HOME ≪ 前日へ 航海日誌一覧 最新の日誌 翌日へ ≫

Ship


Sail ho!
Tohko HAYAMA
ご連絡は下記へ
郵便船

  



Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ツバメ号とアマゾン号

岩波少年文庫の7月の新刊として、アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」文庫版が復刊されました。
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jidou/

カバーコピーが「夏の光の中、帆船は進む」
夏休みの始まりの、海の日にふさわしい「ひとこと」なのではと思います。

このシリーズは、イギリスの児童文学で、子供たちの夏休みの冒険を描いたもの。
リンドグレーンの「やかまし村」や「カッレくん」のシリーズ、などと同じく、子供たちを主人公とした冒険小説ですが、
なぜこのホームページでご紹介するかと言うと、このシリーズ、子供たちがヨットを駆使して冒険をくりひろげる「海洋冒険小説」だからです。
1巻目と2巻目で主人公たちが帆走するのは大きな湖ですが、3巻目からは船もスクーナーになって、海に出ますよ。

このシリーズは今の私の趣味の原点になっています。
12才(小学6年生)でこの本を読んでいなかったら、たぶん私は大人になってから海洋小説を読むこともなかっただろうし、このホームページを開くようなこともなかったんじゃないかな?と。

この少年文庫版、少しずつ再読していますが、いま読み直して驚くのは、「昔は本当にわかってなかったなぁ」ということです。
あの頃は、ヨットのことも、イギリスの海の故事も、なんにも知らなくて、
ハリヤードってなに? ドレイク船長って誰? ジョン・シルバーって?渡り板って何のこと?
同い年の筈なのに、もうヨットに乗れて、子供だけでキャンプができて、海や歴史のいろいろな話を知っている物語の主人公たちを憧れの目で追いながら、こういう風に自分たちだけでキャンプができて船が走らせられたらぃぃなぁと思っていた。

それから30年以上の年月がたって、今あらためてこの本を手にとると、
ハリヤードは帆を揚げるロープ(海洋小説で揚帆索と書いてハリヤードとルビふってあるアレね)だってわかるし、ドレイクはエリザベス一世時代の船乗りで海賊(バッカニア)だし、ジョン・シルバーは滅茶苦茶かっこいい素敵な一本足の海賊(パイレーツ)だとテレビアニメの「宝島」を見て知った。
渡り板は…これホンモノを見たいのはつい最近、ジョニー・デップの「パイレーツ・オブ・カリビアン」ですよ。最初にランサムの本を読んでから、ゆうに30年はたってしまってましたね。

主人公のこどもたちが歌っていた「スパニッシュ・レィディ」の歌、今は私も歌えるし(「ホラムは本当に良い声をしている@オーブリー艦長」)
彼らが言ってたリベンジ号の話も、アレクサンダー・フラートンの海洋小説で読んだわ。

大学で山のサークルに入ってたから、自分たちだけでテントかついで山で泊まるってのも経験してるし、
海星の1日体験航海で、いちおう、帆船に乗るってのも経験させていただいた。

別に、12才の時の憧れを実現しよう!と意識してやってきたわけじゃないんです。
それを仕事にしたわけでもない。
でも大人になって自然と海洋冒険小説にはまったのは、やっぱり海洋冒険が好きだったから、大人向けのはちょっと殺伐としていても面白かった(これ、女性にしたら珍しい感性かもしれないですけど)。

ただ、面白そうだなぁ、やってみたいなぁ、好きだなぁということを、本業の合間合間にちょこちょこやってきたら、30年もたつうちに、むかし憧れていた知識が知らないうちに手に入っていたり、彼らの体験の一部を共有できる自分になっていた…ってことに、今回の再読で気がついて、なんだかびっくりしてしまいました。

そしてやっと、物語のほぼ全てが(知識の上では)理解できる自分にもなっていました。
はじめてこの物語を読んだ小学校6年生の時、私こどもたちの話に出てくる「エリザベス女王」を今のエリザベス二世だと間違えていたことに気づきました。
だってドレイク船長が誰だかわからないし、世界史も「ベルサイユのばら」くらいしか知らないのだから(そう、まだ「7つの黄金卿」も「サラディナーサ」も無かったし(笑)…注:これらはエリザベス一世朝を舞台にした歴史少女漫画)無理ないことだけれども。

物語の舞台となる湖も、山中湖あたりをベースに想像していて、イギリスはもっと北で植生も違うのだから、日本だったら屈斜路湖あたりを考えなければいけなかったんですね。
ノーフォーク湖沼地方は、北部湖沼地方と同じようなところだと思っていたけれど、ノーフォークの湖沼はbroadsで、北部はlakesなので、ノーフォークってむしろ、ラミジが育ったケント州の沼地帯(broads)みたいなところなんですね。
今の自分の知識と経験を重ねあわせながら再読すると、「あ、これこうだったのか!」って納得したり、誤解に気づいたりすることしきり。

やっぱりこの物語って私の原点なんだなぁと、つくづく思いました。
なんだか長い長い旅をして、故郷に帰ってきたら昔と変わってました…に近いような気分です。
とても個人的な感想で恐縮ですけれども。


2010年07月19日(月)