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Sail ho!
Tohko HAYAMA
ご連絡は下記へ
郵便船

  



Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
東京・上野でガラパゴスゾウガメ発見

東京の上野動物園に、ガラパゴスゾウガメがいるってご存じでした?
教えてくださったのは、オーブリー&マチュリン・シリーズ 動物リストの管理人であるにっけさん。
そこで先日、皆で行ってきました。

上野動物園には、東園と西園があるのですが、M&Cの動物たちはここで見ることが出来るそうです。

ヒグマ(2巻上175P)……東園18
コウモリ(2巻下426P)……東園 夜の森

ヤマネ(2巻上105P)……西園52
ツチブタ(4巻5章)……西園51
ホフマンナマケモノ(3巻上258P)……西園51
ガラパゴスゾウガメ(10巻下98P)……西園 両生爬虫類館
キングコブラ(1巻下37P)……西園 両生爬虫類館

これがガラパゴスゾウガメ(あ、あたまが無い…)


あたまはここ。はずかしがりやです。



「もっと、ビスケット。もっとグロッグ」ホフマンナマケモノ(フタツユビ)。写真提供:Aさん。ありがとうございました。
ジャックが堕落させたのはミツユビナマケモノ。この目でうるうるされたら…。




【次回予告】これが「M&C」4巻登場、マチュリン先生のマイ・ハニー=ツチブタ…4巻5章をお楽しみに。



【特別出演】シロクマ(誰か洗ってやってよ。これじゃ黄熊よ)
ネルソン提督の候補生時代の逸話で有名。(逸話:シロクマと遭遇した時にマスケット銃が不発で、そのまんま銃で殴った…とかいう無茶苦茶な話しだったと)


このシロクマくん、なぜだか一番上の段を端から端まで行ったり来たりしている。
「なんで同じところを行ったり来たりしているんでしょうねぇ?」
「艦尾甲板はきっかり15歩」
「あ、な〜るほど。1,2,3…あ、一歩足りない。14歩でした」
「でも、なんで端まで行くと一旦止まってポーズをとるんでしょう?あのシロクマ」
「それは、やっぱり、ア…ハン、なんですよ」
(以上、ネタもとはホーンブロワー原作でした。)

こんなガイド付きツァーもあるそうです。でも着ぐるみではないようです。



【おまけ】ハリーポッターのふくろう



いやー、大人になってから行ったことなかったけど、これはハマりますね、動物園。
こんなに楽しいところだったとは。

全国の皆様>
「私の地元にはこんなマチュリン先生のハニーがいます」情報を募集したいと思います。
左下の「郵便船」のところをクリックするとメールがつながりますので、お知らせくださいませ。
なにとぞよろしく〜。


***お知らせ***
今週末(26〜27日)は管理人が社員旅行のため、更新はお休みです。
旅行はそれなりに楽しくはあるんですが、休日が全くなくなってしまうというのは、ちょっと大変かも。


2004年06月23日(水)
M&C的エスメラルダ見学記

先週末に、チリ海軍の練習帆船エスメラルダと、インドネシア海軍の練習帆船デワルチが東京・晴海埠頭に来航しました。

エスメラルダについては今回、Salty Friends -- セイルトレーニングシップ海星の元クルーを中心とし、帆船の魅力を広く紹介することを目的としたグループ(ホームページは http://saltyfriends.com。3月にはM&Cバックステージツァーを主催されています-- 主催の特別見学会に参加させていただきました。

この特別見学会は、Salty FriendsメンバーのQさんのご尽力により実現したもので、スペイン語が堪能なQさんは見学会の間、説明・案内役のチリ海軍士官・下士官の方の通訳としても大活躍でした。

現存する数多くの帆船の中で、エスメラルダがちょっと目立っている理由は、縦帆の大型帆船だからではないでしょうか?
古い話しで恐縮ですが、むかし大阪で帆船まつりが開催された時、旧日本丸と旧海王丸、ポルトガルのサグレス、メキシコのクワウテモック、コロンビアのグロリア、ポーランドのダルモジェジィと横帆船が揃う中、エスメラルダだけが、フォアマストのみ横帆であとは縦帆のバーケンティンでした。
その頃の私はまだ海洋小説を知らず、結果として戦列艦もフリゲート艦も知らない単なる児童文学(アーサー・ランサム)ファンだったので、横帆より縦帆の方が馴染みがあり(ランサムに登場する船は縦帆が多い)、以来なんとなくエスメラルダ贔屓になっているのでした。

エスメラルダ(手前)奥はデワルチ


「エスメラルダ」とはスペイン語で「エメラルド」の意。でもその白い船体、白い帆を広げて帆走する美しい姿から「太平洋の真珠」というニックネームも頂戴しています。
エスメラルダの母港は太平洋岸に面したチリのバルパライソ。

ここで、ピンッ!と来た方、大正解です。バルパライソは映画M&Cの最後でアケロン号を託されたプリングスが、捕虜の引渡しと修理のために寄港することになっていた、ガラパゴスからは最寄り(1800年当時。現代は他に近い港がいくらでもあります)の海港。町ごとそっくりユネスコの世界遺産に指定されているとのこと。バルパライソ港と日本の大阪港は姉妹港の関係を結んでいるのだそうです。

