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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年04月07日(月) --

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☆「おもちゃ文学」としての鉄腕アトム。

アトムはもともと、人間の労働力としてではなく、事故で死んでしまった
少年の身代わりとして造り出されました。
小さいとき、私はアトムの生みの親・天馬博士はなんて悪い人だろうと
思っていました。
息子の代わりに造ったロボットが、やがて自分の思い描く「息子」とは
違う事に気が付き(人間と違って成長しない)憎くなって捨ててしまう。
ひどい。アトムかわいそう。
(ちなみに父の蔵書の光文社カッパ・コミックスでした。)

少し大きくなったら(アトムじゃなくて私が)、天馬博士ってカッコいい、
と思うようになりました。(その当時は朝日ソノラマのサンコミックスで
出ているのを、おこづかいで買いました。父のカッパ・コミックスは
引っ越しで処分したらしい)
自らの冷たい仕打ちを悔いて、陰から秘かにアトムを支える、言わば
「名乗れぬ父親」。息子を失った悲しみに打ちひしがれ、
「二人めの息子」の大切さに気が付いたのはずっと後になってから
だったのでしょう。
だいたいアトムは機械で作られたお人形なのですから、捨てられる
リスクはとても大きいのです。

なんでかって?
誰よりも優しい心を持っているのに、本当の人間にはなれないアトムの
悲しみは「おもちゃ文学」の王道をゆくものではありませんか。
人間と同じようにお父さんお母さんが欲しい、人間のように「感動」する
心が欲しい、強いパワーも特別な能力も、全て自分のためではなく人間の
幸せのため。
おもちゃは一度捨てられてから自分の幸せをみつけるもの。

そんなけなげなお人形も、やがて愛情いっぱいのお爺さん、失礼、
お茶の水博士に出会い、人間の少年達にも自分達の仲間として受け入れて
もらいます。
手塚治虫先生はディズニーアニメ「ピノキオ」からロボット少年アトムの
インスピレーションを得た、とも言われています。(「ブラックジャック」が
人間の形を与えた少女「ピノコ」も「ピノキオ」から名前を貰っていますね。)
それならばなおさら間違いなく「鉄腕アトム」生誕の物語は、日本の誇る
「おもちゃ文学」なのでした。
(ナルシア)


「鉄腕アトム」1〜21巻 別巻1・2 
著者:手塚治虫/ 出版社:秋田書店 サンデーコミックス 
「鉄腕アトム」1〜15巻  著者:手塚治虫/ 出版社:光文社文庫


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