HOME ≪ 前日へ 航海日誌一覧 最新の日誌 翌日へ ≫

Ship


Sail ho!
Tohko HAYAMA
ご連絡は下記へ
郵便船

  



Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ネルソンの軍服、パリの廃兵院へと海峡を渡る

3月27日〜7月14日までフランスの首都パリの廃兵院(アンバリッド:Les Invalides)で開催される「ナポレオンとヨーロッパ」展に、史上初めて、門外不出であった「ネルソンの軍服」が展示されることになりました。

Nelson engages the French again as uniform goes on show in Paris
Bloodstained relic of naval history leaves British shores for the first time since it returned from Trafalgar
http://www.guardian.co.uk/culture/2013/mar/27/nelson-french-uniform-show-paris-trafalgar
(上記記事では、マスケット銃弾の跡もあらたな軍服の写真を見ることができます)

パリの博物館学芸員はこの展示を「この軍服がこのパリ廃兵院にあるのは、なんとも不思議な感じだ。驚嘆すべきことだ」と語っています。

1805年10月21日に、負傷したネルソンを治療すべく脱がされた軍服は、彼のシーチェストに収められ英国に戻りました。
エマ・ハミルトンが乞うてこの軍服を引き取りましたが、エマが後年借金に苦しんだときに、友人で市会議員だったジョシュア・スミスが援助という形で軍服を買い取り、ジョシュアの死後、スミス夫人は蝋人形館にこれを売ろうとしましたが、ビクトリア女王のご父君アルバート公が150ポンドで購入を申し出られたそうです。
以来、ネルソンの軍服はグリニッジの海事博物館の門外不出の秘宝とされてきました。

今回はじめて、ネルソンの軍服は、再び1805年当時の彼のシーチェストに収められ、(海上ではなく)列車に乗って海峡トンネルを通り、「敵の帝国のど真中にあたるパリの廃兵院」に到着するわけです(「  」内は上記英文記事を正確に和訳してみました(苦笑))。

今回のパリの展示には、これまで国外に持ち出されたことのないオーストリア帝国とロシア帝国の皇帝の軍服も展示されるとのことですが、やはりネルソンの軍服がもっとも人々に深い印象を与えるだろう、とのことです。

ネルソンの軍服は皇帝たちの軍服のように華麗なものではありません。
海戦にのぞんで勲章などは身に着けていましたが、軍服は礼装ではなく、ロンドンの高級仕立て屋のものでもなく、ポーツマスで仕立てたものなのだそうです。

上記の英文記事は、いかにも英国人らしい誇りに満ちた一文でしめくくられています。
「ネルソンの軍服は、三人の皇帝の軍服と並び立つ。彼の生涯では訪れることは決してなかった都市に」


2013年03月31日(日)
八重の桜

NHK大河ドラマ「八重の桜」は先週が「蛤御門の変」でした。

「日曜8時は大河ドラマ」が固定チャンネルだった家で育った私は、物心つく前から大河を見ており(子供の頃はなぜ何も悪くないのに、皆が「ごめん(御免)というのかサッパリわかりませんでした)、そこそこドラマがわかる年齢になってからでも幕末ものは5回くらい見ています。

でも最近の2作(「新撰組!」と「龍馬伝」)は浪士の幕末でしたから、どうしても個人にスポットがあたってしまい(一人で斬り込むカッコよすぎる高杉晋作@伊勢谷友介の長州征伐とか?)、藩の組織だった戦いを見たのは先週の蛤御門が、ずいぶんと久しぶりでした。

そして痛感したのは「うわ、これは駄目だわ。完全に時代遅れだわ」ということで。
いえ「蛤御門の変」の戦闘自体は、1990年放映の「翔ぶが如く」でも1977年の「花神」でも見ていたと思うのですが、今回初めて、「これはちょっと…」と思ってしまった。

その理由は、
私には1990年からこれまでの間に「シャープ」のテレビドラマを見る機会があり、19世紀初頭の英国陸軍の組織だった戦闘をビジュアルで目にしてしまっているからだと思うんですね。(それと最近の大河ドラマ2作が藩の組織だった戦闘を描かなかったからですが)

まだ子供で海洋小説すら知らなかった「花神」の時代はともかくとして、「翔ぶが如く」の時はもうホーンブロワー、ボライソー、ラミジと、ひょっとしたらダグラス・リーマンの海兵隊シリーズも読んでいたかもしれないのですが、活字で読むのと実際にビジュアルで見るのは雲泥の差!

そして、
あのずいぶんといろいろ問題のあるサウスエセックス連隊と比べても、1860年代の日本の藩兵って、はっきり言って時代に遅れすぎてるわ。
これで「攘夷!」がいかに無謀かって実感としてわかりましたですよ、今回。

「八重の桜」の面白いところは、一藩士の立場から幕末史を見ているところだと思います。
幕末史というと、新政府方も幕府方も個人英雄物語的なものが多くなる。
主要な志士は脱藩者でしたし、新撰組は幕府方のアウトローだった(このあたりは今回の「八重の桜」でも意図的に描かれていると思うんですが)。藩として組織だって動いていたのは薩摩くらいじゃないですか?