ここらへんの解説は全て、Qさんのご説明をそのまま中継させていただいております。
見学会の時にきちんとメモをとっておけば良かったのですが、写真をとりながらメモをとりながら落伍せずにツァーについていくのは不可能なため、これは記憶だけで書いています。
もし記憶違いなどありましたら、これはQさんの間違いではなく私の間違いです。
お気づきになられた方>お手数ながら左下の「郵便船」をクリックしてメールにてご指摘くださいますよう。

さて、これは英国でも日本でも同じですが、伝統ある船の名前は、代々引き継がれていくもの。現在のエスメラルダは、5代目(6代目目?)。チリ海軍の歴史で最も有名なエスメラルダは1879年のイキケ海戦でペルー海軍と戦ったエスメラルダ2世です。

現在のエスメラルダは鋼鉄製のマストを持ち、レーダーなど現代の電子装置を備えていますが、その内部はやはり、昔ながらの伝統帆船。

士官集会室とバーカウンター


M&Cで言えば2度目の宴会(キリックがガラパゴス・プディングを運んでくる)が開かれていた部屋に当たりますが、エスメラルダに勤務する20名超の士官が共有するダイニングルームです。とはいえ豪勢なバーカウンター付、正装でないと入りにくい雰囲気ですが、実際のところはどうなのでしょう?

艦長公室


「艦長の応接間です」との説明がありました。M&Cで言えば、ジャックとスティーブンが合奏している部屋ですか? 調度が豪華でソファーもふかふか、とても軍艦の中とは思えません。

この艦長公室の壁に、日本海海戦の油絵が飾られていました。「三笠(旗艦)から見た和泉」。日本海海戦で活躍した巡洋艦「和泉」の前身は、実はエスメラルダ3世(4世?)。日本がチリから購入した艦でした。
日本では戦後の特殊事情などもあり、日本海海戦のことは忘れられていますが、世界史的に見ると、大国ロシアに小国日本が一泡ふかせたこの海戦は、当時、欧米列強にやられっぱなしだった他の小国たちから予想外の評価を受けていることがあり、驚かされます。

もっともこの日記とて、トラファルガーやコペンハーゲンの海戦の話はしても5月27日(日本海海戦の日。戦前は海軍記念日で休日でした)は素通りしています。まぁ本来が200年前の英国の映画を扱ったHPだからですけど。
ヨーロッパの200年も昔の話なら気軽にできるのですけど、それは基本的に私たちに関わりのない話しだから…という部分はあるのかもしれません。アジアだと、400年前の文禄・慶長の役の話でも気をつかいますし、やっぱりものが戦争である以上、難しいですね。
来年2005年はトラファルガー200年であると同時に、日本海海戦100年でもあるわけですが、でもやはり日本では、イギリスのように無邪気にお祭りをやることは難しいのかもしれません。

士官候補生集会室


話し戻って、エスメラルダの候補生集会室。
M&Cの士官候補生室に比べるとかなり広いですが、エスメラルダは本来、練習帆船すなわち実習船ですから、士官候補生は100人前後乗り組んでいるそうです。ここは航海中に授業を行う教室でもあるとのこと。

医務室(手術室兼)


マチュリン先生の昔と比べて、今は専用の部屋と設備が整っています。盲腸程度の簡単な手術であれば船内ですませてしまうそう。
エスメラルダには1名の外科医と、1名の歯科医、3名の看護士が乗船しているとのこと。歯科医のための部屋もちゃんとあります。ここも見せていただきましたが、ヒギンズの仕事場より大幅に高級でした(笑)。

フトックシュラウド


M&C原作3巻6章に、奮起したマチュリンがマストのフトックシュラウドを登ってしまうエピソードがあります。
これがそのフトックシュラウド。
ご覧の通り、通常のシュラウド(下の段索部分)とは逆の角度をなしており、この写真の水兵さんはすでに上半身が檣台にかかっていますが、この体勢になるまでの何段かは完全に背中を下にして段索にぶらさがることになります。
自分の全体重を支えきれるだけの腕力がないと背中から甲板に墜落するわけで、登っている人も怖いだろうけれど、下から見てるだけでも結構ハラハラします。ましてや3巻の場合はぶらさがっているのは病み上がりの人なのですから…、ジャックとボンデンの気持ちがほんの少しだけわかりました。

最後に、帆船と言ったらこれでしょう…の艦首像(フィギュアヘッド)。
エスメラルダはコンドル。デワルチはインドネシアの海の神様です。




デワルチ全景


エスメラルダ見学に時間がかかってしまったため、デワルチはざっと甲板をまわっただけですが、インドネシアと言えば木の彫刻の凝った家具が有名。それを反映してか艦橋など木造構造物に丹念に彫刻がなされていたのが印象的でした。
こういう木造帆船のありかたもあるのか…と思うとともに、西洋起源の帆船でもその国なりにカスタマイズされて、お国柄が出るのだなぁと思ったのでした。

