金属バットを持ち歩いているが、それを振るうことなく、それを持っているせいでボコボコにされる浮浪者」で、ネット上の「バット男」のスレッドでは勝手な噂や憶測がひとり歩きしている。水橋さん演じる会社員は、バット男を「世界最弱者」と位置づけ、彼の無抵抗を歯がゆく見ている存在。その会社員と同僚との「現在」と高校時代の同級生カップルとの「過去」が交錯する物語。ラスト近く、天井から何十本ものバットがぶらさがっている場面は、見たことない絵で面白かった。そのバットが一斉に舞台に落ちてくるという演出にも度肝を抜かれる。余語先生は「難しゅうございましたねえ。結局どういう話なのでしょうか」という感想。「バットを振るうことなく、バットに振り回される人間の弱さ、脆さを描いていると思われます」とわたしの感想を述べる。■水橋さんはじめ出演者は豪華で達者。デビュー当時に「この子、すごくかわいい!」と衝撃を受けた持田真樹さん、電波少年の朋友企画でチューヤンと貧乏旅行しているのを見て印象に残っていた伊藤高史さんが会社員の同級生カップル役で登場。同じく同級生役の東虎之丞(ひがしとらのじょう)さんも、ひょうひょうとしたいい味を出していた。目が離せなかったのは、同僚役のカリカ家城さんの怪演。劇団乙女少年団(オトメメン)という一人だけの劇団を主宰し、毎回ゲストを招いて公演しているそう。浮浪者役の石川浩司さんはサイトもユニーク。会社員の同僚役、新井友香さん(ハイレグタワー所属)のコメディエンヌぶり、上司役の木村靖司(劇団ラッパ屋)さんの存在感も光る。客席に『パコダテ人』函館スクープ編集長役の木下ほうかさんの姿を見つけて、終演後に挨拶する。ほうかさんといえば、『sWing maN』(前田哲監督)。金属バットつながり?
■新宿御苑駅からシアターサンモールへ向かう途中で目をつけておいた台湾料理『呉(ウー)さんの厨房』に入ると、これがヒット。「蛸とアボカドとなすのマリネ」「まこも茸の炒め物」「中華粥」など、たっぷり野菜と本格的な味付けに大満足。デザートの杏仁豆腐、プリン(豆花?)、ゴマ団子までぺロリ。おまけに値段はリーズナブル。次にシアターサンモールに来るときも、ここに来るぞ。ふと店を出て行く人の横顔を見ると、水橋さん。隣のテーブルにいたらしい。ニアミス。

2002年10月22日(火)  大阪では5人に1人が自転車に『さすべえ』!


2004年10月16日(土)  SolberryのハートTシャツ

■先日、新宿のシアターTOPSで『SWAP』を見る前に少し時間があったので、秋冬の服を探すことにした。春夏ものに比べると、どうしても色合いが落ち着き、カラフルさもポップさも落ちてしまいがち。着たい服に出会うのにひと苦労。面白い服がいっぱいで、行くと必ず一目惚れ服があるEL RODEO(エルロデオ)も、今年はちょっとおとなしめで、今日は収穫なし。丸井のヤング館を1階から5階まで歩いても、目に飛び込んでくる色や形がない。そろそろ時間だし、と階段を下りかけたところで、ポスターが目に留まった。Solberry(ソリベリー)という初耳ブランド。何か惹かれるものを感じてB1へ。いきなりキノコのニットがお出迎え。色もヴィヴィッドだし、店全体から掘り出し物オーラが出ている。中に入ると、ハートのアップリケのTシャツ発見。色といい柄といい思いっきりストライクゾーン。でも半袖なので、これからの季節は出番がなさそう……と迷っていると、「中に着込めばいいんですよー」とお店の一部のように雰囲気ぴったりな店員さん、高校時代ミュージカルをやっていたという彼女の明るいノリも気に入って、買ってしまう。ざっくりした肩掛け布袋に入れてくれるのがうれしい。レトロポップなビタミンカラーのバッグや足跡のモチーフのピアスなど、店内はまるでおもちゃ箱の中。開演時間が迫っていたので、掘り起こしの続きはまたの機会に。

