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JIROの独断的日記
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2012年01月04日(水) 「『共謀罪』を国際公約…法相・民主に慎重論 5月創設に難航必至」←冗談じゃないよ。

◆記事:「共謀罪」を国際公約…法相・民主に慎重論 5月創設に難航必至(産経新聞 1月4日(水)7時55分配信)

国際テロなど組織犯罪を防止するため、政府が5月末までに「共謀罪」を創設する方針を国際機関などに伝達したことが3日、分かった。

中国によるサイバー攻撃やアルカーイダなどテロリスト集団の重大犯罪の実行前に、共謀段階で処罰するのが狙い。

だが、民主党内には共謀罪に対する慎重・反対論が根強く、国内での調整難航は必至だ。

共謀罪の創設は、平成12年11月に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」が求める法整備の一環。

15年9月に発効した条約は「長期4年以上の自由を剥奪する刑またはこれより重い刑を科すことができる犯罪」

を共謀罪の対象犯罪とするよう義務付けている。

日本は12年に条約に署名したが共謀罪を創設していないため主要国(G8)で唯一、条約を締結できていない。

政府が法整備を急ぐのは、米国や英国など34カ国・地域と欧州委員会など2国際機関でテロ対策を検討している政府間機関

「金融活動作業部会」(FATF)から昨年春、「早期改善」を要求されたためだ。

FATFは資金洗浄・テロ資金供与対策に協力しない国を「非協力国」として公表しており、

日本にはテロ組織などに対する拠点・物資の提供といった「現物供与」の罰則規定や共謀罪の創設を要求している。

このため、政府は具体的な法整備として、12年に施行された組織犯罪処罰法を改正し

「組織的な犯罪の共謀行為」の処罰規定を設ける方針。昨年秋には5月末までに必要な法整備を終え、

条約の早期締結を目指す考えを米国や国際機関に伝達している。

政府は、条約に基づき「死刑または無期、長期4年以上の懲役または禁錮の刑に当たる罪」を

共謀罪適用の対象にすることを想定している。法改正が実現すれば、国際テロ組織などが犯行を計画し、

実際には実行されなくても謀議に加担した段階で罪に問われる。

だが、民主党内には共謀罪への慎重論が根強い。

組織犯罪処罰法改正案は15年3月と16年2月、17年10月に国会に提出されたが、

当時野党だった民主党は「拡大適用の恐れがある」などと反対し、いずれも廃案となった経緯がある。

特に法務行政トップとなった平岡秀夫法相は、17年10月31日提出の質問主意書で、共謀罪に関し

「未遂や予備にいたらない共謀をより広範に犯罪の対象とすることは刑事法の体系として矛盾している」と指摘。

18年11月22日の質問主意書では「国民の自由、権利を著しく狭め、侵害する懸念がある」との持論を展開している。

現在も「共謀罪創設には法相が反対している」(政府高官)とされ、

政府が無理に法案作成を急げば、閣内不一致の事態に陥る可能性もある。

加えて、24日召集予定の通常国会は野田佳彦首相が強い意欲を示す消費税増税関連法案など

重要法案が山積しており、国会日程上も5月末までの「国際公約」実現は困難視されている。


◆コメント:条約締結できなくても構わん。共謀罪は無茶です。

共謀罪は、自公連立政権の時代に何度も継続審議になったけど、

記事にあるとおり、当時の野党、民主党の反対で何とか食い止めたようなものだが、

自分が与党になったら(民主党は、こればっかりですな)、国際公約など、冗談ではない。


共謀罪に関しては過去、何度も書いているのでそちらをお読み下さい。

2005.09.21 特別国会で共謀罪成立期す 反対論依然根強く ←犯罪を計画(冗談でも)しただけで、逮捕されるのです。

2005.10.17「共謀罪:新設法案が14日審議入り 日弁連など廃案求める」 ←共謀罪は違憲だと思います。

2006.04.23 「共謀罪 野党反発、大荒れ審議入り 衆院法務委」←DVDをコピーすることを相談しただけで、逮捕されるんですよ

2006.05.20 <共謀罪>与党と民主党の修正協議、主張にはなお隔たり←密告者は罪を免れることをしっていますか?

