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2012年04月30日(月)
『二代目市川亀治郎大博覧会』

四代目市川猿之助襲名記念『二代目市川亀治郎大博覧会』@ヒカリエホール

通称『渋谷亀博』、「亀治郎の最後の姿を見届けていただけますよう」とのこと。亀治郎の名はご本人も愛着のあるものだったようですし、中国に行く度作って集めていた印鑑がもう使えなくなるのが勿体ないとか、さびしーみたいなことがちょこちょこコメントに書かれていて、猿之助襲名はおめでたいことではあるもののちょっとしんみりしたりして。

『軌跡』『肖像』『宇宙』『映像』の4セクション。『義経千本桜 川連法眼館の場』通称四ノ切の再現セット(あがれます。撮影もオッケー。3.6mある欄間抜けの高さも体感出来ます)から、これ迄使った衣裳や道具、学生時代の成績表(笑・これがまた100点とか97点とかばっかりなのよさ)やノート迄、亀治郎丈のあれやこれやがみっしり詰まった展示でした。しかしなんと言うか、何をやってもデキよるいいとこの子ってのがもーありありで、そしてそのどれもがもーイメージ通りで、ああこうよなこうよなとしみじみ……字はキレーだし書もデキるし絵も油彩から水墨画迄、嗜みましたってレベルじゃないし。趣味の骨董コレクションでは桃山や鎌倉時代はともかく(ってそれともかくか?)縄文時代の土器て。私は何を観にきたんだっけかと途中ぼんやりした……。そして「『狭き門より入れ』の巡業先で遊んだとき、出演者皆でよせがきしましたー」ってそれが屏風に筆書きだったり(笑)もう、規格が違う!あ、あとさらっと藤田嗣治の描いた祖父の肖像とかあってシェーとなった。

らしいわあと思ったのは大学時代のノート。薄いシャーペンで書かれた、筆圧の低い整った字。はかない。このはかなさは舞台写真の数々にも感じたなー。今回の展示のメインでもあった、齋藤芳弘氏によるデジタル合成写真は、ひとつの画面に連続した三姿態を入れ込んだもの。いちばん印象に残ったのは異形のもの――『加賀美山再岩藤』岩藤の亡霊、『芦屋道満大内鑑 葛の葉』葛の葉の姿でした。妖艶であり、同時に壮絶でもある。特に狐の化身である葛の葉の、美しい黄色の衣裳をまとった華奢な身体にドキリとさせられる。「鬼となり、獣となり、地を跳ね、宙を飛び、やがて、幕が下りて人に戻」る歌舞伎役者。

あーこれからしばらくは多少女形減るよね…いや勿論立役も凛々しくて素敵なんですが……や、やっぱちょっと寂しい……。

四ノ切の舞台裏を追った映像ドキュメンタリーも見応えありました。仕掛けや早替わりの舞台裏を見られたのは嬉しかった。日々探求、孤高を突き詰める姿と、稽古中にふと見せる明るさと気配りも印象に残りました。小さい頃から同じ世界に身を置き共演もしてきた染五郎さんとの関係性も独特。話逸れるが四月の平成中村座の筋書に出演者の騒動体験と言うのが書かれていたんだけど、遊びたい盛りのこども時代、頭を割ったり骨折したりして大目玉をくらった役者さんの多いこと。お稽古や本番があるのに!と随分絞られたようです。フツーの家の子だったら男の子だからやんちゃするわよね、元気でいいわねで済むところですが、歌舞伎の家の子はそうはいかない。宿命ですね。

あと肌強くないと大変よねと思ったりした…長年使われているものなので改良されて、スキンケアとしてもいい化粧品ではあるらしいですが。思春期でニキビとか出来てるとあの化粧はつらそう。心身ともにタフでなければやれないですよね……。

閑話休題。予想以上にTeam申のものが観られたのは嬉しかった。初めて現代劇の舞台に立ったところですし、『今、僕らが出来ること』はライフワークにしたいと言っているし、大切な場なのでしょうね。蔵之介さんからの花だけ入口センターにどーんと置かれていたし(笑)前川さんの屏風書も見られたし!よかったー。

あ、あと、ああっそういえば亀治郎さんてスズカツさんの書いた台詞を口にしたことあんのよね!と『恋するナポリタン』についての展示を観て思い出した。ははは……いつか舞台でお仕事ご一緒してもらいたいものです。前川さんのホンでスズカツさん演出で亀治郎さんが出たら嬉しいなー。願いは口に出す、ことだまことだま。



2012年04月28日(土)
『大友克洋GENGA展』

『大友克洋GENGA展』@3331 Arts Chiyoda

会場の3331 Arts Chiyodaは、廃校になった中学校をリノベし2010年6月にオープンしたアートセンター。ギャラリーやショップの他にもさまざまなアートに関わるプロジェクトが進行しているスペースです。カフェ(foodLab)のごはんもおいしかったよー。『大友克洋GENGA展』は1Fのメインギャラリーで開催。デビューして39年、初の総合原画展。

エリアは5つに分かれており、順路は『AKIRA』本文以外(単行本の表紙や扉絵等のカラー原稿はこちらにありました)のマンガ、イラスト、映画仕事をドカンとブチこんだいちばん広いエリア→今回の目玉でもある『AKIRA』全頁展示の3エリア→最後はちょっとおまつりっぽい雰囲気の楽しい参加型スペース。基本原画は壁に額装展示されていましたが、『AKIRA』本文原稿だけは5枚×6段×2〜3列くらいのガラスケースに入っていました。ずらりと並べられたケースの中を立ったりしゃがんだりの繰り返しで見続けるので、足腰にキました(笑)。

幾度か涙がこみあげた。いちばん最初のエリアに足を踏み入れ、壁とエリア内に4本ある柱にびっしりと展示された原画を全景で見たとき。カラー原稿のアクリル絵具を塗り重ねた質感、張り込まれたパントンの切り口の精緻さを見たとき。そして『AKIRA』のストーリーを追ううちに。

原稿の枚数量に加え、その一枚一枚が重く見える。それだけ紙にインクが載っている。スクリーントーンはそんなには張り込んでいない、基本地色で、ここぞと言うときに重ねて削る等の効果で使っている。『ヘンゼルとグレーテル』では全くトーンを使っておらず、ペンの細かい書き込みだけで鬱蒼とした森の風景の奥行きと深みを出している。ホワイトもトーン同様効果として入れているくらいで、修正では殆ど使っていない。そしてモノクロのペンタッチ。フリーハンドと定規を当ててひくストロークを使い分け、筆圧の変化で強弱をつけた線は、手描きだからこその柔軟さで人工物に体温を与える。退きの風景と人物の全身像の比率やアングルは、資料やトレスでフォローしきれない高みからのもの。脳内の風景を、手に、ペン先に落とし込む、執念と言ってもいい力。だいたい壊滅する東京なんて、今のところ誰も肉眼で見たことはないのだ。いずれそれが実際に起こったとき、その光景は大友さんが描いたものと同じなのだろう、と思わせられる。その力。

『AKIRA』展示は鑑賞者列が詰まるのを回避する為か、多分意図的にノンブル通りに並べていない箇所がありました。しかし独立した一枚、ひとコマにすら物語を感じる。そこにはない次の頁を想像することが出来る。それは記憶を辿ることでもあり、絵そのもののドラマを感じることでもある。カオリが死んじゃうところやキヨコたちとアキラが天に昇っていくシーンには、そのひとコマを見ただけで涙ぐんでしまったよ。

そうそう、記憶を辿ると言えば。えーと私の本名カオリなんですけど、アニメではカオリちゃんの役割が原作とちょっと変わってて死に様も違ったんですよね(巨大化した鉄雄に取り込まれて潰される)。で、鉄雄が「カオリぃいい!」と叫ぶんですが、当時友人にその声色で随分呼ばれた。うざかった(笑)。作品は読者のひとりひとりの中に、さまざまな記憶とともに存在し続ける。

