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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年07月04日(水) --

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『椰子・椰子』(1)

私の見る夢は結構おもしろい。 あんまりおもしろいので続きをもっと見ようと寝直して さらに滅多にないような夢を見たりする、幸せな質である。 これは折角だから書き残しておかなくてはと いつも思うのだが、もともと日記すらろくにつけられない ずぼらな性分なのでなかなか実行に至らない。

四十年以上も夢を書き付けた明恵上人は さすがにお偉い方だ、と拝んでしまう。 しかも、夢を夢らしい独特の手触りを残して 記すというのもなまなかな技ではない。 本邦きっての名文家、我らが内田百鬼園先生か 世界の奇才夢の図書館ルイス・ボルヘス館長か そのくらいの文才は欲しい、って無理でしょう。 第一私の夢は百鬼園先生のようなねばりつくような不安感や ボルヘス館長のような仄明るい喪失感みたいな 負に近い感情はなくてただ呑気におもしろい。 しかし不規則な睡眠をとる学生生活や 夜遊びする都会の勤め人生活を終えて 田舎で朝日にあたる健康的な生活を始めたら 残念な事に夢はあんまり見なくなった。

芥川賞受賞で川上弘美さんの作品を知った時、 なんだか気の合う文章だと思った。 目がさめているときに考えて書く 彼女の言うところの「うそばなし」でも この世のものではなさそうな妙な動物や もう死んでいる人が普通にやってきて 一緒にゴハン食べたりしているが、 新刊文庫の『椰子・椰子』は 最初から最後まで変なモノ達との とっぴょうしも無い日常をあっさりとつづった日記だ。 百鬼園の『東京日記』の不気味でないタイプというか。 巻末の対談を読んだらやっぱり「夢日記」がはじまりだという。 いいな川上さんおもしろい夢をみられて、 おもしろいおはなしが書けて。

しかも本文のレイアウトとイラストが やっぱりお気に入りの山口マオさんなので、 この本の話はもうちょっと続く。(ナルシア)


『椰子・椰子』 著:川上弘美 絵:山口マオ / 出版社:新潮文庫

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