ご案内いただいたQさん、Salty Friendsの皆様、お世話になりました。ありがとうございます。


2004年06月22日(火)
再映情報 in 神戸

6月終わりの再映情報は神戸です。

CINEMAしんげき
神戸市兵庫区新開地6-2-20-101
神戸高速鉄道新開地駅8番出口すぐ
TEL:078(575)8808

「ヘブン・アンド・アース」と併映
「マスター・アンド・コマンダー」の上映時間は下記の通り
12:35/17:20/22:05〜0:25 ※22:05の回は本編より上映


アメリカのM&Cサイトに、面白い記事が紹介されていました。
カリフォルニアのワインセラー…というのでしょうか? ネットでワイン販売を扱っているサイトのHP。
このページでは毎週、「この映画にこのワイン」という特集をしているのですが、今週のご紹介は、
「マスター・アンド・コマンダー」にはチリの赤ワインConcha y Toro 2003 Casillero Del Diablo Carmenere。
週末に居間でゆったり、DVDを鑑賞しながら、このワインはいかが?…という趣向のようです。

もっともM&Cの時代、チリではまだワインの製造は始まっていなかったようです。
このワイン、解説によるとかなり濃厚な味わい、かつスパイシーのようで。名前にディアブロってついてますけど、これ鬼とか悪魔とかいう意味じゃありませんでしたっけ? なんだかクセモノそうな味わいのワインのようです。


最後は先週の訂正です。
先週日曜日にご紹介した「ヨアン・グリフィスM&Cを語る」の記事の原文ですが、「ヨアンの公式サイトで全文を読むことができる」と教えていただきました(Uさん、ありがとうございます)。
そして、Movieline6月号というのは大嘘で、正しい出典はHollywood Life 6月号でした(全然ちがうじゃないですか!)。

記事原文をお読みになりたい方、こちらのヨアン・グリフィス公式サイトトップページから上部の「Articles」をクリックすると、記事一覧が出ますので、本日現在は一番上の「Article: A Knight's Tale (Hollywood Life June 2003)」をクリックしてください。
でもこの記事のタイトルKnight's Taleって、ヒース・レッジャー主演でポールも出ていた「ロック・ユー」の原題ですよね?
ヨアン今度、アーサー王の騎士を演じることになっていますから、こういうタイトルなのだと思います。

「キング・アーサー」の日本公開も1ヶ月後に迫りました。ヨアンはジャパン・プレミアに来日するという噂ですがどうなるのでしょう?
これでブレイクしてくれると良いのですけれども。
べつにファンというわけではないのですが(たぶん…役者さんとしては、ドラマの中で彼の親友を演じたジェイミー・バンバーの方がひいきだと思う)、「ホーンブロワー」は原作ファンだった関係で、98年の英国での最初のTVドラマ放映からロンドン在住の友人にビデオ録画してもらい、日本でもできるだけ多くの人に見てもらいたいと思ってDVDを見る会を開いたりとか、NHKに放映のお願いをしたりとか、わずかばかりながら普及活動に関わってきましたので、その主役の俳優さんがやっと掴んだ大きなチャンス…と思うと、なんだか母親…とは言わないですけど、遠い親戚くらいの身内感を、勝手にいだいていたりするのです。
LOTRのあと、ショーン・ビーンのファンが増えたのがとても嬉しかった(これも、原作ファンだったおかげで、94年のシャープTV放映を英国在住の友人に録画して送ってもらった経緯があり)と同様、同じ経験をもう一度できたらなぁと思っているのですが…、果たしてどうなりますことやら。


2004年06月18日(金)
ヨアン・グリフィスの「M&C」コメント

アメリカのM&Cサイトに、Movieline誌6月号で、「ヨアン・グリフィスがインタビューの中でM&Cの話をしている」という投稿が載っていました。
ヨアン・グリフィスは、C.S.フォレスターの海洋小説をTVドラマ化した「ホーンブロワー」で、主人公のホレイショ・ホーンブロワーを演じ、今夏公開の映画「キング・アーサー」でランスロットを演じるウェールズ人俳優。

すわっ!とアーサー王サイトに行ってみたのですが、このヨアン・インタビューの原文が載っていない。
ダメダメじゃない?アーサー王サイト。M&Cサイトに載ってる情報がそちらに載ってないって問題よ。
というわけで、結局、Movielineの原文全文を読むことはできず、手に入ったのは書き込みの投稿文だけ。
正確なものかどうか確認をとることができなかったのですが、面白いコメントなのでご紹介します。
付記原文は、ファンの投稿文をそのままコピーペーストしています。

ムービーライン誌:ホーンブロワーというのは大変魅力的なキャラクターですが、あなたにとってのルーツなのでは?

ヨアン・グリフィス:彼は信じられないくらい聡明で、押しつけがましい艦長ではないが、やる気のない乗組員たちをその気にさせてしまうコツを知っている。ラッセル・クロウがM&Cで演じたジャック・オーブリーとは正反対の人物かもしれないね。
IG A= ..."he's incredibly bright and he understands how to encourage people
to do things agaisnt their will without being an imposing captain. He's the
opposite of Russell Crowe as Jack Aubrey in M&C.

ムービーライン誌:映画M&Cの話はなかったんですか?

