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2012年09月29日(土)
『ボーン・レガシー』『るろうに剣心』『具象の時代』

何故かトリプルヘッダーに。急遽『ボーン・レガシー』朝イチの回をぶっ込んでしまったので、ぎゅうぎゅうになってしまいましたよ……。PTAの前にホットケーキがおいしいと評判の錦糸町のお店に行く予定だったんだけど、移動に手間取り道に迷い、辿り着いたらラストオーダージャストの時間で入れてもらえなかった(泣)。錦糸町て、次いつ行くやら……。

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『ボーン・レガシー』@新宿ピカデリー スクリーン5

一ヶ月程前からCMの本数がすごく増えるやら、二週間程前からジェレミー・レナーの雑誌露出がすごく増えるやら、公開週に入ってからは八月来日時に取材していたのであろうジェレミーのインタヴューがwebに大量にアップされるやら、宣伝の規模の大きさに正直びびりまして(笑)いてもたってもいられず出掛けていきました。

いやその、こういうの慣れてないんですよ…今年はただでさえジェレミーバブルのところ(しかも出演作三作全部シネコンで観られる規模)、今回は主演!バリバリ大作の初主演!しかもあのボーンシリーズの続編みたいな扱い!過去作と比べられるの必至!ジェレミー本人にとってもこれは正念場と言うか、今後の仕事に影響あるでしょうし…これがバブルで終わるかそうでないかは今作にかかってくる!も〜いい作品であってくれ〜!と、もう完全にファン心理です。いやバブルかどうかってのはもはやどうでもいいんだホントのところは…いい作品を選ぶことが出来て、いいコンディションでいい仕事をやれる環境にジェレミーがいられればいいんですよ……。

で、結果はと言うと。ジェレミー素晴らしい!レイチェル・ワイズ素敵!エドワード・ノートン貫禄!でした。脚本と演出は…その……。そしてボーンシリーズを観ていれば「ああ、ここは!このひとは!」と思える楽しさは確かにありますが(パメラが窮地に!どうなるの〜!)、絶対観ておかなければならない、と言うことはないと思います。以下多少ネタバレあります。

ボーンシリーズとして続編作る気満々と言うか、それ前提で作っている感じもし、なおかつ『ボーン・アルティメイタム』と同じ時系列で進んでいた物語、と言うのを後付けで作った弊害と言うか綻びが感じられました。説明シーンが多い。もはや多過ぎてごちゃごちゃしている。あっ、ここも説明しとかなくちゃ、ここも前提があるよって示しておかなきゃ、ってこまごま付け足していくうちに、どこに焦点を合わせればいいか作ってる側も解らなくなっちゃったんじゃないかと邪推してしまう程。木を見て森を見てない感じがすごくする……。

説明シーンを主人公アーロン・クロス側、CIA側交互に見せていくテンポもどうにもモタモタしている。アーロンとマルタが会う迄一時間くらいあるしなあ。この辺り個人的にはバッサリ切ってもよかったのではないかと思いました。参加するプロジェクトが抹消され、それに伴って命を狙われることになったアーロン、マルタ医師と、CIAの攻防に的を絞ってよかったのではないかと……。

しかしそうするとボーンシリーズとの関連性が…となるんでしょうねえ。極端な話、これわざわざボーンシリーズて銘打たなくてもよかったんじゃないのと思いました。興行的なことを考えるとそうもいかないのか!いいとこもいっぱいあるんですよー、ボーンシリーズがと思わなければ…いやでもなんかモタモタしてるのは否めない。ひとつひとつのシーンはいいのに!構成と編集って大事だなあと痛感。

アーロンとマルタが会ってからの展開にはスピード感があっていいです。ふたりが出国してフィリピンに向かうところを着々と追跡していくCIAの情報収集の描写はスリリングで、ここはテンポもすごくよかった!話逸れるがこの辺りの街頭カメラの多さとか、その解析の早さとか、オウムの高橋容疑者が捕まった経緯を思い出した…あらゆるところにカメラって設置されてるのね、誰も見てないと思ってても知らないうちに撮られてるよ!怖い!

そして役者!エドワード・ノートンやっぱいいー、力のある声が堪能出来ます。ちょっとした声の調子で威圧感をぐっと出したり引っ込めたりと自在です。ジェレミーとノートンの面と向かった演技合戦がワンシーンだったのは残念だったなー。この辺りは続編に期待しろと言うこと?レイチェル・ワイズはただでさえ美形で眼福なのに、アクションをバリッとこなします。ちょー格好いい!強くて賢くて美形、敵なし!

と言う訳でジェレミーですが、いいよー!ホークアイは目がよかったけどアーロン・クロスは耳がいいよ!アクション格好よかった…身が軽い、壁とかするするのぼってねこみたいです。顔は犬顔だが。必要以上にマッチョじゃないので身のこなしが俊敏で美しい。バイクチェイスも派手!ノーヘルで顔が見えるので殆どスタント使えなかったそうですが、もともとバイク乗りだそうですね。いやーすごかった。アクション以外でも、繊細な表情で心情を表現。目がいい、目が。ケネス・キットソンからアーロン・クロスに生まれ変わることとなる面接?シーンの瞳がすごく印象的でした。綺麗に撮ってくれたカメラさんありがとー!あと検査で何度も会ってるのにマルタ先生俺の名前も知らないの?俺のこと番号でしか認識してなかったの?てガーンとなってるとこの顔もよかった(眉毛がハの字になってた・笑)。しょっちゅうリュックしょってる姿もなんか愛嬌がありましたわ。IQ低いことにコンプレックス持ってるっぽい役柄なので、薬が必要なくなってからの活躍も観たいものです。しかしこのひと(役)「でもこの身体も頭脳も改造の産物!」とかって延々悩みそうだわー。あ、でもそういうとこも観たいわ(鬼)。

『ヘンゼル&グレーテル』『Nightingale』(これ日本にも来るよね?来てー!)が撮了しているジェレミー。『ボーン・レガシー』も続編が撮られることがアナウンスされたし、『アベンジャーズ』『M:I』シリーズ続編の話もあるようなので、いい状態で進んでいくといいなあ。これからも楽しみですよ。

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『るろうに剣心』@新宿ピカデリー スクリーン6

大友監督ならではの、て風情があってよかったー。ねこが出てきて「やっぱり!」とニヤニヤしたり。キャスティングも大友組!と言う感じで楽しかった!
青木崇高さんがちょーいい役!しかも最後迄いい役!爽やかタフガイ!なんかこのひと、自分が観るドラマ観るドラマ可哀相な役ばっかりだったので、よかったねえとか的外れな嬉しさがあったり(笑)。大河ドラマでは弁慶役、これから見せ場が増えるだろうからこちらも楽しみ。
須藤元気に似てるひとがいるなあ…と思っていたら本人だった。見せ場迄随分時間があったので、違うひとなのか…?と不安になったりしてた。そして手合わせの相手が青木くんだったので、ひぃある意味本職相手のバトル!がんばれ青木くん!とハラハラしました(笑)。
佐藤健くんは大友監督の『龍馬伝』で人斬り以蔵で認知度がぐわっとあがった印象があるのですが、これのイメージから剣心の役がきたのかなあと思ったり。アクションも、ユーモアの裏に陰を滲ませる芝居もよかったです。
あ、あと窪田正孝くんが印象的な役で出てました。『十三人の刺客』を観てると二重の意味でじんわりきます。

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菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール『具象の時代』@すみだトリフォニーホール 大ホール

トリプルヘッダーとなると流石に疲労困憊で、しかもまートリフォニーホールの音響の素晴らしいこと!情報量含め怒濤のように押し寄せる音の膨大さに具合が悪くなるほどでした…と言う訳で以下おぼえがき。

・思えばジェレミー〜菊地さんと本日ぎっちょ祭り。個人的にはウハウハでした。ぎっちょの意味や由来は判って使ってますよ。個人的にはもはや愛着がある言葉なのだ

・opの微弱音の通りのいいこと!この時点でこちらの耳もキレッキレになる。もー咳とか絶対出来ない!と言う心地よい緊張感
・林さん(pf)のトレモロも粒だって聴こえる!鳥越さんのフィンガーピッキングで出す和音も一音一音バリッと聴こえる!