いまいまさこカフェ fashion gallery

2002年10月16日(水)  カンヌ国際広告祭


2004年10月15日(金)  広告労協の女性会議

■就職して驚いたことのひとつが「お洒落な外資系広告代理店にも労働組合がある!」ことだった。わたしが入社した頃はけっこう力が入っていて、真っ赤な「団結」腕章をつけて集会をやったりストをやったりしていた。組合の活動もクリエイティブ精神を発揮して面白がる空気はあって、組合部屋に残っているデモ行進の写真は、どう見てもハロウィーンの仮装行列だった。早速、新入社員のわたしに執行委員のお鉢が回ってきた。学生時代にどっぷり浸った応援団と似た空気があり、組合の世界にはすんなり馴染めた。会社の中での団交やビラ作りや職場集会の記憶はあまりなく、会社の外での広告労協(広告業界の労働組合が集まったもの)の活動ばかりが印象に残っている。京都やら岐阜やら各地で開かれる総会に旅行気分で出かけ、懇親会で盛り上がった。わたしは「女性会議担当」という役職を与えられていて、あちこちの会社の組合から送り出された担当者たちと一緒になって、年に一度開かれる「女性会議」という泊りがけ集会の準備を進めた。仕事帰りや週末に集まっては会議を重ねたり、宿泊先を下見したり、資料を作ったり。面倒なことも多かったけど、会社を超えたイベントサークルのノリで楽しんでいた。■執行委員の任期を終えると女性会議からも広告労協からも遠ざかったが、一部の人たちの間で交流が続いているとは聞いていた。今夜、女性会議メンバーの一人、Aさんの退職と北海道での第二の人生の門出を祝う会が開かれるということで、声をかけてもらった。ほぼ十年ぶりに会う人たち。皆さんに覚えてもらえているか、ドキドキしながら銀座『川のほとりで』へ向かう。でも、懐かしい顔が目に飛び込んだ瞬間、一気に空白の時間を飛び越えてしまった。恥ずかしながら、今までちゃんと理解していなかったのだけど、「女性会議」の生みの親が、今夜の主役のAさんと出席者のNさん、Yさんなのだった。「広告業界で女性がもっと働きやすくなるように、女性同士で意見を交換できる場があるといいわね」という会話から、広告労協の一事業として立ち上げたのが十五年前。その後、女性を取り巻く環境もずいぶん変わり、「女性だけの問題というものが少なくなった」ため、女性会議は役目を終えたのだという。わたしが関わったのは、女性会議がいちばん求心力と発信力を持っていた時代だったよう。貴重な時期を体験できたことがうれしく、その時間を共有した人たちとまたつながることができた幸せをかみしめる。広告業界って、組合まで面白い。

