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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
CNN, BBCそしてNHK

CNNテレビでは、アカデミー賞特集として、ノミネート対象となった監督、出演者など関係者を呼び、インタビュー形式の特集番組を放映しました。
この特集番組のスクリプトが下記です。

CNNアカデミー賞特集 Larry King Live

M&C関係のゲストは、ピーター・ウィアー監督とポール・ベタニー。

キャストについて:ベタニーは昔ながらの伝統的な方法でこの役を得た、と答えています。つまりはオーディションということ。相変わらずジョークが冴えていまして、このあたりの微妙なハズシ加減は、日本語に訳出しようとすると全訳になってしまうので、すみませんが原文をお読みください。
主役のオーブリーにラッセル・クロウをキャスティングしたことについてウィアー監督は、当初から念頭にはクロウしかなく、もしオファーを受けてもらえなかった時には、墓場から代役を引っ張りださなければならないところだった(代役=リチャード・バートンのことです。ゆえに墓場からの登場というわけ)と答えています。

撮影について:200年前を再現した衣装を着て撮影をするのは、しんどい…ではなく、実のところ大変名誉なことだと思っている、とベタニーは答えています。「長期間ストレスの多い撮影作業を続けていれば、イライラするようなことがあるものだが、本当に才能があり、ゆかいで、面白い人たちと仕事をしていれば、そんな連中とずっと一緒にいると…地獄のような毎日だよ」
…もぉこの人のジョーク感覚って。

「実際、撮影のほとんどはメキシコの撮影所の屋外プールのセットで行われた、言うなれば紅茶茶碗の中の嵐(storm in the teacup=から騒ぎのこと)なんだが、とてもそうは見えないだろう?」とウィアー監督。
聞き手のキング氏が、「ええ、とても信じられません」とあいづちをうつ。
「全ては本当にCGIのおかげだ、それに音響スタッフと」というウィアー監督に、ベタニーも「我々は実際にホーン岬でロケしたんだ、と嘘をつきたくなるような出来」と言い添えています。

ラッセル・クロウとの再共演について、ベタニーは「一緒に仕事をするのは好きだよ。うまくやっていけるし、彼は撮影前にあまり細かく段取りをしない、だからこちらにも余地がある」そしてウィアー監督については、(自然であるがままの)「天然の(organic)な」人だと評する。「この言葉で上手く表現できているかわからないけれど、監督は実際にそういう人なんだ。一緒に作り上げていける人だ」

アカデミー賞ノミネートについて、ウィアー監督は「シドニーにいて、電話で知らされた。10部門ノミネートだと聞いたから、当然、ラッセルとポールも含まれているのだと思っていたのに」と残念そうでした。

この番組、他にはベン・キングスレーとショーレイ・アグダシュルー、イアン・マッケランとショーン・アスティン、マーシア・ゲイ・ハーデン、パトリシア・クラークソンが出演しています。


またBBCもアカデミー監督賞のページを作成しているようです(トップページから「Best Director」をクリック)。
例によって、画像ファイルを開けないナローバンドの私なので、画面上に出ている紹介文書のみご紹介しますと、
ウィアー監督はこの映画のためにCGIの何たるかを学ぶ必要があり、この年齢になって再び学校に通うことになった。CGIの技術者たちが実際に何をやっているのか理解しなければ要点をつかむことは出来ないと思い、CGIの勉強をした。が、新しいことを学ぶのは大変だ、と語っています。


さてそのCGIですが、実は「M&C」には750もの特殊視覚効果撮影ショットがあります。
…と言っても、おそらく実際に映画をご覧になると、とても750なんて信じられない!と思われると思います。
アカデミー賞ノミネートの時に、アメリカの日刊紙に「特殊効果撮影賞に、何故M&Cがノミネートされて、マトリックスがノミネートされないのか全く理解に苦しむ」という意見が載っていましたが、実はCGIに見えないところが、M&CのCGIのミソなんです。
このM&Cの特殊効果撮影に関する記事がこちら。

The Effects Mastery of Master and Commander : The Far Side of the World

M&Cには、750の特殊視覚効果ショットがある。これらCG、ミニチュア模型、生映像、全面的視覚効果映像(full-scale vfx)の絶妙な組み合わせによるものだ。
これらを担当したのが、Asylum、Industrial Light & Magic、およびWETAである。
特殊効果撮影監督のネイザン・マギネスは語る。「この映画は決してデジタルな印象を与えてはいけない。それがピーター・ウィアー監督にとって最も大事なことだった。自然のままに見えなければいけないんだ」

マギネスは当初、コンピュータ・グラフィックスで自然な波を描き出そうとしたが、どうにも上手くいかなかった。
そこで最後に実際の映像から船を抜いて、そこにCGの船を入れ込んでみたところ、それが最善の策であるように思えた。
FOX社ではセカンドユニットの撮影班を、当時の復元船エンデバー号に乗り組ませ、実際にホーン岬をまわる航海に送り出した。
幸いなことに撮影班は荒天にめぐまれ、素晴らしい海の映像を撮影することが出来た。
この映像、メキシコのプールに据えられた原寸大セット、WETAの作成した帆船模型、Asylumの作成したCG船、の各ピースを組み上げて、壮大な海の映像を作り出したというわけだ。


今度の月曜日23日夜、NHK総合で放映の「英語でしゃべらナイト」で「M&C」が紹介されるという情報があります。
未確認のため、はっきりしたことがわかりませんが、いちおうお知らせまで。


2004年02月21日(土)