ヨアン・グリフィス:最終的にポール・ベタニーが演じることになった役は、オーディションで公募されていたと思う。でもホーンブロワーの撮影中だったから駄目だった。僕はまだ映画(M&C)を見ていないんだけど、とても見たいと思っているんだ。予告編だけは見たんだけれど。「あぁ、なんてこった。これだけの予算があったら、僕たちのドラマももっと素晴らしいものになったろうに」って思ったよ。
IG- I remember when the auditions came ' round to play the part that PB
eventually played, but I wasn't available because I think I was shooting
Hornblower. I haven't seen it yet, but I'm curious. Just looking at the
trailers themselves I was going, ' Ah, damn! I wish we had that sort of
budget to make ours look as good.!"


ところで、その「ホーンブロワー」ですが、7月23日に発売されるDVDの詳細がこちらのページに紹介されています。
パッケージデザインと特典が素晴らしい!
ホーンブロワーのDVDは私、US版を持っているのですが、はっきり言って日本版DVDはUS版、UK版よりはるかに上でしょう。
ホーンブロワーに関する限り、日本版は間違いなく、世界で一番大切に作られたDVDボックスになると思われます。
誇らしく思うと同時に、たぶんM&Cにそれは望めないことがわかっているので、なんだかうらやましい。
「M&C」US版の発売元FOX社の担当者が「M&Cのようなファンの多い作品については、彼らに満足してもらうようなDVDを作ることは制作者の義務だ」というような内容を語っていましたが、ホーンブロワーの日本版DVDも間違いなく、ファンのためを思って丁寧に作られているのでしょう。製作の会社の方、関係者の方には本当に感謝したいと思います。


話はちょっと移りますが、先日「カレンダー・ガールズ」を見てきました。
英国の田舎町のごくふつうの奥様が、婦人会のチャリティーで自分たちをモデルにした奇想天外なカレンダーを作ろうとする物語。
これは全ての女性の方>におすすめの映画。

生きていくのに大切なものを教えてくれる映画…に年一度くらいは出会えるものですが、今年の大切な映画はこれかしら?
若い方は、今すぐではなくて良いから、DVDでもTV でもいいから、50才になるまでに是非いちど見られると良い映画なのではと。
魅力的に年齢を重ねていく…ということがどういうことなのかを教えてくれる。
でも私でも、この映画を見るには、まだ若すぎるのかもしれませんが。

それでその「カレンダーガールズ」なのですが、主人公の女性たちの写真を撮ることになる若い男性カメラマンが登場します。
いいひとですが、おばさまパワーに押しまくられてたじたじになる好青年。
このカメラマン…私、知ってる、どこかで見た。確かに知ってる。でも何処で?
エンディングのキャストを見て「あ〜〜っ!」と思わず叫びそうになりました。

ミスタ・ホッブス! レナウン号の掌砲長で、ソーヤー艦長に最後まで忠実だったあの人だったんです!
ホーンブロワーの第2シリーズの重要な脇役の一人でした。ヨアン演じるホーンブロワーに対して、ある意味仇役で、常に厳しい表情を崩さずホーンブロワーに疑いの目を向けていた。
いやぁ役者さんって怖いですねぇ。ぜんぜんイメージが違うんだもの。あぁでも久しぶりに再会できてよかったわ。


最後に、こんなものもあります。
ポールベタニーの次回作「ウィンブルドン」の公式ホームページ。
なんだか目つきの悪いテニス・プレーヤーですねぇ? そりゃ試合中はこの目つきでもいいでしょうけど、これって本来ラブ・コメディじゃなかったでしたっけ? う〜ん。


今日はこれからエスメラルダ号の特別見学会に行ってきます。
先週からまた仕事が詰まってきているので、この見学記はたぶん来週末になるでしょう。
気長におまちいただけると幸いです。


2004年06月13日(日)
卵を割らないとオムレツは作れない

5月30日の日記で、You can't make omelets without breaking eggs.
卵を割らずにオムレツを作ることはできない
ということわざを紹介し、その意味を、
何かをしようと思ったら、それに付随するトラブルは引き受けること
…とご紹介したのですが、先日ある国際謀略小説を読んでいたら、このことわざの使用例に当たりました。

そしてわかったこと、
どうやらこれは「付随するトラブルを引き受ける」よりももっとシリアスな状況に適用され、実際のところ「lesser weevil」と同じような意味で使用されているらしい。

読んでいたのはクリス・ライアンの「暗殺工作員ウォッチマン」(ハヤカワ文庫NV1042)、このことわざが登場するのは163ページ。
この本も「蘭に魅せられた男」と同じ2003年8月の新刊で、私にとっては積ん読になっていた本のひとつ。
組織を裏切った元MI5工作員を、暗殺するように命じられたSAS士官の話ですが、これって最終的には「オムレツを作るために卵を割れるか割れないか」という話なんですね。ただしこの場合の卵には、人の命が懸かっています。

映画「インファナル・アフェア」がお好きな方はこの小説、手にとってみられると良いかもしれません。
あれは「潜入者は潜入者にしか理解できない」ですけど、こちらの場合は「暗殺者を本当に理解できるのは暗殺者である」でしょうか? 追う者と追われる者は鏡の表裏一体である…というような。
その意味ではギャビン・ライアルの名作「深夜プラス1」を彷彿とさせるところもありますが、ただいかんせん、21世紀の追撃戦はデジタルで、古き良きこだわりの世界からはほど遠いところにあります。