2003年10月15日(水)  このごろの「悲しいとき」


2004年10月14日(木)  PLAYMATE 第5弾!『SWAP 2004』

■今夜のSWAPは大いに盛り上がった。といっても、新宿・シアタートップスで観たPLAYMATEのお芝居の話。『SWAP』は何かの頭文字でもなく金融取引の話でもなく、二組の夫婦の交換(パンフには「交歓」ともある)の物語。作者の川上徹也さんと広告関係者の飲み会で知り合った縁で初演を見たのが8年前。大阪と東京でこっそり上演したら口コミで人気が爆発したという作品で、将来自分が脚本を書くとは想像していなかった当時のわたしは、あまりの面白さに衝撃を受けた。ところが、今回の再々演を見るにあたり、前回どこが面白かったのかを思い出そうとしても具体的には思い出せない。結果的に、初めて見るお芝居のように新鮮だった。脚本が変わったのか、見る側のわたしが変わったのか。いちばん変わったのは、8年前はシングルだったわたしが、今は結婚していること。それだけでも登場人物にぐぐっと接近したわけだけど、今回は野口かおるさん(この女優さん、とってもいい味)演じる中川都なる新婚妻が、着ているものといい性格設定といい自分を鏡写しで見ているようで、かなり当事者感覚で楽しめた。見終わった後に川上さんに「都はわたしだって思いました」と伝えたら、「観客アンケートの9割は『私は小雪(もう一人の新婚妻。人に羨ましがられる仕事=フリーアナウンサーをしながら満たされていない)だ』って書いているので、今井さんは貴重な1割です」と言われる。■夫婦が2組いたら、考えられるカップルの組み合わせは2パターンしかない。今のままか、入れ替わるか。そして、その範囲の中で話を転がそうとしてしまう。でも、川上さんの本では、そうはいかない。4人から2組のペアを作るには、もう1パターンの可能性がある。そこに目をつけたことがこの『SWAP』を複雑に、そして面白くしている。ベッドの話なのにジメジメせず、不倫を描いてもドロドロしない。川上さんの軽妙なタッチに今回も拍手。「好きの反対は無関心」なんて台詞回しも、さすがコピーライター。出演は近江谷太朗さん(佐伯林太郎役)以外は初演と変わり、林太郎の妻・小雪を八木小織さん、都の夫・俊一を京晋佑さんが演じる。皆さん伸び伸びと好演していたけれど、いちばん生き生きしていたのは後半のトランプゲームの場面。役者さんが「役と本人の混じった状態」になって、際どい質問攻めに答えあう。このシーンは初演でも笑いを誘っていた。演出は第三舞台出身の板垣恭一さん。

2002年10月14日(月)  四あわせの五円玉


2004年10月10日(日)  爆笑!『イラン・ジョーク集〜笑いは世界をつなぐ』

昨日、益田祐美子さんにもらった『イラン・ジョーク集〜笑いは世界をつなぐ』をナイトキャップ代わりにちらっと読もうと思ってページを開いたら、止まらなくなって最後まで読んでしまう。なんなんだ、この面白さは! ちなみにアマゾンのランキングは548位。げ、売れてる。

「こんどの映画(パルナシウス)の通訳をお願いしているモクタリさんから買わされたんだけど、これがけっこう笑えるのよ。シモネタばっかりで」という益田さんの推薦コメントの通り、「男と女」カテゴリー以外にもシモネタがちりばめられている。「イランってイスラムの禁欲の国じゃなかったっけ」とびっくりしつつも、「だからこそジョークではじけるのか」と納得したりして。でも、ほどよくお茶目で、お洒落で、人間をよく観察しているのが心憎い。

「裸の服」を来てダンナ様を待つ娘を真似した中年妻が夫に「なんだそのカッコは!」と突っ込まれ、「裸の服よ」「じゃあアイロンをかけろ」なんてやりとりは、そのままCMや映画に使えそう。もちろんシモネタじゃないジョークも多数。中には、「お父さん、インクって高いの?」「そんなことないよ」「じゃあどうしてお母さんは、インクをちょっとペルシャ絨毯にこぼしただけで、あんなに怒ったんだろう」なんてお国柄を感じさせるものも。

面白いのは「日本人」なるものが何度か登場すること。イランの人にはけっこうおなじみなのか、それとも笑いの種にしやすいのか。「5人集まったら」の各国比較では、日本人は「5人集まるのは無理。少なくとも3人は忙しいから」とのこと。ちなみにアメリカ人は「競争する」、イラク人は「クーデターを練る」、インド人は「当然踊るか、互いの踊りを見るか、映画見るか」、イラン人は「意見がばらばらのため、話がまとまらずに別れる」(『風の絨毯』でたびたびあった光景?)らしい。

