雲間の朝日に想うこと


< 沈黙に勝る物が有るのでしょうか >


この選択肢が、
正しい解答であったかどうかなど。

俺の立場から判断する事は、
決して出来る筈は無いけれど。




もう何度も、
繰り返して来た事だから。













 「遅くにごめん。」
 「誕生日おめでとう♪」


遠慮がちに届いた、
アイツの文にも。



 「また大きな地震が有ったけれど。」
 「大丈夫ですか?」


揺れの直後に届いた、
アイツの文にも。



未だに俺は、
何の反応も示さない。

半端な答えなど、
アイツには必要ない。









離れる為に。

未だ飛べぬアイツが、
俺から羽撃いて行く為に。














折角の記念日だけれど。


俺はアイツに、
最大限に思いを込めた沈黙を、
送ります。





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References
 Apr.19 2003, 「本当は何が詰まった文ですか」


2003年08月30日(土)


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History
2002年08月30日(金) また一つ支えが増えましたか



< 離れていても共に学べますか >


遂今し方、
電話を切ったばかりなのに。

直後に届いた、
貴女からの文が二通。


其の内の一通は、
小さな彼から届いた初めての文だった。




 「今日火星見たよ!」
 「オモチャの双眼鏡でも丸い形が良く見えたよ!」
 「小坊主も見てる?」





見上げた空に、
明るく輝く赤い星が一つ。

隣の星の来訪を見届ける、
偶然の積み重ね。



けれども。













 「こっちは雨だと伝えて下さい。」



俺の街と、
小さな彼の街。

遠く離れた距離と、
大きく違う天候と。



霧雨に掏り返られた、
夢の無い話。













見上げたお空に、
明るく輝く赤い星が一つ。

お隣の星が挨拶に来たので、
お母さんと見てました。


 「小坊主も見てるかな?」
 「電話してみて!」

 「自分でしてみたら?」

 「恥ずかしい・・・」








今夜は。

そんな恥ずかしがり屋さんと共に、
社会と理科のお勉強。


臨時の家庭教師は、
役に立ったのだろうか。


2003年08月28日(木)


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History



< 試す言葉が傷を産まないのでしょうか >


安定した愛情は、
必要無い物なのだろうか。

揺さ振らねば、
僅かな変化が起きなければ、
感じられぬ想いなのだろうか。


この手の類の想いは、
失ってこそ感じる愛情なのだろうか。





仕事を始めたばかりの彼女へ、
負担が掛からぬ様に。

時間を合わせ、
都合を合わせて来た奴。


其れでも合わせられぬ都合を見越して。

明日に響かぬ様に先に寝ろと、
彼女へ言った奴。



全て其の彼女と、
話し合って決めた行動だと言うのに。













 「先に寝てる。」


其の文を受け取った後の、
夜半過ぎの突然の電話。


 「彼氏二号と呑んでたの♪」
 「お泊りちちゃおうかなぁ♪」


明らかに酔った声で、
呂律の回らぬ甘えた声で、
予想だにしない状況を報告する彼女。




試されたと理解しつつ、
冗談だと認識しつつも。



 「泊まれば?」


奴は捨て台詞を残し、
電話を切った。













 「小坊主、何で試すんだ?」

 「俺の彼女は犬だからなぁ。」
 「こんな事しないよ。」

 「俺だって犬だよ?」
 「時々猫だけれど。」

 「お尻突き上げて脱走する猫だもんな。」

 「ははは・・・」



そう言う奴の言葉には、
ほとんど力が無いのだけれど。







彼女が奴を求めたからこその言葉だと言う、
其の理解はきっと正解で。


其れが在る限りは、
奴は立ち直って彼女へ向かって行くのだろう。








今まで何度も、
酔って吐き出して来た彼女だから。

普段は口にすら出来ない言葉を、
何度も吐いて来たから。


 「まずは彼女の話を聞いてあげな。」


俺は一言、
奴にこう答えた。




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References
 Aug.12 2003, 「言葉に踊らぬ術が身に付きますか」
 Jul.27 2003, 「対等の土俵に登れますか」


2003年08月27日(水)


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History
2001年08月27日(月) 許されない恋が育っていますか