そんな個人の記憶が作品に絡んで嬉しかったことは、『童夢』や『AKIRA』の見開き頁を一枚絵で見られたこと(ノドがない!)、初期の繊細な線の細い原画も沢山見られたこと(『ショートピース』の短編群とかもー!)、メトロファルス『オレンジM』、スカパラ×ケンイシイ『ROCK MONSTER STRIKES BACK』、卓球『DOVE LOVES DUB』のジャケットアート、NHK教育『YOU』のタイトルカットがあったこと(この辺りはもー見た途端どんどん脳内BGMが変わりましたよ・笑)、『ハイパーアングルポーズ集SP 怪人』に描きおろした麿さんの絵があったこと(吉祥寺繋がり・笑)。

物量としての迫力にまず圧倒され、次にその一枚一枚に込められた粋に感嘆させられる。原画の実物を見ることでしか伝わらない質感。しかし涙がこみあげたのは、所謂目に映らないもの――気や、魂――を感じたからとしか言いようがない。最初のエリアに踏み込んだ足がすくんだのは、その『漫画家の魂』に押し戻されたような気がしたからだ。「私は漫画家なのだから、自分の力でできることは原画を出すことしかない。現在の私自身が最高と思えるものを提示する――それこそが、今の私に出来る漫画家としての最大の仕事であり、私なりの復興支援になる」。何かのために描き続けてきた訳じゃない。「いまできることに力を注ぎ続け」てきた、宮城県出身の漫画家が39年の間に生み出した作品群の魂。それが復興支援と言うきっかけを得て、静かに、しかし圧倒的な重量を持ってそこにあった。

これからきっと、紙に描かれた原稿は減っていくだろう。データ、画面でしか見られず、しかしそのモニタから気や魂を感じる作品も出てくるのだろう。それでも、大友さんの作品を、原画を見られる時代に生きていてよかったなあとすら思った。

最後のエリアは撮影オッケーで、金田のバイクに乗って、金田の革ジャンやゴーグルを身につけて写真撮影が出来るよ!てコーナーと、ひび割れてへこんだ壁で『童夢』のおじいちゃんみたいに「ズン」て出来るよ!てコーナーと(こちらに現場レポート→・大友克洋GENGA展ブログ『「ズン壁」と「金田バイク」で記念撮影!』)、壁に何描いてもいいよーてコーナー。すんごい張りつめた状態で展示を見てきたところ、最後がこれだったのでなごんだわー(笑)。らくがきコーナーには内覧会で来たであろう関係者の絵も沢山ありました。「ズン」を描いてる漫画家さんが多くてそれもおかしかった。吉田戦車さんのかわうその「ズン」はひときわ輝いていました(笑)。寺田克也さんのじいさんも存在感あったなー。

入場料の一部は支援対象となる6つの団体に直接渡ることになっており、出口には各団体の活動内容を紹介するパネルがありました。それを読んで、寄付する団体を自分で選び、半券を投票するシステムでした。入場料からいくらが寄付になるのか、それはどこに行って何に使われるのか、明記されているのは気持ちがよい。そして物販コーナーへ。カタログちょう充実です!デカい!重い!書籍コードがついてたので書店売りあるんだな、通販も出来るな…と思ったものの、帰ってすぐ読みたかったのと、そして実のところ買ったものを入れてくれる紙袋がちょー格好よかったんですよ(笑)あの紙袋がほしくてその場で買ってしまったよ……。ヅ臻明さん(!)による会場BGM『Καρδια OTOMO KATSUHIRO GENGA EXHIBITION』のCDと、『AKIRA』のポスターも買いました。もうパネルに入れて飾ってある!

と言えばね…そのヅ腓気鵑搬舁Г気鵑会期中にイヴェント(・大友克洋GENGAイベント『Καρδια』)やるんですが、それに窪田晴男も出るのよ…多田暁も。ほぼHAO!じゃんこのメンツ!でもどうやってもチケットとりに行けないときに発売なのよ……うえーん。

日差しの強い時間に入場したのに、出てみると外は暗かった。時間をすっかり忘れていた。2時間以上が経っていました。やーもーあまりの凄さに吐きそうになったり泣きそうになったり(実際涙出たが)大変だった。それなのに、またリピートしたいななんて思っている。



2012年04月27日(金)
『負傷者16人 ―SIXTEEN WOUNDED』

『負傷者16人 ―SIXTEEN WOUNDED』@新国立劇場 小劇場

予想通りとても重い内容で、心にずっしり残るいい作品でした。パレスチナ人とユダヤ人の対立の間に、寛容の象徴としてオランダと言う国、パン屋と言う生活に不可欠な場を置くことで、事態をより複雑に、より考えさせるものになっています。そして、その寛容と言うものが9.11以降試練を迎えつつあることも、解決が見えない大きな問題への思いを強くさせます。演者の力と手練な演出による緊張と緩和のリズムが見事で、体感時間を非常に短く感じた2時間40分でした。

お互いに知らないことがある。前半はパレスチナの青年マフムードの謎を明らかにしていき、後半にオランダのユダヤ人ハンスの謎が明かされる。どちらにも壮絶な過去がある。それを彼らは、どちらも本人の口から聴くことがない。個人対個人として向き合えば愛し合える隣人が、出自と所属によって引き裂かれる。過去はずっとついてまわり、消すことが出来ない。以下ネタバレあります。

「公平なんて贅沢なものを手にしたことがない」マフムードは「親父にユダヤ人を憎めと言われて育てられたことはない」と言い、それでもユダヤ人を憎まずにはいられない。罪のないこどもにさえも「こいつらを生かしておけばいずれ大人になり、パレスチナを迫害する」と思ってしまう。反面ハンスは、それがパレスチナ人であろうとも血まみれで倒れている人間を放っておけない。マフムードに疎まれ、酷い言葉を投げつけられても、ハンスは彼を助けようとする。

マフムードはテロリストとして過去多くのユダヤ人を殺している。新しい“仕事”を兄が持ってくる。ハンスは第二次大戦中、収容所で同朋の死体を焼く仕事をしていた。戦後解放され、ひとりきりになったところをパン職人のオランダ人に助けられ育てられた。そして戦後数十年経った今も、なるべくひとと深く関わらないように、ひっそりと暮らす。ハンスは自分に仕事と店を、いや人生を与えてくれたオランダ人に「借りを作った」と言う思いが大きい。この借りを誰かに返さねば。そんな思いがいつも心の底にある。そこにマフムードが現れたのだ。

ハンスが娼婦ソーニャに自分の過去を打ち明け、プロポーズするシーンが心に残った。ソーニャも一筋縄ではいかない過去があるようなのだ。名前からしてロシア系であろう彼女は、恐らくユダヤ人なのだと言う解釈。弾圧された経験があり、それは決して過去にはなっておらず、しかし時間は止まらず年老いていく。どんなに強く求めてもひとと繋がることの出来ない、祖国を持たない流浪の民。ふたりはどんなにふたりでいてもひとりきりで、ひたすら哀しくせつないシーンだった。

そういう意味ではマフムードはまだ若く、無邪気とも言える純粋さを持っていた。そんな彼がハンスと出会ったことで、ある種の可能性を生み出すのではないか――結末の予想は誰もがうっすらついている。しかしその誰もが、彼らが幸せへの足がかりを掴みかけ、束の間の安らぎと笑顔を得ている姿を目にしたとき、この時間がいつ迄も続けばいいのにと思っただろう。終盤マフムードとハンスが徹底的に話し合う姿に、ひょっとしたら、と思っただろう。この「ひょっとしたら」と言う力が大きければ大きい程、やはり予想通りになった幕切れのショックは大きい。出演者は説得力のある演技で「ひょっとしたら」を強く、そして長く感じさせてくれた。またパン屋での仕事、と言うのがひとびとの日々の暮らしに密着していることだけに、どこか幸せな匂いがあるものなのだ。おいしいパンを焼く、お菓子を焼く、誰かがそれを毎朝買いにくると言う光景。