M&CのYahoo映画評の中に、「プロフェッショナル集団の群像劇の面白さ」という評があったと思うのですが、私がなんのかんの言いながらもクリス・ライアンの小説を読み続けている理由の一つはこの「プロフェッショナル集団の群像劇」だったりします。
彼の小説に登場する兵士たち、諜報関係者は男女を問わず皆、徹底したプロフェッショナル。
それでありながら、主人公の価値観は市井のごく普通の一般人のそれである…そんなところがある意味、「非情の世界の情」を描くダグラス・リーマン(4月11日の日記参照)にも通じる魅力なのかもしれません。もっともそれゆえに主人公は困難な立場に追いやられるのですが。


こんなことばかり書いていると、私って物騒な女だと思われてしまいますね(笑)。
べつにこんな本ばかり読んでいるわけじゃないんですよ…といいわけ。
もっとも昔からスパイ・謀略小説の方が好きなのは、否定いたしませんが。
このHPは海洋小説がテーマなので、そのテーマで書いていくと、どうしても物騒な話が多くなる…というわけでして。
よろしくご理解ください…ませませ。


2004年06月12日(土)
英国海軍とトロイ戦争

映画「トロイ」を見ていて、思わず喜んでしまったのは、トロイ人たちが「Trojans!」と叫んで斬り込みするところ(笑)。
帆船時代の斬り込みには自艦の名前を叫ぶのが習いで、「M&C」でも「サプラーイズ!」とか「アシュローン!」とか言う雄叫びが上がっていたのを、覚えていらっしゃると思います。

なぜ私が「トロイジャーンズ!」で喜んでしまうかと言うと、リチャード・ボライソーの海尉時代の乗艦が「トロイヤン号」だったからです(2巻「革命の海」)。
実はヨーロッパの各国海軍は、ギリシャ神話から艦名を拾ってくることが多い。
アケロン号もそうですね。ギリシャ神話の三途の川の支流から名前をとっています。
映画「トロイ」の中でも、字幕に「三途の川」と出たので、耳を澄ませて聴いていたら、アケロン川ではなくて下流のスティクス川の方でした。もっともスティクス川(スティクス号)もボライソー・シリーズには登場しますが。

「アガメムノン」と言えば、私の場合は、ミケーネの王より先に、ネルソン提督の旗艦。もしくは、むかしジャックが海尉として乗り組んでいた艦アガメムノン号を思い出してしまいます。
それでちょっと興味を持って、映画「トロイ」の主要キャラが、どこまで当時の艦名になっていたか調べてみました。

18世紀末から19世紀初頭の実在艦とトロイ戦争
とりあえず、フィクションの世界は横に置いて、最初に実在艦からご紹介しようと思います。
実在したのは、以下の9艦。付記したのは就役年です。

ヘクトル号(Hector) 74門戦列艦 1774-1808
アガメムノン号(Agamemnon) 64門戦列艦 1781-1809
アキレス号(Achilles) 60門戦列艦 1757-1784

ユリシーズ(オデュッセウス)号(Ulysses) 44門フリゲート艦 1779-1816
メネラオス号(Menelaus) 38門フリゲート艦 1810-1832
テティス号(Thetis) 38門フリゲート艦 1782-1814
アンドロマケ号(Andoromache) 32門フリゲート艦 1781-1811

ブリセイス号(Briseis) 10門ブリッグ 1808-1816
ヘレン(ヘレナ)号(Helena) 14門 1778-1796, 1801-1802, 18門 1804-1814

当時の英国海軍は、砲門の数で艦を等級分けしており、等級が上であるほど、大型艦ということになります。
ヘクトル、アガメムノン、アキレスは三等級艦、ユリシーズ、メネラオス、テティス、アンドロマケが五等級艦。
ブリセイスとヘレンは、等級外の小型艦艇ということになります。このクラスは艦長(Captain)が指揮をとるのではなく、海尉艦長(Commander)が艦長役をつとめていました。

面白いなぁと思うのだけれども、大型艦には男性名を、小型艦には女性名をつけるのですね。
そういう傾向があるのでしょうか?

ただしトロイ戦争の重要な登場人物でも、艦名になっていない人がいます。
パリス(Paris)…の名が無いのは当然(笑)として…艦長が浮気して国を滅ぼしたら大変…海洋小説の場合これはあまり冗談にならない。
トロイ王プリアモス(Priam)が無いのは何故なのか。やはり滅びた国の最後の王だからなのでしょうか?