・席の都合上鳥越さんの手元をどーしても菊地さんの股間越しに見ることになりなんだか申し訳ないやらおかしいやら
・ときどき「菊地さん身長伸びて!」「脚長くなって!」と思ったのは内緒です。しかし180cmの菊地さんとか、あまり想像したくない。あのサイズだからいいんですヨー
・席と言えば、演奏始まってしばらくしてから視界の右端に人影が入ってきた。遅刻かー、早く席に着いて!と思ってたんだけどいつ迄経っても着席する様子がない。なんだよもおーと曲間視線を移したら菊地さんの影だった(笑)照明効果で両袖に影が映ってたんですね
・影と気付けばもう安心、風情あるものとして楽しめました(笑)あのシルエットよかったなー

・「Killing Time」マイクスタンドトラブルは残念だった!アルトとテナー、演奏する毎にマイクの高さを菊地さんが自分で変えるんだけど、この曲のときスタンドが固定出来なくなっちゃったのね。それで前半の演奏まるっと飛ばした。普段クールに弾いてるストリングスの面々もちらちらと心配そうに様子見てた
・そのうち梶谷さんのソロに入り、その頃になってようやくスタッフのひとがヘルプにやってきた。位置的にスタッフが梶谷さんの前に立ちはだかる形(屈んではいたけど)になってしまってこれも残念…梶谷さん今回だけの参加なのにー(泣)
・梶谷さん、音のひとつひとつがハッキリクッキリしてて格好よかったなあ。トリフォニーで聴けてよかったなあと思った
・今回録音とかしてたのかなあ。せっかくこのホールだし、何らかの形でリリースないかしら。でもそうなるとこの曲、ハプニングで済ますには勿体ないなあと思いました。ライヴとしてはその後の挽回っぷり含め楽しめましたが

・そうそう、復旧後の菊地さんの演奏はちょー格好よかったんですよー。借りは返す!みたいな。ああいう、一度きりの現場だから挽回もその現場で!てな意気が感じられるとこ、好きだなあ。こちらの思い込みかも知れないけど。パーン!と猟犬が野に放たれたときのような疾走っぷりでした
・で、そうなるともう楽しくなっちゃって、中盤の大儀見さんと田中さんのかけあいすんごく引っ張ってニヤニヤしてた。大儀見さんと田中さん、菊地さんをちらちら見乍ら「いつ迄やんのよ」みたくニヤニヤしていた。梶谷さんももはやニヤニヤしてた(笑)
・リハやってるとは言えあの編成、あの曲構成(現場でもどんどん変化する筈)にすんなり入るのって難しいだろうな。梶谷さん、各セクションに注意を払ってる感じがすごくしました。それでいて笑顔がよく出る。素敵!
・ああそれなのにアンコール時「吉田翔平くんが性転換しまして」と紹介されていた。次の公演で、吉田くんは再性転換して戻ってくるそうです(…)

・猟犬と言えば、「行列」の林さん(sop)の歌の後のsxソロもそんな感じだった。パッと引き綱を離したらピューって走っていったみたいな爽快感と解放感。オラオラ林さんちょー格好いいだろ?俺んとこのバンドメンバーちょー自慢だぜ?そんなメンバーと演奏出来る俺ちょー幸せ、いいソロ吹くぜー!みたいな(キャラ違ってきた)
・いやー久々の「行列」ちょーシビれたー。前回ってリキッドのときだったと思うんだけど、林さんも会場に合わせてか比較的カジュアルな衣裳だったのね。しかし今回は真紅のドレス、菊地さん曰く「林さんからするとホーム」のトリフォニーホール、あの音響!ゴーーージャス!それでいて野蛮!
・林さんの唄ってるときの顔ちょー好きなんだ…物語る表情。歌い手であり乍ら女優
・ハンドクラップの響きも堪能。あと菊地さんの絶品指パッチンをトリフォニーで聴けたと言う嬉しさもあり

・キップ・ハンラハン(半裸版て変換するのやめてウチのMac)「カラヴァッジオ」の歌詞についてのMC、下ネタを優雅に聴かせる話術と言うか…うーん、術じゃないな、品性のに依るところが大きいかな。これ、よかったなあ
・菊地さんのハスキーな声とOMSBeatの低音の響きが心地よかった。これ継続して聴いていきたい!レパートリーになるかな。OMSBくん緊張しまくってて「死にそうです」と言っててかわいかった

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セットリスト

01. 微音による即興〜はなればなれに
02. 微音による即興〜映画「アルファビル」〜悲しきワルツ
03. 映画「バターフィールド8」〜バターフィールド8のテーマ
04. 即興〜京マチ子の夜
05. パリのエリザベス・テイラー(存在しない)
06. アリア 私が土の下に横たわる時〜オペラ「ディドとエネアス」より
07. 行列
MC
08. カラヴァッジオ〜南米にエリザベス・テイラー
09. 嵐が丘
10. キリング・タイム
11. 儀式〜組曲「キャバレー・タンガフリーク」より
12. バンドネオンソロ〜ルペ・ベレスの葬儀
13. 映画「8 1/2」〜それから……(ワルツ)
encore
14.クレイジー・ヒー・コールズ・ミー

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2012年09月28日(金)
『LYNX Live Dub』Vol.2『MYTH』

『LYNX Live Dub』Vol.2『MYTH』@SARAVAH Tokyo

配役は父=篠井英介、息子=菅原永二、友人=中山祐一朗、弁護士=佐藤誓。上演台本はこちらからダウンロード出来ます

『MYTH』と言えば、個人的には照明がいちばん印象に残っている作品。ストーリーも演出も演者も、愛情を感じる程に大好きなのだけど、あの「父の家」の扉を開く幕開き、そして扉を閉める幕切れを、照明で表現したことがとにかく鮮明に記憶に残っている。抽象の「扉」は音楽とともに、それを開閉する息子の心情すら情景として浮かび上がらせた。思えば照明で涙ぐんだのも初めてではなかろうか。

今回その指定が上演台本になかったことにまずハッとした。倉本泰史さんの、スズカツさんとの長いコンビネーションを思って感慨に浸る。

そしてあの照明は、円形劇場でステージの真上から照らされてこその効果があった。こどもの城とともに青山円形劇場がなくなる、と言うニュースを知った当日、サラヴァへ向かった。菊地成孔の言葉をなんだか思い出していた。「どんな人生にも、チークタイムは存在する」。

基本登場人物が目を合わせないリーディングであり乍ら、数箇所目線の動きがあった。それが「その役として視線を送らずにいられなかった」が故の動きに見え、好感が持てた。

そしてリーディングならではの緊張感を、篠井さんの笑い声が緩和してくれた。そう、篠井さん、笑うんです。今回フロアにある演者用と思われる椅子がキャストの数と違うなあと思っていたら、篠井さんはなんとテーブル席の観客とご相席。篠井さんがするっと席に着いたので、そこのお客さんがひっとかひゃっとかちいーさな声をあげ(そりゃ狼狽えるよね・笑)ドリンクをどかそうとする。途端に篠井さんがそれを手で制して「大丈夫です」と囁いた。ほんの二〜三秒の出来事。あっと言う間にフロアに溶け込んだ。そして息子と友人のやりとりにくすりと笑い、息子と弁護士の会話にふふ、と笑う。篠井さんは役としてリーディングに参加していると同時に、聴衆としてもフロアに存在していた。

そうやって聴いていくうちに、この作品の暖かさと明るさを再確認する。菅原さんと中山さんの会話のテンポのよさもそれをより明確にしていた。このふたりの間に流れるリズム、すごくいい。誓さんの言葉には、書かれたものを読んでいると言う感じがしないテンポのよさを感じた。

扉の開閉の照明は勿論なかったけれど、恐らく手動によるじっくりとしたフェイドアウト、キモの話者への、決して押し付けがましくない誘導転換も今回心地よかったです。そーだなー、この作品って、クラフト的な暖かみを感じる。ピノキオも出てくるしね。