2006.05.23 「共謀罪、採決先送り 改正案の今国会成立は不透明に」←油断できないが、とりあえずホッとして、疲れた。

これらの繰り返しになるが、もう一回説明すると、

共謀罪とは、「犯罪の相談(冗談でも)をしただけで、犯罪と見なす」、と言うことである。

犯罪の実行はおろか、犯罪の準備をしてもいないのに、(冗談でも)犯罪の「相談」をしただけでもそれ自体が「犯罪」となる。

元来は、国連が2000年に採択した、「越境組織犯罪防止条約」の批准の為に必要とされる法律だから、成立させなくてはいけない、

と、当時の与党自民党が主張し、民主党はこれに対し恐慌に反対したのである。


以前の法務省案では「懲役4年以上の刑に相当する犯罪を、団体で遂行することを共謀した者」が適用範囲で、

それに該当する構成要件は500を超える。


例えば、著作権を侵すCDやDVDの違法コピーは、著作権法で罰則が定められており、「五年以下の懲役」となっているから、共謀罪に含まれる。

実際にコピーしなくても、貴方が誰かからコピーしてくれと頼まれて、「いいよ」と同意したら、共謀罪成立である。

そして、この法律の嫌らしい所は、相手が貴方を裏切って、「あいつは違法なことをしようとしてますよ」と警察に密告すると、

その者は罪を免れる。いくらでも他人を貶めることに応用できる。誰かを違法行為に誘っておき、相手がOKという。

その会話を録音し、自分が警察に行く。自分は罰せられず、うっかり騙された先方は「共謀罪該当」で三年以下の懲役となる

(以前の法務省案による)。


◆もう少し学問的(刑法学的)に。

イタリアの啓蒙思想家、チェザーレ・ベッカリーアという人物が今から約240年も前に書いた「犯罪と刑罰」という本がある。

この中で、ベッカリーアは「犯罪の尺度は社会に対して与えた損害である」と書いている。

「考えただけ、話し合っただけでは犯罪にならない」、という近代刑法の原則である。

犯罪に至る過程は、一般的に次のようなステップと踏む。

犯罪を行おうとする者は、まず、どのような犯罪をどのような方法で行うかについて考え、決意する。

この段階ではアイデアだけだから、社会に損害は与えておらず、処罰されることはない。当たり前である。



次に、犯罪を行う決意に基づいて、犯罪実行の準備を行う。「予備」とはこのことである。

この段階でも社会的損害は発生していない。したがって、処罰しないのが原則である。

刑法は全部で264条あり、第1条から第72条までを刑法総則といい、

犯罪とそれに対する刑罰に関する一般的なことが定められているが、現行刑法の総則では、「予備」に関する規定は存在しない。

現行刑法は、個別犯罪に対して各則(刑法第73条から第264条)で例外的に、

殺人罪、強盗罪などの重大な犯罪の予備についてだけ、処罰することとしている。



予備の次の段階として、犯罪の実行に着手したが、結果が発生しなかった場合を「未遂」という。

これは、犯罪の実行行為を行っているので、損害発生の危険が高くなる。

そこで、刑法総則でには、明文に規定がある場合には未遂も処罰の対象となる、と定めている。

73条以降を読むと、具体的な犯罪についての規定があり、未遂を罰する犯罪に関しては、

必ずその項目(条)の最後の項に「未遂は、罰する」と書かれている。

書かれていないものは、未遂を罰しないことを意味している。


犯罪行為を実行して結果が発生すれば、「既遂」となる。

犯罪と定められている行為の既遂は社会的損害を発生させたのだから、全ての既遂は処罰される。これは、当たり前である。


◆犯罪の3つの型。

以上を前提とすると、犯罪は3つのタイプに分類することが出来る。


  • 第一のタイプ。予備、未遂は処罰されず、既遂だけが成立する犯罪。

  • 第二のタイプ。未遂と既遂が処罰の対象となる犯罪。

  • 第三のタイプ。予備、未遂、既遂の全てが処罰の対象となる犯罪。


である。

共謀罪が成立すると法論理的に矛盾を生ずる。

第一のタイプは、既遂のみが処罰の対象であり、未遂、予備(準備)すら処罰の対象でないのに、

何故、共謀(相談して、合意し、まだ準備もしていない)を罰することが可能なのか?

例を挙げるなら、刑法260条の「建造物損壊罪」は5年以下の懲役だから、その共謀は共謀罪の処罰対象となる。

たとえば、労働組合や何らかの団体が、会社の建物にペンキで抗議文を書き付けようと相談したら、

文字を書くペンキの準備もしておらず、ましてやまだ何も書いていないのに、共謀罪による処罰対象となる。



第二のタイプも同じ事である。既遂と未遂だけが処罰の対象で、予備は処罰の対象でないのに、

相談して合意したら共謀罪の適用を免れず、罰せられることに正当性が無い。



第三のタイプはもともと予備でも罰せられるのだから、共謀罪の適用は比較的説明しやすい。

具体例として興味深いのは、公職選挙法222条「多人数買収罪」である。5年以下の懲役なので共謀罪の適用対象となる。

国会議員が選挙の際に、形勢が不利だというので、選挙事務所の事務長が選挙人を多数接待供応する相談をしたら、

共謀罪により逮捕されるべきである。センセー方は分かっているのだろうか?


◆結論:他国に言われたからといって、こんな治安維持法のような法律を成立させてはならぬ。

記事で書いているように、以前に比べれば、何しろ、民主党は共謀罪の制定に顔色を変えて反対していたのである。

今度「国際公約だから」といっても、数年前には全く逆の立場から「そんなのは理由にならぬ」といって反対した

民主党である。ゴリ押しはできないだろう。

しかし、野田内閣はどさくさ紛れにTPP参加を決めたり、武器輸出三原則の緩和を決めたり、

まるで節操がない。だから、注視することは必要である。

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