自分は臆病者だから所謂“敵”に対して寛容なのか、そしてその寛容は忍耐と言うことなのか、“借り”と言う思いがなければ自分はマフムードにこんなにかまっただろうか?と言う揺れを終始滲ませ続けたハンスを演じた益岡徹さん。頑だった心がやわらぎ、次第にハンスを実の父親のように慕い、同時に強い思いをぶつけるマフムードを演じた井上芳雄さん。耳慣れない単語が頻発し、それに説明的な台詞がつかなかったとしても、彼らふたりの身体を通して語られた言葉たちには「ああ、あちらではこういうしきたりがあるんだな」「今はこの言葉の意味は解らないけど、何度か出てくるうちにニュアンスは判ってくるだろう」と感じられる安心感がありました。信仰、歴史が絡む習慣から、サッカーチームアヤックスが「ユダヤ人」と呼ばれる所以(劇中はっきりとは語られませんが、オランダから収容所につれていかれたユダヤ人たちが何をしたか、と言うことはうっすら伝わるようになっている)等、日本人にはあまり縁のない情報を多く含む会話をぐいぐい聴かせる力は素晴らしかったです。

益岡さんはアラブ系でもイケそうな顔立ち、井上さんは東洋系の涼しい顔立ちなので序盤ちょっとだけ「うーん、井上さんがパレスチナの…」と思ったのですが、あっと言う間に気にならなくなりました。芝居の力と言うものは重箱の隅をつつく余地を与えない強さがあるものですね。会話劇の醍醐味を見た思いがしました。そして思えば井上さんをミュージカルで観たことがないのですが、今回は歌ではないけど歌のようなもので美声を聴くことが出来ました。アザーンのシーンはもう発声が違った(笑)。

歴史を感じさせるパン屋のセット、時間経過や状況を知らせる映像演出も心に残るものでした。骨太な海外現代戯曲の上演を観る機会に出会えて幸運でした。

憎悪と暴力、復讐の連鎖についての作品を一週間で二本観ることになりました。来週観る予定の『THE BEE』について、26日の新聞記事での野田さんの言葉を最後に。

「俺にも答えは一つじゃない。救いのない芝居だが破滅につながらぬ道を我々は選べる、少なくとも見終えてすぐ暴力に走らないだろう。それが希望だと思います」。

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■芝居のチケットをとる基準はいろいろあれど
出演者や演出家、作家から興味がわく、観に行きたくなる舞台は勿論沢山ありますが、自分にとって宣美によるそれもかなり大きいものです。特にストーリーを知らない海外戯曲の日本初演を観たい場合、宣美から受け取るイメージにはとても左右されます。
『負傷者16人』のチケットを買ったのは宣美が決め手でした。新国立劇場レパートリーの宣美をgood design company(水野学さん)が手掛けるようになってから、大量に渡されるチラシ束をめくるとき、確実に手がとまるようになりました。新国立のブランディングを示しつつ、なおかつ他とは一線を画すデザイン。小林賢太郎さんとの仕事でも知られる水野さんですが、毎回独特の美学が貫かれています
・good design company | 新国立劇場

■関連メニューとかあったのだろうか
終演後ロビーに、お皿に盛られたパンが置かれているのに気付きました。「ビュッフェで販売しています」らしきことが書かれていたのですが、何かあったのかなあ。休憩時ちゃんと見ておけばよかったー。
それはともかく、目にしたパンのせつなかったこと。パンとかお菓子とか、食べものってひとを笑顔にするものであり続けてほしいものです
追記:やっぱあったんだー。そして劇中登場人物がこねた生地は焼かれて展示されていたそうです。気付かなかった……(泣)
・新国立劇場演劇『「負傷者16人 −SIXTEEN WOUNDED−」が初日を迎えました』
中日には「中日」のパンが追加展示
・新国立劇場演劇『「負傷者16人 -SIXTEEN WOUNDED-」中日(なかび)を迎えました』



2012年04月22日(日)
『KAIKOO POPWAVE FESTIVAL '12』

『KAIKOO POPWAVE FESTIVAL '12』@船の科学館 野外特設ステージ

mouse on the keys絡みで数年前から気になっていたKAIKOO。インディーベースで活動するバンドが多く集まるイメージでしたが、ここ数年でみるみる会場と参加バンドが膨れあがり、今回は船の科学館敷地内で二日間開催の規模になりました。これ迄なかなか日程が合わずようやく行けた!二日目のみ参加してきました。

天気が怪しかったので、会場着いてから雨降り出したらごはんを喰いっぱぐれるかもと思い(笑)ヴィーナスフォートで腹ごしらえして出発。ふねー!うみー!いいロケーション、アガるー!4つのステージ(全部まわれた!)間を徒歩数分で移動出来るコンパクトさなのに、不思議と音が被らないのです。昨年同じPOPGROUP制作で、近所のお台場シーサイドコートで開催された『neutralnation 2011』のときもそうでした。各ステージの音は決して小さくないんですよ。スピーカーの向き等うまく考えてあるんでしょうか、よく出来てるなー。

で、その『neutralnation 2011』のときは海風に悩まされていたようだったPA。さまざまな編成のバンドが入れ替わり立ち替わり演奏していくフェスならではの大変さもありますよね。今回は殆ど風もなかった上、臨機応変っぷりが見事でした。と言うのも、リアルタイムで音を改善していくのが目に見えて(耳に聴こえて?)わかるんです。これについては後述します。

■WUJA BIN BIN@BLACK EMPEROR
ビークルではkeyを担当していたケイタイモくん。彼が本来の?パートであるベースを手にバンマスを務める「大所帯プログレッシヴ吹奏楽バンド」WUJA BIN BINが本格始動!(プロフィール紹介も含めたこのインタヴュー面白かった!・CONTRAST『WUJA BIN BIN | 男女13人音物語』)ファーストアルバムリリース直後に観られてラッキーでした。
もともとは類家くんが参加している…え、ゴセッキーも?圭作くんも!?と言うことで俄然興味が増した訳ですが、ほんぎゃーめっちゃ好みの編成と音でした。確かに「大所帯プログレッシヴ吹奏楽バンド」、しかも変態色!ギターレスで鍵盤×2、シロフォンも入ってる。ヴォーカルは言葉をパーカッシヴな音にする。うわんこういうの大好き!またヴォーカルのひとりアチコさんの笑顔がちょー素敵で!二列目で終始ニコニコして観た。
何せ13人もいるのでセッティングが大変、各パートのマイクチェックも大変。かなり入念にチェックしていましたがやっぱりいっぺんに音を出したときのバランスと言うのは演奏が始まってみないと判らない。序盤はホーンの音が埋もれて殆ど聴こえずおろおろする。しかしここからがPAスタッフのすごいとこでした。演奏中ホーンやスティールパン等の生音楽器の側に駆け寄っていき耳を近付け、卓にサインを出していくのです。すると確実にそのパートの音が鮮明になる。スティールパンなんて、スタッフさん底に這ってって耳を近付けてた。各プレイヤーも演奏し乍らどんどん要望をジェスチャーで伝えている。みるみるうちに音が整っていく。類家くんのソロが始まったときにはもうバッチリでした。
えーこれどうやってたの…モニターの返りを確認するってのとは違うよね……。全ての音が鳴ってる状態でこの位置からはこのくらいの音量、音質で聴こえている、だから全体ではこう聴こえてる筈だ、ってのを把握出来てるってことか……すーごーいー。
個人的には新旧DCPRGのゴセッキーと類家くんが前後でソロとったり、ユニゾンで吹いたりしているのが胸熱でございました。Tbのお姉さんもちょー格好よかったし、Clがまたいいの!ソロめちゃ格好よかった。FlとAS兼任でビートたけしの真似がうまかった(笑)NARIさんは匍匐前進も上手で、バンドにふたりいる元自衛官(前述インタヴュー参照)っぷりをアピールしていました…と言えば、類家くん匍匐前進出来るのかな(笑)音楽隊も基礎訓練はやるのではないか。
わーまたライヴ聴きたいよ!レコ発はマニックスと被って行けないよ!(泣)フジとかに出ないかなー。
せっかくなのでMV張っとく。類家くんはアニメでもイケメンだな!そうそう左のほっぺがリスみたいに膨らむよね!
・WUJA BIN BIN / SAFE DRIVING


BLACK EMPERORのサイプレス上野とロベルト吉野と…(特別な1日をあなたに)にトシミくんが出るとアナウンスされていて気になったけどソイルと丸被り。うぎゃん残念。