十数年振りの再会もあり。憶えていてくださって嬉しかったです。人生いろいろ。

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よだん。

・アベンジャーズ脳になっているので、ピノキオたちがフカにのまれてるとこの描写にうるっときつつヨナのエピソードを思い出し「……社長!」と浮かんでしまう思いを私の頭の中の消しゴムは消しきれませんでした

・先日の面影ラッキーホールと町山智浩さんのトークイヴェントで「近頃の社会は自分で自分のことを『貧乏』って言うのはいいけど他人が言っちゃいけない、『スローライフ』って言葉とかに置き換えないといけないみたいな風潮がある」って話を思い出してブルブルしていた

・寸前に菅原さんが『遭難、』の女教師役のため髪型を変えスキンケアもしてるってツイート読んでたのでどんな姿で現れるのか実はドキドキしていた。いやふつうに自然な姿で出ていらっしゃいました。しかし綺麗な顔立ちよね

・自分の席から、篠井さんと菅原さんの横顔を同じ角度で見られるシーンが数箇所あったんだけど、おふたり顎のラインがそっくりでした



2012年09月23日(日)
『浮標』

葛河思潮社『浮標』@世田谷パブリックシアター

昨年の二月に上演された(一回目二回目)、長塚くん演出作品の再演。吉祥寺シアターから世田谷パブリックシアターと、キャパも劇場構造もかなり違う場での上演になりました。

まず興味が行ったのはその劇場の違い。吉祥寺シアターでは舞台を見下ろす形で客席が組まれているのに対し、SePTは舞台の位置が高い。そして通常の座席の前にベンチ席が設置されている。この席だと確実に舞台を見上げる格好になる。キャストが全員舞台に立ち、長塚くんの前口上から始まると言う構成は変わらず。これが初演より効果的だったように感じた。と言うのも、この前口上には「現在から地続きで舞台を始める」と言う宣言と「長い作品だと構えている観客をリラックスさせる」と言う狙いがあったように思え、実際そのベンチ席はリラックスして観ないと身体がもたない(苦笑)。休憩時背伸びをしたり腰をとんとんと叩いてゆっくり立ち上がる観客がかなりいた。

長塚くんがベンチ席のことについて言及した際「すみませんねえ」等と言っていたが、思えばなんでこの席作ったんだろう…学生席とかだったのだろうか。単純な話、そこは気になりました。

自分はその後ろの通常座席でした。ホンの言葉の強さは初演と変わらずビシビシと伝わる。二回の休憩もリズムよく入り、観るコンディションも快適。そして台詞量は膨大ではあるものの、その言葉たちを噛み締める間と言うか余白がある。ただただ言葉を追うだけでなく、その言葉に対して自分がどういった思いを抱くのか、しっかりと自覚することが出来る。

吉祥寺シアターはステージをコの字型に囲む客席配置で、奥行きもステージと客席最後列が同じだったような憶えがある。今回二階席、三階席から観た場合どう感じただろうと言うことには興味があります。出番を終えた役者が舞台上の砂場を囲んで座っている際の「役」の表現は、表情の微妙な変化も大きな要素となるので、SePTのような広い劇場では伝わりづらかったかも知れません。遠くからだとただ座って次の出番を待っているだけに見えたかも。

キャストは約半分が初演と入れ替わり。恵子の衣裳が洋服から和服になっていたりと、役者に合わせたのであろう変更もちょっとありました。お貞と恵子の、美緒に対する振る舞いはちょっとしたさじ加減で印象が変わる。美緒の病状を心底案じているのは真実、しかし結核は怖い。死に至る病なのは周知であり、財産分与についてハッキリさせておかねばならない。これが瞬間瞬間で表に裏にと顔を出す。ここがなかなか…今回辛い方に向いた。意地悪さの方が強く出たなー。しかしこれ、演者の解釈もあれど観る側の心情も反映されているかも知れないな。

思えばこれの初演、昨年の震災のひと月前だった。ものすごく前のことのように感じる。そうだ、五郎の家は海辺のすぐ近くだった。そして先日観た『エッグ』からも連想される、近付く軍靴の音。情景描写とその背景が、予想していたこととして感じられると同時に、予想を遥かに上回ることを夢想する領域へ拡大していく。波の音は激しく美しく、そして永遠であるかのように反復する。それは今であり、遠い昔のことであり、自分が知ることの叶わない遠い遠い未来でも変わらない営みにも思える。生まれて、見送って、見送られて。その繰り返し。

『浮標』戯曲は青空文庫で読めますが、この程ハヤカワ演劇文庫から発刊されました。長塚くんの演出ノート等も掲載されているとのこと。

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よだん。

松雪さんを見て「あー松雪さんこないだジェレミーと会って、『彼女にだったらボコボコにされてもいい』って言われたんだよなー…お似合いだったなー……(身長的にも・笑)」と思ったのは内緒です。いや、終演後ですよおほほほほ。



2012年09月22日(土)
『ウエスト・サイド物語』シネマティック・フルオーケストラ・コンサート

『ウエスト・サイド物語』シネマティック・フルオーケストラ・コンサート@東京国際フォーラム ホールA

パンフが完売だったので、経緯とかもう少し詳しく知りたい…。WSS50周年(1961年製作)に際して持ち上がった企画が、LA、NY、シカゴに続き日本でも実現。最新のデジタル技術により、マスターから台詞、歌声、効果音は残し、オケ部分のみを消去。映像に合わせてフルオーケストラが演奏。映画製作の際作曲のみで指揮をしていなかったと言うバーンスタインが、改めてアレンジを施し、初めて指揮・レコーディングした1984年版のアレンジを採用、とのことです。

・歴史上初!!前代未聞の「ウエスト・サイド物語」 ついに来日!

オケの背後にスクリーンを設置してあるので、映像を観乍ら演奏することは出来ません。佐渡裕さんの指揮がたより。指揮者殆ど見ないで演奏されてるオケって結構あるけど(プレイヤーがいちばんたよりにしているのはコンマスだって極論もありますしね・笑)今回はキュー出し等結構リハしたのではないかなあと思いました。そして佐渡さんは、オケと合わせる前にも随分個人練習したのではなかろうか。歌に合わせる以前に、イントロがあるじゃないですか…映像にそのきっかけが入っている訳ではないから、このシーンのここからイントロスタートってキチっと憶えておかないといけない。映像の歌い手は、イントロがコンマ何秒ズレたからと言って待ってはくれませんからね。それともイヤーモニターとかできっかけもらってたのかなあ。

席が後ろの方だったので、そういう細かいところはチェック出来ませんでした。目は映画を観ていますし。それにしても贅沢な話…耳は演奏に集中してはいるけど、目は映像、心はストーリーに持っていかれます。

歌声はどこかの(確認出来なかった)スピーカーから流れている筈で、演奏は生音がステージ上から発せられている。しかし不思議と違和感がありません。ところどころ演奏と歌にディレイが起こり我に返る場面もありましたが、それがまたよかったりしました。むしろ歌の方が「タメて」唄っているように聴こえるのです。それがライヴ感になる。既に亡くなっているひともいる出演者が、本当にこの場で唄っているような錯覚…映画の素晴らしさに改めて感じ入りました。

本編をちゃんと観たのは小学校のとき以来。まず映像が綺麗なのにビックリ。人物は当時ならではのメイク(ドーランしっかり塗ってる感じ)でクラシックな感じがするのですが、風景の輪郭がクッキリしていました。デジタル処理で映像もクリーンナップされたのかな。フィルムならではの滲みが減っている感じで、これはよしあしかも。紫で統一されているプエルトリカン組の衣裳が色鮮やか。あとここ迄ガッツリミュージカルだったかと今更…踊るシーンは勿論、乱闘シーンにもしっかりとダンス的な振付があります。もとが舞台作品の映画化、と言うのが明確だったのだなあ。

