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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
スコット・カーペンターによせて

スコット・カーペンター(Scott Carpenter)氏が死去されたことを、先々週のTIME誌で知りました。享年88才。

同氏は元宇宙飛行士という肩書きが一番有名でしょう。マーキューリー・セブン、すなわち米国初の有人宇宙飛行マーキュリー計画のために選ばれた7人の宇宙飛行士の一人、1962年5月に打上げられたマーキュリー・アトラス7号で、地球を周回、帰還しました。

同氏はもともと海軍士官だったのですが、マーキュリー計画終了後は、海軍の改訂居住プロジェクトシーラブ計画に従事し、深海に長期滞在した経験も有します。

このあたりはすべて1960年台の話で、私には歴史の部分なのですが、
私がスコット・カーペンターという人物知ったのは、マーキュリー計画を描いた1983年の映画「ライト・スタッフ」と、海洋小説です。

カーペンター氏は自身の、宇宙や深海での貴重な経験をノンフィクションとして出版すると同時に、フィクション(小説)も2冊執筆しています。私のカーペンター氏の認識は海洋小説作家でもある。
著書のうちの1冊The Steel Albatrosは「海底の戦場」というタイトルで翻訳され二見文庫から出版されました。
これは、ネットで海洋小説ファンの交流が始まった10年ほど前に、海洋小説仲間のKさんから教えていただき、古本やで入手しました。

海底の戦場
http://www.amazon.co.jp/dp/4576930958/
本当に海底を知る人が書いている本だな、というのが実感。元プロが書いた本ならではだと思います。
ギャビン・ライアル(元英国空軍)の航空小説やジョン・ル・カレ(元SIS)のスパイ小説同様、第三者の想像だけでは描けない世界を読むことで体験できると思います。

当該のTIME誌は表紙がベネディクト・カンバーバッチなので購入された方もあるかもしれませんが、P.18のジェフリー・クルーガー(「アポロ13」の著者)によるカーペンター氏の追悼文も是非お読みになってみてください。

カーペンター氏がカリブ海に着水したあとの、ライフボートで救援を待っていた間のエピソードがなるほどと思います。
マーキュリー計画で彼が搭乗したロケットは逆推進エンジンをマニュアルで噴射しなければならなかったために、着水点が500km近くずれてしまいました。そのため救援艦がかけるけるまで40分間、救命艇でカリブ海にただようことになったのですが、カーペンター自身は救命艇をおだやかに揺する波とカリブ海を見下ろし、また頭上に広がる大空を見上げて、深い平穏に満たされ、調和の美しさと差異を同時に併せ持つことに深く思い入った、とのことです。

宇宙と海のシンメトリーとはこういうことなのでしょうか。


2013年11月03日(日)