< 夢の中ぐらいは夢を見ませんか >


どんなに努力をしても、
どれだけ努力を繰り返しても。

越えられぬ幅が在る。


一日中想い続けたとしても、
最深部まで深く想ったとしても。

至らぬ場所が在る。



それでも。


何度か流れに漂い、
幾度か流れに逆らいながら。

型に嵌る事が無い様にと常に念頭に置き、
一日想いを廻らす。










想像の型枠は、
自身が創り出す壁だけれど。






貴女は型枠共、
何処かに飛んで行ってしまう人だから。

俺が何度も型枠共飛んだ所で、
貴女の想像力に、
手を引っ掛けるが関の山だろう。












 「今朝は小坊主に怒られる夢で目覚めた・・・。」






俺はどんな事で、
貴女を怒ったのだろうか。

其の原因を探りながら一日を過ごせるのは、
幸せな事に違いない。






今日一日の最後に、
答えを聞く事が出来るかな。


2003年08月26日(火)


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History



< 其の花火の様に稔っていますか >


一時期の不信感を、
徐々に徐々に払拭しつつ在るから。

二人で最初から造り直して来た信頼感が、
段々と段々と、
大きく稔りつつ在るから。



親友である貴女と、
其の彼である俺に対して、
優しい言葉が増えて来たあの人。



 「花火に連れて行ってもらうの。」



貴女の明るい言葉。


もしかしたら、
小さな彼を楽しませる為の、
あの人の小さな心遣いかも知れないけれど。

貴女自身の為にも、
かなり大きな心遣いなのだ。












其れ故に、
貴女の涙腺は緩んだのだろうけれど。

其の反動故に、
反射的に俺を求めたのだろうけれど。


あの人の心遣いを、
貴女は素直に受け取って、
目一杯楽しむ義務を負うに違いないんだから。



 「楽しんでおいでよ。」


俺の言葉には、
そんな想いを込めました。













花火の最中、
楽しさでは無く切なさを感じてしまった貴女に。

一つだけ伝えよう。



 「来年は一緒に見よう。」



俺の住む街の、
花火大会なんだよ。


貴女と初めて出逢った記念日は。





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References
 Dec.13 2002, 「接する距離は教われませんか」
 Oct.07 2002, 「暗い道を照らしてくれませんか」
 Sep.16 2002, 「何の為の嘘だったのですか」
 Aug.05 2002, 「今日は何の日ですか」


2003年08月25日(月)


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History
2002年08月25日(日) まだ秘密の存在ですか



< 過去を映しながら観ていましたか >


確信に近いと自信を持ちながら、
其処には踏み込めない。


 「今日はデートだったの?」

 「なんで?」
 「相手居ないもん。」


敢えて迂回経路を辿って、
何の事は無い、
一つの話題を受話器に送る。


 「テレビ見てたんでしょ?」
 「常総だったね。」

 「そうそう!」
 「かじりついて見ちゃったよ!」










過去か?


会えば必ず、
野球の話をしたあの頃が。

お互いが、
遅々として距離を縮められずに、
心地良い距離感だけを、
何となく感じて居たあの頃が。


常総と言う単語で、
否応無く浮かぶからなのか?





高が此れ式の話をするのに、
何故此処まで戸惑いが在るんだ。












違う。



分相応の領域を超えて、
言葉を掛ける事になるかも知れない。

其の推測と覚悟で、
単に俺が、
常に動揺して話をしているだけだ。


御節介紛いの心配だと理解しながら。

放って置けないなどと、
馬鹿な粋がりを振り翳そうとしている俺が、
意識し過ぎているだけだ。












 「責任が無いから良いんじゃない?」


既に二十日も前なのに。

君の吐いた言葉が、
どうしても消えてくれないのに。




 「これからデートなんだよ。」
 「ふふ。」


態と其の言葉を残す君が、
完全に作戦勝ちだ。


2003年08月24日(日)


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History
2002年08月24日(土) 俺の声で落ち着けましたか