ストーリーに関しては、大人になった今観ると、いちばん気の毒なのはアニタではないかともぎゃーとなる。ケーサツはジェッツびいきだし彼氏は殺されるしその彼氏を殺したのは彼氏の妹の彼氏だししかもその妹に請われてジェッツの連中に伝言を伝えに行くことになるし(ここで行ってあげるところがまたさ!)…で、毅然とし、ちゃんと話し合いをしようと行ったその先では結局陵辱されかかるし!いや…かかるじゃないわ、あれはもう陵辱だろう!そりゃもう白人大嫌いとかなるヨ!咄嗟に出たあの嘘はもー仕方ないネ!しかもこれ全部一晩のことですよ…つ、つらしま……。

しかし〜こうやってプエルトリカンを差別しているジェッツだってイタリア系移民。そしてトニーはポーランドからの移民なのですよ…劇中ポーラックって台詞もある。この呼称、個人的には『欲望という名の電車』での使われ方が印象深いので「わっ今ポーラックって言った!」とガーンとなったり。もおーなんて言うんですか、移民の国の複雑っぷりが…ホントのアメリカ人って何よってなものです。自分がアメリカ人と名乗ればアメリカ人!その誇りがアメリカの素地の筈なのに、結局は肌の色や見掛けで差別しちゃうんだわ、お互いを。やーもう皆仲良くして…それが出来れば苦労はしないわね……根深いー。

「アメリカ」がやはり象徴的で、当時は曲がとにかく大好きだったがこうやってストーリーの流れで聴いていくと、改めて歌詞の素晴らしさにガーンとなる。アニタに代表される女性とベルナルドに代表される男性、移民たちがアメリカの光と闇を唄う。女性たちはそれでもまだアメリカでやっていこう、アメリカは自由の国で移民も受け入れてくれる!と言うあっけらかんとした希望みたいなものが込められているけど、男性たちは諦めと憎しみの方が強調されている。その後ああいうことになる訳で、アメリカに踏み躙られていくアニタの心情を思うと胸が潰れるわ……いやもう。作詞はソンドハイム。ミュージカルに疎いので彼の名を覚えたのは最近で、そんな昔から活躍されている方だとはつゆ知らず腰が抜けました…って、このひとそもそも代表作が今作でしょうに。しかもこれ27歳のときの作品なんですね。す、すごい……。NY出身、ユダヤ系ドイツ人移民と言うルーツを知りまたじんねりしました。

それにしても「アメリカ」、名曲中の名曲で、単体で聴いても素晴らしいし慣れ親しんでいるものですが、今回改めて映画本編で聴けてよかったなあ。歌詞も振付も…いやもうここは感極まりましたよ。ストーリーがその後どうなるか知っているってのもあるけど、あのシーンの登場人物たちホント幸せそうなんだもの。人生って素晴らしいと思える、生命力溢れる一瞬が描かれている。

カーテンコールで佐渡さん涙ぐんでました。バーンスタインの最後のお弟子さんですから、去来する思いがあったのでしょうね。素敵なステージでした。



2012年09月15日(土)
『エッグ』

NODA・MAP『エッグ』@東京芸術劇場 プレイハウス

ううーむ、ネタバレなしで感想を書くのが非常に難しい。そしてこの作品はネタバレを知らずに観た方がいい。あのモチーフがここに繋がり、あの記号がこれを意味していたのか、と気付いたときの震撼は是非体験してほしい。

ただ、その理解には予備知識が必要です。情報量も多い。「(ストーリーがどこに転がるかは)知らない方がいい」けれど、そのストーリーを理解する…と言うか、舞台上から示されるモチーフにピンと来るには「(過去に起こったことを)知っていることが必要になる」。そのピンと来る若いひとって、いったいどのくらいいるのか…妻夫木くんや仲村さんの役名、エッグの選手三人が並んだときの三桁の背番号、戦前中止になった東京オリンピックがあったこと。第二次世界大戦前後の時代背景をある程度把握していないと、受ける衝撃にかなり違いが出るように思う。……この辺りを共通認識として持てるのは、自分の世代がギリギリではないだろうか。野田さんがパンフの冒頭に書いていたように、「知った気になっている過去」は、どんどん遠くなっていくものだ。

勿論、今は知らなくても、今回観たことをきっかけに「知った気にな」ればいいのだ。しかし少し前に鴻上さんやケラさんが話していたように、「1995年以降アンケートのレスポンスが随分変わった」と言う話を思い出す。もっと解りやすく、もっと説明を。これらの割合がどのくらいなのか…それ以前に、観劇人口と言うもの自体が少ないのだ。そんなこと迄考えてしまった。

以前松井周さんが「歴史を疑っている」と言う話をしていた。「実際に見たひとがもはやいない昔のことって、ホントにそうだったなんて誰にも判らない。江戸時代って本当にあったのか?」。同様に、過去を過ちとして繰り返さないようにと思い続ける解釈は、時が経てば経つ程変容して行く。自分が興味を持ち、作品を観たり聴き続けている人物たちが、ここ数年共通して口にしていることがある。“戦争”への予感だ。言葉通り受け取ってもいいし、その言葉から連想される災いとしてもいい。NODA・MAP本公演に限って言えば、野田さんが過去を検証すると言う手法でそれらをハッキリと書き始めたのは『パンドラの鐘』が最初だったように思う。その後『ロープ』『パイパー』と視点は国外や地球外に向いたが、『ザ・キャラクター』で再び国内に戻ってきた。過去に起こった闇を光の下へ引きずり出す。このことは知っておいた方がいい、それらは自分が生きていた間に起こったことではない、それでも「知った気になってい」た方がいい。

以下若干ネタバレありますので、未見の方はご注意を。

国民を熱狂させるJ-POP(音楽)とスポーツ、と言うモチーフは、終盤になるにつれスポーツへの比重が高くなって行ったので、音楽の扱いが若干宙に浮いてしまったような印象を持ちました。プロパガンダとしての音楽、慰問としての音楽はこのモチーフひとつで作品ひとつ書けるようにも思うので、観客としてはそれをいつかまた野田さんの書いたものとして観たい。深津さんの歌声は麻薬的な魅力がありました。妻夫木くんの“搾取され捨て置かれる”人間のあっけなさ、藤井さんの権力への身の処し方、秋山さんの冷徹さと表裏一体の明晰さの表現も素晴らしかった。時代に巻き込まれ悲しい最期を遂げる大倉くんの演技も印象的でした。そして舞台ではいじられ甲斐のある役柄の多かった仲村さんが、映像の世界で見せていた強靭な恐ろしさをついに舞台でも見せた。これは収穫。

余談だが以前仲村さん、悪人の役が続いていた頃「ご近所でウチが『ここがあの犯人の家よ』『また犯人よ』って言われてる……」と冗談めかして話してたことがあったなあ。コミカルな役を続けて観ていたので忘れていたよ、このひとがファナティックな面を見せるとどんなにおっかないか……黙って背中を見せているシーンにも釘付けでした。あとすごい身体作ってきましたね、宣美の写真より筋肉増量していました。一瞬特殊メイク?とまじまじと見てしまったよ。胸筋動かしてるの見てわっメイクじゃなかった、と思った…アスリート役とは言えここ迄仕上げてくる辺り流石です。

出演者は皆強い磁力があり、アンサンブルのなかにも印象に残る人物が多かったです。以前小劇場で観た役者さんがちらほらいてあっと思ったこともちょっと嬉しかったり。

舞台装置の見立てが言葉に繋がっていました。選抜された選手が使用するロッカーは、“丸太”を収納し運搬するロッカーになり、捨て置かれるひとびとの終の住処…ハートロッカーになる。たまたま最近『ハート・ロッカー』を観直したりしていたので、選手控え室のロッカーがハートロッカーになった瞬間の、言いようのない気持ちは胸の底に澱となって残った。多くのロッカーの移動が場面転換や人物の出入りのマントとして使われ、その段取りの多様さに演者が若干手間取っていた印象もあり、その目まぐるしさにこちらの関心や興味が寄ってしまったシーンもあった。これらがスムーズに行くとより話に集中出来たかも。