ただしこのプリアモス、海洋小説にはこの名前の艦が登場する、とのご指摘をいただきました(Uさん、ありがとうございます)。
ボライソー21巻にちらっと出てくるプライアム(Priam)号がそれです。

海洋小説に登場する艦艇とトロイ戦争
海洋小説に登場する艦は、必ずしも実在するとは限りません。
ボライソーシリーズの作者アレクサンダー・ケントは、その時代には実在しない艦を主人公に選んでいることが多いですが、パトリック・オブライアンの場合は、非常に手が込んでいて、実在艦ではあるが実在しない…というトリックを使っていることがあります。

その良い例がサプライズ号。サプライズ号という艦は確かに実在するのですが、ジャックが艦長である1805年には実在しません…実在のサプライズ号はジャックの艦長就任に先立つ3年前の1802年に解役されているのです。

ただしオブアイアンは、回想でしか語られないジャックの過去の経歴には多くの実在艦を登場させています。サン・ビサンテ沖海戦時のオライオン号、ナイルの海戦時のリアンダー号、そして、ネルソンの旗艦として有名なアガメムノン号。…もちろん名前の由来は、トロイ戦争に登場するミュケナイの王アガメムノンからです。

原作小説と映画「M&C」では微妙に設定が異なるのですが、原作・映画双方を照らし合わせ、ジャックが海尉に昇進した年齢とネルソンが艦長職にあった時期を強引に照合すると、どうやら映画「M&C」の中でジャックが語ったネルソンの思い出は、このアガメムノン号時代のもののようです。
ネルソンが艦長として、後には戦隊司令官兼務でアガメムノン号に乗っていたのは1793年〜1796年の3年間。その頃ジャックは24〜5才だった筈で、映画でジャックのセリフになった「カラミーの年齢と同じ頃」よりは少々上なのですが(ジャックが20才くらいの頃、ネルソンは半額給で陸に上がっていたので、それはたぶんジャックの記憶ちがい)プリングスが年少の候補生だったという方はまぁ年齢的に合うので、このアガメムノン号時代で良いのではと思います。

7月に出版される4巻でもジャックのアガメムノン号時代の回想が語れますが、ここではジャックははっきり「アガメムノン号は旗艦だった」と言っていますし、「アガメムノン号で英国に帰還した」と語っているので、4巻のエピソードについては1796年の話だとわかります。

というわけで、皆様>ほら、話はちゃんと「トロイ」から「M&C」の映画に戻って来ましたでしょう?


それにしても、つねづね思うのですが、イギリス人もフランス人もどうして、ギリシャ神話から艦の名前を引っ張ってくるのでしょう? 
敵対する双方が同じ神話から艦の名前をつけているので、同名艦が双方に存在してややこしい。
ギリシャ・ローマはヨーロッパの古典…とは言っても、イギリスはもともとゲール人の国でローマ人は後から攻め入ってきたのでは?

日本人として不思議なのは…、
江戸時代の武士の教養といえば漢典籍…つまりは中国古典で、ヨーロッパの画家たちがギリシャ・ローマ神話を絵画の題材としたように、日本の画家たちも中国古典の登場人物たちを描いてきました。このあたりの事情についてはイギリスと日本に大差はありません。
でもだからと言って、私たちが日本の船に劉備玄徳だの、諸葛孔明だのという名前とつけるかというと…それって、やっぱり、ちょっと抵抗ありません?

やはりこのあたり、西洋人と日本人の、感覚とか国民性の違いなのでしょうか。
日本では戦前の旧海軍も含め、艦に人名を付ける…ということすらしていませんでしたものね。
無骨な空母が「瑞鶴」という艦名であったり、駆逐艦に「村雨」「野分」「狭霧」「萩風」などと名付けていた旧日本海軍の命名基準というのは、グローバルスタンダードから考えると並はずれて風雅だったのだなぁ、と今更ながらに驚くのでした。

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本日、6月6日は、ボライソー・シリーズの2代目主人公、アダム・ボライソーのお誕生日です。
そうか、双子座だったのか…アダム。


2004年06月06日(日)
トロイとマルタと平家物語

【未見注意】5月22日から公開の映画「トロイ」について、前半は軽いねたばれを含みます。ただし後半は、海洋歴史小説ファンからのつっこみであるため、これから映画をご覧になる方がお読みになった方が面白いかもしれません…という矛盾に満ちた感想です。ねたばれを厳しく回避される方にはおすすめいたしませんが、軽微なものなら気にされない方はお読みください。

「トロイ」を見てきました。
こんなHPをやっていると西洋史に詳しいと誤解されそうですが、私の場合、ギリシャ神話は聖書と同程度に、そこそこの知識しかありません。
ギリシャ神話に詳しい方や、「イリアス」をきちんと読んでいらっしゃる方には、この映画、不評のようなのですが、極めてあやふやな知識しかなかった私は、それなりに満足して帰ってきてしまいました。そして、思った感想が、

これって、平家物語だわ。

「トロイ」は様式美の見事な映画です。出陣の厳粛、一騎打の勇壮、火葬の荘厳、落城の哀れ。
軍記ものって、洋の東西を問わず、同じようなものなのでしょうか?
映画のセリフ、どこまで「イリアス」からとっているのかはわかりませんが、ところどころ韻を踏んでいたり、対句になっていたり、聴いていて音的に、とても綺麗な英語でした。

ヨロイもよく見ると本当に綺麗なのですね。
目立たないように紫水晶が埋め込んであるヘクトルの鎧がお気に入りですが、繋ぎの部分に小さな赤珊瑚がビーズ玉のようにはめ込まれているアガメムノンの大鎧も華麗で。「赤糸威(あかいとおどし)の鎧きて」などという軍記ものの一節が浮かんでしまう。

