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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
バウンティ号追想

H.M.S.Roseの復元に尽力した歴史家のJohn Fitzhugh MillarがH.M.S.Bountyに寄せた一文です。
原文は下記を、こちらでは要約でご紹介します。

BOUNTY Reminiscences by John Fitzhugh Millar
http://www.oldsaltblog.com/2012/11/19/bounty-reminiscences-by-john-fitzhugh-millar/

MGMのバウンティ号の映画製作のために、H.M.S.Bountyが復元船として建造されたのは、カナダ・ノバスコシアのLunenburg造船所で、1960年のことである。船匠は英ヨークシャー州ハル市のHugh Blaydesだが、彼とLuneburg造船所は1969年のH.M.S.Rose復元にも携わっている。

実のところ、H.M.S.Boutyはオリジナル船の3倍の大きさで復元された。これはバウンティ号の映画撮影がタヒチ島で行われることから、映画俳優が暑い思いをしないよう、MGMが冷房完備を要求したためである。(びっくり!)
復元船H.M.S.BountyはMGM以外にも「Tresure Island」、モンティパイソンの海賊映画「Yellowbeard」、「パイレーツ・オブ・カリビアン2」などの撮影に用いられた。

1994年、ワーナーブラザース社にはエロール・フリンの「Captain Blood」をリメイクする計画があり、2隻の帆船が必要で、H.M.S.RoseとH.M.S.Bountyが競演することになった。Bountyには大幅な修理が行われた…が、映画計画自体が流れてしまった。
2001年、H.M.S.Roseのセイル・トレーニングに参加した裕福なビジネスマンが、H.M.S.Bountyを購入し、NPOを設立してロング・アイランド州Greenportを母港としてH.M.S.Bounty財団の運営を始めた。
2006年に更なる修理を受けたH.M.S.Bountyは、世界一周航海もなしとげた。2014年には再び大西洋を横断してヨーロッパを訪問する予定だった。

米東海岸の秋の終わり、H.M.S.Bountyは冬の間フロリダに回航されることが決まった。
Fall River(*注)当時から船長の職にあったRobin Walbridgeは、ロング・アイランド海峡(Long Island Sound、ニューヨーク州)でハリケーンに遭遇するよりは、海に出ることを選んだのだろう。だがハリケーンの時化に見舞われた大西洋の高波は、50ft(15m)を超えた。
Walbridge船長とともに犠牲となったClaudene Christianは、その名字が示す通り、皮肉にも、バウンティ号の反乱の首謀者だったフレッチャー・クリスチャンの5代目の子孫にあたる。

H.M.S.Bountyの復元船はもう一隻、存在する。
こちらは1979年に復元され、長年オーストラリアのシドニー港を母港としてきたが、現在は拠点を香港に移している。

*注)Fall Riverは米マサチューセッツ州と、カナダ・ノバスコシア州の2箇所に存在するが、おそらくノバスコシアのことと思われる。


2012年12月02日(日)