個人的には、あの部隊に関しての文献は一時期興味があって読み漁っていたことがあった。きっかけは森村誠一の著書で、これについても捏造だ、事実ではない、これはプロパガンダ小説だと言った論争があった。真偽はさておき、“丸太”と言う呼称はこの本で知った。学校の教科書にそういった記述はなかったと記憶している。自分の記憶も改竄されているのかも知れないが、これも「知った気になっている過去」だ。これひとつとっても、“丸太”と呼ばれた人間がいたことを「知った気にな」るのは必要ではないかと思う。

リニューアルオープンした芸劇で上演される初めての作品で、改修中の劇場を訪れる女子高生たちと言う幕開けを提示し、観客を現実から劇世界へと連れて行く。そして最後の最後、野田さんが野田秀樹として舞台に立つ。クスッと笑える台詞とともに、観客を現実に引き戻して幕切れ。このフックをどう捉えるか、今後考えていくことになると思います。あまりにも重い歴史を少しでもポップにするためか、「知った気になっている過去」を「知った気になっている」だけだと我に返らせるためのスイッチか。

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その他。

・リニューアルした芸劇中劇場=プレイハウス、音がかなり散らなくなってました。ちゃんと改善されてる!
・野田さんがホームとして使う劇場なら言葉が通る音響にしてくれよー!と思っていたのでよかった……
・改修についての話は、芸劇で配布されている『東京芸術劇場リニューアルオープン特別号外:芸劇、劇的リニューアル。』のインタヴュー記事がとても面白かった。インタヴュアーは徳永京子さん
・舞台に立つひとだからこそ気付く舞台機構について、粘り強く要望を通していったそうです。芸術監督が現場のひとであるってのは大事なことですよね……

・野田さんと言えば坂口安吾のイメージが強いですが、今回寺山修司への思いが描かれていたのが印象的でした。ここ迄具体的に名前を出してくるとは。舞台に現れない重要な登場人物。『エッグ』は寺山修司が書いた『ノック』と語感を重ねたのかも知れません

.椎名林檎の音楽、まるまる二曲SOIL&“PIMP”SESSIONSが参加しています。おおお、ソイルの演奏を録音とは言え芸劇で聴けるとは!その他の曲も椎名さん周辺のミュージシャンが演奏でガッツリ参加。豪華です



2012年09月14日(金)
『フワリカ!! PART23〜AVAN-POP CHRONICLE〜』

エガワヒロシPRESENTS『フワリカ!! PART23 〜AVAN-POP CHRONICLE〜』@Koenji HIGH

エガワヒロシさん主催のシリーズライヴ、今回のテーマは“AVAN-POP CHRONICLE”。出演者は333(bababa)、after the rain、小林建樹、エガワヒロシ。333とエガワさんはバンドセット、after the rainは秋山勝彦さんのギター弾き語り、小林くんはエレピの弾き語り。

小林くんは一月に行われたPART21“SINGER SONG-WRITER NOW!!”以来の出演です。成程確かにSSWでアヴァンポップ。エガワさんと小林くんの信頼関係のようなものが垣間見えたイヴェントでした。

「久し振りに会ったんだけど、今の彼はやさしい感じ」とエガワさんが仰ってましたが、その言葉通り終始柔らかい音とふんわりとした歌声のステージでした。しかし一音鳴らした途端、一声発した途端に場の空気をあっと言う間に変えてしまうのは毎度のこと。音がまるくて優しくても、本人リラックスして演奏しているようでも、なんと言うのか、独特の緊張感があるライヴなのです。これがたまらない。

メロディはポップでひとなつこい、しかし各所にフックが利いている。そして声の使い方といい、唄い回しといい、それにぴったりと寄り添うピアノの演奏といい、実に複雑で、所謂手癖で弾いている感じがしない。常に感覚と腕を磨き続けるアスリートのような姿を見せるが、ステージにいる本人は終始笑顔で、実にリラックスした空気を漂わせている。聴く側は、その音楽の美しさ、柔らかさに魅了されつつも、その背後の激しさと厳しさに、畏怖さえ感じる。

今回はレア曲ばかりで、未発表曲も多かったので特にそれを感じた。「禁煙禁園」って曲、面白かったな。「B.B.B」ではバッキングのコードを微妙に変えて弾いていた。途中「間違ってた、こっちだったね!」と通常の音に戻して笑っていたが、実のところ前者の音にもメロディは微分音単位でマッチしていた。音の濁りが灰汁として、より味わい深くなっていたと言おうか。意識的なものかは判らないが、その音の調えっぷりには正直身震いした。

天才と鍛錬と。美しく楽しいメロディであればある程、気付けば真顔になり、喰い入るようにその演奏を見詰め、聴き入ってしまう。この感覚、個人的には彼と矢野顕子さんにしか感じたことがない。

ご本人、こういうことはどうでもいいんだろうなあ、と言うか気にも留めていないだろう。天才だから。このひとには何のてらいもなく天才て言葉を使えるわ……って、これ毎回言ってるような気がする。しかしホントにそうなんだからしょうがない。ライヴの機会が本当に少ないのですが、何せ天才だからやりたいときにふっとやれればいいのだろう。焦燥感は作品の中にだけある、怒りや恐怖は曲の中にだけある。そういう意味ではここ数年の間観ることが出来た数少ないライヴは、彼が自分の部屋で好きな曲を好きなように演奏しているのを聴かせてもらっているような生々しさがある。次はいつ聴けるか判らない。MCで「SNSを活用出来ない」と仰っていた通り、積極的に告知とかをするひとではないので(フジの井手綾香ちゃんのサポートも事後報告だったから見逃したよ……)、少ない機会を逃さないようにしたい。自分にとっては大事な大事な音を奏でるひとです。

とは言うものの、MCはホントにユルくて不思議ちゃんなので、この日も一緒に観たささんと「このひとに音楽があって本当によかったよね〜」なんて話しました。次回も気長に待とう……。

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セットリスト

01. B.B.B
02. Bless
03. 果実
04. 赤目のジャック
05. (インプロ要素ありのインスト)バガデル
06. 夏の終り
07. 禁煙 禁園

追記:ご本人のDiaryにセットリストがアップされていたので訂正。きんえんってこの字だったのか!「果実」「バガデル」「禁園」は初披露だったとのこと

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初見の333は大阪から来たとのこと、格好よかった!Gの女の子がむちゃいい音出してた。after the rainはex. P-MODELの秋山さんのソロユニットで、言葉の力のある歌でひきこまれた。エガワさんは歳も聴いてきたものも多分すごく被ってると思う、ってこれ前回も書いたか。いやそれ程身に覚えのある音してるんですよね……セッティング間に流れるBGMと言い、出囃子といい、映像の使い方といい、世代的な親近感をつい持ってしまいます。今回の出演者、皆力のある音ばかりですごくよかったなー。しっかり作られたいいイヴェントで、もっと聴くひとが増えればいいのになと思いました。



2012年09月09日(日)
『アベンジャーズ』(IMAX 3D)

『アベンジャーズ』(IMAX 3D)@ユナイテッドシネマとしまえん スクリーン8

来週『バイオハザードV リトリビューション』が封切りになったら一気にIMAXシアターはそちらに切り替わりそうなので、と慌ただしくとしまえんへIMAX 3D遠足。初めてとしまえんにとしまえん以外の用事で行った…遠足テンションになっていて、訳も解らずIMAX 3D料金に200円プラスしてウィンブルシートにしてみる。音に合わせてブルブルするだけでした。楽しかったからいい……。話逸れるが一昨年観た“BULLET SOUND”で上映された『鉄男 THE BULLET MAN』、震動させる装置がなくてもビリッビリだったわなあと思い出した。あれはホントにすごかったな。

しかしIMAXシアターはスクリーンが天井から床迄ビッチリで画面が視界いっぱいに拡がるし映像もすごいクリアだし(ロキの涙もクッキリ見えた)音も迫力あるしで、『アベンジャーズ』みたいな作品はここで観る価値あるわなあと思いました。3Dでホークアイの弓矢もビュンビュン飛ぶぜ!ラストカットが始まった途端に笑い声、終了後には拍手が起こったりと、おまつり気分で楽しめました。リピートのひとも多かった様子。