ある意味、元禄時代以前のNHK大河ドラマにも共通する「見せ場」や「泣かせ」があり、古典的ではあるけれど、要所要所できっちり見せてくれる。
…そんなところが、私たち日本人が平家物語なり太平記なりを読んだり見たりする時に感じる美意識に通じて、けっこう「ずきっ」とハートに来てしまったのでした。

これは字幕ではなくて吹き替えで見た方が良かったのかなぁと思い始めています。
ロード・オブ・ザ・リング(LOTR)のローハンは、侍言葉の混じる日本語吹替版の方が様式美が際だっていましたし、ゴンドールの執政デネソールも、日本語版の方が重みが出て救われる。
「トロイ」も翻訳次第ですけれど、もし綺麗な日本の古語になっていたら、これは見事なのではないかと…、私の家の近くでは既に吹替版の上映は終了していて、見ることは叶わないのですが。

原作をきちんど読んでいらっしゃる方には不評の、ハリウッド的ストーリーの改変という批評もわからないではないのですが、…まぁアガメムノンの結末については、私も「あれでいいの?」という部分はあります。
でもあれがハリウッド的かというと、所謂ハリウッドの「勧善懲悪すっきり片づいた結末」からは巧みにハズしてありますし、また逆に、巧みなハズしと言えば「この人、助かっちゃっていいの?」の部分もあり、良い意味で不条理な結末になっているのでないかと。
このあたり「やっぱりペーターゼン監督だから?」と思わないでもないのですが。
…でもその不条理も、某次男坊のベスト・キャスティングゆえに何となく許してしまいますからね(笑)。

LOTRを見た人には、パリスが夜中に弓の練習をしているとそれだけで笑える…とはよく言われていますが、個人的にはブライアン・コックスのアガメムノンと、反抗的な一匹狼ブラッド・ピットのアキレスに間に立って、苦労する中間管理職オデュッセウスのショーン・ビーンも苦笑ものでした。
10年前、別のTVドラマで、ブライアン・コックス演じる上官ホーガン少佐の手を焼かせた反抗的な一匹狼リチャード・ショープ中尉を演じていたのは、どこの誰だったかしら?
…その彼が中間管理職ですか。ご出世おめでとうございます、と言うべきなのでしょうか?

私が「M&C」情報の収集に使っていたアメリカのラッセル・クロウ情報ページ(海外の新聞や雑誌に載った関連記事が紹介されているHP)に、「トロイのアキレスと、グラディエーターのマキシマスが戦ったらどちらが勝つか?」を論じたアメリカの新聞記事が紹介されていました。「M&C」の時も「ふたりのジャック」という、ジョニー・デップ演じたジャック・スパロウ船長との比較記事がありましたが、アメリカの新聞って真面目にこういう企画をたてるから好きだわ。

さてこのアキレスvsマキシマスの記事ですが、
歴史学の教授いわく「アキレスの武器は青銅製であった可能性が高く、マキシマスの武器は鉄製。当然、マキシマスの勝ちだろう」。
古典文学の教授いわく「アキレスには神々がついているが(母は女神で祖父は大神ゼウス)、マキシマスにはついていない。アキレス有利だろう」
大真面目に分析されています。
さらに、体育学の教授いわく「そりゃ、ウェイトならラッセル・クロウだろう、」
……………。
これって、そういう話しですか??? 
この大笑いな記事を、真面目にお読みになりたい方はこちら

そういえば、「M&C」の捕鯨船の航海士ミスタ・ホッグことマーク・ルイス・ジョーンズがテクトン役で「トロイ」に出演していた筈なのですが、1回見ただけでは何処に出ていたのかわからなくて…。
テクトンってトロイ側の将の一人では?と言われていますが、未確認。
どなたかおわかりになった方、ありますか?

どうも私、やはりいまだに、「M&C」後遺症は引きずっているみたいです。

ヘクトルお兄ちゃん…おねがいですから、その格好であの船で、英語で操帆命令を出さないでいただけると有難いのですが…。
あの船で「set sail!」とか言われてしまうと、スターリングラードで英語を話すドイツ兵やソ連兵同様、とっても、とっても、妙。

トロイに登場する船にはへさきに魔よけの目が描かれていましたが、今でも地中海のマルタに行くと、漁船のへさきには同じ魔よけの目が描かれています。
「トロイ」のロケは、このマルタと、メキシコのバハ(M&Cと同じところ)で行ったそうですが、もはやメキシコ沖の太平洋の青をすっかり覚えてしまった私の目には、「ここはマルタ、ここはメキシコ」と海の色を見るだけでロケ地がばれる(笑)。あらら、エーゲ海とガラパゴスが同じ海の色だわ。

地理的にはエーゲ海は地中海と一つ海ですから、マルタ・ロケは大正解。地中海は太平洋や大西洋と異なり、海流によって大がかりに海水が循環しないので、あの独特な青をしているのだそうです。