八重の兄の覚馬や佐久間象山のように、西洋の現状と日本の落差がわかっていても、藩という大組織に縛られて自由に動けないもどかしさがある…だから志士の多くは脱藩したわけだけれども。

藩と運命をともにしたからこそ歴史に埋もれた、しかし実は個々人としては国の将来を憂いながら精一杯生きた「敗者」もあるのだということ。
志士の英雄物語ではない幕末史を大切に見ていこうと思います。


2013年03月30日(土)
ネルソンのフィギュア

フィギュアというのは、詳しい方は詳しくて、このような情報はもうご存知なのかもしれませんが、

アメリカのサイトで話題になっていた話…Amazon.comでネルソンのフィギュアが手にはいるが、なぜかジョン・ポール・ジョーンズのフィギュアはない、という話題
Lord Nelson Action Figure & Napoleon’s Horse
http://www.oldsaltblog.com/2013/03/lord-nelson-action-figure-napoleons-horse/

でも私が思うにこれ、Amazon.ukの品が米国からも購入できるってことなんじゃないのかしらん? フィギュアの製造者がイギリスの業者とか?

記事の下の方の情報が面白いです。シェイクスピアのフィギュア…はともかく、ジェーン・オースティンのフィギュアもあるんですね。

このフィギュアのラインナップは鉛の兵隊さんの延長ではなく、有名人蝋人形館の発想なのでしょうか?


2013年03月24日(日)
米NBCで18世紀の海賊ドラマ

映画ニュースを見ていたら、こんな情報をみつけました。

ジョン・マルコヴィッチが伝説の海賊・黒ひげに!
http://movies.yahoo.co.jp/m2?ty=nd&id=20130313-00000014-flix

アメリカのNBCテレビのドラマ・シリーズで、18世紀初頭のバハマ諸島を舞台に10エピソードの、海賊たちを描いたアクション・ドラマ・シリーズだそうです。
これはちょっと、楽しみですね。
TV放映されてDVDが出たら、アメリカ版のブルーレイを買おうっと、って何時になるんでしょう?来年?

シリーズ3で終わりと伝えられていたBBCのシャーロックは4の企画があるそうです。これも3が現在撮影中で、英本国放映が来年1月ですから、NHK放映は来年夏でしょう。
世の中気を長くもってやっていかないと、とか言いながら、
(日本では今ひとつだったけど)海外での「ホビット」の大ヒットに、ジャクソン監督にはこの勢いで是非「テメレア」にとりかかってほしい!と願っているんですが、でもそれってきっと、5年後とかの話になっちゃいますね。


2013年03月16日(土)
冬将軍200周年(バイセンテニアルとふりがな)

今日はお雛祭りだというのに、日本列島の大部分にはまだ冬将軍が居座っているようですね。
冬将軍の英語はGeneral Frostで、1812年のナポレオンのロシア遠征が語源となっていることは、このHPを読みにこられる方はよくご存じだと思いますが、10月28日の日記にも書きましたが、去年から今年にかけて、米パトリック・オブライアン・フォーラムの話題はもっぱら、200年前の今月に何があったか?でした。
1813年2月〜3月のヨーロッパはこちら。地図入りでわかりやすい。

1813 timeline: February - March
http://www.wwnorton.com/cgi-bin/ceilidh.exe/pob/forum/?C350e5a913p13-8459-416+5a.htm

海洋小説ファンとしては、200年の記念イベントは2005年のトラファルガー200年が重要で、大陸の戦争に関しては海の上ほどの思い入れはないのですが、最近になって思うのは、あの時代の人たちは、イギリスもフランスも、こんなにも長い間、戦争が続いて本当に大変だったなぁということ。

2001.09.11をきっかけにして2002年から続いている対テロ戦争はいまだに収束のきざしが見えず、アメリカもイギリスも緊縮財政の中、それでもアフガニスタンから兵を引くことができない。
200年前と同じタイムスパンを自分の身をもって経験して、昔は本当に大変だったと、最近あまり他人事には思えなくなってきた次第。テロが国際化する中、日本も無縁ではいられない状況ですし。


それはともあれ、英国国営放送BBCは、ナポレオン戦争200年を意識して、2015年の放送予定で、トルストイの「戦争と平和」をドラマ化することになったそうです。
1時間×6回のミニシリーズとか。
英BBC、トルストイ「戦争と平和」をドラマ化
http://movies.yahoo.co.jp/m2?ty=nd&id=20130221-00000010-eiga

BBCのことだから、徹底的にきっちり考証して製作してくれることでしょう。
たとえ日本で放映がなくとも、これはDVD購入決定だわ。
楽しみなのはキャスティングですよね。この前にBBCがドラマ化したときの主演はアンソニー・ホプキンスだったそうですが、今回はいったい誰が?これは楽しみです。


2013年03月03日(日)