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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
テメレアはサプライズから

「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督が映画化権を獲得し、現在話題となっているナポレオン戦争ドラゴン・ファンタジー「国王陛下の竜テメレア」、
デビュー作となるこの小説で一躍ベストセラー作家となった作者ナオミ・ノヴィックがこの作品を書くきっかけとなったのは、実は「マスター・アンド・コマンダー」だった。

…という記事がニューヨーク・タイムズ紙10月11日の「books」に載っておりました。
http://www.nytimes.com/2006/10/11/books/11novi.html?ex=1161230400&en=3671b7ef032f0afc&ei=5070&emc=eta1
(上記URLは特定日数が経過するとアクセス出来なくなる可能性がありますのでご注意)。

記事のサブタイトルは「Geek Girl Makes Good」…直訳するとやっぱり「おたく娘、成功をおさめる」という感じでしょうか?
インタビューに答えてノヴィック自身「I'm a big geek and a fangirl」だと認めてますし、
geekというのは、マニアとか熱狂的なファンとかこだわりのある人とか。ピーター・ジャクソン監督はKing of Geekとして自他ともに認められていますが、このKing of Geekの日本語訳が「おたく帝王」になっていて、私はひっくりかえった記憶があります。

それはともあれ、
「国王陛下の竜…」の作者ナオミ・ノヴィックは2003年、映画「マスター・アンド・コマンダー」を見る為におびただしい回数、映画館に通い、その後パトリック・オブライアンのM&Cシリーズ第1巻を初めて手にとったが、2週間後、彼女は全20巻のシリーズすべてを読破してしまった。
「白状すると、ウィル・ローレンス艦長にはラッセル・クロウのイメージがあるの。あまりにも何回も映画を見たから」
と彼女はインタビュアーに語っています。

ノヴィックが第一作の執筆にとりかかったのは2004年の1月(注:M&Cの全米公開は2003年11月〜12月)、後に第1巻となるこの作品を2ヶ月で書き上げ、SF出版の老舗デル・レイ社に送ったところ、デル・レイは直ちに続編を執筆するよう、うながしました。

11月に映画を見て、2週間でオブライアン20巻を読破して、1月には執筆を初めて3月にはデビュー作が出版社に。
そしてノヴィックは、コンピュータ・ゲームの設計者から、作家へと転身します。

ノヴィックは「指輪物語」に夢中になるファンタジー好きの少女だったそうです。「いわゆる専門馬鹿タイプ、成績は良いのだけれど図書館に閉じこもっているような」と、自らのハイスクール時代を振り返ります。
やがて彼女はジェーン・オースティンの虜となり、ブラウン大学で英文学を学びますが、卒業後、針路を変更しコロンビア大学でコンピュータ工学を専攻、コンピュータ・ゲームの設計者となりました。
いやその、ブラウンもコロンビアもアイビーリーグの超名門校でしょう? なんかこれってとんでもない経歴ですよね、めちゃくちゃ頭が良いというか。

でもそんな大学時代、実は彼女は他のファンタジー作家のキャラクターを主人公にしたファンフィクションを書いていたのだそうです。
「今読むとはずかしくなるような初期作品。もちろんオリジナル作品の著作権の問題があるから、このファンフィクが公になることはありえないわ。ありがたいことに」
…いったい誰の何の作品のファンフィクションを書いてたんでしょう?…ファンタジーファンでもある私としては気になります。

さて、このような経緯で誕生した「国王陛下の竜テメレア」が、ピーター・ジャクソンの下で映画化されるというわけです。
…なんだかちょっとコワイような、と思うのは私だけでしょうか?
竜にかかわった為に軍歴を失うローレンス艦長を演じるのは誰になるのか?
でも幾ら原作者のイメージがあるからと言っても、出来たらやっぱり、これに限ってラッセルは勘弁…というのが私の本音です。


2006年10月15日(日)