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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
本日は聖ビンセントの日

2月14日は、世間一般では聖バレンタインの日ですが、海洋小説ファンには聖ビンセントの日でしょう。
本日2月14日は1797年の聖ビンセント岬沖の海戦から207年目に当たります。

ジャックの時代の英仏戦争(1793〜1801年フランス革命戦争、1803〜1815年ナポレオン戦争)での海における戦いには、有名な海戦が5つ(聖ビンセント、カンパーダウン、ナイル、コペンハーゲン、トラファルガー)ありますが、スペインの聖ビンセント岬(スペイン語ではサン・ビサンテ)沖の海戦はそのうち最も早い時期のものです。

2003年10月21日の日記でご紹介した「ナポレオン時代の海洋小説主人公たちの経歴一覧(Careers of Fictional Napoleonic Sailors)」によれば、実はジャック・オーブリーは戦列艦オライオン(Olion)号の三等海尉として、この海戦に関わっています。
また彼は1798年のナイルの海戦にも参戦しており、映画「マスター・アンド・コマンダー」で礼装時(金モールの派手な方の軍服着用時)に彼が下げている勲章は、ナイル海戦の戦功賞だと思われます。
もっともパトリック・オブライアンの小説1巻「新鋭艦長、戦乱の海へ」は1800年から始まるので、それ以前のジャックやスティーブンの活躍については、小説中での回想として語られるのみです。

聖ビンセント岬沖の海戦は、スペイン艦隊とイギリス艦隊の決戦です。
スペインは前年の1796年にフランスと同盟条約を結び、イギリスと敵対することになりました。
1797年2月、フランス・バタビア(オランダ)艦隊と合流しようとしたスペイン艦隊を、イギリス艦隊はスペインのサン・ビサンテ岬沖で迎撃します。
この海戦について、海事史上で特筆されるのは戦隊司令官(Commodore)ネルソンの活躍でしょう。戦況に臨機応変に対応したネルソンは、総司令官サー・ジョン・ジャービス提督の命令には背く形になるものの、スペイン艦2艦に斬り込み拿捕、イギリスを勝利に導きました。
この戦功によりジャービス提督は伯爵号を授けられてセント・ビンセント卿となり、ネルソンはナイトの称号を得て海軍少将に昇進します。

この前後、および聖ビンセント岬沖海戦を舞台にした小説がダドリ・ポープのラミジ艦長シリーズ2巻「岬に吹く風」。歴史的事実を巧みに織り込んだフィクションで、ラミジ自身がカッター艦の指揮官として、海戦を間近に経験する(…苦笑)設定になっています。
ところで今回この「岬に…」を読んでいて気づいたのですが、この小説の最後でラミジがイギリスに帰るために便乗させてもらう艦って、フリゲート艦のライブリー号なんですね。これってジャックが6年後(2巻の終わりから3巻の冒頭にかけて)に一時的に艦長を務めていた艦です(スティーブンがミツバチを持ち込んだ艦…とも言う)。ライブリー号は実在艦のようなので、同時代の別々の小説に登場しても不思議はないのですが、以前にラミジを読んだ時には気づきませんでした。

前述の「経歴一覧」によれば、オーブリーとラミジ以外にこの海戦にかかわっている海洋小説の主人公はいないようです(確認をとれない人もいますので断言できませんが)。ドリンクウォーターとデランシーは別の海域にいましたし、ボライソーがユーリアラス号でジブラルタルに到着するのは海戦後に当たるこの年の春です。ホーンブロワーはこの時期、スペインで捕虜になっていました(1巻、TVドラマでは第一シリーズ第3話)。考えてみると彼は、イギリスがスペイン艦隊を打ち負かした時にスペインで捕虜になっていたことになるのですね。
余談ながら、1797年というとアイルランド蜂起(1798年)の前年ですから、この時期スティ−ブンは、まだ反英闘争のために奔走していたことになります。

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さて、昨日の日記ではアメリカとイギリスのDVD発売日をお伝えしましたが、日本でのDVD発売は7月になる見込みです。
ネタもとは、「日経エンタティメント3月号増刊ムービーデラックス」83ページ。4〜8月の主要DVD発売予定が載っています。
この増刊、上映初日の銀座の映画館の初回上映には必ず関係者が様子を見に来る(「M&C」の場合は日劇1でしょうか?)業界慣行とか、映画館の系列、予告編CM製作会社の話しとか業界の裏話的な記事もあり、なかなか面白い1冊です。

昨日13日〜明日15日まで、東京・城南地区ではアイリッシュ・パブ4店が協力してアイリッシュ・トラッド・フェスティバルが行われており、アイルランドから来日した演奏家によるライブ・セッションを聴くことができます。
昨日は友人と大崎のパブ シャノンズに行ったのですが、すごい人で立錐の余地もなく、店の中に入ることができなくて、外に漏れてくるフィドルの音だけをかすかに聴いて撤退。
今日はアイリッシュ・フルートを狙って五反田のグラフトンへ。やはり立錐の余地のない状態だったのですが、一人だったので上手いことぐにぐにっと店の奥にもぐりこんで演奏を堪能してきました。椅子席が足りないので、グラスを手に立ったまま拍子をとってる人やら、床どころか机の下に座りこむ人もいて、薄暗くて紫煙はただよっていて人がやたら多くて、みんなビールを飲んでるし…なんだか非番の時の下甲板(水兵居住区)みたい…って思ってしまいました。ラミジの部下にフルート吹きの四等海尉がいて、よく海の唄をフルートで水兵に聴かせてやってりしていましたが、きっとこんな感じだったのでしょう。
やっぱりフィドルに未練があるので、明日は天王洲アイルのラウンドストーンか大崎シャノンズのどちらかにリベンジしようかと思っています。
アイリッシュ・フェスの詳細はこちら


2004年02月14日(土)