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JIROの独断的日記
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2010年05月18日(火) 「ギリシャ、期限前日に債務不履行回避=ユーロ圏が1.7兆円融資」←金融危機は続く。

◆記事:ギリシャ、期限前日に債務不履行回避=ユーロ圏が1.7兆円融資(5月18日21時30分配信 時事通信)

ギリシャ財務省は18日、財政危機に見舞われた同国に対するユーロ圏から緊急支援の第1弾として、

145億ユーロ(約1兆6700億円)の融資を受けたことを明らかにした。ギリシャは19日に国債90億ユーロの償還期限を控えていたが、

信用不安が高まる中、市場での資金調達はほぼ見込めない状況だっただけに、期限前日に債務不履行(デフォルト)を回避した形だ。

AFP通信によると、同省は声明で、ドイツ、フランスなどユーロ圏10カ国からの融資が、欧州中央銀行(ECB)経由で

ギリシャ中銀に振り込まれたことを確認。「喫緊の支払いに充当する」と述べた。


◆コメント:ギリシャ支援策で決定されたことではあるのですが、ヒヤヒヤします。

約一週間前に、

2010年05月10日(月) 「欧州株、大幅上昇=信用不安後退で」←応急処置ですから、これで「一件落着」ではありません。ココログ

を書いたので、なるべく重複を避けて説明します。

記事で書かれているとおり、ギリシャは今日5月19日に、90億ユーロの国債の償還がありました。

ところが、財政危機からギリシャの信用は著しく低下していて、放っておいたら、国債償還(借金返済)期日までに、

自力で資金を調達出来ない恐れがありました。そこで、EU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)が、ギリシャに資金を提供して、

債務不履行(デフォルト)させない、と5月10日にギリシャ支援策を決定・発表したのです。

しかし、事務的な問題とかシステム障害で、ギリシャが必要とする資金が期日前に振り込まれない、といるリスクは

ゼロではありませんから(今回に限らず、金融システムでは起こりうる事です)、今日まで心配でしたが、

報道によれば、ギリシャ財務省は、EUの融資を受けた、つまり入金を確認した、とのことで、とりあえず、

19日のデフォルトは無いです。


しかし、世界の株式市場の動きは欧州の金融不安が消えていないことを端的に示しています。

ギリシャとて、とりあえず国債の償還用の資金は、他の国からの支援でどうにかなりましたが、

ギリシャの信用が失墜した原因である、財政危機が瞬間的に解決されるわけではない。

財政再建策をギリシャは発表していますけれども、その進捗状況によっては、またギリシャの

信用不安が生じ、それによって欧州全体の信用が揺らぐことになりかねません。

それはEUのユーロ経済圏は運命共同体だからです。


ヨーロッパの信用が低下するとヨーロッパの銀行に貸出をしている世界の他の国々の銀行が

資金を引き揚げます。特にアメリカの銀行が海外に持つ債権の約半分、1兆2千億ドルは、

ヨーロッパ向けの貸し出しです。財政が悪化しているのはギリシャだけではなく、ポルトガルや

スペイン、アイルランドも相当ヤバいわけです。するとこれらの国々への貸し出しが不良債権に

なるかも知れない。すると、信用リスクが大国、フランスやドイツにまで及ぶかも知れない。

そうしたら、米国の銀行はヨーロッパからおカネを引き揚げ始めることは確実です。

前の記事でも書いたように、世界中の銀行は国境を越えて資金の貸し借りをしていて、

全体として一つの大きなシステムになっていますから、ヨーロッパのどの銀行でも資金繰りに

窮すれば、それは、世界全体の銀行の資金繰りに影響します。システミックリスクといいます。

これは、まさに、リーマン・ショック直後の世界金融危機と同じです。


だから、今回は世界各国の中銀は、早めにスワップ協定を再確認しました。

スワップ協定とは、
金融危機などに対応するため、各国中央銀行や政府が市場の安定に必要な資金を融通し合う仕組み。

交換する通貨の量に限度枠を設定し、その範囲内で相手側の要請に応じて通貨を交換する。

ということです。日銀もそれを10日に宣言しています。
日本銀行 2010年 5月10日 中央銀行の協調対応策について (PDF, 8KB)

そして、日本の銀行、とりわけ影響が大きいメガバンクは、別に資金繰りに問題は無いのですが、

日銀は、18日(火)、マーケットに米ドルを供給すると通告し、実行しました。
◆記事:ドル供給、再開後初の入札=日銀(5月18日13時0分配信 時事通信)

日銀は18日、ギリシャ危機で不安が高まる金融市場の安定化を図るため、

日米欧の6中央銀行が協調して再開を決めた米ドル資金の供給について、初回の入札を実施した。

日銀によるドル供給は今年1月以来約4カ月ぶり。応札額は2億1000万ドル(約190億円)。

ほとんどが外資系の金融機関とみられる。

外資系の金融機関が、ドル資金調達に困っていたわけではないですけど、

日銀としては、それでも日銀は市場性流動性資金を枯渇させるようなことは絶対しないからな、という

一種のデモンストレーションだと思います。

とにかく、リーマン・ショック後の混乱がすさまじかったので、世界中の中央銀行は

自国の金融機関が大手であれ、中小であれ、資金繰りに窮することが無いように、

相当注意深くマーケットをウォッチしているようです。


◆その他の注目すべき点、問題。

ギリシャ、ポルトガル、スペイン、アイルランドの国債償還がなんどもあります。

その予定は、ロイターの

〔情報BOX〕ユーロ圏周辺国が2010年に迎える債務償還

に、載っています。これはEUとIMFが発表した支援額に照らし、とりあえずは大丈夫でしょう。

もう一つ問題があるとすれば、為替相場です。ユーロ圏の信用が揺らいでいるため、EUの通貨、ユーロが対ドルでも対円でも

売られているのです。日本にとっての円高。アメリカにとってドル高。

輸出企業の売上げが減ります。日本の輸出企業も同様です。

それは、日本でもアメリカでも、景気回復の妨げになります。

このように、ヨーロッパの信用不安は、世界的な問題で、それは暫く続くと思われます。

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