■SOIL & "PIMP" SESSIONS@KING & QUEEN
ひっさっびっさーーー!!!しかも一曲目「Suffocation」!!!ツカミはオッケー、フェス仕様のセットリストで押しまくります。駆け込んできたクラウドでみるみるうちにエリアはいっぱい。
それにしてもベタなことを言うが「Suffocation」の言葉通り、タブくんも元晴さんもいつか窒息死するんじゃないかってライヴ聴く度ハラハラする…楽しいけど(鬼)。そもそもタブくんのTpってブラックマンバと言うちょーゴツい楽器で、本人も「重いし音出すのすごい大変。でも出す!」みたいな体育会系なことを言っておりましたが、それにしたってこの楽器でよくもまあこんだけゴッツいハードバップをやるもんですよね。元晴さんもそうで、ふたりともソロ終わるとクラクラきてるっぽいし酸素吸ってるし。しかしまあそこが魅力でもあるし、これをいつ迄やれるか?ってところもハードバッパーの刹那に挑戦しているような印象もあります。
とまあいろいろ考えたりするのは後のことで、ライヴ中はそのひたすら格好いい演奏に踊りまくってるだけですよ。あー楽しかった!社長の帽子とった姿初めて見た。なんかかわゆかったわ。その社長、ステージから飛び降りたときすっころび、衣裳がやぶけて「縫います」つってたのにもちょー笑った。タブくんと元晴が投げた酸素缶を両方ともキャッチした男の子があまりのことにキャーッて少女のように喜んでいたのもいい光景でした。
そして丈青がソロ弾いてるときにこの日最初の雨がパラッときた…やっぱり雨男は丈青だと思います……

KING & QUEENはステージが二面あり、ひとつのステージでライヴが行われている間に次のアクトのセッティングが出来るようになっていました。この後のBEYONDSも気になったがこの日前半はもうDCPRG縛りで行くぞ!物販を見て(ソイルの物販のおねーさんちょーいいキャラでした)GRAND MASTERへ移動。

■後藤まりこ@GRAND MASTER
はい、千住くんがバンドメンバーです!後藤まりこさんはミドリの変名バンドshibaraku-yoshinoを『Kill Your T.V. '09 NOW!』で観たきりで、ソロではどんなことやってるのか全く知らなかったのですが、あらーかわいい!ふわりとしたクリーム色のワンピで、ゆるいウェイヴのかかったボブ。まず思ったのがうわYUKIみたい、でしたよ。イメチェン?しかし歌はその姿からは程遠い野獣のごとく。サークルに位置するバンドメンバーの真ん中で咆哮しております。しかし声はかわいい。
そのうち後藤さん、上手側のスピーカーを積んでるイントレに飛び移り絶叫大暴れ。黒いパンツも綺麗なおしりも(そうおしり見えた…パンツがタンガだったの……)夥しい数のリスカ跡もめっちゃ至近距離で拝ませて頂きました。その傷だらけの左腕を誇らしげに飾るレースのリボン、裸足、ふくらはぎには黒いガムテ。マイクとエフェクター(リアルタイムで自分の声にエフェクトやループをかけたりする)を持って動き回るので、コードさばきにスタッフがあたふた。そこに群がるカメラマン。いやあフォトジェニックです。
そんな状況で聴いたと言うのに、唄われたその声とメロディはクッキリ記憶に残った。今でも口ずさめる。お見事。上記の説明だとどんなハードコアやねんて感じですが、歌はとてもポップです。そしてこの声に対抗するなら、と言うバンドがやっぱ巧い。何より皆が楽しそう。
千住くんのいじられようはかなり見ものでした(笑)叩いてる背後から後藤さんにシンバルジャーンて素手で叩かれて「うわあっ!」と声出してビックリしていたのには笑ったわー。その後スティックを奪おうとする後藤さんに必死で抵抗するうち、二人羽織状態になってしまい大ウケ。曲が終わった後「千住くんがスティックくれへんからやんかー!」と名指しで攻撃されてました(笑)。
終わった後何故か泯比沙子さんの話になった

■U-zhaan × mabanua@BLACK EMPEROR
昨年の『LIQUID R/U/U/M』以来。このときが初顔合わせだったんですよね。タブラチューニング間の喋りは相変わらずドSのU-zhaanにニコニコmabanuaくんの噛み合ってない微笑ましさでした。かなりひとも多かった、人気者ー。「ユザーン!ユザーン!」と絶叫する兄さんがいて、音の返りを確認しているユザーンが「どうですかね?」とPAさんに訊いたらその兄さんが「いいよー!」とか言って「あなたにいいって言ってもらっても」ってあしらわれててウケた。客にもどS。
寒いから予定していたセットリストを変更して、ドラムンベースばっかりやりますつって大盛り上がり。ああ、あったまる…(笑)高速タブラ!
最後の曲はハラカミくんの「joy」を使ってた、確か。ライヴ会場でしか販売しないU-zhaan × rei harakami『川越ランデヴーの世界』は「川越に忘れてきちゃったんで今日は売れません」だって。さっき物販探したけど見付からず、売り切れたのかなと思ってたんだよ…最初からなかったんかい……

この辺りから雨がパラパラじゃなくなってくる。船の科学館を見学出来るとのことだったので開放してあるミニ展示場へ。連合艦隊の精巧なミニチュアにうわあーとなる。バックホーンの岡峰くんが見たら興奮して喜びそうなものだったよ…(笑)イージス艦の模型もあったよ!楽しくて結構長い間観てまわってるうちに南極観測船宗谷への入館時間が過ぎる(泣)タロジロも乗った船だよー。外から眺める。合羽を着込んで外に出て早めの夜ごはん。iriya plus caféのジンジャーハニーティめちゃおいしかったあったまった!

移動中GRAND MASTERのCalmをチラ聴き。気になる音だった。インストのいいバンドがいっぱい出ているよー。いいフェス!WHITE KNIGHTの入口付近にWUJA BIN BINのヴォーカルバくんが座り込んで雨に濡れたままうとうとしていた。風邪ひくよー。

■WRENCH(90's LIMITED SET)@WHITE KNIGHT
「予告通り90年代の曲ばかりやります!」とシゲさん。満杯です!奥に入ると出られなくなりそうなので入口付近で見る。唯一屋根のあるステージだったけど、雨宿りのためにいたひとはそんなにいなかったんじゃないかな、すごい盛り上がり。全く見えません(笑泣)。さっき見掛けたバくんがどんどん奥へ入って行く。始まるのを待っていたんだね。でも寒いし濡れるから最初から中にいればいいのに(笑)。4曲で移動したんだけど、「時空自在」が聴けたのは嬉しかった!

■在日ファンク@KING & QUEEN
やだハマケンが格好いいんだけど!キャー!きもちわるいー!すてきー!
JBダンスも満載な訳ですが、ハマケンは身体のキレる子ではあるものの運動が出来る感じではないので、準備体操をきちんとやってステージに臨まないと靭帯伸ばしたりアキレス腱切ったりしそうだよなと冷静に考えたりする。やーもーこんなでも(って酷い)曲はブリブリに格好いいわー。ブンブン待ちらしき隣のステージのセッティングを見ていたひとたちが、じわりじわりとこちらに集まってきたのは嬉しかったわ。
ゴセッキーが加入して初めて観ました。どういうポジション?と思ってて、実際ゴセッキーのソロになるとどわっと相当場が沸くし、本人もキメキメにブイブイ吹いていたので二枚目枠なのか…?と思ったらその後ハマケンと小競り合いを始めたのでそうだよなあと思ったりした(笑)。二枚目云々はともかく、ファンクをやるホーンはやっぱ格好よくなきゃ!あー楽しかった。
「爆弾こわい」にちなんだTシャツ作りましたーて言ってた。ポケットつきでかわいかったよ

さて大トリ。サウンドチェックでYokoさんのドラムが聴こえてきます。「Dig The New Breed」のフレーズが聴こえてきたので、あ、やるな、嬉しい!と思う。『neutralnation 2011』に続いての出演、どういう縁?BAKUくんとは以前一緒にやっていたけど、と思っていたら、POPGROUP代表の坂井田さんはブンブンがUKに滞在していた頃のマネージャーだった方なんだそうです(こちらに記事→・Qetic『POPGROUP × Qetic <KAIKOO学習帳>』)。ここでBAKUくんとも繋がる訳ですね。

