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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
19世紀末の海洋小説作家

先日、「クラーク・ラッセルという19世紀の海洋冒険小説作家をご存じありませんか?」というメールを頂戴しました。
なんでもシャーロック・ホームズの「オレンジの種五つ」という作品で、ワトソン先生がこのラッセルの「面白い海洋小説」を読みふけっているのだそうです。

クラーク・ラッセルという作家のことは、恥ずかしながらこれが初耳でした。
日本で耳にする19世紀の海洋小説というと、岩波文庫から翻訳が出ている「ピイタア・シムプル」のフレデリック・マリアットぐらいでしょうか?
スティーブンスンの「宝島」とかメルヴィルの「白鯨」とかは海洋小説というより古典の分類になりますし、一般的には海洋小説というジャンルはC.S.フォレスターから始まる…と言われていますので、
つまりは20世紀後半…第二次大戦以降の作品になるわけです。

でも19世紀の半ばにマリアットの作品が好評を博しているのですから、当然、それに続く作品もあったでしょうし、
ちょっと興味もあったので、このクラーク・ラッセルという作家のことを調べてみました。

ウィリアム・クラーク・ラッセル(William Clark Russell)は、1844年生まれ、ウィンチェスター校で学んだ後に商船に乗り組み、世界の海をまわりました。
その後、陸に上がりNewcastle Daily Chronicle紙、後にはDaily Telegraph紙に記事を書きながら、商船時代の海上経験を生かした小説を書き始め、フィクション、ノンフィクションあわせて50冊以上の本を出版したとのことです。
「Life of Lord Collingwood」(1891)、というコリングウッド提督に関する本や、共著で「Nelson and the Naval Supremacy of England」(1890)などといった本も著しています。
この経歴を読むと、何やらラミジ・シリーズを書いたダドリー・ポープの生涯を思い出すのですが。

現代でもラッセルの著作は数冊、まだ出版されているようです。
どの程度よまれているのか、ためしにオブライアン・ファン・フォーラムである「Gun Room」でキーワード検索をかけてみたのですが、話題に出ていたのは「Frozen Pirates」という幽霊船の話、1作のみでした。
欧米でも昔の作品は、あまり読まれていないのでしょうか?

3年前に「サハラに舞う羽根」という19世紀末の英領植民地スーダンを舞台にした映画が公開された時、この原作(A.E.W.メイスンが20世紀初頭に発表した冒険小説)が創元推理文庫から翻訳されて、読んでみたらなかなか面白かったのですが、メイスンも翻訳されたのはこの1作のみだと思います。
このメイスンという人、若い頃に英国軍のスパイのような仕事をしていたり、「ピーターパン」を書いたバリーの親友だったり、なかなか面白い生涯を送った人で、他の著作もきっと面白いだろうと思うのですが、ちなみにホームズの作者コナン・ドイルもバリーの友人ですが、

おそらく、たぶん、ビクトリア朝後期〜第一次大戦以前の時代のイギリスには、私たちは知らないけれど、面白い冒険小説とか歴史小説とかがきっとまだたくさんあるのでしょう。
途中から翻訳が出なくなってしまったシリーズのフォローだけでも大変だというのに、こんなとことまではとても手がまわりませんが、


2006年04月16日(日)