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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「M&C」の続編はDVDの売上高次第

4月21日の米日刊紙USA Today紙に、映画業界のDVDセールスに関する記事が掲載され、この中でFOX社の関係者が初めて、「M&C」の続編の可能性について、言及しました。
ひとことで言ってしまうと、「続編が製作されるか否かはDVDの売り上げ次第」のようなのですが。
この記事についてご紹介いたします。

DVDs can push big-money films into profitability

高額な制作費のかかるハリウッド大作は、昨今、DVDの売上に期待をかけるようになっている。
DVDの場合、ビデオとは異なり、人々はレンタルより購入に動く。DVDは映画経済を完全に変えてしまった。
いまや映画会社の収入の半分は、DVD売上によるものだ。
「ロード・オブ・ザ・リング:旅の仲間」の全米興行収入は3億1400万ドルだがDVD売上は4億9800万ドル。「ファインディング・ニモ」は興行収入が3億4000万ドルでDVD売上が3億7000万ドル。

この現象を、「消費者は映画館に足を運ぶ代わりにDVDに金を払っている」、とDVD情報誌の編集長は分析する。

FOXホームエンタティメント社(DVD発売元)のマイク・ダン社長は、DVDのおかげで、制作費の高額な大作は、10年前より作りやすくなった、と語る。興行収入にDVD売上の上乗せが期待できるからだ。

DVD売上は、続編の可能性をも開くものだ。「キル・ビルVol.1」のDVD売上は先週、劇場公開時の興行収入額をうわまわり、更に先週から公開された「キル・ビルVol.2」の観客拡大にも役立っている。

ラッセル・クロウ演じるジャック・オーブリーの続編について、FOX社のマイク・ダン氏は、「FOX社では、今夏の終わり頃、全世界の興行収入およびDVD売上額を見た上で、再び航海に乗り出すかどうか決定する予定だ」と語っている。


…ということで、続編が制作されるか否かはDVDの売上次第ということのようです。
また仮に夏に続編が決まったとしても、実際に動き出すまでにはさらに時間がかかるでしょう。ラッセル・クロウは既に次作の撮影に入っていますし、ピーター・ウィアー監督の次回作も、ワーナー・ブラザース製作の「Pattern Recognition」に決まりそうです。これはウィリアム・ギブスンが昨年発表した小説を原作としたネット社会のスリラーとのことで、どちらかというと今度は「トルーマンショー」的な映画になるのでしょうか?

そのようなわけで、夏頃までは気をつけて、今後もアメリカのネット情報を当たろうと思っていますので、期待はせずにお待ちくださいますよう。

その他最近の記事としては、

London Times 2004.04.23に、英国の最近の子役事情に関する記事が掲載され、この中に「M&C」の話が紹介されています。

英国では最近、ふつうの家庭のふつうの子供たちが、子役として映画に出演し驚くべき演技力を発揮している。
「ハリー・ポッター」のロンとハーマイオニー、ルパート・グリントとエマ・ワトソンは、学校での演劇経験しか無かった。
「M&C」のピーター・ウィアー監督は、児童劇団で演技を学んだ子供ではなく、自然な演技の出来る子役を探しに、学校を訪ね歩いた。
マックス・パーキスも学校での演劇経験しかなかった。
映画製作にもショービジネスにも無縁だったパーキスの両親は、しかし、映画出演は良い人生経験になるとして、息子をメキシコの撮影現場に送り出した。
映画の撮影終了後、英国の寄宿学校に戻ったパーキスのもとには2件の出演依頼が持ち込まれたが、学業を優先するとしてこれらをしりぞけている。
子役とは、幼い頃から児童劇団に入ったりモデルの仕事をしている子供たちだけではなく、ふつうの子供にもふつうに訪れるものなのだ。また中流家庭でも習い事のひとつとして子供を児童劇団に入れる親たちがいる。大人になって他の職業に就くことになっても、人前でのプレゼンテーション能力は求められる、児童劇団での経験が別の形で将来に役立つであると考えられているのだ。

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そういえば先日「ピーターパン」を見に行きましたが、この映画に登場するウェンディ、ジョン、マイケルのダーリング姉弟は、やはり学校演劇の経験しかないふつうの子供たちから選ばれたそうです。

でも未だに「M&C」後遺症をひきずる私は、妙なところでひっかかり…フック船長のジョリー・ロジャー号は12ノットで走るっていうんですけど、それってサプライズ号の最大船速じゃありませんか?…ジョリー・ロジャー号のあの船体で、いくらなんでもこれは無理だと思いません? でもジェイソン・アイザックス演じるフック船長はとても素敵なのでありました。

それにしても最後に「M&C」を見終わって1週間というのに、もう寂しい…とか思ってしまっている私。
いずれDVDが来るとは言っても、やはり映画館の大迫力とドキドキ感は、DVDでは味わえないもの。
「オーシャン・オブ・ファイアー」を見に行って、ブエナビスタ・インターナショナルの文字が画面に出たあと、「海が出てこない〜」…と悲しくなってしまったり…なにを聞き分けのないことを言っているんだか。

でも「オーシャン・オブ・ファイアー」ってある意味、「ラストサムライ」と全く同じメッセージを伝えているんですね。
第7騎兵隊に象徴される、西部に躍進するアメリカ(白人社会)に違和感を感じる主人公が、海外に行き、異文化に触れそれを理解する。
ただ、「ラストサムライ」のオルグレンの場合は受容一方で日本に溶け込んでしまったけれど、「オーシャン・オブ・ファイアー」のフランク・ホプキンスの場合は、馬と遊牧の民の文化を媒介に、アラブ社会の一部を変えると同時に、自分自身も母につながるネイティブ・アメリカンの文化を見直して変化していく…という図式で、異文化交流という意味ではこちらの方が面白かったと思います。
もっともラストサムライの描く日本歴史と実際の歴史にズレがあるように、「オーシャン・オブ・ファイアー」で描かれていたベドウィンの社会と文化がどこまで当時の現実に即していたものかはわかりませんけれど。
もっとも、ホプキンスとベドウィンたちの価値観の違いの一つに、「運命は自分の意思で変えられるか否か」というものがあり、これは実はシェカール・カプール監督が「サハラに舞う羽根」で描こうとした東洋と西洋の文化的差違(西洋人は運命は意思の力で切り開けると思っている)にも通じるものでもあるので、その意味では普遍的テーマなのかなぁと思ったりもします。
いずれにせよ「オレ様のスタンダードがグローバル・スタンダード」な今のアメリカには、こういう映画は貴重なのではないでしょうか?

ついでにもう一つ、映画のおすすめ。
これは大都市圏だけのミニシアター公開なので、ご覧になれない方には申し訳ないのですが、「M&C」とアカデミー賞で撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞を競った
「真珠の耳飾りの少女」
私がこのHPでこんなこと言うのは何かもしれませんが、私やっぱりアカデミー撮影賞は「真珠の耳飾りの少女」だと思う。
映像と照明…光の具合が本当に綺麗なんですよ。さすがフェルメールの絵画を描いた映画。
そして、17世紀のオランダ・デルフトの町屋の生活を克明に描いていて…どのように日常生活をおくり、食事を作り洗濯をしていたか…がそれこそ「M&C」の船上生活のように正確に再現されています。
ストーリーそのものは本当に淡々と進むのですが、深い味わいのある映画です。


2004年04月30日(金)