■BOOM BOOM SATELLITES@KING & QUEEN
すごくよかった!先日サカナクションとの対バンが中止になり(まあチケットとれなかったんですけどね…サカナクション人気すごい……)、川島さん復帰後初のステージでした。人間だもの仕方がないわよ体調悪くなることもあるよーと思うものの、川島さんこういうことすごく気に病みそうなので心配でしたよ…以前大きな病気やってるしね。無事治ってよかった。憂愁を帯びた綺麗な声はよく伸び、雨空に似合っていました。
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セットリスト(『CHELSEA QUARTET』さまを参照させて頂きました)
01. Freak The Night
02. Moment I Count
03. Morning After
04. Light My Fire
05. Fogbound
06. Kick It Out
07. Dress Like An Angel
encore
08. Dig The New Breed
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最初にふたりで前に出て、深くて長い一礼をしました。まるで長友のような深いお辞儀を!ロックバンドらしからぬこのサムライのような挨拶、事情を知らないひとからすれば何だ?と思ったでしょうよ……。その後は普通に進行していきましたが、なんてえの、中野くんのこないだの借りは返したるな気迫がすごくて火を吐く般若のようであった。まるでジャンプのキャラのような熱血っぷり…そしてスタインバーガー使ったの久々じゃないか?初心にかえるって思いもあったのだろうか…このひとこういう思いがすごく表に出るよねえ。いいことだ!
ちなみにWUJA BIN BINのケイタイモくんもスタインバーガー使いで、一日でスタインバーガー使いをふたりも見たフェスになりました(微笑)。
「Kick It Out」のとき後ろからどわーと集団が駆け込んできて、どしゃめちゃなモッシュが起こる。雨なのにようやる。タメのところでその集団が外周を拡げていったのでサークルモッシュになるのかなと思いきや、ブレイクした途端に中心に向かって走り込みぶつかり稽古になる、と言うとても珍しいモッシュが起こりました。回るんじゃないのかよ!長いことブンブン見てるがこれは初めて見たわー。ハードコア寄りの客が多かったのか皆さん対処に慣れてたなー、巻き込まれたくないひとの逃げるのが早いこと早いこと(笑)。ケガ人が運ばれていった様子もなかったしよかったよかった。
トライバル「Fogbound」のアウトロではいつもブースを離れて丸腰で前に出てくる中野くんですが、この日はそんなクラウドを、両手を腰に置いてエッヘンみたく眺めやっていて憎たらしかった(笑)。この辺りになると、今日は無事やりきれそうだと思ったのかな。そんな中野くん、アンコールで出てきて再び長いお辞儀をする川島さんの背中をバーンと叩いてました。ホッとしたところもあったんだろうな。
つうわけで大トリなのでアンコールあり!ここで川島さんが「個人的なことですが、前回のライヴで事故を起こしてしまって…今日は皆さんに楽しんでもらいたい一心でやりました」と言い、歓声を拍手が起こりました、ほろり。プレッシャーもあったでしょうにようがんばった(泣)!
リハでやってたしトーカーマイクあるから絶対そうだろと思っててもあのイントロはアガる、「Dig〜」!踊りまくっておひらきです。転んでもただでは起きないじゃなくて転んだら何かを掴まんでは起きられるかってなすごくいいステージでした

客出しにハラカミくんの「come here go there」が流れてきた。この日会場のところどころでハラカミくんの音を聴けたこと、とても嬉しかったです。



2012年04月15日(日)
四月大歌舞伎『隅田川続俤 法界坊』

『四月大歌舞伎』第一部@平成中村座

念願の『隅田川続俤 法界坊』!序幕『深川宮本の場』より大喜利『隅田川の場 「浄瑠璃 双面水照月」』まで。歌舞伎観劇の師匠タさんにチケットとって頂いたら竹(椅子)席最前列花道真横(上手側)でした。わわわ有難うございます!!!役者さんたちが花道を駆け抜ける震動は伝わってくるし、真横に座り込んだばあさん役のひとが号泣すると、その声の大きさにビクゥッとなる程の近さ。こんだけ近いと思わず肌のきめをまじまじと見てしまったり、匂いを嗅いでしまいますよ……。

しかも目の前にちっちゃな階段が設置されてて何なん…と思っていたら、松席との境の通路を役者さんが通りその階段から花道にあがると言う。目の前を彌十郎さんと扇雀さんと勘九郎さんと七之助くんがー!七之助くんのお着物の袖が膝にあたるー!や、彌十郎さんの匂いを(以下略)それはともかく彌十郎さんの役、いいひとだったのにあんな殺され方でショック大きかった。法界坊酷い(泣)。見せ場としてはちょー格好よかったよねー、切断された両腕から鮮血真紅の布を舞わせてキャー素敵!あーもー彌十郎さんだいすきー!!

はあはあはあ、それにしても面白かった。お日柄もよく!桜の季節、気持ちのよい晴天、すぐ傍の隅田川では早慶レガッタが開催されており応援合戦の声や太鼓の音が聴こえてきたりして。勘三郎さん「今日外でボートやってるんだよ!」とアドリブで言ってましたが。最後は舞台の奥が開き、完成したスカイツリーと抜けるような青空を借景に怨霊が舞う。舞い上がる桜吹雪、滝のようなしだれ桜、これでもかと何度も何度も撒かれる蜘蛛の糸。途切れることなく続く万雷の拍手と歓声、自然とスタンディングオベーションとカーテンコールが起こる。映像や写真で見ていた光景で、当日もそれを楽しみにして待ってたところもあったんだけど、実際それが目の前で起こるともうなんてえの、そういうことすらも頭から飛ぶと言うか。予想していたことがそのとおりに起こる、筈がないのだ。扉が空いて少しひんやりとした外気が頬に当たる感触があり、紙吹雪も決して同じに散る筈がない。ツケ打ちの音の鋭さも、鼓膜どころか網膜にぶつかるかのよう。そして舞台に立っている役者たちの芸の力に気圧される。

殆どの観客は一演目につき一度しか観にこない。そのたった一度が、そのひとにとってのスペシャルな一度になる公演を、彼らは毎日毎回続けているのだ。尊敬して止みません。

しーかーしー平成中村座最初の演目であったこの『法界坊』、幾度もの上演を重ねていることもあり、遊びどころもふんだんにある。と言うか勘三郎さんめちゃめちゃ好き放題(笑)。この日の橋之助さんいじりはAスタジオの「実は小山三さんが…うっそで〜す」並に勘三郎さんじゃないと言えないネタだったよ……(苦笑)。何が何でも客を楽しませずにはいられないてんこもりのサービスです。勘九郎さんもちっちゃい頃のことを蒸し返されてサンドバッグ状態でしたが、八時二十分の困り眉をピクリとも動かさずただただそれを聴いている勘九郎さんの姿がまたおかしかったよー。

串田さんの演出と美術も、屏風絵をスライドさせることで場面転換を表現したり、大喜利場面での脇役たちの衣裳が桜柄だったり、黒子の自己主張が顕著だったり(笑)と、華やかな見所が満載でした。笹野さんもよかったー。側転にはどよめきと大歓声!一軸のすりかえ場面は勘三郎さんの後に笹野さんが繰り返すんだけど、序盤は同じ行動をとって、その後は違う仕草で笑いを誘う。亀蔵さんのミュージカルもあり(素敵!笑)ドッカンドッカン笑っていただけに、後半法界坊がその温度感のまま次々と殺人を犯す場面は鳥肌ものでした。いやホント地続きなんですよ…何かが起こって豹変する、って感じではない。なんとも異形…いや、今上演しても違和感のない、なおかつ普遍的な人間の暗部を描いた作品です。

終演後隅田川へ出て、レガッタを見物しつつ散歩して帰りました。花見客も沢山。劇場の丁度裏っかわに来ると、簡易フェンスを隔てた舞台の真裏にビニールシートを敷いて花見客がお弁当をひろげていた……あ、あんなド派手な舞台が繰り広げられていたすぐ裏でおべんと食べてたひとがいたのか!こっちはこっちでいきなり背後からバーン、カンカンカンカン、わああああ、よおお〜っ、なんて音が聴こえてきて驚いたことでしょう(笑)。日常と地続きの異空間、劇場は本当に魅力的な場所。

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ところで平成中村座には桜席と言うものがあります。舞台の真横に位置する二階席で、幕が閉じると一緒にしまわれちゃいます(笑)思えば舞台側でお弁当食べてんだよね…(何故そうお弁当に執着する)。

当初は安価な席だったそうで、勘三郎さんから「貧乏人!」と声をかけてもらえたりしたとか(こちらに2008年の記事→・All About[歌舞伎]『平成中村座 桜席の興奮!』)。いつかここで観てみたいなあなんて思っていたところ、今回もっとすごい席があった。桜席の下に…つまり舞台上に、席が、ある!上手に三席、下手に四席。ちっちゃな桟敷席で、掘りごたつっぽくなってて、舞台上に上半身が出てる。幕が開いたら舞台に観客がいるので場内がざわめきました……ええー!?大喜利のときなんか、囃子方より前に座ってるんですよ、真後ろでジャンジャン演奏されるんですよ!お、おちつかなさそう!