国民性比較もよくできているが、「もし二頭の雌牛を持っていたら」の比較が最高。資本主義は「搾ったミルクを捨てて、ミルクの値段を上げる」、イスラムは「雌牛のおっぱいに触れることを禁止する」、フェミニズムは「雌牛の乳を搾ることを禁止、雄牛ならOK」といった具合。イラン人って「関西人よりおもろい」かも。そういえば、日暮里のペルシャ料理屋・ザクロのオーナーも爆発的に面白い人だった(→4月11日の日記)。

この本を書いたモクタリ・ダヴィド氏もきっと類まれなるユーモアの持ち主なのだろう(転がっているユーモアに気づくのも才能)。益田さんと一緒にいれば、近いうちに会えそうな気がする。


2004年10月09日(土)  G-up第1回公演『金魚鉢の中で』

シアターV赤阪で『金魚鉢の中で』という舞台を見る。家を出たときは台風22号が関東地方を直撃している時間帯で、駅に着く間に傘の骨は折れ、前後左右から雨が叩きつけ、足元は蓋の開いたマンホールからあふれ出した下水が流れ、劇場へ向かう間に、わたし自身が「金魚鉢の中」状態。電車に乗り込むと「南北線は運転停止」「銀座線は神田川があふれて区間限定運転」などとアナウンスが流れ、台風真っ只中の臨場感を味わう。台風のせいで当日キャンセルが相次いだそうで、開演してから到着する人も目立った。

でも実は、今日は打ってつけの鑑賞日。作品は嵐の海を漂流中のクルーザーに閉じ込められた男女6人+密航者が繰り広げる密室ホラーサスペンスで、ラジオからは「台風25号は関東地方を直撃」というアナウンスが流れる。綾辻行人の『館』シリーズや折原一の『漂流者』を楽しく読んだのを思い出し、はらはらしながら見る。

クルーザーという密室に閉じ込められた登場人物たちが疑心暗鬼から狂気に走っていくさまと、次々に起こる事件をスリリングにたたみかけながら、あちこちに用意された「物語上の裏切り」によって登場人物たちの優勢・劣勢が逆転する。次に何が起こるかわからない展開に最後まで目が離せなかったし、勉強にもなった。作・演出のほさかようさんは若干23才とのこと。おそるべし。劇団MOTHER時代から注目のますもとたくやさんは今夜も好演。

『金魚鉢の中で』は、演劇プロデュースユニットG-upの第一回公演。このユニットを立ち上げた赤沼かがみさんとは、今年7月2日に『劇団←女主人から最も離れて座る』公演、『Kyo-iku?』を見に行ったとき、川上徹也さんに紹介され、知り合った。「まったく別なことをしてたんですけど、ひょんなことから演劇にのめりこんで、プロデューサー業をはじめたんです」とちゃきちゃき話すのを聞いて、頭に浮かんだのが益田祐美子さん。二人を引き合わせたら面白いだろうなあと思ったのだが、今夜実現。益田さんは「他人じゃない空気」を感じ取ったそう。


2004年10月06日(水)  ローマの一番よい三流のホテル

同僚のトランスレーターI嬢から「面白いもの送ります」とURLが送られてきた。ローマにあるTurner Hotelのサイト、hotelturner.com。トップページは老舗ホテルっぽい雰囲気。世界中から観光客が集まるローマにあるので、案内も6国語で読めるようになっている。

日本の旗の横に「ホテルを見てください」とある。「Visit the Hotel」の訳としては許容範囲。日本語ページに入ってみると、いきなり「Turnerホテルは、三流のホテルです。ローマのセンタに建ててやりました」と乱暴なご挨拶に衝撃を受ける。ページの下には「ガンバロロッソ賞品 ローマの一番よい三流のホテル」とある。英語ページを見ると、「Gambero Rosso Award "Best Three Stars of Rome 2000"(ガンバロロッソ賞受賞 2000年度ローマで最高の三ツ星ホテル)。

