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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「エニグマ」に航海長とマウァットを探せ

「M&C」のキャストは、以前に他の映画やドラマでの共演が多いようです。主役2人の「ビューティフル・マインド」は有名ですが、他のキャストにも幾つか共演作品があります。
日本国内で放映または公開があったのは、アレン航海長(ロバート・パフ)とマウァット海尉(エドワード・ウッドオール)の「エニグマ」、ハワード海兵隊長(クリス・ラーキン)とホラー掌帆長(イアン・マーサー)の「シャクルトン」。
ぜひ見てみたいのは、プリングス副長(ジェームズ・ダーシー)とホラム候補生(リー・イングルビー)と老水兵プレイス(ジョージ・イネス)のTVドラマ「ニコラス・ニックルビー」なのですが、これ原作ディケンズだし、NHKBSあたりで放映していただけませんでしょうかねぇ?

もしWOWOWの受信できる方がいらっしゃいましたら、明日5月3日(月)20:00〜22:00は、「エニグマ」の放映があります。
航海長とマウアットに再会できますよ。

このイギリス映画、去年の6月頃の公開だったのですが、地味だったせいかお客の入りが良くなく、のんびり構えていたところ3週間で上映終了と聞いて、慌ててウィークデーに無理矢理仕事を切り上げて見に行く羽目になりました。
そりゃ確かにハリウッド映画に比べたら地味ですけど、イギリスのスパイ小説ってこの地味さが本来ではありません?
その意味では正統派の、第二次大戦を舞台にした英国情報戦争映画と言えましょう。…もっとも情報戦争と言ったところで主人公は暗号解析者ですし、殆どドンパチはありません。物語は「盗まれた情報」と「ドイツ軍の暗号」の2つの謎の解読を中心に進みます。
主人公の暗号解析者ジェリコにダグレイ・スコット、共に謎を解く暗号解析センターの同僚ヘスターにケイト・ウィンスレット。

ストーリーの方は実際に映画を見ていただくとして、我らが航海長と二等海尉殿の出番はというと、
航海長すなわちロバート・パフが演じるのは、主人公が勤務するブレッチレー暗号解析所の所長です。いわば施設の最高責任者ですが、いかにもお役人で暗号解析の本質が良くわかっていない…ために主人公とは方法論その他で対立します。
冒頭でブレッチレーに戻って来た主人公が、一番最初に案内されるのが所長の部屋なので、すぐにわかります。

二等海尉ことエドワード・ウッドオールは、本当に1シーンだけの役なんですが、「M&C」を思うと笑えます。
暗号解析には特殊な才能を必要とするため、解析者には奇人変人や危険思想の持ち主なども多かったのですが、彼らの才能を活かして仕事ができるように、解析センターではかなり自由にさせていました。
所長室で挨拶をすませた主人公が、センターの前庭に出ると、海軍の公用車が滑り込んできて、司令部の提督が降り立ちます。
急にドイツ軍の暗号が変更され、これが解読できず、つぎつぎと艦船が撃沈されたため、窮地に陥った海軍のお偉いさんが、解析センターの尻を叩きに来たのです。
そこへ暗号解析者の一人が通りかかるのですが、この男、海軍の軍帽の上からマフラーを巻くという妙な格好をして、へらへら歩いているのですね。
海軍の軍帽を被った奴が、敬礼もせずに提督の前をへらへら通り過ぎる…気の毒なネイグルの例を引くまでもなく、提督にとってはおよそ許し難い不敬罪なのですが、怒鳴りつけられてもマフラーの男は悪びれもせず、にこっと笑って敬礼の真似をして、そのまんま行ってしまう。実にブレッチレーらしいエピソードなのですが、…この変人暗号解析者を演じているのが二等海尉殿ことエドワード・ウッドオールです。
天然「にっこり」なので、提督も毒気を抜かれて立ち往生。考えてみればネイグルもこの手を使えば良かったのかも(…ってちょっと想像するとこわいですけど)。
そうそう、映画「M&C」には出てきませんが、原作10巻に登場するマーティン牧師、私のイメージはこの「エニグマ」に主演したダグレイ・スコットです。もうちょっと明るくて若々しい雰囲気で。

また、昨年の5月1日、2日にNHKBSで放映のあった「シャクルトン」の録画ビデオも見直してみました。
これは、20世紀初頭に行われたサー・アーネスト・シャクルトンの南極探検時の実話をもとにした英国の長編TVドラマで、主演すなわちシャクルトン役はケネス・ブラナー。
我等が海兵隊長クリス・ラーキンの役は、探検隊本隊に同行する画家マーストン。画家ではありますが探検家としてはベテラン、以前にもシャクルトンとともに過酷な探検旅行を経験しており、危険に遭遇しても慌てず騒がず何時でも何処でもユーモアを忘れないキャラクター。常にパイプを加えているので、それを頼りに探してみてください。
これに対して、掌帆長イアン・マーサーはちょっと探しにくい。探検隊を南極海で運ぶ汽走帆船エンデュアランス号の機関員役なのですが、まず機関担当なので、ほとんど甲板に出てこない。船員で目立つのは、その役目上、船長、航海士、船大工、甲板長…という順番で、これといった特徴もないんですね。探し方…こまったなぁ、やはり目でしょうか? もしくはいちばん地味な人…とか。
このエンデュアランス号、氷に閉じこめられ脱出不可能になり、一行は南極海を漂流することになります。
クリス・ラーキンは、この「シャクルトン」の撮影後すぐに「M&C」の現場に来たとかで、何処かのインタビューで「どうして私は、南の海で船に閉じこめられるような役ばかりなんだ」と嘆いていたとか。

ところでNHKでの放映時、吹替えでシャクルトン役を演じたのは磯部勉、これが大熱演でした。
「シャクルトン」の日本語版は日本語版として単なる吹替え以上の価値のある芝居だと思っています。
ときどきあるんですよね。日本語の抑揚で耳に残る名演技って。
最初にTVの洋画劇場で見た吹替キャストでシーンが定着してしまい、後から出たDVDで声のキャストが変わってしまうと駄目になってしまうほどの作品が。
最近のものでは、やはり「ロード・オブ・ザ・リング」の吹替版が秀逸。これは劇場用の吹替がそのままDVDにもTVにもなっていますが、本当に丁寧に作られていると感心します。
どこかの掲示板で読んだのですが、「M&C」予告編のジャックの声は磯部勉とか?…願わくば、個人的には、DVDの吹替えのジャックは磯部氏希望。声の高さや質も、それほどラッセル・クロウと違わないので(磯部氏の方がちょっと高いけど)、違和感も少ないのではと思うのですが。


2004年05月02日(日)