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JIROの独断的日記
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2004年01月04日(日) ウィーンフィルのオーボエ 日本人技術者の執念

毎年、元旦に、ウィーンのムジークフェライン・ザール(ウィーン楽友協会ホール、などと訳されている)では、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が「ニューイヤーコンサート」を行い、その様子はNHKが生中継する。1年に一度、一般のチャンネルでウィーンフィルの演奏を、テレビを通してではあっても、同時に聴くことができる、貴重な機会である。


ウィーンフィルというのは、要するに世界最高のオーケストラなのだが、幾つかのセクションでは、ウィーン・フィル固有の楽器が使われている。一つはホルンで、もう一つはオーボエという楽器である。



オーボエというのはどんなものかわからなかったら、Googleで「オーボエ」でイメージ検索をしてみればすぐ分かる。どんな音かわからなかったら、そうですね・・・、チャイコフスキーの「白鳥の湖」で、ミー・ラシドレミードミード・ミーラドラファドラ・・・・という、彼の有名なメロディを最初に吹く楽器(これで分からなかったら、クラシックMIDIデータファイルというサイトがあるから、そこで「オーボエ」の曲を検索してみてください。無料でダウンロードできるサイトにリンクしているから・・)である。



オーボエはオーケストラの管楽器の中でも一番歴史が古くて、極めて重要なパートを与えられているのだが、ウィーン・フィルのオーボエは「ウィンナー・オーボエ」と云って、世界のほかのどのオーケストラも使わない、一種独特の構造と音色を持っていることで知られる。



楽器には当然、楽器ごとに専門の職人(製作者)がいるわけであるが、なかなか厳しい徒弟制度の世界であるらしい。ウィーンでウィンナー・オーボエを作ることが出来る人が少なくなってしまった。



これを懸念したウィーン・フィルはかねてから噂を聞いていた、日本の高い楽器製作技術に頼る事となった。ピアノについては、昨年、リヒテルのピアノについて書いたので、そちらをお読みいただくと有難い。



日本、具体的にはヤマハの木管楽器製作の最精鋭が集結して、ウィンナーオーボエのX線写真を撮り、あらゆる音の波形を記録して、研究を重ねた。試行錯誤が数え切れないほど繰り返され、日本人技術者たちは、ついにウィンナーオーボエの特徴的な音色を作り出している楽器構造上のポイントを突き止めた。



そこで終わらせないのが、日本人のすごいところである。どの楽器でもそうだが、新作と何十年も吹き込んだ楽器では音色が異なる。使い込んだ楽器の方が何故か、よい音がする。その原因も探り当てた。



トランペットなど、金管楽器の音は楽器の端の開口部のみから出てくる。ところがオーボエなどの木管楽器の場合は、指やキーで押える指穴(リコーダーを思い出すとわかりますね。音程を変えるために、指で押えたりはなしたりする、あの、いくつも開いた穴、です)からも、音が出ているのである。そして、オーボエやクラリネットでは、裏にフェルトを貼ったキーが押える穴と、人間の指が直接押える穴がある。



ヤマハの技術者たちは、何十年も使い込んだオーボエの人間の指が押える穴を顕微鏡で拡大して観察したところ、穴の淵が、永年の使用により、僅かながら磨耗している、つまり角のRが新作の楽器とはことなることに気がつき、それが、音色に影響を与えている事を突き止めたのである。



この発見により、新品の楽器で従来のウィンナー・オーボエと同じ、しかも、使い込んだ楽器と同様の音色を出すことが可能になったのである。まさに、音と楽器に対する執念の勝利であった。



ウィーン・フィルの超一流の奏者たちも、流石にこの話には大いに驚き、かつ、新しい楽器を吹いて見て、完璧に満足し、日本人技術者たちに感謝した。


日本人が作ったウィンナー・オーボエは、その美しい音で、今年も世界の人々を喜ばせるだろう。


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