< 何れが正しい答えでしょうか >


自分の選択だから。
自分が選んだ道なのだから。

誰かに救いを求めるなど、
虫が良過ぎる。


其れを理解していながら。

時として、
何かに寄り掛かりたいとの想いが、
浮かぶのだけれど。










貴女から届く、
朝の定時便。


 「重い足を引き摺り職場へ向かう・・・。」
 「小坊主も同じ?」





同じ。

其の答えが、
貴女の救いになるだろうか。



違う。

この答えは、
貴女への励ましになるだろうか。











貴女との道を歩むには、
必要不可欠の力試しだから。

俺の足取りは軽いのだと想う。



貴女だって。


自分の道を歩む為に、
資金源的な存在を斬って捨てたのだとしたら。

其の歩みが重くなる筈は無い。




弱音は弱音、
吐いたら直ぐに前を向けよ。












貴女へこの言葉を伝えるのに、
相応しい答えは、
果たして何れだったのだろうか。


2003年08月23日(土)


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History



< 毎日毎晩触れられますか >


色や形や音達は、
多種多様な流れに乗って少し寄り道をしてから、
想いの核へ届けられるけれど。

其の匂いは、
直接中枢へ飛び込んで来るから。



視覚や聴覚は、
情報の選別を経由してから、
感情の核へと届けられるけれど。

嗅覚からの情報は、
短絡的に事を起こすと言うから。




貴女の香が側に居るだけで、
鮮明に記憶が蘇って来る事など。

生理学的に正確で、
疑問の余地さえ残らないのかも知れないけれど。












人類が獲得した複雑な処理能力と、
動物に固有の本能的な反応と。

何れが勝っているのかと、
貴女へ問えば。




 「小坊主って太陽の匂いがするよね?」

 「何だって?」

 「洗濯物干して部屋に取り込んだ後の匂い。」
 「部屋に取り込むと太陽の匂いとはちょっと違うの。」

 「・・・」




其の奇特な感性を、
どの様にして手に入れたか。

より複雑な命題を突き付けられそうで、
全てを投げた。












貴女は洗濯の度に。


何度も何度も、
同じ匂いを想い出して居るのか。

何度も何度も、
俺の匂いに触れて居るのか。







俺は最近、
貴女の香に触れていないから。

記憶が薄れそうだよ。




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References
 Jun.11 2003, 「早く我が家に来られませんか」
 Dec.25 2001, 「俺の匂いは残っていますか」




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Acknowledgement
 I was impressed by this diary.
 Thank you very much for your collaboration, あげは.
 I am glad MAME-chan came back!
 How are your naughty guy?


2003年08月22日(金)


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History
2001年08月22日(水) 本当に心配していただけだろうか



< 契れぬ想いは何処に向かうのですか >


愛しい女の腹の上で、
死を迎えたら。

雄にとって幸福な事だろうか、
其れとも恥ずべき事だろうか。


未だ生に執着の有る俺の身は、
問いを解く立場にも辿り着いていないけれど。



愛しい男の腕の中で、
死を迎えたら。

雌にとって至福の極致なのだろうか、
其れとも絶望の極限なのだろうか。


性差を有する俺の心では、
埋める事の出来ぬ感覚の差が存在するのだけれど。








きっと貴女は。

自身の姿を、
この昆虫に投影して居たに違いないから。












 「あのね・・・」
 「甲虫の雌が死んじゃったの。」



貴女が夜中に観察した、
情熱の契り合いが。



門出の刹那か、
本能の狼藉か、
別離の慟哭か。


何れにせよ、
決して暖かな未来を醸し出す行為では無かったのだ。














貴女へ伝えたい想いの数々が、
貴女を魅せたい想いの数々が、
俺には未だ残ってるから。








 「雄は知らずに抱き締めてたのかな?」
 「それとも悲しんで抱き締めてたのかな?」



そう呟いた貴女を、
抱けなくなりそうで怖い。


2003年08月20日(水)


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History
2001年08月20日(月) 何故恐れを抱くのだろうか



< 時が奪って行きませんか >


どれ位の期間を短いと看做し、
どれ程の時間を長いと称するのか。

時と場合に左右され、
二人の想いに左右され、
常に変化をし続ける其の基準に。




もう一つだけ、
基準を左右する要因が在る事に気付いた。




二人の間には。

最も大切で、
最も強力で、
最も困難な要因が存在する事に、
今更気付いた。













 「プールのある温泉に来てるよ。」



そう伝えて来た貴女が居る、
其の場所は。




俺が行きたいと、
貴女や小さな彼と行きたいと、
そう願った場所。


泳ぎを教え、
親子の触れ合いに喰い込み、
新たな世界を築いて行こうと。

初めて貴女と、
具体的な話を持ち出した場所。
















例え月単位や年単位と言う、
長い期間であっても。

俺と貴女の間なら、
想いと言う支柱を楯にして、
待ち続ける事が出来るかも知れないけれど。




小さな彼には、
耐え切れる筈が無い。









時間と言う大きな敵は。

小さな彼を、
鷲掴みにして攫って行かないだろうか。


2003年08月17日(日)


