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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
海賊稼業の現在

今晩の日曜洋画劇場は三週連続パイレーツ・オブ・カリビアンの二夜目ですね。
海洋モノとしてはやっぱり一作目が一番良かったと思うのですが、二作目はノリントン提督が格好いいから好き。
いやその私、この話どうしても提督視点で見てしまって、スパロウ船長やらエリザベス視点になれないんですよね、一作目から。
アーサー・ランサムを読んでいた子供の頃や「宝島」でジョン・シルバーのかっこよさにしびれていた昔は海賊視点だったのに。
その後あまりにも取り締まり側(…ですから英国海軍)に馴染みすぎてしまったのでしょうか?

戯れ言はさておき、今日は現代の「海賊ビジネス」のお話です。
3月中旬に、アフリカのソマリア国の現状に関する報告書が国連安全保障理事会に提出されたましたが、その中にいま世間をさわがせている「ソマリア海賊」に関する章があるそうです。
アメリカの海洋情報サイトオールド・ソルト・ブログにこの原文が紹介されていました。
http://www.oldsaltblog.com/2010/03/22/how-to-run-a-maritime-militia/#more-9840
いわく、昨今のソマリアの海賊ビジネスの実際。

もっとも一般的な「海賊ミッション」は、8〜12人の民兵が、海域に待機し、そこを通過する船舶を襲撃するものである。
襲撃チームは最低2隻の襲撃用短艇、武器、装備、糧食、燃料と支援船を必要とする。襲撃作戦の費用は、投資家から提供される。

「海賊」として雇用されるに当たり、必要な資格は、自前の火器を有する志願者であること。
火器の持参という「貢献」をした志願者は、「Aクラス」の取り分を保証される。
短艇、機関銃や携行式ロケット砲と言った重火器を提供した者は「特Aクラス」に処遇される。
拿捕船に一番乗りをした者は「超特Aクラス」の取り分を得る資格を手に入れる。

海賊チームには陸上でのパートナーも必要である。
陸上チームはやはり自前の武器で武装し「Bクラス」の取り分を得る――この額は往々にして固定されており、約15,000米ドル(約138万円)とされる。
襲撃が成功し、拿捕船を港に係留、人質を確保した場合には、更なる糧食や携帯電話、人質の面倒をみる費用も必要とされる。

拿捕船の積荷、人質の身代金など海賊チームの得た実入りは、以下のように分配される。
・必要経費の支払い
・投資家への利払い(身代金の30%)
・拿捕船係留料(港のある地域の長老へ、身代金の5-10%)
・陸上パートナーへの「Bクラス」支払い(1人当たり15,000ドル)
これら経費を支払った上で残った額―収益(profit)―が、「Aクラス」メンバーの中で等級に従い分配される。

…なんというか、おそろしくビジネスライクですね。
唯一「一番乗り」に超特Aの権利があるというところだけが、昔の海賊の名残を残しているというか。
なんと言っても、海賊稼業すらも「投資」と「利払い」という概念に沿って動いているというのが。
もっとも、ソマリアに海賊が出現したのは、長く内戦が続いたあの国の貧しさゆえのことです。
家族を養おうにも仕事がなく、戦争で畑も荒れ果てた土地で、15,000ドルといのは破格の収入です。
海賊稼業に手を貸す陸上のパートナーたちも、合法的に金を稼ぐ手段がない以上、非合法ビジネスを仕事とせざるを得ない事情があるのだろうとは思います。
現代には現代なりの事情があるということなのでしょう。


2010年03月28日(日)