タさんに「ななななんですかあの席!?」と訊くと、羅漢席と言うものだとのこと。江戸時代の芝居小屋で「大入り満杯のとき、舞台上にもお客をあげた」ことに由来するそうで、勘三郎さんのはからいにより平成中村座では過去何度かつくられた席だそうです。2009年のこんぴら歌舞伎でも用意されたとか。 こちら(・四国新聞社『舞台上に「羅漢席」登場/こんぴら歌舞伎』)にそのときの記事がありますが、画像にあるとおり、まんま舞台上。ちょー特等席……緊張しておなか痛くなっても絶対退場出来ないよ!逆に幕が開いてその席に知人がいたらめっちゃビックリしそうだよ!



2012年04月12日(木)
DCPRG@STUDIO COAST

Ron Zacapa presents DCPRG@STUDIO COAST

前日雨でヒヤヒヤ。実は雨男は田中ちゃんだったと自己申告がありましたが、過去の経験から言って菊地さんと丈青の疑いも晴れません。

と言う訳で『SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA』リリースパーティです。DCPRGをDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENと打たなくなるのも寂しいですな、と言いつつ会話では「デートコース」と言ってしまいますが。新譜のタイトルがこれなのにペンタゴンの呼称を使わなくなると言うのも皮肉なものです。世界からのいたわりを必要としているかのような、現在のアメリカのにっちもさっちもな疲弊を察知してのことなのかは菊地さん本人にしか判らないところです。が、この嗅覚、毎度乍らぎょっとさせられるところがある。再始動前のDCPRGのライヴ時には北朝鮮が何かやらかすことが度々あったが、今回もニアミスでしたな……。

ライヴ前日迄『アイアン・マウンテン報告』や『キャッチ22』を再読したり、村井康司さんのレヴューから「(パタフィジークによる)危機の数は13」と「クールホイップ星の陰惨でなめらかな四万年戦争とその甘い終結」を再読したりしてもうなんてえの、妄想渦巻くこと甚だしく、弱ったアメリカに8歳の強盗団を送り込むそれがSIMI LAB!とか、兎眠りおんの声を聴くと瞳ちゃんのことを思い出してせつなくなる!とスパンクハッピーを聴き出したりとか我乍らきもちわるい状態になっておりました。

新譜に参加したメンバー8時だよ全員集合!DCPRG本隊登場も20時ときたもんだ。そこにSIMI LAB、JAZZ DOMMUNISTERS(MC菊、MC YOSHIO*O)とCDRで兎眠りおん、アミリ・バラカ。レコーディングメンバーが全員揃うってこと、もうないんじゃないのか……。いやもうなんと言うか、再現出来るのか?いやライヴだから完全再現されたものを聴くのが目的ではないんだけど、あれらの(エディットしてある)楽曲をライヴでどうやるのか?と言った期待もあり、SIMI LABの面々については全く不安はないものの、JAZZ DOMMUNISTERSは一発勝負でもやりきれるのか、リリック忘れたりしないか(笑)と言ったまるで孫の運動会を参観するような気持ちもあり……何様。いやだって楽器演奏や指揮や歌に関しては何の心配もないが、ラップだもん!ラップなんだもん!そういや客入り心配した菊地さんが「前売りが25枚ぐらいしか出ていないので(ウソ)このままではスタジオコーストのフロアで世界陸上の新木場大会が開かれてしまいます」って言ってたなー。実状は運動会開ける程フィールドは空いてませんでした。左右のスペース潰してステージとフロアの幅を同じくらいにしていたので、結構なぎゅうぎゅう度。うーむ、これだと確かにリキッドやAXでは収まらなかっただろうし、結果的には正解だったのではないだろうか。ご本人も「実数(実効?)が出てよかったです」と仰ってましたね。あとやっぱり音がよかった、流石コースト。

そしてコーストと言えばミラーボール。ここで「Mirror Balls」をやらない手はないだろう、やってくれ…ないかな……や、やってくれるよな……と言った期待もあり、それなら退きでミラーボール込みの全景を見たいと二階席のチケットを買っていました。で、最後列ド真っ正面で立って観た。心持ちとしてはリリースパーティならではの「世界初演を目撃する」と言う緊張感はかなり大きかったです。

あー前置きが長い。そしてこれからも長い。140字でとか三行でとか、自分には出来ないんだよー!以下自分用備忘録なので何今更ってことも書いてるし相当気味悪いのでご注意をーってこれいつもか……。類家くんの、ハーマンミュートにエフェクトをかましたソロからスタートです。

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セットリスト

01. 殺陣/TA-TE CONTACT & SOLO DANCERS
02. PLAYMATE AT HANOI
03. CIRCLE/LINE
04. CATCH22 feat. JAZZ DOMMUNISTERS & 兎眠りおん
05. MICROPHONE TYSON feat. SIMI LAB
06. UNCOMMON UNREMIX feat. SIMI LAB
07. 構造I
08. DURAN feat. "DOPE"(78) by AMIRI BARAKA
encore
09. MILLOR BALLS feat. SIMI LAB / THE BLUES

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こ、今回のライヴをImpulse!からリリースすればよかったじゃない…と思いました!「間に合わなくてごめんよ。いつでもそうなんだ」ってそういうことなのー!(違う)いやスタジオ盤も編集ライヴ盤もすごく好きなんですが、なんてえの、菊地さんって直感すごく鋭い反面非常に用心深いと言うか警戒心が強いと言うか(AB型←それで片付けたくなる)、リサーチと準備に時間をかけて、考証、実験を重ね乍ら照準を合わせていくじゃないですか。そんでしっかり成果を出すじゃないですか。それが!この夜!だったと!思います!……いや私が単に鈍いだけかも知れない。スタジオ盤でもそれはしっかり示されているんだと思う。しかし『SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA』の楽曲は、ライヴでこそ真価を発揮するのではないかと思った……。あたりまえと言えばそうなんだが、ライヴでは全員がいっぺんに演奏するので。生身の人間がそれぞれのリズムを刻むことによって発生するグルーヴはこの場にしかないもの。

コンセプト自体は不変ですよね。(明晰に)気の狂った指揮官、混沌とした戦場、傭兵たちは自分の持ち場でガッツリプロの仕事をする。まさに“キャッチ22”の世界。複合リズムによってなまりが生じるのであって、プレイヤーはそれぞれのリズムを正確に刻んでいる。BPMは同じなので、どこを起点にソリストがのっかっていくかでもグルーヴが変化する。一定のルールを死守するリズムセクション(特にアリガス)の強靭っぷりには頭が下がります。実際には生身の人間が演奏することで、自己修復機能と言えばいいか、どこかのリズムにズレが生じれば他のプレイヤーが自然とそれに対応して編隊を組んでいき、その過程でもなまりが出る。

ラッパーもソリストと考えればいいんですね。言葉を扱うから文節のどこで切るか、単語のどこで止めるかあるいは始めるか、で起点が動く。ホーンもそうではありますが、直接声から発せられるリズムには当然ズレがあり、なまりがある。そして真情、メッセージ、礼を尽くした愛すべき言葉の数々。「MICROPHONE TYSON」〜「UNCOMMON UNREMIX」むちゃくちゃキた!SIMI LAB MC'Sの真摯さにも打たれたし、陽性のキャラクターにも笑顔にさせられました。