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History



< 寂しさの裏はまた寂しさでしょうか >


自身の意識から、
言葉は産まれ育つ物だから。

自身の意識を司る領域で、
自身の言葉は、
産まれ、
錬られ、
そして口や手へと運ばれるから。



例え相手を想い、
相手に贈った言葉や文字であっても。

其れは、
自分自身の想いや、
自分自身の状況を、
克明に記録して隠し持って居る。












貴女から届いた言葉に、
素直に浮かんだ一つの言葉。

貴女から届いた文に、
返信として贈り返そうとした言葉。


 「それは貴女の気持ちじゃないの?」


この言葉が持つ残酷性に気付いて、
送信の寸前で、
何とか踏み留まった。













盆休みに顔を出す事も出来ずに居る、
親不孝者に。


 「お母さん寂しがるんじゃない?」


そう言う貴女の本心が、
何処に在るか。










其れに気付けたのは。



きっと俺の意識下にも、
同じ想いが存在したからに他ならないんだね。


2003年08月16日(土)


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History



< 俺は昆虫の様に振舞っていたか >


人に備わる、
記憶を長期に渡って残存させる為の仕組みが、
睡眠時に活発化すると言うならば。


永遠に残したいと願った記憶は、
睡眠時の脳の中で、
何度も何度も繰り返し想い出されているかも知れないから。


過去の出来事が何度夢に現れても、
不思議では無いけれど。



過去が鮮明に浮かび上がる切欠は、
過去を夢に映す切欠は、
意識下に与えられた引き金なのだろうか。

其れとも無意識下で、
自身の与り知らぬ引き金なのだろうか。






 「小さな彼がね、甲虫を飼ったの。」
 「そしたら温泉の夢を見たの。」

 「あのさ・・・」
 「何で甲虫でそんな前の事を想い出すんだよ?」






貴女の想いの強さは、
人智を超えているのではないか。

いや。

貴女の体内の仕組みは、
生命の神秘をも凌駕する人類の例外なのではないか。



馬鹿みたいに、
真剣に考えを廻らせた。















貴女が記憶を呼び覚ました切欠は、
小さな彼と祖母との間に交わされた、
普通の会話。



 「甲虫が交尾したんだよ!」

 「もう直ぐ卵産むかもねぇ!」










相変わらず突拍子も無い思考回路に、
呆れ半分の笑い声を、
俺は止めようともしなかったけれど。















貴女の欲求不満が、
他の誰かに依って解消されていない事を知り。


少しだけ安心する。






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References
 Jan.14 2003, 「夢も形に出来ますか」
 Mar.01 2003, 「これが神が与え賜う褒美ですか」


2003年08月14日(木)


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History
2002年08月14日(水) 使えていますか



< 言葉に踊らぬ術が身に付きますか >


言葉を素直に追っても、
真実に辿り着ける保証は無いのだと、
教えてくれた相手。




例え目の前で、
口から飛び出て来た言葉でも。

例え相手に面と向かって、
口にした言葉でも。


底に眠る真の想いを追う事が、
困難を伴うけれど、
本当の核心に辿り着く術なのだと、
教えてくれた相手。




 「してやったりじゃん?」

 「そうかも知れないね。」



奴の言葉は、
あくまで慎重だけれど。

奴の顔は、
自信たっぷりに笑顔を零す。












奴の精神的な不安定に繋がるなら、
彼女の心だけに、
秘めて封じて行こうとして来たから。


 「旦那がそういう人だったから・・・」



息子の精神的な不安定に繋がるなら、
奴は此処には住まないと、
言い続けて来たから。


 「息子だってストレス感じてるよ!」






彼女の其の言葉は、
奴に取って、
一見すると辛い言葉だけれど。

事の核心は其処に無い。






奴が初めて、
彼女から勝ち取った言葉。


彼女が其の言葉を、
初めて奴の前で口にした事実が、
二人に取って大きな変化。


腰を据えて問えば、
彼女の真意は別の所に在る事が分かるのだ。










自身を省みて、
俺は奴の力を欲しいと願った。


 「強ぇな・・・」

 「馬鹿。ビビってんのわからんか?」







うん。
良く分かるよ。







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References
 Aug.09 2003, 「屍を拾えば未だ闘えますか」


