初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2012年08月15日(水)
『セブン・デイズ・イン・ハバナ』

『セブン・デイズ・イン・ハバナ』@ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター2

夏が苦手なのは暑さに弱いうえ、ひととお別れすることが多いからなのねー(生き死に含め。まあお盆もありますし)と自分の日記読み返して納得している今日この頃野口五郎、そんなこと悶々考えたからって気温が下がる訳でもありませんし、それじゃーもっと暑いところの映画でも観に行くか。いやホントのところはベニシオ・デル・トロの商業映画初監督作品を観るためです。

ベニーの初監督作品は『Submission』と言う短編で、公開を目的として撮られたものではなく、勿論日本公開もされませんでした。しかし当時彼の公式サイトでこの作品のビデオを通販していたのです。ここ今はどうなのか判らないけど、当時は有志が無償で運営している所謂公認サイトでした。日本のファンサイトの方に御指南頂き(有難い…)拙い英文で問い合わせを送ったところ、通販は中断してしまったのごめんね、でも再開するときには連絡します、と言う丁寧なお返事を頂いたのでした…(そのときの経緯。ログが残ってるっていいねー)いやあ、懐かしい。

前置きが長い。と言う訳で、ベニーの監督作品としては二本目、商業映画としては初めての監督作品が今作『セブン・デイズ・イン・ハバナ』中の一編「月曜日:ユマ」なのです。

タイトルからも判る通り、キューバの首都ハバナの七日間…月〜日曜日を描いた七編によるオムニバス。ベニー監督作品(月曜)以外の情報を全く入れず観に行ったのですが、ギャスパー・ノエも参加していてビックリ(金曜)。そして木曜のこの主演のひと…な、なんか知ってるこの顔…すごく顔力があるこのひと……と思ってて、パンフ見たら『D.I.』の監督+主演=“ES(エリア・スレイマン)”だった!読んでの通り当時の感想にも内容は「???」だったのに「ツラ構えも魅力的」とか書いてる(ログが残ってるっていいねー・二度目)。パレスチナ問題に関しての知識も多少増えていた当方、アラファト議長の肖像が映るシーンになんとも言えない気持ちに。当時はアラファトも生きていたものね……カストロの演説に彼は何を感じていたのだろう。

月〜木曜は国外から来たひとたちとキューバのひとたちの束の間の交流を描き、週末の金〜日曜はキューバの土地に根ざしたひとびとの生活を描く。それぞれの曜日のエピソードがその後の曜日に繋がっていたりもします。いちばんじわっときたのは土曜日。水曜日に登場する人物の家族の一日が描かれます。テレビ出演もする高学歴の専門職であり乍ら、お菓子作りの内職もしているキューバの生活者の実情。玉子を近所から借りてきて(この描写は月曜日にもあった。キューバでは日常のことらしい)、停電すればひたすら手作業でメレンゲをかきまわす。それでもお菓子は立派な出来で、笑顔でお客がひきとっていく。監督のフアン・カルロス・タビオは七作品中唯一のキューバ人監督とのことで成程と思った次第。

さてベニーの作品は、自身もプエルトリカンであり、ゲバラへの縁もある彼の、ラティーノへの敬愛溢れる一編でした。パッセンジャーへの優しい視線、マイノリティとしての自他。そういえばベニーさんって『トラフィック』のときそのお色気?で男をオトしてたなーてなことも思い出したわー(笑)そしてメキシコが舞台だった『トラフィック』でも、野球に関するエピソードにじわりとさせられたんだったと思い出しました。主人公テディがとった行動、それを受けた“彼女”の対応。ラスト数分間の緊迫感とその後の安堵、カラッとしたほろ苦さとほの甘さ。印象に残るオープニングでした。

キューバと言うとレイナルド・アレナスの『夜になるまえに』が原作も映画も映画のサントラも大好きなんですが、そのこともいろいろ思い出したなー。と言う訳で、夏の夜に聴く『BEFORE NIGHT FALLS』OSTは格別。うん、こういうのがあると夏もいいなと思える。