パンフ(超充実)を読んだり原作知識を入れたりした後のリピートだったので、初見時スルーしていた箇所にもいろいろ意味が見出せて面白かった。ソーとロキの関係とか、キャップとアイアンマンの関係とか、お父さん絡みでいろんな含みがあるんですね。そんで皆長所短所があって、凸凹した人間(神もいるが)関係がチャームになる。

いんやそれにしても…あかんわーロキが気の毒過ぎて好きになりそうだわ。背景を知れば知る程不憫!で、それを知った上で本編を観ると、なんでああ煮え切らないのかに納得がいくと言うか。悪に染まりきれない葛藤と逡巡の根っこが出自と家族にあると言う…これは根深い。チタウリのマンハッタン攻撃が始まった際、そのあまりの惨事にうわーエラいことになっちゃった、みたいな顔を一瞬するんですよね。そこを兄ちゃんにどーすんだおまえこんなになっちゃって!とか責められると「もう遅い!」とか言うし、おまえ……かまってちゃんの見返りは大きい。サノスに「失敗したら苦痛をずっと味わわせてやる〜」とか言われた後に「うわーどないしよ」みたいなしょぼん顔になってるとこもなー…なんかもう。

ロキって力はあってもそれを悪に振り切って使おうって腹が決まってないんですよね。だからあんなにヘタレになっちゃうんだわ。そう思うとなんかかわいく感じますね……とは言ってもマンハッタンあんなにしちゃって、規模がデカ過ぎます。迷惑です。巻き込まれたひとの身になれ。ひとじゃないから解らんか。演じるトム・ヒドルストンってドイツのゴシックバンドにいそうなルックスで、それがまた不思議ちゃんに華を添えていたように思います(?)。反面ソー兄ちゃんの大雑把っぷりは見てそのままなので、裏を読んでその心理は…とかあまり勘繰らないでいいのがいい(笑)。怒りのナイスガイ!ラストカットの食べっぷりもいい、そのシャワルマは旨いかそうかそうか。

ロキ、今やってる原作ではこどもになって人(神)生をやりなおしてるって展開だそうで、現在12歳だそうです。うわあ気になる。うーん原作にも手を出しそうだ、危険だ。チームの過去映画作品漁りの旅にはきっと出ることでしょう。

そんな規格外(GUY)に混ざってがんばるキャップにはやっぱり好感を持ちます。ビームも出せないし空も飛べないけどキャプテンアメリカ!コールソンがサイン貰いたいのも解る!ああ早くサインしてあげればよかったのに!しかし「新しいユニフォームは私がデザインしました」ってコールソンも随分よのお…ああそれだけに、それだけに……(涙)あーコールソン生きてればいいのにー!反面自分でBGM用意して登場するアイアンマンもね…いいよね……。

あ〜ハリウッドのSFアクション映画ってホント楽しいな〜。両方(観て)読んでるひとにしか通じない話題ですが、柴田昌弘の『紅い牙』シリーズ(自分内大好きマンガ不動の第一位)をハリウッドで実写映画化してほしいよ。ハリウッドならきっと出来るよ。『AKIRA』も期待はしてるんですよ…登場人物や場所の設定を変えなければ、ね……。それはともかく『紅い牙』、今思うとランやソネットの苦悩がハルク、キャップのそれに重なる部分があったりして、柴田先生その辺りちょっと意識していたのかなと思ったりしました。二十年以上経ってこんなことに気が付くとはな。あー『アベンジャーズ』観てよかった。

さて(さてか)ホークアイですが、IMAXのクリアな映像で観ると洗脳されてるときの瞳の蒼さが結構気持ち悪い。洗脳されてるから仕方ないが。ジェレミーはもともとの碧眼もいい感じに綺麗な色なので、それを見られる時間がちょっと短いのが残念だわとリピートすると贅沢なことを思ったりしますね。しかし洗脳が解けてからの瞳は活き活きしてるんでいい!目がいいのが自慢の役だしな!ジェレミーって名前だけでもパールジャムファンとしては贔屓するのでホークアイは何度観ても素敵だわ〜。そしてPJと言えばサウンドガーデン(こじつけ)の主題歌をIMAX環境で聴けたのも嬉しかった。先週末からあと一押し、と言う感じなのか新ヴァージョンのTVCMがオンエアされてるんですが、主題歌フィーチャーしてるんでお茶の間でサウンドガーデンが聴けます(おおお)、しかも「サウンドガーデン」てクレジット入り。TVで…地上波で……サウンドガーデンて文字を!見られるとは!これYouTubeにあがらないかなー。

・ちなみに劇場用予告編のBGMはNINの「We're In This Together」でした

タイトルからしてもうね…ほろり

あーリピートしたいなー(もうか)。吹替版でも観たいんだけど平日仕事終えてから行けそうなとこでやってない。あ、今回『ボーン・レガシー』と『007 スカイフォール』(レイフ・ファインズとハビエル・バルデムが出る!)の予告も観られて嬉しかったです。



2012年09月06日(木)
『すうねるところ』

『すうねるところ』@シアタートラム

休演日明け。篠井さんちゃんといらっしゃいました、ははは。

木皿泉さんが戯曲に初挑戦、演出は内藤裕敬さん。おふたりは既知の間柄とのことでした。パンフレットでの木皿コンビ×内藤さんの鼎談によると、映像のための台本と、舞台のための台本は文体が違うため苦労したところがあったようです。パンフレットは上演後に読みましたが、確かにその辺りの試行錯誤が感じられました。以下ネタバレあります。

台詞のやりとり、ダイアログとモノローグの切り替え。リズムが独特です。「これ、カット割りしていけばすごくスムースに観られる気がする…」と感じました。今この台詞を言っている彼女の表情が、きっと映像ではアップになる。ここだと退きになる。と言ったようなことです。木皿さんが映像畑のひと、と言うバイアスがこちらにかかっていたのかも知れませんが、舞台を観ているリアルタイムでそう感じることってなかなかありません。唐突にも感じられるモノローグも、ここで映像だったら風景が変わると言ったワンクッションがあると思うと違和感なく観られる。

しかし、これらの台詞を「人間ではない者」が話している、会話が人間とそうではない者の間で交わされている、と言う設定があることで、独特なリズムが不器用な温かさとして感じられました。時間に限りがない、命にも限りがない三人の吸血鬼たちが、成長していく人間のこどもを育てる。働かなくても生きていけるのに、こどもを育てるため、学校に行かせるため、彼らはパン屋を経営するだけでなく人体模型彩色の内職迄している。時間は過ぎ、こどもは青年になり、姿形も、服装もずっと変わらない育ての親たちに違和感を感じ始める。

個人的にはこのパン屋さんについてもうちょっと知りたかった。せっかくパン屋さんなんだからなんでパン屋さんなのかなーとか…いや待て、それは単におまえの食い意地が張っているからではないのか……。『負傷者16人』を観たからそう思うのかな。吸血鬼三人の過去についてももうちょっとほしかった。こがねが美に、アザミが家族の繋がりに、夏彦が父親に拘る理由。それらは後に台詞で明かされますが、流れが淡白にも感じました。上演時間が90分とコンパクトだったので、そこらへんもうちょっと粘っこくやってもよかったような気もしました。

南河内でおなじみ藤田辰也さんの情緒ある音楽、朝日と夕日、西日、“茶色い”家具、そしてプロレス。内藤さんらしい描写に満ちあふれていてじんわり。内藤さんが描く別れはいつもせつなくて好きなんだー。

それにしても現代口語劇で女方の篠井さんを観たのって、3軒茶屋婦人会以外では『零れる果実』以来かも。やっぱりいいわあ…古典劇ではない、翻訳劇でもない。舞台だからこそ出来る、舞台じゃないと出来ない現代演劇の女方の役がもっと沢山あればいいのにな。今回は吸血鬼と言う設定を通し、見た目性別も年齢も不詳、でも本人の気分はアラフォー女子と言う、魅力的な篠井さんを観ることが出来ました。私も見習ってデコルテの手入れする(笑)。年齢不詳と言えば薬師丸さんもそうで、殺戮の戦場を見た重さをあの鈴を転がすような声で語ると言うギャップが素晴らしかった。萩原さんはいくつになっても青年らしい瑞々しさと鬱屈を持った方で、瞬間瞬間で親になり子にもなると言う複雑な心理描写を見せてくれました。村井くんは家族に違和感を感じつつ自分の存在についても悩む繊細な男の子を好演。プロレスの技もよく受けてました(笑)。

