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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
カピタン・アラトリステ

「エル・カピタン・アラトリステ」というスペインの歴史映画は、主役のアラトリステをロード・オブ・ザ・リングのアラゴルン王ことヴィゴ・モーテンセンがつとめることで話題となっていますが、映画化がきっかけになったのか、この小説の英訳版がイギリスで出版され、ザ・ガーディアン紙に書評が載りました。

ザ・ガーディアン紙書評:
http://books.guardian.co.uk/review/story/0,12084,1538383,00.html#article_continue

この作品は当初海洋ものという紹介され、映画の撮影でも海岸沿いの沼沢地に帆船のセットを組んだという話が伝わって来ていたのですが、この書評を読むと、確かに歴史冒険小説には間違いないけれど、海洋ものと言ってよいのかは疑問です。
もっとも原作者のアルトュロ・ペレス・レベルテ(Arturo Perez-Reverte : Perezの最初のeに´あり)は、「Cabo Trafalgar」というトラファルガー海戦をスペイン側から見た小説なども書いているようです。ただしこの小説はスペイン語のみのようでまだ英訳されていません。

ともあれ、書評記事からあらすじをご紹介しようと思います。
舞台は17世紀のスペイン、主人公はex-soldierのカピタン・アラトリステ。
はっきりsoldierって書いてあるんですよね、sailorではなく。
英語でsoldierというと陸軍とイコールなんですが、これスペイン語からの翻訳だからどうなのか???(スペインの当時の制度ってよくわからないわ)
もし以前に陸軍にいた…という経歴なら、その場合カピタンは船長ではなく大尉か隊長クラスという訳になるのか?(17世紀のスペイン陸軍の知識は皆無なので…すみません)。

アラトリステ(Alatriste)という名は、悲しみ(triste)という言葉を想起させる。
彼は確かに、メランコリックな運命を背負っているのだろう。
狼のような灰色の瞳、戦いの傷痕、戦士の名誉を重んじ、申し分のない勇敢さ、それは完璧にある人となりを示している。
1620年代のマドリッド。だがアラトリステは古き良き過去を懐古する者、ものごとの善悪がより明快であった時代を。
この時代すでに、剣は火薬の前に膝を屈しつつあった。

アラトリテはその腕を買われる剣士ですが、英国人旅行者2人の襲撃事件に巻き込まれてしまいます。
問題は、その2人が実は、スペインの王女を手に入れようとやって来たバッキンガム公爵と英国皇太子だったこと。

アラトリステは自身が複雑な政治的陰謀の渦に巻き込まれたことに気づく。そして暗い夜道で待ち伏せされるか、処刑台に送られるかという運命に追い込まれるのだ。
読者の興味は、主人公がいったいどうやってこの運命を逃れるのかに絞られる。

主人公と同様に重要なのが敵の存在である。
アラトリステと秘密を共有するのは黒装束のイタリア人。アラトリステ同様の優れた剣の使い手だが、立ち合いの最中に短剣を投げるなど卑怯な手を使うことを厭わない。
だが彼は道徳律を持たない単なる傭兵にすぎない。真の悪役はボカネグラという名のドミニコ会修道士である。
宗教裁判の判事だが、その瞳は狂信的に輝く。
2人の悪役の存在は、この物語の構図を魅力的なものにしている。

とまぁ、だいたいこのような感じです。
私、西洋史は知識不足なのですが、このバッキンガム公って、あの…つまりデュマの「三銃士」に登場する、あのバッキンガム公?
リシュリューがフランスの宰相に就任したのは1625年だそうなので、ぎりぎり年代が合うのかしら?

まぁでもだいたい、これは三銃士の時代(またはその直前)のスペインの話…というわけですよね。
このあたりのスペインは歴史的にも小説的にも、私には全く空白地帯なので楽しみです。
映画公開に連動して日本語訳が出ると良いのですが、その前にまず映画…日本で公開されるのか?
楽しみに待ちたいと思います。

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upがすっかり遅くなってしまってすみません。
夏休み(北陸旅行)前に上げていくことができませんでした。

お詫びでもありませんが、加賀白山みやげ(写真です)。
岐阜県・石川・富山県境の白山は、実際は三つの峰(御前峰、大汝峰、別山)の総称です。
観光新道を登り、室堂で一泊、御前峰の頂上で御来光を拝してエコーライン、砂防新道経由で下りてきました。

白山(御前峰)



朝焼けの白山(別山)御前峰より



ハクサンフウロ


ハクサンフウロは、漢字では「白山風露」と書きます。中部山岳や東北の山でも見ることができますが、やはり白山の風露が本家本元。
私はこの花が見たくて行ったので、満足まんぞく。
北海道に咲くこの花はもう少し色が薄くて(白っぽい)チシマフウロと言います。


2005年09月01日(木)