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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ビクトリー号の新たな敵

緊縮予算で、財政再建に取り組んでいるイギリスの新政権ですが、
予算縮減と仕分けの波は、ついにビクトリー号にも。

乾ドックに保存されている建造から245年を経たビクトリー号も、寄る年波には勝てず、というより、本来海面で浮力を得ていたものが長年乾ドックに置かれたことで、自重を支えきれず、船体構造部に大規模な補修が必要な状態になっています。
ハーディー艦長のキャビンも雨漏りが深刻、索具類にも劣化がめだち、観光客の上にリギンが落下する恐れがあるので、今年のうちに甲板の一部は公開禁止となるそうです。
そんな危機的状況が、1月8日のテレグラフ紙に紹介されています。

HMS Victory rotting and being pulled apart under its own weight
http://www.telegraph.co.uk/earth/environment/archaeology/8247770/HMS-Victory-rotting-and-being-pulled-apart-under-its-own-weight.html

しかし、緊縮予算を打ち出す政府予算には補修費配分の予定がない…どころか、艦の維持管理と運営を、海軍から財団もしくは民間会社に移行する、ビクトリー号はいわゆる「仕分け対象」となっているのだそうです。

これに対して海軍は反発、年間35万人が見学におとずれるビクトリー号は、歴史と栄光のシンボルとして海軍のPRに貢献していると反論しています。
元第一海軍卿で参謀本部長をつとめたボイス卿は、ビクトリーがそのままの姿で残ることが重要だと述べています。
国防省の広報官は「現在我々はビクトリー号の補修費捻出および将来の保存について幾つかの対策案を検討しているが、ビクトリー号を売却するという選択肢は存在しない。ビクトリー号はあくまで就役艦でありつづける」とコメントしているようです。

1941年のドイツ空軍の空襲にも耐えた彼女(ビクトリー号)はあらたな敵と戦うことになる…と新聞は述べているのですが、
赤字国債を発行しながら予算規模を拡大する国の将来に不安を抱える身としては、財政再建を着実にこなしていく英国政府はたのもしくうつるものなのですが、それがビクトリー号の敵となるとは、…世の中は難しいものだとつくづく思います。


2011年01月16日(日)