ある瞬間“行方不明者”と言うキーワードで繋がっているのだと気付く四人。今後それぞれの道を行く(かも知れない)彼らに安寧のときが訪れますようにと祈るような気持ちにさせられる、美しくも悲しい幕切れでした。



2012年09月05日(水)
『東京福袋』

東京芸術劇場リニューアル記念『東京福袋』@東京芸術劇場 シアターウエスト

東京芸術劇場のリニューアルオープンを記念してのショウケース(詳細はこちら)。吹越満、山田広野、近藤良平、3軒茶屋婦人会出演の回を観ました。

トップバッターは吹越さん、挨拶もなしにいきなり出てくる。無愛想な振りして「こんにちはー」「神経質なもんで(と台の位置をなおしたり)」「NODA・MAP初日なのにこっちを選んでくれて有難うございます」とボソボソ言いつつ自らセッティング。その後「5秒後に真っ暗になります、3秒後すぐ明るくなります。5、4、3、2、1、はい!(パン!と手を叩いて暗転)」、そして本編。ぎゃー格好いい、ユルさと鋭さのギャップがたまらーん!

ソロアクト『スペシャル』でやった、吹越さんの右脳と左脳と身体能力がいっぺんに観られる「稽古が必要な大変な作品」と「稽古が必要ない楽な作品」の二本を披露。坊ちゃんとアルゼンチンババアがキッチンでダンス・ダンス・ダ〜ンスのネタ大好きだったので嬉しかったー!いやもーこれホント面白い 。こちらが「稽古が必要な大変な作品」な訳ですが、そうだよ難なくやってるようだけど、吹越さんには背後の映像は見えていないんですよね。すごい緻密、ちょっとズレたらパー。スタッフクレジットに映像操作の方(富所浩一さん)の名前が出ているのにも納得です。「稽古が必要ない楽な作品」はワンアイディア、カサカサ傘袋を繋げたものをフーフー吹いてどんどん伸ばすネタ(この説明で解るのか)。じわじわくる笑いの前者とドッとウケる後者、ショウケースとしてもお見事。

当日配布のパンフレットに「私は『福袋』というものに『中に何が入っているのか分からないがその膨らみに値段の割にお得感を抱き購入するのだけど結局ガッカリする』というイメージを持っている。この『東京福袋』はとても親切だ。ガッカリされてもこちらの責任は多分小さくて済む。」なんてコメントしつつ、しっかり練り込んだものを素っ気なく出してくるひねくれっぷりも素敵です。去り際もらしくてよかった!12月の『ポリグラフ』が楽しみです。

続いて『山田広野の活弁天国』。何故このラインナップに山田さんが入ったのだろう…おーもりさんがインディー作品に多数出演していた頃、それ絡みのイヴェントによく一緒に出ていたので、こちらには馴染み?がありましたが。十年くらい前から見てはいる訳ですが、佇まいが全くと言っていい程変わらないわー。今回も後ろ髪が伸びてる以外には衣裳から何から全く変わっていない!映画の作風も変わってない!(笑)それにしてもここで松蔭浩之の結婚披露宴用映像作品を観られるとは思わなかった……。

十分の休憩を挟み近藤さんの『ハレ』、「芸術劇場のオープンを祝う なんやかんやのハレ舞台」。ピアノ演奏に始まり、ブルースハープやリコーダー、ギター、ウクレレ、あとなんだっけ「コンドルは飛んでいく」でよく使われる南米の管楽器もこなす近藤さん多才!間にちょっとだけ踊ったりもしつつ、「さ〜あ今日は踊らないぞ〜」なんて言って客席を沸かせます。途中から松本じろさんが加わりデュオ編成、即興演奏等も。「踊れや」「まだ踊らんのか」なんてボソボソツッコミを入れるじろさん面白かった。最後はユルキメで踊ってくれました。

さてトリの3軒茶屋婦人会『3軒茶屋婦人会的音楽会』。この名義で音楽会てことは、あの三人がゴージャスドレスに身を包んでシャンソンとか唄うのかしら…と思っていた裏をかいてなんとタキシードで登場。ところがあれれ、大谷さんと深沢さんだけですよ。なんだか様子がおかしい。「篠井さんがまだ来ていないんですよ〜!」えええ?

深沢さんも大谷さんも挙動不審、しどろもどろ。しかし舞台に立つ者の性か、振る舞いが芝居がかって見えたので「…ひょっとしてネタなのか?」「しばらくしたらドレス姿の篠井さんが『お待たせ〜☆』とか出てくるんじゃないのか?」と、こちらもどう観ればいいのか困惑。来てない理由を話さないまま携帯に電話をかけたり、その留守電に皆で呼びかけましょう!「早くきて〜!」なんてことをしばらく続けたので、篠井さんの身に何かあったのかとドキドキした……。別仕事の撮影が押していると判って正直ホッとしました…こういうとき最悪な事態を想像する癖がついている。欠席は残念だったけど篠井さんが無事ならいい!

そんなこんなで篠井さんの欠席裁判みたいになりつつ、かしましオジバアちゃんふたりの危うく楽しいショウが進行。「篠井さんが今トラムでやってるお芝居(『すうねるところ』。これ私明日行くんだ…)が休演日だからってんでこの日にしてもらったのに!」「篠井さんが『敢えて女装じゃなくてタキシードなんてどう?』って言ったからこの衣裳にしたのに!」「アタシのは東京衣裳よ(大)」「アタシは自前よ!学生のときに買ったやつよ!(深)」(その後ふたりとも実はチーフがティッシュなのとバラして爆笑)「篠井さんがいるから婦人会に見えるのに、アタシたちふたりだけじゃただのオジさんだわ!(深)」「こんなめでたい催しに呼んで頂いて野田さんホントに有難う(大)」「野田(よびすて)が全部選んでるんじゃないわよ!(深)」等々、もう大ウケ。挙動は不審だけどトーク運び、客の転がしっぷりは流石です…しかしハプニングだよなあ、おふたり背中は汗ビッショリだったんではなかろうか。面白転化である意味貴重なものを観た。

と言う訳で「篠井さんが稽古や本番で来れない間アタシたちふたりだけで練習してたのよね!好きな歌を唄うわ。鬼の居ぬ間にってやつよ」ってことで「サマータイム」やらのスタンダードナンバーを交互に唄い上げてくれました。深沢さんの歌には大谷さんがウクレレで、大谷さんの歌には深沢さんがピアノで伴奏。「近藤みたいには弾けないけど!楽器出来て踊れて振り付け出来て…儲かってるんでしょうねえ〜(深)」終始逆ギレ気味の深沢さん面白かった…オネエエンタメの強さを見た。と言えば『紅姉妹』が某賞を受けたときの話もしてくれたんですが、そのときのエピソードにもジンワリさせられました。

終盤篠井さんからお詫びのFAXが到着。「FAX!今どきメールじゃなくてFAX!(深)」文面が縦書きで、うわ〜篠井さんだ〜って感じでほっこりした。いやはや楽しかったです 。

新しくなった芸劇はオレンジがキーカラーかな?全体的に明るく温かい雰囲気になり、トレードマークでもあった巨大エスカレーターが消えていました。個人的にはアトラクション的な景観で好きだったんだけど、安全性を重視すると設置を続けるのは厳しいのでしょう。山田さん以外の全員がネタにしていたようにNODA・MAP『エッグ』も初日を迎え、いよいよ始まったと言う感じです。野田さんの『劇場の灯を消してはいけない』を心に留めつつ、新しい芸劇の未来に期待。



2012年09月02日(日)
『アベンジャーズ』(2D)

『アベンジャーズ』(2D)@新宿ピカデリー スクリーン2

まずは2Dで観ました。2Dも3DもあわよくばIMAX 3Dも、吹替版も観る意気込みですがさてどうなる。IMAXシアターは近所にないので遠足プランを練らねばなりません…。

