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JIROの独断的日記
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2009年05月18日(月) 「MOX燃料凍結を 420の市民団体が経産相に申し入れ」←何が問題なのか、説明します。

◆記事1:MOX燃料 仏から到着 11月に国内初プルサーマル(5月18日16時7分配信 産経新聞)

フランスで製造したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を載せた輸送船が18日、

静岡県御前崎市の中部電力浜岡原発近くの御前崎港に到着した。

普通の原発(軽水炉)でMOX燃料を燃やすプルサーマル用で、フランスから約2カ月半かけて運搬。

陸揚げした後、船は九州電力玄海原発(佐賀県)と四国電力伊方原発(愛媛県)に向かう。

3社が共同輸送した。順調なら九州電力が玄海3号機で8月に始まる定期検査でMOX燃料を入れ、

11月に国内初のプルサーマルを始める。四国電力は来年1月に始まる定検で、中部電力は来年夏以降の定検でMOX燃料を入れる予定。


◆記事2:<MOX燃料>使用不許可求め要望書 420市民団体が提出(5月18日19時51分配信 毎日新聞)

プルサーマル発電用のMOX(ウランとプルトニウムの混合酸化物)燃料が18日、

中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)に搬入されたのを受け、47都道府県の420市民団体が同日、

MOX燃料の使用不許可を求める要望書を二階俊博経済産業相に提出した。

要望書は、今の国の政策では使用済みMOX燃料の処分方法が未定で、核燃料サイクル技術の開発も遅れている現状を指摘。

「危険度が高く、搬出先もない使用済み燃料が生み出される」とし、今回輸送された浜岡など3原発分の使用不許可や

プルサーマル計画の凍結を求めた。受け取った経産省資源エネルギー庁の担当者は「安全性確保を大前提に計画を進めたい」と答えた。


◆解説及びコメント:プルサーマル、再処理、MOX燃料とはなにか。

原発では、原子炉の燃料としてウラン-235を燃やすのですが、実際に「燃える」のは核燃料のわずかな部分なのです。

使用済み核燃料の燃えていない部分には、ウランとプルトニウムが含まれています。

使用済み核燃料を燃えた部分と燃えていない部分に分けて、更に燃えていない部分から

ウランとプルトニウムを取り出すプロセスを「再処理」と言います。

この燃えなかったプルトニウムと、燃えなかったウランを混ぜて作った新しい核燃料をMOX燃料と言います。

このMOX燃料は、皆さんも名前は聞いたことがあるでしょう「高速増殖炉」で使う為の物なのですが、

日本で稼働する予定だった高速増殖炉「もんじゅ」は1995年12月、試験運転を始めた直後に冷却剤であるナトリウムの

漏洩事故(普通の原子炉の冷却剤は水ですが、いずれにせよ、冷却剤は放射能を含んでいますから、これが漏れたのは大事故なのです)を


起こし、実質、使い物にならなくなりました。プルトニウムを含むMOX燃料の使い道がなくなりました。


そこで、高速増殖炉ではなくて、普通の軽水炉(冷却剤に水を使う)の燃料にMOX燃料を使おう、というのが、

「プルサーマル」計画です。「プル」は「プルトニウム」の「プル」、「サーマル」は、

「サーマルリアクター」(軽水炉。普通の原子炉)のこと。和製英語です。


技術的に高度なことは私も分かりませんが、日本には六ヶ所村に「再処理工場が」あるにも関わらず、

日本では到底、MOX燃料を作ることができません。プルトニウムは天然には存在しない元素で、

非常に強い放射線を放出し、100万分の1グラムでも吸い込んでしまったら、

肺ガンを発生させ、体内から排出されない危険なものです。

ですからプルトニウムの扱いには、高度な技術が必要となります。

六ヶ所村の再処理工場では、とうていMOX燃料を作ることなど無理なので、フランスに再処理を委託していたのです。

そしてそのフランスで作られたMOX燃料が、今日、「中部電力浜岡原発近くの御前崎港に到着した」のです。

MOX燃料が日本に持ち込まれるのは初めてです。


◆何が問題なのか。

何故、日本はMOX燃料を使ったプルサーマル計画にこだわるかというと、

使用済み核燃料が溜まって行くと、プルトニウムも含有されているわけですが、

プルトニウムから核兵器が作れるのです。危険な物質なのです。そして日本は、

1997年に合意された「国際プルトニウム指針」に従って、同時に、

「我が国のプルトニウム利用計画について」をIAEA(国際原子力機関)に提出し、その中で、

我が国は、原子力基本法に基づき、厳に平和目的に限り原子力開発利用を推進してきており、

核燃料サイクルを推進するに当たっては、核拡散に係る国際的な疑念を生じないよう核物質管理に厳重を期すことはもとより、

我が国において計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち、余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持しつつ、

プルトニウム利用計画の透明性の確保に努めている。

と国際公約を発表しているのです。ですから、「平和利用に必要な量」以上の余剰なプルトニウムを保有しては、まずい。

極端に言えば、IAEAから「日本は実は核兵器の製造を目論んでいるのではないか?」と疑われます。

一定量以上のプルトニウムを貯めてはまずいのです。ですからMOX燃料として軽水炉(普通の原子炉)の燃料にして、

使ってしまおう、ということです。


ならいいじゃないか、といいたいところですが、

まず、本来、高速増殖炉で使うべきMOX燃料を軽水炉で使って、本当に安全なのか。と言う問題。

国や電力会社は、勿論、「大丈夫だ」と言うでしょうが、はっきり言って、本当の所は、

実際にMOX燃料を軽水炉で使ってみないと分からない、というところだと思われます。


更に厄介なのは、MOX燃料とて、燃やしても「使用済み核燃料」というゴミが残ります。これをどうするかが、

決まっていないのです。プルトニウムの半減期(放射性物質の中の放射性原子の数が、ある特定の時から半分になるまでの時間)は

2万4000年です。そこら辺に生ゴミのように捨てるわけにはいかない。近寄っただけで人間が直ぐに死んでしまうほどの放射能を

発し続けるのですから。


確かに、地球温暖化を遅らせるためには、石油や石炭のような化石燃料を燃やさない原子力は有効なのでしょうが、

度重なる事故を見ていると、MOX燃料を使用して、万が一冷却水が漏れるなどの事故が起きたら、と思うと、近くの住民は、

嫌ですね。


以前、書いたことがありますが、地球温暖化を防ぐ為に電気を使わないようにしよう、という短絡反応がありますが、

電気自体、つまり、あなたの目の前のパソコンや部屋の電気や、テレビその他家電自体からCO2が排出されるわけではない。

その電気を発生させる過程で化石燃料を燃やすのが問題なのです。

原子力は、CO2を出しませんが、その他のリスクがあまりにも怖い。

風力発電、太陽発電、潮汐発電、そして火山国日本なんですから、地熱発電などを組み合わせれば、

原子力に頼らなくても、十分我々が必要とする電力を供給出来る、とする説もあります。

残念ながら私にはそれは証明出来ませんが。

今すぐに、と言うわけには行かないでしょうが、日本の電力会社と政府は、原子力発電にばかり、

やたらと熱心で、上述したような代替エネルギーに本腰を入れないのは、何かおかしい。

繰り返しますが、電気を使うこと=地球温暖化を速める、ということではないのです。

これらの「新エネルギー」で、十分な電力を供給できるならば、電気をいくら使っても構わないのです。

そこら辺、政府の口車に乗せられてはいけません。

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