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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
海洋小説ファン的「ホビット」感想

昨日「ホビット・思いがけない冒険」(2D字幕版)に行ってきました。
この映画、1秒42コマの3Dが話題になっているので、3Dを見るのなら42コマで見たいのですが、私の都合と映画館の上映時間が合わなくて、結局、手近の映画館の2D字幕版に。…ので、これは本当に映画の内容のみの感想になります。

いやでも2Dでもう十分、すっかり魅了されてしまいました。
もう一度、今度は吹き替え版を見てみたいと思いますが、これも別に3Dでなくてもいい。2Dで十分、ドラマの面白さは味わえます。

あの上下2巻の児童文学をどうやって3部作に? LOTRの王の帰還の時みたいに不必要な戦闘シーンが長くて3部作は避けて欲しいんだけど…とちょっと心配していたのですが、全く杞憂に終わりました。
ピーター・ジャクソン監督はやはり、トールキン・ファンの、良い意味でのオタクでした。ポイントをはずさずに「指輪物語・追補編」から上手くエピソードを足し込んでいます。
LOTRの時のようにマニアックな要素を前面に出さずに(よく見るといろいろあるんですが、よく見ないと気づかない)誰でも楽しめるスマートな娯楽作品に仕上がっているような気がします。
いやいや、バケモノ好きの監督なので、飛び出すトロルとか3Dになったらコワイんじゃないかと恐れてましたが、その手の心配はなさそうです(トロル、ユーモラスでかわいい出来になってますよ)。

私はM&Cと海洋小説の情報ページをやっておりますが、所有ハヤカワ文庫の冊数はNVの次にFTで、2002年〜04年はLOTRの海外情報も追いかけつつ、楽しい3年間を過ごさせていただきました。
最後にこの2作品がアカデミー賞を争うことになってしまって、まぁ正直言って、M&Cは指輪の3年目と同じ年の公開にならなければ賞をとれたかもしれないと思うし、私としては心中複雑ではあるのだけれども、それはそれ、これはこれ、作品は作品でベツモノ。

今回「ホビット」と中つ国に再会して、これからまた1年半、第二部、第三部の公開を待つ毎日がやってくるのかと思うと、ちょっとわくわくします。
あぁだからと言ってここでそちらの情報を扱う予定はありません。感想も本日のタイトル通り「海洋小説ファン的」ホビット感想…ということで。

さて、「ホビット」の主人公のビルボは、穏やかな日常から突然、無茶苦茶な魔法使いにハメられたような形で、野営と戦いに慣れた13人のドワーフたちと冒険の旅に出ることになるのですが、映画を見ながら、なんかこういう話、どこかで見たり読んだりしたような…いやもちろん「ホビットの冒険」は子供の頃に読んでいるのですが、そういう意味ではなく、大人になってから親しんできた海洋小説…というより英国冒険小説(まさにハヤカワNVの世界ですね)の臭いがプンプンします。
まぁ作者が英国人のトールキンですから、子供向けだろうが大人向けだろうが、英国の伝統は同じってことかしら?

いえね、たとえばこれ、ドイツ人が13+2人で旅をしても、スペイン人が旅をしても、こういう話にはならないと思うんですよ。ましてや日本人はいわんをやです。
そういう意味ではドワーフもホビットも魔法使いのガンダルフも、とっても英国人で、監督と脚本家はニュージーランド人なんだけれども、ニュージーランド人のDNAは英国人なんだなぁとつくづく思いました。

旅する彼らは、タフで喧嘩っ早くて勇猛果敢、寡黙だけどユーモアがあって、大酒呑みで(酒のことを彼らはgrogって言うんですよ)、焚き火を囲んで望郷の歌を歌ったりする。
こういうのどっかで見た記憶が。
ドワーフのリーダー、トーリン・オーケンシルドは、一族の血と誇りと王国の再興を何よりも重んじる、内省的ではあるけれど、決断は早いし戦闘指示は的確、彼に従う12人のドワーフたちは精鋭で、有能な戦闘集団を見ている小気味よさがある。
トーリンは、ちょっとクライブ・オーウェンの演じてたキング・アーサーを彷彿とさせますが、ドワーフ軍団はもっと荒っぽい。

ネットで読んだ映画評に「野戦に長けたトーリンは、かつてのアラゴルンを思い出させる」というのがあったけれども、王国の伝統と再興と世継ぎの意識の強さから言ったら、トーリンはむしろLOTRのボロミアなのでは?と私は思います。

LOTRのボロミアは、ミナス・ティリスの執政の世継ぎの意識が強くて、原作よりも強く「王の帰還」の夢を抱いている。
今年の秋だったかにNHK-BSでLOTRを放映してくれて、久し振りに見たのですが、ボロミアがロスロリアンで、そしていまわの際にアラゴルンに語る「ミナス・ティリスに王が戻る夢」、
これ2002年にLOTRの第一作を見た時より、2004年の第三作で実際にミナス・ティリスの白の都のビジュアルを目にした後で、もう一度見た方が、ボロミアがあの時に語っていた夢が、より良くわかることに気づきました。

今回、ホビットの製作に当たって、同じことに気づいた人がいるのかどうかわかりませんが、「ホビット」第一部の冒頭では、失われる前のドワーフ王国の栄華、滅亡のいきさつがヴィジュアルできちんと描かれます。
ゆえにトーリンが王国再興の夢を語る時、それがよりリアルに感じられる仕掛けになっている。

そんなことを、つらつら考えていて、ハッと気がついた。
ドワーフ軍団みたいなの、どっかで見た気がしてたけど、これってシャープの小隊じゃない(爆)!
火を囲んで野宿して唄なんか歌っちゃって、どこかで見たって、こういうことね(苦笑、苦笑)。

今回もし2回目に行けたら、3Dよりも吹き替え版に行ってみたい。
日本語は時代言葉がありますから、あぁいう時代モノのファンタジーはそういうセリフが合う…と、LOTRのセオデン王の出陣の時に、つくづくと思ったのでした。

でも私はほかにももう一つ、前売りを買ってしまっている映画があるので、2回目いけるかどうか。
もう一つ…はカエル野郎(フランス人役)のラッセル(レ・ミゼ)ではなくってね、こちら、

もうひとりのシェイクスピア
http://shakespeare-movie.com/
エリザベス一世時代のロンドンをVFXで再現というのに惹かれているのですが、どんなものでしょう?

このホームページ、明日もクリスマス更新があります。お楽しみに。


追記)「ホビット」パンフレットのキャスト紹介の、茶のラダガスト(シルヴェスター・マッコイ)のところに、
「1987-89年に7代目のドクターを演じた超人気TVシリーズ「ドクター・フー」でよく知られ、96年には8代目ドクターのポール・マッギャンと共演した」と書いてあるんですが、マッギャン→マッガンですね。しかしいきなりポール・マッガンと言われても、わかる日本人がどれだけいるのかしらん?


2012年12月23日(日)