アメコミは『ウォッチメン』『ザ・リーグ・オブ・エクストラ・オーディナリー・ジェントルメン』を読んだことがあるくらい。『シン・シティ』映画版はベニシオが出たので楽しく観た。スパイダーマン、バットマンシリーズは虫食いで観ている程度…アイアンマンやソー、ハルクは観ていない。前述のアメコミにも、彼らは出てこない。なのにーなーぜー今作を観ようと思ったのか〜。ホークアイ役でジェレミー・レナーが出ているからですよ……。

素人がいきなり観て解るものなんだろうか…と、とりあえず各キャラの設定等は予習してみた。しかしキャプテン・アメリカとかは1941年からシリーズで描かれ続けているんですよ…お、奥が深過ぎてキリがない……。ぼんやりと「ウルトラマンと仮面ライダーとゴレンジャーとガッチャマンとヤッターマンとピカチュウとナウシカ(いや峰不二子か?)が一堂に会すと思えばいいのか」と諦めて出掛けていきました。てかちゃんと予習してたら上映期間が終わってしまうわ。以下ネタバレあります。

予備知識なく独立した一本の作品として観てもとても楽しかったです!前述のように門外漢の私でもキャプテン・アメリカやハルクと言ったキャラクターは知っている訳で(そう考えるとこれらの認知度ってすごいよなあ)、ではそのキャラクターはどんな能力を持っているんだろう?どんな性格なんだろう?ってところはストーリーにうまく組み込まれて紹介されていました。トリヴィアを知っていればああ!となる要素も多数挿入されている気配もあったので、復習したい欲も沸く。アクションもCGも、ハリウッド王道娯楽映画のワクワクと楽しさを見せてくれました。

ツッコミどころが多いのもかわいげがあった。敵役のロキが…間が抜けている……。序盤の征服っぷりはまぐれだったのではないかと思ってしまう程その後はすぐ捕まる、すぐボコボコにされる、すぐまんまとひっかかる。あまりのやられっぷりに、段々不憫に思えてきた。しかしどんだけボコボコにされても死なない辺り流石神話の住人ですね。それが役に立っているのか解らないが。極端な話、これソーとロキの兄弟喧嘩ですやん…神様の兄弟喧嘩すごい迷惑!マンハッタンめちゃくちゃ!

その他いろんなところが雑です(笑)。そんなんで解ける程度の洗脳かとか。そんな雑な洗脳にまんまとかかってしまうホークアイはきっと心の綺麗な子!(ひいき)

アベンジャーズメンバーの構成がまたよくて。神様(人外)、科学の力で特殊能力を得た人間(半人外?)、財産を存分に注ぎ込んで作り上げた戦闘装置を装着した普通の人間、訓練を受けた普通の人間と言う、出自も性格もバラバラなキャラクターたち。当然摩擦が生まれます。そのあれやこれやにニヤニヤする。ちょー皮肉屋さんのスターク(アイアンマン)とロジャース(キャプテンアメリカ)のいざこざが面白かった…70年眠ってて浦島太郎状態のキャップに「ピラティスをやればいい。ああ、知らないか」とか言うスタークちょー意地悪!それに対して別話題で「これは解るもん!フン僕だってナウな話が出来るんだぜ」となったロジャース(でもズレてる)に不憫な子…みたいな反応を見せるスタークちょー意地悪!そんなスタークもバナー(ハルク)には優しいのねー。バナーのひっそり暮らしてたのに…て感じもよかったな。

個人的には、ちょっと恥ずかしい衣裳(いやあ…あのてらいのないコスチュームを堂々と着られるってのが……)の、正義感の塊と言うか真面目か!なキャップにググッと好感を持ちました。典型的なアメリカの良心、正統派の正義の味方。一歩間違えばすごいウザい子なんだけど、熱い思いが暑苦しさにならないさじ加減が絶妙。的確な状況判断で采配を揮うシーン、よかったなあ。成程確かにあなたがキャップだ!と言いたくなります。あとですね、彼に関しては以前、森美術館で観たGilles BARBIERの作品『L'Hospice(老人ホーム)』がすっごい印象に残ってて、せつなくなった憶えがあるのです。

・ストレッチャーに載せられているのがキャップ
・別角度。ヒーローも生身の人間なのよって言う…

元気で若々しいキャップが観られてなんかじんわりした。ブラックウィドウをさりげなく盾で守るとこも紳士で素敵!

こまごましたエピソードもいちいちよかったなー。トレカとか。はやくサイン書いて上げれたよかったのにロジャース!(泣)コールソンさんちょーかわいそう……しかし一応含みがあった気がするので、死んでないかもと言う期待を持ちたい。ソーの「(ロキは)養子なんで」って言いようにもあんた酷い、そりゃロキもあんたのこと憎らしく思うわと思ったり。そうそう、ソーは(シャレではない)すごく簡単に言うと雷様だよね…ロキの「雷の後が怖い」って台詞ウケた。これ観てから雷が鳴るとソーが暴れてると思うようになりました。うるさいうざい。

さてホークアイ。CMでは個別カットがなかったりポスターもなんだか少なかったり、役の知名度もあんまないし(今回ジェレミーの出演が決まって初めてアメコミにこういうキャラがいるって知りました)、出番あんまりないかもな…なんて思って映画館へ出掛ける迄の間ちまちまwebのチェック等しておりました。そしたらこんなまとめを見付けました。

・ホークアイ(笑)- Togetter

あ、なんか面白いキャラかも…違う意味で楽しめる(おい)かも……と思った。そんでようやく観に行けて、そしたらあなたop後数分もしないうちに登場してすっごいうろたえた。アベンジャーズメンバーでいっちゃん最初に出て来たYo!しかもあっと言うまに洗脳されたYo!上記まとめの「ホークアイは悪いやつにそそのかされてアベンジャーズをやめてしまう!ホークアイの悪い癖さ!(彼は凄く騙されやすいんだ!)」がいきなり反映されてた!(爆笑)

ちゃんと見せ場もあって(て言うかものっそいあった)よかった…「弓矢が得意って言っても生身の人間が超人たちにまじってどうすんの」なんて思っててすまんかった。てか弓矢が上手ってのはともかく、視力がすんごいいいってのもまああるとして、見てない方を射てるってのはもはや超人ではないか。登場時「巣にいるよ」とか言われて、上〜の方にひとりでぽつんといる姿にもときめいたわ!猛禽!そして一匹狼!(萌) こんな有様ですから前半はさらわれたホークアイをブラックウィドウが助けに行く話として観ました。頭おかしい。エンドロール後に出るカットのホークアイの脚の置き場にも注目ですよ勿論!ちょっと、ふたりは以前に何があったの!

スカーレット・ヨハンソンも左利きだし、チームではふたりだけ普通の(一応な…)人間だし、ちっちゃさもいいし(てか周りのひとが皆おおきすぎる。ジェレミー一応178cmあるんですよ…)でいいコンビだったわー。ふたりとも過去にワケありぽいし。過去と言えばホークアイはサーカスで育ちましたって設定を知ってまた萌えたりしました(…)。

左利きと言えばリネさんとtwitterで話してたんですが、ポスターやパンフでホークアイがときどき右利きになってるのが気になる。これに限らず、アメリカって写真の逆版に頓着ないのか整合性重視なのか、写真の左右反転におおらかですよね。ジャンボリー……。で、パンフレットに『マイティ・ソー』にホークアイとしてカメオ出演したジェレミーの写真が載っていて、右で弓を引いていたのでまーたーこれも逆版かーいと思っていたら、実際本編でも右で引いてるらしいのです。演出として何かあったのかしら…今回左で堂々?引くようになった経緯とか知りたくなりました。ああ気になるよ!

映画館には『ボーン・レガシー』の巨大ポスターがあちこちに展示されており、こちらも楽しみだわーとウキウキです。てか一年で三本(M:I4、アベンジャーズ、ボーン)も出演作が観られてしまうジェレミーバブル、今後が恐ろしい。