こっからなだれ込んだ「構造I」のドライヴ感はもうたまらんかったです。しかしこの曲ってスピーディだしメロディがすごくポップだしで聴く+踊る方はすっごい楽しいが、演奏する方はすっごい難しいみたいですね。今回もところどころ危なかった(大村くん曰くレッドゾーンがある、と)。そしてこれのアウトロ、千住くんのソロがすごかった。ブラックミュージックでよく使われるリズムパターン(ピチカートファイヴの『月面軟着陸』で小西さんが多用してたパターン。この説明で通じるのか……「ドンドンタンツクツタトトドン」ってやつ)を展開させていき、途中ところどころで音を抜いていく。直近の3曲でクラウド側もズレの仕組みを体感しているので(曲順もよく考えられている…)、音がない部分でも各々リズムが刻めている。だから音を再開すると、つんのめりを起点として把握出来る…この説明で伝わるのかー!いいや自分用だから!(投げた)あーこういうことだったのかと身体で解った感じでした。千住くんてポリリズムマナーを感覚で体得している印象がある…それを今回はわかりやすく翻訳して提示してくれた。これはすごく面白かった。

そしてその流れから田中ちゃんソロ vs アミリ・バラカCDJスクラッチへと移行、リズムとアジテーションのグルーヴを展開させて「Duran」へ。唸るわもう。そのアミリ・バラカの「DOPE」、音声聴いたりしてた(こちらにファイルとテキスト)のですが序盤の“uuuuuuuuuu, uuuuuuuuuu”ってエディットじゃなくてもともとそうなんですよね。この時点でもうノレる訳ですが、その後に続くCDJスピンもすごい。掬いあげられたパンチラインがバシッと飛んでくる。この演説音声は高見プロデューサーが見付けてきたそうで、菊地さんはインタヴューの際高見さんをいじりまくるがなんだかんだですごくいいコンビだと思いました(微笑)。いやホント許諾とれてよかった……。

そうそうそして「PLAYMATE AT HANOI」のビルドアップっぷりが凄まじかったです。「殺陣」アウトロからハノイの断片がぽつりぽつりと頭を出し、「ハノイ?ハノイなの?」とビリビリきたところにあのベースラインがどーんと。これにはシビれた!このハノイのイントロ、昨年のいつから変えてきたっけか。10月のリキッドか12月のブルーノートか……これはキますねー。宇宙戦艦ヤマトが地中からもこっ、もこっ、どばばーと出てくる感じ!(もうこんな例えしか思いつかない自分がいやになる)ぎゃー、ベトナム戦争ー!地獄の黙示録ー!

そして「CATCH22」、JAZZ DOMMUNISTERSはカンペ持ちでしたがいつでもどこでも俺様の大谷くんの平熱っぷりが素晴らしかったです。菊地さんはりおんちゃんと自分のリリック両方操りつつも見事なサーフライダーっぷり。おわーすみませんでした、しかし菊地さんにマイクリレーしたときフロアに緊張が走った気がする(笑)。やっぱりこういうとこ、ステージが日常のひとだからガッツリ魅せますね!その後のSIMI LABとのかけあいもよかったな…「いたら自分のこどもくらいの歳の子たちとどう接したらいいか判らない、目を見て話せない」なんて言ってたけど。そしてりおんちゃんの“デイジー、デイジー”にはほろりときそうになった。思考器官を停止され、途切れ途切れになっていくHAL 9000の姿を思い出す。

えーとあとは何だ、坪口さんがシンセ二台とエフェクターを駆使したソロ弾いてたとき左右のペダルを素早く交互に踏み乍ら弾くもんでその動きが反復横跳びみたいで面白かったとか、研太さんが楽しそうに手拍子してたのを見たときはニコニコしたとか、田中ちゃんのあのジャケット『NO MUSIC, NO LIFE.』ポスターで着てたやつで、あれ上だけボタンでとめるからケープみたいに見えてかわいいとか(笑)演奏と関係ないもろもろも楽しかった…あとこれはいつもだけど、ステージ奥のプレイヤーがソロのとき、前にいるプレイヤーがハケたりしゃがんだりする場面も好きなんだよね…クラウドにソリストがよく見えるようにしてくれる。大儀見さんがソロのとき菊地さんしゃがみっぱなしでコンビニ前にたむろするヤンキーみたいになってたり(笑)今回大村くんが暑さ対策のためにサーキュレーターを置いてて、序盤からあのサラサラヘアーが風になびいててビューティホーだったんだけど、彼のソロのとき、前にいた坪口さんがおもむろにそのサーキュレーターを掴んで大村くんにぶわーと当てたのには大ウケしました。

FAも楽しかった!KILLER SMELLSの登場時の紙袋はかわいいし、豆のオジキ a.k.a. コロボックルもしくはクルテクスター菱田さんは素敵だったし(き、きくちさんがおおきく見える…!)菊地さんは久々白スーツ+帽子だし(DCPRGではお召しかえしてB-BOYスタイル)、バックトラック何げに複雑でこれ唄うの難しいよ!でもすごく格好いい!だったり、菱田さんときどきキャラが崩れて敬語になったりして、いいひとが顔を出すのがまたおかしかった。SIMI LABは5MC1DJで登場、「こんな大きなところでは滅多にやれないから嬉しい」と言っちゃう素直さと明るさ。初対面の相手にもパンと胸を開き、手持ちのカードを全部見せてしまうようなオープンさに即虜。

アンコールは待ってた有難う、「Mirror Balls」とSIMI LAB「The Blues」のマッシュアップ。いつもと違う構成の指揮が遅れてごめんごめんと手を合わせる菊地さんにも笑顔。まわるミラーボール、花弁のように散る光。フロアから次々と掲げられる掌、続くハンドクラップ。そして“I got love, I get strong”。川勝さんに届け。

楽し過ぎたせいかライヴ後食べたものがどうかしたのか現在じんましんだらけでぼんやりですよ。新譜が出た前後いろいろ歯痒いこともあったけど、ライヴで聴くと一気に解決した。こういうことはこれからも起こる。勿論いちばん歯痒いのは本人だろう。

最後に「Mirror Balls」を聴いていて思い出した、山形浩生氏による『アイアン・マウンテン報告』訳者あとがきを。

「構築的で分析的で、極論を平気で言えて、現実的でありながら抽象的な議論をつきつめるおもしろさも知っていて、ヒューマニズムだけでは世の中まわらないのを知ってる――平和が必要としているのは、そのような人間である。」



2012年04月07日(土)
『シンベリン』

『シンベリン』@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

彩の国シェイクスピア・シリーズ第25弾。これで全てのロマンス劇は上演し終えたことになるそうです。残るは悲劇、喜劇、歴史劇と重厚なものばかりになりそうなので、こういったハラハラしたり笑ったり、そして最後は笑顔で大団円な作品は最後なのかも。身が引き締まる思いです。しかしロマンス劇はいい…とても気持ちよく劇場をあとにすることが出来ます。お芝居っていいなあとじんわり心が温かくなる感じ。ホンのつくりとしては矛盾点もあり、風呂敷のたたみっぷりもすごいのですが(笑・神さまの万能っぷりって便利だよねー)、「芝居だから!」こその嘘や荒唐無稽を楽しめる作品です。休憩込みで3時間40分、ブリテンにちなんでか物販には紅茶もありました(笑)。阿部寛さんはブリテン紳士の役ですが、古代ローマも深く関わっているストーリーのためか『テルマエ・ロマエ』の関連本も売られていてウケた。

開演より少し早めに席に着いておくといいかも。蜷川さんの芝居では毎回と言っていい程そうですけどね。以下ネタバレあります。

舞台は楽屋の風景。出演者の名前が張られた鏡台がズラリと並んでいます。鏡台の周りに写真や切り抜きが張られていたり、メイク道具の並べ方にも、各人の趣味や特徴が出ています。そうそう、観たひとに訊きたいのけど、勝村政信さんの鏡台の横に何故か大石継太さんの若い頃の写真を拡大コピーしたものが張られていたんですよね……あれ、何。勝村さん演じるクロートンがとっちゃん坊やのバカ息子で、髪型(ウィッグ)がその大石さんの写真に似ていたので参考にしたのかなと考えてはみたが、勝村さんのことなのであんまり深く考えなくてもいいのか?(笑)しかし気になる。ネクストシアターの川口覚さん等、若手が先に出て来て談笑しており、開演が近付くにつれ、浴衣やガウン姿の出演者が次々と現れます。そして開演、出演者たちが一列になり、しんと静まった客席に対峙。黒子たちが彼らの上着を一気に取り払い、役者たちが舞台装束の姿になり場の空気がガラリと変わる。客席からは「おお」と言う声と拍手、蜷川さんお得意の二重構造で幕開けです。