マルタの海の青はこんな感じ。
グランド・ハーバーとリカゾーリ砦


対岸の奥が、今回「トロイ」のロケに使われたというリカゾーリ砦、かつて英国海軍の地中海基地だったマルタのグランドハーバーを守る、一番海側の防衛線でした。


ついでに、これが二番目の防衛線、聖アンジェロ砦。ジャックの時代に英国海軍司令部があったところで、オブライアン9巻「Treason's Harbour」の舞台でもあります。
海軍司令部は後に、現在のマルタ国立美術館の建物に移動したため、今でも国立美術家に行くと歴代の地中海艦隊司令長官の名が壁に彫り込まれていたりしますが、ジャックの時代は聖アンジェロ砦にありました。

この聖アンジェロ砦は別のハリウッド映画、ジム・カヴィーゼル&ガイ・ピアースの「モンテ・クリスト伯」のロケにも使われました。この映画、ホンモノの帆船をグランドハーバーに持ち込んでもくれたので、私はもうその映像に感激してDVDを買ってしまった…という。
映画そのものは、これもデュマの原作ファンだと一言あるとは思うのですが、映像的には綺麗ですし、最後のダンテスとモンデーゴの決闘は一見の価値あり。ガイ・ピアースは少年時代にフェンシングをやっていたとかで本格的。私には忘れられない決闘シーンの一つになっています。

どんどん話しがずれていますね。
それでは、ずれついでに、最後は少し真面目な話。

「トロイ」の映画パンフや、映画雑誌など見ていると映画「ブラックホークダウン」の話が出てきます。
考えてみれば、この映画のストーリーでも、歯車が狂いだしたきっかけは、誰かさん演じる新兵の失敗だったような。
でも今の時期、ちょっと確認のためでもこの映画、見るのは辛いだろうと思っています。イラクの現実が、おそらくそのままに目の前に展開されているのではと思われるので。

この映画、役者さん的にはなかなか面白いと思ったのですが、最初の公開が米軍のアフガン攻撃直前で見に行く気分になれず、1年後、DVDが出る頃にはイラク攻撃がカウント・ダウンで手がのびず、結局DVDを借りたのは去年の夏、とりあえずイラクが情勢一段落と思われていた時でした。

この映画はソマリア国連軍の10年前の実話です。ゲリラを掃討に行った筈の、国連軍の主力である米軍が、民間人を巻き込んだ市街戦を展開する羽目に陥り、多数の死傷者を出した…という事実をその通り映画化しており、今の時代に見ていると、やはり役者さんやストーリーより先に、「どうしてこのようなことになってしまったのだろう?」ということを考えてしまいます。
それが疑問で、またしばらく前にNHK特集の「アフリカの世紀」でこのソマリアの問題をとりあげていたこともあり、結局原作であるノンフィクションにも手をのばしました。

町中で市民の中に潜り込んだゲリラを判別するのは難しい。兵器が小型化している世の中ですから、街角から簡単に武装へりコプターが撃ち落とせる、ゆえに、もしそれを力づくで阻止しようとすると、周囲にいる何の関係もない民間人を大量に巻き込んでしまうのだということ。
おそらくあの映画と全く同じことが、今イラクでも起きているのではないかしら? 強引にゲリラを潰そうとすればどうしても、巻き込まれた周囲のふつうの人々の怒りをかってしまうことになる。それがアメリカが今現在憎まれている原因の一つでは…と。

10年前のソマリアの教訓が、全く生きていない現在、あの映画の存在価値には、ソマリアを人々に思い出させるという意味もあるのだろうと思います。


2004年06月05日(土)
Glorious June -- 6月の再映情報(東京・香川)

Glorious June. と言っても、「栄光のル・マン」のことではなくて、Glorious First of June(栄光の6月1日海戦)。ハウ提督がフランス艦隊を打ち破った、あの時代の一連の戦いのうちでも最初の海戦は、1794年6月1日のことでした。
フランス革命に端を発した、フランスとイギリスの長い長い戦争は、1793年〜1801年がフランス革命戦争、1802年のアミアンの和約をはさんで1803年〜1815年までがナポレオン戦争と呼ばれています。
以上6月の豆知識でした。

ともあれ、6月になりました。
当初、映画が終了したらこのHPも終了する予定だったのですが、まだ再上映は続いていますし、「DVDで映画を知る人もいるのだから、資料はそのままに」とのご要望もいただき、いまだにHPも続いております。
映画の続編について、20世紀FOXは夏の終わり頃に判断すると発表していますので、とりあえずそれまではとろとろと更新していこうかと。

6月の再映情報
東京・三軒茶屋の三軒茶屋シネマで6月5日〜11日まで、二本立て再映が行われます。
三軒茶屋シネマ 世田谷区三軒茶屋2-14-6 TEL : 03-3421-3322
6月5日(土)〜11日(金) 
 マスター・アンド・コマンダー 10:30,14:45,19:00
 レジェンド・オブ・メキシコ   12:55,17:10


また四国・香川で6月13日に再上映があるとの情報もお教えいただきました(Sさん、ありがとうございます)。
ベッセルおおち 香川県東かがわ市馬篠1200 TEL : 0879-26-1126
6月13日(日) 11:00,13:40,16:20


2004年06月04日(金)