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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
司馬遼太郎とホーンブロワー〔Ireland1〕

司馬遼太郎の「街道をゆく」にホーンブロワーの話が出てくるのをご存じですか?
私は先週まで全く知らなかったのですけれども。

アイルランド旅行から帰ってきてから司馬遼太郎「街道をゆ・愛蘭土紀行」を読んでいます。
これは、M&Cのみならず、英国・アイルランド絡みの歴史小説お好きな方には是非おすすめの1冊です。
両国の複雑な関係が、いわゆる司馬史観の切り口で見事に分析されていて、いろいろ考えさせられます。

ホーンブロワーの話が出てくるのは、朝日文庫版では31巻「愛蘭土紀行�供�の114ページ、アラン島のくだり、「岩盤の原」という章です。
アラン島の厳しい自然と島を取り巻く荒れた海、その海にカラハというこの地方独特の小舟で乗り出すこの島の人々と、その暮らしを考察した章。
実際にアラン島を訪れ、その険しい自然の象徴でもある岩盤の原を横切りつつ、司馬氏は突然ホーンブロワーの話を思い出す。

それはレナウン号時代の話、と言っても「スペイン要塞…」ではなく「ホーンブロワーの誕生」に収められた「マックール未亡人の秘密」という短編です。
《(17)98年にアイルランドから脱出するいちばん手っとり早い、というより唯一の途は、軍隊に志願することだった」「あの秋には百人もの水兵が確保できたよ」》
というくだりが引用されます。
司馬氏は「坂の上の雲」執筆に際し、書斎の中で海を知ろうとして多くの書物を読まれたそうです。
ところが、どういう書物よりも、フォレスターの「ホーンブロワー」からもっとも多くのものを教わった、とのこと。


小説を読むうちに、私たちが知らず知らず学んでしまうことは数多くあります。
海洋小説であれば、海のこと、彼らの抱く価値観のこと、
イングランドとアイルランド、もしくはスコットランドとの微妙な問題、
英国の階級社会のこと、

これはとても感覚的なものなのですが、イングランドやアイルランドを旅して得るものは、私の場合、ガイドブックと歴史書を熟読して他の国、たとえばドイツを旅行するより多いように思います。
歴史書に書いてある通りのことを目で見て確認して得ることよりも、小説で読んだことを実地に体感して感じとることの方がぴんとくるところが多い。

今回のアイルランド旅行でも、タラの丘に行った時、「ここで1798年の反乱者たちが処刑されたが、ようやく村人たちが3日目に死体を埋葬してその上に目立たぬ石を建てた」という説明を受けたのですが、例えばこのホーンブロワーの話とか、それからM&C1巻のスティーブンとディロンの1798年叛乱の述懐の話とかが思い出されて、目立たぬ石を建てねばならなかった当時の空気のようなものが実感として伝わってくるような気がしました。

小説を読んでいて本当に良かったなぁと実感する瞬間です。

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アイルランド(Ireland)報告はこんな感じで、毎週少しずつ、通常ニュースに混ぜてupできればと思っています。
〔Ireland1〕のように後ろに通し番号を振っておきます。


2006年09月22日(金)