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2014年06月26日(木)
『ムシノホシ』

大駱駝艦 天賦典式『ムシノホシ』@世田谷パブリックシアター

初日でしたーいやっ今回すごかった! いやいや毎回面白いけど今回のは迷っているひとは行って絶対! て叫ぶくらいですよ! 創立四十周年を越えている集団に対しての言葉にしては変だけど、ここは敢えて今ノリにノッてると言いたい。何度目かの充実期を迎えているのではないでしょうか。しかもその充実はさまざまな革新があってのこと。決して停滞することのない「なんでもあり」「来る者拒まず去る者追わず」のこの集団の面目躍如たる由縁でもあるのでしょう。

オープニングから結構衝撃、円を描いて歩いている艦員たちが着ているのはほぼ普段着。パーカー、ワンピース、ワイシャツ。そのまま街に出て行ける。しかし顔や身体はいつも通りの白塗りで、この違和感にまずアガる。歩き乍らのステップもバレエのよう。このバレエ的な動きは随所に見られた。バレエに代表される上へ向かう(跳躍)西洋のダンスに対し、下へ向かう(摺り足)のが東洋の舞、そこからの暗黒舞踏、と言うイメージを軽やかに乗り越える。もともと大駱駝艦はそういうところから自由なのだが、近作では特にこの変化を感じることが多い。

以降のシーンではいつも通りの様子になるのだが、今回ポップさがより前面に出ていた。男性ダンサーたちが被っているのは逆さにしたやかん。注ぎ口が象の鼻のようになっている。続いて出てきたのはゴーグル替わりのおたまを装着した男性ダンサーたち。登場時には笑いが出たがこれが格好いい! やかんなんてダフトパンクのヘルメットみたいよ! 水黽にも蜘蛛にも見える動きでフロアをカサカサと這いまわる。身体的には過酷なポーズと動き、次第にダンサーたちの息があがり、身体は汗で艶を増す。はあ、はあと言う息づかいがやかんのなかから聴こえてくる。酸欠になるのではないかと心配になるが、その息づかいに色気が宿る。ちなみにこのやかんにもおたまにも目のところには多数のちいさな穴が空いている。昆虫の複眼のように見える。

今回は松尾芭蕉のイメージか? 俳人も現われ、虫に関する句を詠む。俳人は大きな声、はっきりした発音で笑う。狂言の笑いの型だ。大駱駝艦のメンバー数人が、春に野村萬斎の舞台に出演していたが、そこからのフィードバックを感じる。こういった要素をガツガツと取り入れて行く貪欲さと柔軟さが、大駱駝艦の魅力でもある。

装置は天井から吊るされた多数のパイプで、虫籠にもなり牢獄にもなる。ダンサーたちと衝突する度カランカランと音を立てる。その響きが心地よい。雄の虫たちは雌を探し交尾をする。寿命が短いからか交尾も速い。やがて虫取り網を手にしたおかっぱ頭の少女たちがやってきて、虫たちを捕まえ始める。反転し、虫たちが少女を檻に閉じ込める。途中おずおずと出てきた、真っ赤なバレエシューズを履いたおかっぱの少女がかわいらしい。我妻さんかなと思ってよく見たら麿さんだった(笑)。腕をくねらせ、少しずつ歩み踊る麿さんのソロ。恥じらい、恐怖、戸惑い。掌に載せて連れて帰りたくなるくらいかわいい! 少女に虫たちが群がってくる。捕食されてしまったようにも見える。舞台上に空けられた穴に落ちていった少女は、赤いバレエシューズを履いた脚を伸ばしては曲げる。苦しんでいるようにも、踊っているようにも見える。少女はさなぎのような黒い衣裳をまとった異形として再登場し、蝶のような女性ダンサーと交わる。

この女性ダンサーは我妻恵美子さん。近作『灰の人』『ウイルス』でも重要なパートでソロを踊っています。くるくると変わる表情、蛍光ピンクの紙。キューピーのようなかわいらしさ。囚われ、捕食され、交尾し、飛び立っていく。

金粉ならぬ銀粉をまとったダンサーが総登場、その輝きはまさしく虫のよう。ウルトラマンの皮膚にも見える。その妖しさはまさにスペースインセクト! やがて彼らは舞台の地平線へと消えて行く。地球をあとにし、違う星へと彼らは旅立ってしまったのだろうか…地上に留まる人間は、それをただただ見送るばかり。そして「大団円」のカーテンコール、拍手とともにあちこちから歓声が飛ぶ。音楽は三曲をジェフ・ミルズ、七曲を土井啓輔が担当。大スペクタクルなエンタテイメント、これにて幕。