さらに"services on request" は「余分なサービス」と言い切り、「ゴルフ・バッグの家賃」を紹介。部屋には貯金箱があるらしい。もちろん金庫(safe-deposit box)のこと。人工衛星テレビというニアミス表現も微笑ましい。「歓迎会」のページに飛ぶと、宴会の案内ではなく建物の説明があり、stucco(しっくい)が「しっくり」に変身。英語ではreception(受付)のページだった。

「各ページに小ネタ(?)がちりばめられているので、ご堪能くださいませ」というI嬢のコメントに納得。ぶっとび訳に笑いつつ、自分のおかしな外国語もネイティブにはこんな風に映るんだろなと身につまされる。伝えたい意味はわかるし、機能はしているけれど、ダブルで1泊142ユーロからというホテルの第一印象はかなり怪しいものに。この日本語、ちょっとヤバイですよと教えてあげたいお節介心をくすぐられる一方、このままおちゃめに突っ走って欲しい気もする。わたしにとっては、今一番気になるホテル。

(※追伸 その後話題になり過ぎたのか、お茶目な日本語は見られなくなって残念)

2002年10月06日(日)  餃子スタジアム


2004年10月02日(土)  「平均年齢66-1才」若返りの会

「家内がニュウヨークへ行きますので、その間に又パアテイしようと思いますが如何でしょうか。若し遊びにおいで頂けるようでしたらハッピイです」とお誘いをいただき、T氏宅に集まる。メンバーは前回の「家内の居ぬ間にパアテイ」と同じくT氏の慶応幼稚舎時代の同級生仲間3人。その一人がT氏を紹介してくれた余語先生。わたし以外は70代で、5人で330才、平均年齢66才。いつもとは違う話題が飛び出し、わたしにはとても刺激的なのだけど、おじさま方もわたしの話を面白そうに聞いてくださる。T氏の恐山土産の「文字が出る棒状線香」を燃やして浮かび上がった「先祖代々供養 恐山」の文字に見入ったり、軍歌の話で盛り上がったり、かと思うとセキュリティ対策(ピッキングに強い鍵、セコム)の話に飛んだり、どこのデジカメがいいか論になったり。

『陸軍記念日』『海軍記念日』(ともに明治38年)をよどみなく熱唱するT氏に、「彼の記憶は追想に強いようです」と余語先生は医師らしい分析。「元寇(1281年=弘安4年)を歌った軍歌もあります」と、T氏はこれまた高らかに歌う。あまりにモダンなメロディで驚くが、歌そのものは13世紀ではなく、もっと後に作られたものとのこと。途中、余語先生が蹴ってしまったワインボトルが割れ、赤ワインが床にこぼれるアクシデント。「血の海みたい」「雑巾ある?」「掃除機かけないと」「瓶に残ってるワイン飲むのは、さすがに危険だよ」と大騒ぎするのも楽しい。

このメンバーが集まると、健康談義は欠かせない。今日何度か話題に上ったのは「ストレス」。「ストレスのない生活というが、そんなのはありえない」「ストレスは必要なもの」「ではどうつきあえばいい?」と議論し、「ストレスにのまれるのではなく、飼いならせばいいのだ」という結論に至る。「ストレスというものを、ちょっと遠くから眺めましてですね、ほうお前はこういう奴かと知ってからポケットに入れて連れて歩けばいいんです。気が向いたら人にあげたりね」という余語先生の表現が気に入る。相手を知ることが、うまくつきあう第一歩。人間同士にも言えるかもしれない。

帰り道、余語先生は「日本から性病をなくす運動に取り組まねばと思うんですよ。幼児教育で自己抑制を学ばせたり、女性を守る環境を整えたり」と真剣に話されていた。いつも刺激と感激をくれる年上の友達に感謝。T氏からは「お陰様で1歳ほど若返りました、何故か解りませんが今井さんと話しをすると若返る様です、多分人助けのオオロラ?が放射されているのかも知れません(この歳で1歳はたいへんなのです)」とお礼状が届く。

2000年10月02日(月)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/12/02)

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