2003年08月12日(火)


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History



< 大人しく寝られましたか >


俺との行為を、
形有る物として文字で表現し、
そして俺に贈る。

貴女との行為を、
形有る物として文字で表現し、
そして貴女に贈る。


貴女と俺と、
行動は何ら変わり無いけれど。

其処に据えてる想いの中身は、
大きな違いが存在すると想うから。












貴女から届いた艶かしい文に、
返信を贈る。


 「自爆するよ?」


戯言合戦の結果など、
既に勝敗が見えているのだ。


 「身体が敏感に反応してる・・・」


身体の火照りに耐えながら、
今晩も貴女は、
寝床に入る破目に陥るんだ。













だってね。

貴女の文字は、
自身の寂しさ故に産まれた想い。



俺の文字は。

からかい半分には違いないけれど、
貴女を想う故に産まれた言葉。


俺の火照りなど、
俺という一人称など、
何処にも存在していないんだよ。










だから貴女は。

自身で綴った言葉で、
自身の欲情を呼び覚ましてしまう。


違う?


2003年08月10日(日)


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History



< 屍を拾えば未だ闘えますか >


何度伝えても届かぬ言葉。

拒絶の壁を相手が解かない限り、
其の言葉は、
耳にすら到達出来ずに散って行くから。


何度伝えても届かぬ想い。

所詮言葉は想いの代用品であり、
相手の協力が存在してこそ、
届いた言葉が初めて正確に花開くから。



 「自信無い。」


相手の目の前で、
近似すれば敗北に値する言葉を吐いた時。

相手の解答が其れと異なっていたら、
事は終焉に向かったのだろうか。










信頼の絆を束ね行くには、
自身の行動による事実の積み重ねが、
唯一の方策だけれど。

信頼の絆を引き千切るには、
自身の行動による事実の積み重ねのみならず、
自身の疑念、
相手の疑念、
事実と異なる精神力の薄弱でも、
十二分に其の機能を果たしてしまうから。



 「自信無い。」

 「じゃあ終わりにする?」


拒絶の壁は、
想いを遠ざける方向へと、
殊更力を発揮する。











 「違うよ。」


奴は自分の想いに自信が無いと、
受け取った彼女。

自分の想いを伝える術に、
自信が無いと呟いた奴。



其の違いを認識する事が、
再び奴の糧になるんだ。










きっと彼女は、
もう直ぐ始まる仕事への不安を、
口にしただけ。

きっと彼女は、
生活の時間配分を掴めずに、
焦っているだけ。


 「絶対離すなよ。」
 「仕事が始まればチャンスが来るじゃない。」

 「だよな。」
 「信頼感取り戻してやる。」




そうそう。


彼女の強情や気の強さと、
奴の粘り強さと、
何方に軍配が上がるのか。

しっかり見届けてやるから、
存分に闘って来な。





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References
 Jul.27 2003, 「対等の土俵に登れますか」


2003年08月09日(土)


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History



< 与えてはならぬ期待でしたか >


期待していた未来が、
実現しないと判る瞬間と。

確定していた事実が、
実現しないと判る瞬間と。


失望の度合は、
何方が高いのだろうか。




確定し得ぬ未来は決して見せる事無く、
焦燥を与え続ける行為と。

僅かな可能性の中へ利かそうとした無理に、
弾かれ落胆させる行為と。


貴女の心は、
何方を是と見做すのだろうか。






 「来月も駄目だ。逢えない。」


貴女の中では、
既に確定していた筈の事実を。

けれども俺の中では、
未だ希望的観測で在った事実を。


正確に打ち消した時。




予測と寸分違わぬ声で、
貴女は泣き出した。















至極当然の精神状態。



何故に打ち消したか。

其の事情が何処に在るのか迄、
貴女の考えが及ぶ余裕など決して無いだろう。










期待は。

可能性が有ったとしても、
確約出来ない期待は。


持たせるべきでは無かったのかな。


2003年08月07日(木)


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History
2001年08月07日(火) 別れは切なかったですか