この作品はこの後5月にロンドンに持っていくので(オリンピック開催を祝う『ロンドン 2012 フェスティヴァル』内の「ワールド・シェイクスピア・フェスティヴァル」で上演されるとのこと)、それを意識したと思われる東洋色を押し出した音楽や美術を起用しています。屏風状のスライドドアによる転換、墨絵の背景画。歌舞伎の拍子木打ち、ツケ打ち的な転換音と、胡弓、琵琶等を取り入れた音楽。これらがしっくりきています。そして和+モンゴリアンの衣裳。この辺りは、今作同様本国で上演された『コリオレイナス』に連なるプランですね。

男たちが自分の国の女たちを自慢しあうシーンの背景画は『源氏物語』の「雨夜の品定め」、部屋に置かれた美術品として巨大な『ルーパロマーナ(ローマの牝狼)』像。こうやって言葉で説明するとカオスですが、実際目にしたそれは洗練されており、品のいいものです。オオカミ像の台座に横たわり、長煙管で紫煙をくゆらせ登場した窪塚洋介さん演じるヤーキモーは絵になった。これには不思議な説得力がありました。

窪塚さんはローマ=イタリアの伊達男としては線が細いのは否めないのですが、仕草や立ち居振る舞いに華があり、妖艶ですらあるヤーキモー像でした。言葉と知恵でひとを誘惑し、欺く。新しい魅力を感じました。蜷川さんとの舞台は三度目ですよね。『血は立ったまま眠っている』『血の婚礼』のように従来の窪塚さんのイメージを活かした役柄もよかったのですが、今回はシェイクスピアと言うこともありどうなるんだろう…と不安でもあったのです。見事に裏切られた。台詞回しも丁寧で、無理に早口にしようとはせず、しっかり言葉の意味を伝える努力の跡が感じられました。いつか『オセロー』のイアーゴを窪塚さんで観てみたいなとも思いました。

役者の才能とスキルによって説得力が増す、と言う面では大竹しのぶさんもそう。ヒロインであり、新妻であり、男装して少年となり、小姓を演じる。実年齢と演じる役柄の年齢差をこうも簡単に埋められる女優はあまりいない、実際目の当たりにすると納得せざるを得ない。こういうところは舞台の醍醐味でもあります。少年フィデーリとなったイノジェンが登場した場面はハッとする程のかわいらしさでした。清廉さを感じさせる、幼く美しい少年そのもの。激情の表現もコミカルな演技も自由自在だし、そして台詞の伝達力の強烈さ!やっぱりすごい。

そして勝村さんですよ。もう、いろんな意味でヒドい(笑)。最高です。前述のウィッグも似合ってたわー。暴走ギリギリの悪ふざけで好き放題。このギリギリってところが大事で、イノジェンへの思いや、国の後継者になろうとする確固とした意欲とプライドはしっかり見せる。もうほんっとバカ息子なので、どこ迄笑わせていいかのさじ加減が難しいと思いますが、ここらへんの切り替えは見事でした。ジュピター役も多分自作なのでは、紙のお面着用で嬉々として演じてらっしゃいました。あれだよねー勝村さんて王に仕える道化のイメージだ。身体も頭もキレる、状況を鳥瞰で見られる、そして命知らずで執着がない。いつか『リア王』や『間違いの喜劇』の道化役で観てみたいな。すっかりしっかり蜷川さんの懐刀ですね。

懐刀と言えば大石さんもそうで、誠実で善良なピザーニオ役、とてもかわいらしかった。この役あっちからもこっちからも無茶な命令されて可哀相よね(笑)だから彼のラストシーンの笑顔には、とても幸せな気分になりました。大石さんの笑顔、ホントチャーミング。

幼い頃誘拐され山の男として育てられた、第一王子ギデリアス(ポリドー)を演じた浦井健治さんもよかった。長身が映えるワイルドな役どころ。終盤実の息子であることを確認するためシンベリンに上着を取り払われるシーンは観客席が息をのむような色気と凛々しさがありました。あとクレジットはありませんでしたが、楽師の伴奏で歌を披露した仮面の男は浦井さんだよね?ミュージカルファンには嬉しいサービスだったのではないでしょうか。同じく誘拐された第二王子アーヴィレイガス(カドウォル)を演じた川口くんも次男坊らしい愛嬌のある青年っぷり。いやあ、いい役…このひとはこれからもいろんな作品で観たいなあ。この美しくちょっとユーモラス(クロートン退治の辺りとか大ウケ)な仲のよい兄弟が、実の妹と知らずにイノジェンを助け気遣うシーンはじんわりいいシーンでした。かわいらしかったー。

タイトルロール、シンベリンを演じる吉田鋼太郎さんは流石の貫禄、娘に怒るシーンは星一徹のようでした(笑)。鳳蘭さんもゴージャスで腹黒な王妃(名前もないんだよねえこの王妃・泣)を少ない出番で強烈に印象づけました。かっこええー。そしてポステュマスを演じた阿部さん。ロマンス劇の中にあって苦しむ役どころでもあり、妻を失ったと誤解して「もう生きていたくない」とのたうちまわるさまは今作品中異色なシーンなのですが、ここの空気の変えっぷりは見事でした。イノジェンを大事に扱う仕草も素敵。丸山智己さん演じるローマ将軍も、武人としての益荒男っぷりと小姓に翻弄されるコミカルさの二面性が格好よかった。

ちょっと惜しいと思ったのは、戦闘シーンのスローモーションがブレるところ。衣裳が重くて大変なのでしょうが、ここがビシッとキマればより説得力が増すように思います。『パーマ屋スミレ』での擬闘が印象深かった、栗原直樹さんによる殺陣そのものはすごく格好よかったです。

心に強く残ったのは、終盤全てが明らかになり、武人たちが剣を鞘に収めていくシーン。カチャ、カチャと次々に起こるこの音は、争いが消えていくこと、敵である人物を許し認めることに繋がります。武器を扱う音が和平へと繋がる、とても印象深いシーンでした。そして一本松についてのシーン。珍しく蜷川さんが台詞をいじっているのですが、今ここでこの作品を演じるにあたってのものとして納得出来るものです。再生を強く祈り信じる力は、演劇の持つ力――現在の状況を映し伝える瓦版のような、報道的な力でもあると思いました。意地悪な見方や解釈も出来るでしょうが、素直な心で観たいと思わせられた演出でした。

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■メニュー模索中?
毎度カフェペペロネ。ロースターを導入して、チキンの丸焼きを作っていたよ!前回来たときあったグラタンやパスタはなくなっており(たまたまなのか今後ずっとそうなのかわからん)、野菜たっぷり(キッシュ、チキン、サラダ、パン)プレートや、ローストチキンサンドがメニューに入っていました。迷って結局カレーにしたが、これの名前が「差し入れカレー」になっていた。なんだ、楽屋差し入れで役者さんも食べてますよーてことなのか(笑)。味は相変わらずのおいしさでしたー。チキンサンドは持ち帰りで翌日のおひるごはんにしてみた。こちらもうまかったー

■向かいの情報プラザでは
丁度ランチタイムコンサートが行われていました。川口晃祐さん、智輝さん兄弟による『さいたまアーツシアターライヴ』。チャイコフスキー、ショパン、リストの他にピアソラの「リベルタンゴ」がピアノ二重奏アレンジで聴けた!これはラッキーだったー嬉しかったー

■そうそう
さい芸に行く途中にある与野西中学校に、蜷川さんとシェイクスピアシリーズ出演者の手形レリーフが設置されていましたよ。今後増えていくそうです
・埼玉芸術文化振興財団『与野本町駅から劇場までの空間を「アートストリート」に!!手形レリーフが設置されました!!』