< 天秤ごと支える力が備わるだろうか >


人は自身の生の数だけ、
過去を抱えるから。

生きて来た証拠として、
何らかの痕跡を残し、
其れは自身をも縛り得る存在だから。


お互いの柵を受け入れる覚悟で、
お互いに想いを届けるのかも知れないけれど。


 「重かった?」


そう貴女が心配するのは。

重ね歩んで来たお互いの過去を、
重なった幾つもの想いの重量を、
充分過ぎる程理解しているからに違いない。



けれども。






直接短絡的に想いを繋げるから。



純粋な小児の想いは、
小さな彼の想いは。

時として大きな力と意味を有し、
時として周囲をたじろがせる程の質量を、
有するのだろうか。














 「小坊主と結婚しないの?」
 「小坊主がしようって言ったらね。」


 「自分から言わないの?」
 「そんな・・・恥ずかしいもん!」



自身の息子の言葉に、
未だ低学年の餓鬼の言葉に、
本気で照れている貴女を感じながら。










其の上に何層にも重なった、
過去の柵や背負った責務の数々と。

其の底に在る、
確固たる想いの核と。




今何方側に傾くのか、
此れから何れの側に傾き行くのか。

二つを乗せた天秤を、
想い浮かべた。


2003年08月05日(火)


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History
2002年08月05日(月) 今日は何の日ですか



< 其れは違うと言えないのでしょうか >


もしあの時、
俺が肯定の解答を君に伝えたら。

今頃はどんな関係だったのだろう。



十年前。

俺が生まれ育った土地を離れる事が決まり、
君が俺への想いを初めて告白し、
そして俺の親父の死期が判明したあの時。


俺に今程度の力さえ備わっていれば、
俺は問いに肯定して、
君を惹き寄せたのだろうか。





一つ手前の駅で先に電車を降り、
階段の途中で、
何時までも俺に手を振って居た君に。

ふとそんな想いを抱いた。











唯一の問題を、
金銭的な条件の問題を、
未だに残しつつも。


元の家、
元の苗字、
元の生活、
そして新たな仕事。

徐々に動きを見せ始め、
徐々に前を向き始めているから。



 「仕事決まったんだよね♪」
 「これで今年は四回目の花火なんだ!」


口から飛び出る言葉の数々は、
良く晴れて暑い、
今日の気候其の物の様に明るかった。













浴衣姿を目にするのも、
二人で花火を見た事も。

実は初めてであった事に、
今更気付いた男に。







 「明日もデートなんだ♪」
 「少しは八方美人になっても良いでしょ?」
 「今までの分を取り戻さなきゃ!」


そう言いながら、
隣で明日の男と算段をしている君へ。




 「其の男は違う気がする・・・」


そんな言葉を掛ける権利は無いんだよな。








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References
 May.29 2002, 「逞しく在りますか」
 Jun.15 2003, 「人を舐めてやしませんか」
 Jun.21 2003, 「幸せ太りに変えられるでしょうか」


2003年08月03日(日)


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History



< 信頼を失う時でしょうか >


会話に違和感を感じ続けながら、
貴女の中に一欠片も無いであろう想いを、
如何にして浮上させれば良いのか。

何度も試行錯誤した。



例えどんなに努力しようとも、
貴女を満足し得る言葉など、
何処にも存在しないと理解しているのに。











事実を伝えた時。


 「やっぱり無理だ。」


そう貴女に伝えた時。


噛み合わぬ会話に、
噛み合わぬ想いに、
先に気付いたのは。

話を振った俺の方だった。







貴女の脳裏に浮かんだ無理の対象と、
俺の脳裏に在った無理の対象は、
似て非なる物。


貴女はただ、
貴女の友人や俺の友人との会食の機会が消えただけで、
俺が貴女の目の前に現れる可能性が消えた事など、
眼中には無いのだ。


 「忙しいけれど。」
 「何とかするから。」


其の言葉を、
俺の言葉を、
盲目的に信じているから。















貴女の無邪気な笑顔が、
瞬時に曇って行く姿を打ち消せず。


そして同時に。

想いを実現し続ける事で築いて来た信頼感を、
失う瞬間を自覚して。



 「違うんだ。」
 「行くのも無理なんだ。」



この言葉を搾り出すのに、
震えが止まってくれないんだ。


2003年08月01日(金)


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